モラハラの被害を受け、もうこれ以上我慢できないとき、離婚を考える方が多いことでしょう。モラハラで精神的苦痛を負ったときは、離婚とあわせて慰謝料を請求できます。
モラハラは、暴言、嫌がらせ、無視などが典型例ですが、いずれも、暴力や不倫などのほかの離婚理由と比べると、証拠が残りづらいです。口頭のやりとりだけで終わってしまうなど形に残りづらいため、後でモラハラの責任追及しても「やってない」、「そんなことは言ってない」、「そういう言い方ではなかったはずだ」などごまかされてしまうからです。
モラハラ夫・モラハラ妻ほど、離婚や慰謝料請求に応じるわけがないことは、モラハラ被害に日常的にあっていれば容易に想像がつくはずです。そのため、離婚トラブルでモラハラを争点にしたいときは、モラハラを証明するため、証拠の入手がとても重要です。
今回は、モラハラ離婚を有利にすすめるため、モラハラの証拠についての知識を、離婚問題に詳しい弁護士が解説します。
- モラハラを直接証明できる録音・録画が重要な証拠。いつでも録れるよう準備は欠かさない
- モラハラは目に見えないため、できるだけ客観的な証拠に残すのが大切
- モラハラの証拠が十分でなくても別居を優先し、離婚をあきらめない
モラハラを証明する重要な証拠
冒頭で解説したとおり、モラハラを理由とした離婚や慰謝料請求では証拠がとても重要なため、はじめに、モラハラを立証するのに役立つ重要な証拠について解説します。
モラハラは、モラルハラスメントの略であり、暴言や無視、精神的虐待などの嫌がらせ行為のことです。相手の人格を否定したり、個人の尊厳を侵害したりといった行為によって精神的苦痛を与えます。モラハラが続くと、精神的な支配やマインドコントロールにもつながります。
「モラハラの被害を受けている」と感じたときは、すぐに証拠を集める必要があります。モラハラの証拠収集は、モラハラを理由にして離婚したいと求めるときはもちろん、すぐには離婚したくない場合でも、モラハラを止めたり、慰謝料請求をしたりするとき活用することができます。
モラハラは証拠に残りにくく、十分な証拠を集めるのがとても難しいです。モラハラの重要な証拠について理解していても、「その証拠だけ集めれば十分」という気持ちでは、離婚調停や離婚訴訟などでモラハラを認めてもらえないおそれがあります。
今回の解説を参考にしながら、自分で証拠収集をするときは「モラハラの証拠となる可能性が少しでもあるものは『全部』収集、保管しておこう」という覚悟で準備してください。役立つ証拠が多くて困ることはありません。
モラハラ発言の録音
暴言、人格否定発言、罵詈雑言、誹謗中傷などの「言葉の暴力」はモラハラにあたります。言葉によるモラハラを証明するためには、録音データが重要です。
「バカ」、「死ね」、「役立たず」といった具体的な発言だけでなく、舌打ちやため息、咳払いといった威圧的な発言も、録音して記録化できます。
一言だけ切り取るのではなく前後の会話も録音し、どのような文脈でモラハラ発言がされたかを説明できるようにしておくのが重要なポイントです。暴言部分のみを切り取った短い録音だと、後から編集・改ざんしたのではないかと疑われ、証拠としての価値が下がってしまうこともあります。会話の一部始終を録音し、モラハラ発言に至った経緯まで証拠化しておくことで、モラハラの悪質性をより際立たせられます。
モラハラ発言を録音しておけば、後から「言っていない」という言い逃れをすることができなくなります。モラハラの証拠となる録音をとるためには、ボイスレコーダーを準備するほか、スマートフォンを手放さずに用意しておけばいつでも収集できます。モラハラは、日常生活で突発的に起こるため、すぐ録音できるよう準備するか、常時録音しておくのがおすすめです。
「モラハラとはいえ、勝手に録音してもよいのか」という相談もありますが、モラハラ被害にあったことを証明するためであれば、秘密で録音をしてもプライバシー侵害にはならず、裁判でもその録音を証拠として取り扱ってもらえます。
モラハラ行動の録画
モラハラが、言葉によるものに留まらず、物にあたる、物を投げる、無視をする、馬鹿にした態度をとるといった行動にまでエスカレートすることがあります。行動を伴うモラハラでは、録画データが重要な証拠となります。
録画もまた、録音と同じく、いつモラハラ行動が起こっても録画できるように準備しておくとともに、モラハラ行動の一部始終を撮影しておくのが重要なポイントです。
日常的につけた日記
モラハラ行為の被害にあったことを記した日記もまた、モラハラの事実を立証する重要な証拠となります。録音・録画などは突発的に起こりがちなモラハラでは入手が難しいケースもあります。このとき、被害者側の努力によって収集できる証拠が「日記」なわけです。
日記は被害者がつけるものなので、証拠として重視してもらいやすいためには次の工夫が必要です。
- モラハラの都度、こまめに日記をつける
後からまとめて日記をつけると、被害者の記憶による部分が大きく、価値が低いと評価される - 手書きで日記をつける
パソコンやスマホで日記をつけると追記・修正が簡単で、当時の被害状況をあらわしたと評価されない - モラハラの日時、場所、行動を具体的に書く
加害者がモラハラを否定したとき、モラハラ言動をくわしく、具体的に記録しておくと証拠価値が高まる - モラハラ以外の出来事もあわせて書く
モラハラ言動だけを記録した日記は「モラハラをでっちあげるために作成されたのでは」と疑われる - ブログ、SNSに書く
ブログやSNSで日記をつければ、追記・修正ができず、必ず作成日が記録される
日記をつけてモラハラの証拠を集めるときには、モラハラの具体的な行為を、詳細かつ説得的に、裁判所に説明できるようにしておくのが重要なポイントです。そのため、「5W1H」を意識し、「いつ、どこで、誰が、誰に対して、どのように、何をしたか」という点を意識してください。
モラハラ加害者とのやりとりの記録(メール・LINE・SNSなど)
モラハラのなかには、直接の言動だけでなく、メールやLINE、SNSのメッセージ機能などで命令したり人格否定したりといったケースもあります。このとき、モラハラそのものであるメール、LINE、SNSの記録が最重要の証拠です。連続で何度も長時間の通話をくり返したり、着信を残しつづけて応対を強要したりといった行動もモラハラです。この場合、着信履歴がモラハラの証拠です。
モラハラが口頭で行われたときも、その延長線上としてその後のメールやLINEに痕跡が残ることもあります。
メールやLINE、SNSの記録は、モラハラ加害者はすぐに証拠隠滅のために消してしまうことが多いため、モラハラ被害者側で確実に保存しなければなりません。突然消えてしまわないよう、確実な証拠保存のためには、スクリーンショットを保存した上で、紙に印刷しておくのがおすすめです。
バックアップをとってパソコンにメール送信しておいたり、クラウド上に保存しておいたりするのが大切です。
モラハラ加害者が壊した物の写真
モラハラ加害者が、突然感情的になって、物にあたる、物を投げるといった行為に出ることがあります。直接身体に暴行を加えなくても、これらの行為がいずれも危険なのは明らかで、モラハラにあたります。アルコール依存症で、酒に酔って暴れるケースもあります。
モラハラ夫、モラハラ妻が壁を叩いて穴をあけたり、夫婦の記念品や親の形見など、配偶者(パートナー)が大切にしている物を壊してしまったりしたとき、その被害状況をすぐに写真にとっておくことが証拠収集につながります。
家族、友人の証言
同居の家族などの目撃者の証言もまた、モラハラの証拠となります。
子どもが一定の年齢に達していたときは、同居する子どもの目撃証言が重要な証拠となります。ただし、子どもの年齢が低いときは証言の信用性が低くなってしまいます。モラハラによる子どもへの悪影響の心配がある点にも注意が必要です。
また、モラハラ被害にあってしまったときには、一人で抱え込まず、家族や友人に相談することがおすすめです。モラハラの早期の段階で第三者に相談をし、注意してもらうなどの行動を起こすことで、モラハラに歯止めをかけ、反省をうながし、夫婦関係を修復できる場合もあります。
モラハラのできるだけ早い段階で家庭の外にいる人に相談をしているときには、「モラハラの相談を受けていた」というそれらの人の証言が、モラハラの重要な証拠となります。
警察への相談記録、110番通報記録
心身への影響が大きい悪質なモラハラでは、警察へ相談をすることも検討しなければなりません。
モラハラについて警察へ相談していたときは、警察の相談記録が、モラハラの重要な証拠となります。あらかじめ警察へ問い合わせをし、モラハラの証拠として保存しておいてほしいと依頼するようにしてください。あわせて、110番通報をしている場合は、その記録も警察に残るようになっています。
ただし、警察へ通報するほどにモラハラが悪化しているときには、もはやそれほど時間的な猶予があるとはいえず、証拠収集にも長い時間をかけることはできません。DVがあるケースへの対応では、身の安全を守るため、弁護士をはじめ、警察やシェルターなどの連携が必要となります。
悪質かつ強度のモラハラの被害を受けているときには、家庭内暴力(DV)に発展して問題が拡大する前に、迅速な証拠収集とともに、別居が必要となります。
診断書、カルテ、通院履歴
モラハラ被害は、DVによるケガと違って、その被害が外見からみることができない点に特徴があります。
しかし、被害者を苦しめるのは、目に見える肉体的暴力だけではありません。モラハラを受けつづければ、精神的苦痛を負い、うつ病、適応障害、パニック障害などの精神疾患(メンタルヘルス)にかかってしまう人も多くいます。眠れなくなったり、頭痛や吐き気がするなど、モラハラによる精神症状がからだにあらわれたときは、精神科、心療内科を受診し、診断書を出してもらってください。
受診した際の診断書、カルテ、通院履歴などは、モラハラを受けていたことの重要な証拠となります。医師には、配偶者(パートナー)からのモラハラが原因であることを伝え、カルテに書き留めておいてもらうようにしてください。
モラハラの証拠収集が難しい4つの理由
モラハラを理由に離婚、慰謝料請求を検討している方に知っていただきたいこととして、「モラハラの証拠収集はとても難しい」ということです。その理由は次の4点です。
「モラハラかもしれない」と気付いた時点で、手遅れになる前に早急にモラハラの証拠収集をスタートできるよう、「なぜモラハラの証拠収集が難しいのか」という理由を解説します。
精神的苦痛は目に見えない
モラハラの証拠収集が難しい1つ目の理由は、モラハラによる精神的苦痛が目に見えづらいことです。
DVであれば、暴力によってケガをすれば目に見える被害が生じます。写真にとったり診断書をもらったりすればDVの証拠を残せます。暴力をふるったり物を投げたりと家の中で大暴れすれば、近所の人もその大きな物音に気付いて、証言をしてくれる可能性もあります。
しかし、モラハラの場合、言動だけで行われます。悪質なモラハラは、陰湿に隠れて行われるのがほとんどです。そのため、モラハラで精神的なダメージを負っても、その症状は目に見えず、うつ病、適応障害など精神疾患(メンタルヘルス)の診断書をとるなどの証拠収集の工夫が必要です。
モラハラは突発的に起こる
モラハラの証拠収集が難しい2つ目の理由は、モラハラが突発的に起こることです。
モラハラの証拠として録音、録画が役立ちますが、いずれも、モラハラがいつ起こるかわからないため、常時かまえて準備をしておかなければ証拠収集に失敗してしまうおそれがあります。
夫婦喧嘩のように突発的に起こったモラハラがしばらく続くケースもありますが、多くのモラハラは、日常的に、嫌がらせや暴言、罵詈雑言、誹謗中傷がくり返されます。無視や冷遇など、態度にしかあらわれないモラハラは、録音すら困難です。
被害者にモラハラ被害の自覚がない
モラハラの証拠収集が難しい3つ目の理由は、被害者にモラハラ被害を受けたという自覚がないことです。
モラハラ被害者のなかには、恒常的なモラハラを受け続けた結果、いわば洗脳状態となり「モラハラを受けてしまう自分が悪いのだ」、「自分がミスをして怒らせてしまった」など、被害者である自分を責めてしまう人も多いです。モラハラ夫、モラハラ妻は、相手の間違いや些細なミスをあげつらい「お前が悪い」、「お前のためを思っていっている」といった精神的プレッシャーをかけ続け、この状況を助長します。
モラハラ被害者は、冷静な判断ができない状態に陥っていることが少なくありません。モラハラ被害者が、被害を受けているという自覚がなければ、証拠収集に着手しないのは当然です。まずは「何がモラハラにあたるのか」を知るのが重要です。
加害者にもモラハラの自覚がない
モラハラの証拠収集が難しい4つ目の理由は、加害者側においてもモラハラをしているという自覚がないことです。
モラハラ加害者が、モラハラをしているという自覚があれば、証拠収集をしはじめればモラハラを止めてくれるかもしれませんが、そう簡単にはいきません。悪気なくモラハラをしている加害者の場合には、証拠がなければ、言った言わないの水掛け論になってしまいます。
モラハラ加害者に対して、モラハラをやめてもらおうと「それはモラハラだ」、「やめてほしい」と指摘をしようものなら、ますますモラハラ加害者を増長させ、罵詈雑言、屁理屈を並べ立てられることも少なくありません。モラハラ加害者は外交的で外面はよく、口が達者なことも、モラハラの証拠をとりづらくしている要因の1つです。
モラハラの証拠を得たあとの対応方法
モラハラの証拠をきちんと収集できると、モラハラ被害者側でもさまざまな対抗手段を打てるようになります。
そこで次に、モラハラの証拠を得たあとの対応方法について、弁護士が解説していきます。
モラハラの証拠は重要ですが、証拠集めを優先するあまりに加害者を刺激し、かえってモラハラが悪化してしまうケースもありあす。
重要な証拠とはいえ自分の身には代えられませんから、無理は禁物です。危険を感じるときは、たとえ証拠が十分でなかったとしても、弁護士に相談して交渉をスタートさせるなど、次の対策を進める決断が重要となります。
弁護士に相談する
モラハラは、被害者・加害者いずれも「モラハラだ」という自覚のないケースもあると説明しました。家庭内のできごとのため外からも見えづらく、親族や近隣住民もモラハラに気づかないことがあります。
そのため、モラハラの証拠を入手したらすぐに、離婚や慰謝料請求を有利に進めるため、弁護士に相談するのが有益です。
収集したモラハラの証拠が十分であれば、弁護士に相談することで離婚問題を有利に解決し、悪質なモラハラにには慰謝料請求するといった方法の依頼ができます。この法律相談のとき、モラハラという見えづらい被害について弁護士にわかりやすく、かつ、臨場感をもって説明するためにも、証拠を持参するようにしてください。
モラハラが続いている状態では、当事者間での話し合いは困難です。無理に離婚や慰謝料の交渉を進めようとしても、さらにモラハラが悪化してしまうおそれがあります。弁護士に依頼して交渉の窓口になってもらえば、心身の健康を脅かすことなくモラハラ相手と交渉をすることができます。
なお、各自治体の女性センター、男女共同参画センター、配偶者暴力相談支援センターの相談窓口や、モラハラ治療を専門にする医師、カウンセラーなどの専門家の指導を受けることも有益です。
モラハラを止めさせる
どんな理由があってもモラハラは許されません。モラハラは、被害者の尊厳を傷つけ、大きな精神的ダメージを与えます。そして、直接の被害者だけでなく、そばで見ていた子どもにも「人を馬鹿にしたり怒鳴ったりしても許されるのだ」という無意識の悪影響をあたえるおそれがあります。
そのため、モラハラを指摘し、ストップさせ、モラハラのない健全な夫婦関係を回復するのが大切です。
このとき、モラハラ加害者は、モラハラを指摘されても開き直ったり嘘をついたりすることがありますから、モラハラの証拠をきちんと示し、説得的に説明する必要があります。
モラハラを理由に離婚する
モラハラ加害者には、モラハラを止めさせようとしてもかえって増長して嫌がらせが増したり、そもそもモラハラの意識すらない人もいます。悪質なモラハラに対して、証拠を示して理詰めで説得することは逆効果です。この段階では、もはやいびつな夫婦関係の修復は難しく、モラハラを理由に離婚せざるを得ません。
モラハラを理由に離婚するプロセスは、まずは話し合いによる「離婚協議」、当事者間での話し合いが難航すれば「離婚調停」そして「離婚訴訟」という順に進行します。そして、家庭裁判所でモラハラの事実を認めてもらい、早く離婚を成立させたり有利な慰謝料を勝ち取ったりするためには、モラハラの証拠が重要です。
なお、離婚協議、離婚調停によってはモラハラ加害者の同意が得られない場合には、離婚訴訟において「法定離婚原因」(民法770条1項)が存在することを証拠によって立証しなければなりません。
法定離婚原因には次の5つがありますが、モラハラは、「悪意の遺棄」もしくは「その他婚姻を継続し難い事由」にあたるかどうかを検討することとなります。
民法770条1項
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
民法(e-Gov法令検索)
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
モラハラの慰謝料を請求する
モラハラによって精神的苦痛を負ったときは、加害者に慰謝料を請求できます(民法709条、710条)。
モラハラで請求できる慰謝料の金額は、モラハラの態様、悪質性、モラハラ行為の回数、頻度、継続した期間、モラハラ被害者が受けた被害の程度、モラハラ被害者の反省の有無などによって増額・減額されます。ただし、いずれにしても「モラハラ行為の存在」と「それによる被害」を証拠により証明しなければなりません。
「重要な証拠がどれだけ手元にあるか」によって、請求できる慰謝料額も変わってきます。
モラハラの慰謝料について加害者が話し合いで任意に支払ってくれることは期待できず、裁判によって請求することになる場合に、裁判所での審理では証拠が非常に重要視されるからです。
モラハラの証拠が得られなくても離婚する方法
最後に、モラハラの証拠が十分に得られなかった場合でも離婚する方法を解説します。
モラハラが悪質であるほど、加害者は証拠をとられないよう巧妙な手口でモラハラをしてきます。残念ながら、モラハラの被害がに耐えきれずに別居してしまったあとは、これ以上モラハラの証拠をとることができません。モラハラ被害がひどいケースほど、証拠の入手が困難となることもありますが、証拠が手元にないとしても離婚をあきらめてはなりません。
モラハラを受け続けると、気力と体力が吸いとられ、何もする気が起きなくなってしまうかもしれません。しかし被害者が無気力となり証拠集めをやめてしまえば、モラハラはますます加速します。「モラハラの後は突然優しくなる」、「一時的な問題だから自分が我慢すればよい」などと信じて証拠収集をやめてしまうことはおすすめできません。
協議離婚・調停離婚で離婚できるよう粘り強く説得する
証拠が十分に手元にないと、法的にモラハラを認めてもらうのが難しいことがあります。このことは、離婚訴訟では、法定離婚原因が認めてもらえず、相手が反対すると一方的な離婚はできないことを意味しています。
しかし、証拠が十分でなくても、モラハラについて具体的な事実をしっかりと伝え、粘りづよく話し合いを続ければ、離婚を成立させられるケースは少なくありません。このように、話し合いで決まる離婚である「協議離婚」、調停による離婚である「調停離婚」であれば、法定離婚原因を証拠によって立証することは必要不可欠ではありません。
家庭裁判所で行う離婚調停を利用すれば、中立的な調停委員が双方の話を聞き、調整してくれることが期待できます。調停委員に状況をよく理解してもらえれば、調停委員の仲裁によって、相手を刺激することなく離婚するよう説得してもらえます。
モラハラ夫、モラハラ妻との協議離婚、調停離婚をうまく進めていくためには、決してあきらめず、相手の責任を追及したり否定をしたりするのではなく、客観的な事実を伝えて粘り強く交渉し、離婚することを最優先に考えることが重要です。
弁護士を窓口に交渉する
モラハラを理由に離婚したいケースにおいて、モラハラ加害者とモラハラ被害者との間には上下関係が存在し、相手と直接話し合うことが難しいことがほとんどです。
モラハラの証拠を十分に得ることができないと、モラハラ加害者の理不尽な言い訳、弁明を許してしまいかねず、直接交渉では言い負かされてしまったり、威圧されてしまったりして、言い分をきちんと伝えることができない場合も多いものです。
このとき、弁護士を依頼し、弁護士を交渉の窓口として、離婚の協議、離婚調停を進めてもらう方法が有効です。弁護士に依頼することで、モラハラのように証拠の入手が難しいケースであっても、離婚を成立させるために法律の知識を駆使して、あなたの味方となって交渉をしてもらえます。
まとめ
今回は、険悪となった夫婦関係でよく問題となりがちな「モラハラ」の問題について、「どのような証拠が重要か」という観点を中心に解説しました。
モラハラは、肉体的な暴力と違って目には見えづらいですが、確実に心身をむしばんでいきます。モラハラを理由に離婚をするときや、モラハラで慰謝料請求をしたいとき、モラハラを立証する証拠を収集するのが重要なポイントです。
当事務所のサポート
弁護士法人浅野総合法律事務所では、モラハラによる離婚についての豊富な実績をもとに、個別のケースでどんな証拠収集が有用化をアドバイスします。モラハラで苦しむ被害者に有利になるよう、相手との交渉をサポートできます。
「証拠が集まったら弁護士に相談しよう」というのでは、モラハラの苦痛に耐えきれなくなるおそれがあります。そうすると、大切な証拠収集が行えず、離婚、慰謝料請求において有利な結果が望めなくなってしまいます。
モラハラのよくある質問
- モラハラの重要な証拠にはどんなものがありますか?
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モラハラの証拠で、最も重要なのは、モラハラを直接証明できる録音・録画ですが、それだけでなく、間接的に証明できる日記、LINE・メール・SNSなどのやりとりも保存するようにしてください。もっと詳しく知りたい方は「モラハラを証明する重要な証拠」をご覧ください。
- モラハラの証拠を入手した後はどう対応したらよいですか?
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モラハラの証拠を入手できたら、離婚を求めたり、慰謝料請求したりできます。このとき、証拠が十分であればあなたの主張に説得力が増します。なお、証拠が十分でなくても、心身に危険が生じるときはただちに別居すること、離婚をあきらめる必要がないことを覚えておいてください。詳しくは「モラハラの証拠を得たあとの対応方法」をご覧ください。