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監護権とは?親権との違いと監護権をとるためのポイント

離婚や別居の際に問題となる「監護権」は、子供の日常的な生活や教育、健康管理といった世話をする権利や義務のことであり、親権の一部として重要な役割を果たします。監護権を勝ち取ることができれば、子供と一緒に暮らし、その成長を見守ることができます。

監護権の決め方は、夫婦の話し合いで決まらないときは離婚調停、離婚裁判で争い、「子の福祉(利益)」の観点から裁判所の判断を仰ぐ流れで進みます。離婚時の親権者が「親権」と「監護権」の双方を取得するケースが多いですが、親権と監護権を分ける例もあります。

今回は、監護権の意味と親権との違い、監護権をとるための具体的な方法やポイントについて、弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 監護権は、子の監護・養育を行う親の権利義務であり、親権の一部となる
  • 離婚時の親権者が監護権を得ることが多いが、そうでない例もある
  • 親権と監護権を分けるケースは、法律関係が複雑になるデメリットがある

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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監護権とは

監護権とは、子供の日常生活の世話をし、適切に育てるための親の権利と義務のことです。民法820条が「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」と定める通り、監護権には、子供の健康・教育・成長を支える様々な要素が含まれます。

監護権の具体的な内容

子の監護権には、例えば次の内容が含まれます。

  1. 住居の決定
    子供がどこで生活するか、居住地を決める権利です。子供にとって安全で安定した生活環境を確保する責任を伴います。
  2. 生活の管理
    監護者には、衣服や食事、日々の生活用品の用意など、子供が快適に生活できるようにする権利と義務があります。
  3. 教育の選択
    子供が通う学校や、教育方針を決定する権利です。例えば、大学に進学させるか、公立か私立のいずれに通わせるかといった判断を行います。
  4. 医療の提供
    監護者には、子供が病気やケガをした際、適切な医療を受けさせる責任があります。

以上の監護権の内容はいずれも、子供が安心して成長できる環境を整えるために必要不可欠なものです。その責任の重さから、監護を怠って子供が危険に晒されると、保護責任者遺棄罪(刑法218条)に該当するおそれがあります。

次章「親権と監護権の違い」の通り、親権は身上監護権と財産管理権を内容としており、監護権は親権の一部となります。また、別居時に監護権をいずれが有し、継続して子の監護をしているかという点が、離婚時の親権の判断においても重要な考慮要素となります。

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監護者の決め方と手続きの流れ

監護権を有するものを「監護者」を呼びます。子の監護者を決める流れは、親権と共通する部分が多く、まずは夫婦で話し合い、決裂する場合には家庭裁判所の手続きによります。ただし、親権が離婚時に必ず指定されるのに対して、監護権は必ずしも離婚と同時でなくても(離婚前や離婚後でも)争いとなる点が異なります。

離婚前の監護権争い

離婚前、親権は父母の共同行使(共同親権)が原則ですが、夫婦が別居した場合、離婚前でも「別居期間中にどちらが子供と暮らし、育てるか」という点で、監護権の帰属が争われます。監護者の指定は、まずは夫婦の話し合いでの解決を目指しますが、「連れ去り別居」が問題となるような別居時の対立が大きいケースでは、法的手続きを要します。

具体的には、家庭裁判所において、子の監護者の指定調停・審判という手続きにより、家庭裁判所の判断を仰ぐことが可能です。裁判所の判断は「子の福祉(利益)」の観点から決まるため、別居後に監護権の指定を得るには、養育環境を整える必要があります。

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離婚時の監護者の指定

離婚時に監護権を定める手続きは、離婚のプロセスと同時に進みます。

離婚の協議を行い、解決しないときは離婚調停、離婚裁判という順に進み、離婚の際に親権や監護権についても判断されます。

監護権は、通常は親権を有する者が一緒に得ることが多いですが、親権と監護権を分けることも可能です。親権と監護権を分けるときは、離婚届には親権者を記載する欄しかないため、必ず離婚協議書を作成して監護者を指定する必要があります。

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離婚後の監護者の変更

離婚時に監護者を定めても、離婚後に変更できます。離婚後の監護・養育の状況から、現在の監護者がふさわしくないと考えるとき、調停や審判を申し立てることで離婚後に監護者を変更することができます。

家庭裁判所では、調査官による調査を経て、「子の福祉(利益)」の観点から、親権者・監護者にふさわしい人物が指定されます。例えば、育児放棄があったり、育児の支障となる病気や健康状態の悪化があったとき、変更が認められる可能性があります。

監護権と親権の違い

次に、監護権と親権の違いについて、わかりやすく解説します。

親権は、未成年の子供に対する親の権利であり、婚姻中は父母の共同親権が原則ですが、離婚時には親権者を決めなければ離婚ができません。親権には、以下の2つの内容が含まれます。

  1. 身上監護権
    子供の日常生活を管理し、直接的に養育する権利と義務。
    1. 身分法上の行為(結婚や養子縁組など)に対する親の同意権
    2. 居所指定権(子供の生活場所を決め、一緒に暮らす権限)
    3. 懲戒権
    4. 職業許可権(未成年者が職業を営むには親の許可を要する)
  2. 財産管理権
    子供の財産を保全し、代わりに法律行為を行う権限。
    1. 子の財産の管理権(現金や預貯金の管理など)
    2. 未成年者の法律行為に同意する権限(同意なくされた法律行為は取消し可能)

親権者は、これらの2つの権利を行使できる反面、未成熟な子供を守り、保護する責任を負います。

監護権は、親権の一部であり、離婚や別居後の子供の生活において非常に重要な役割を果たします。親権争いにおいても、監護権を確保することで子供の日常生活に関わり、精神的なつながりを維持していることが重要となります。

監護者を決めるときの判断基準

両親の協議で解決できないなら、監護権について家庭裁判所の判断を求めます。このとき、監護権を指定する際の裁判所の判断基準を理解しましょう。家庭裁判所は、「子の福祉(利益)」の観点から「どちらの親を監護者とするのが子供にとって幸せか」という基準を重視します。

具体的には、次の事情が考慮要素となります。

  • 子供の年齢
    子供が幼いほど、母親が監護者に指定される傾向にあります。特に乳幼児(0歳〜5歳)の監護は母親がすべきと考えられています。
  • 監護実績
    従来の監護を中心的に担った親が監護権を取得すべきと考えられます。そのため、監護実績を積み上げ、子供と関わった証拠を準備することが重要です(例:育児日記、母子手帳、保育園とのやり取りなど)。
  • 現在の養育環境
    環境が整備されているかどうかも、監護者指定の考慮要素です。現在の監護状況は、調査官によって調査されます。
  • 監護者の監護能力や経済力
    監護者の年齢、健康状態などから、子供を監護する十分な能力があるかどうかが考慮されます。安定した経済力も考慮されますが、仕事による収入だけでなく、養育費も含めて検討されます。
  • 監護のサポート体制
    子の監護を手伝ってくれる親や親族のサポートを得られるかどうかが考慮されます。なお、再婚する可能性があるとき、再婚者が子の養育・監護に協力的か、DVやモラハラ、虐待などの問題がないかを検討します。
  • 子供の意思
    子供の年齢が高いほど、その意思が尊重されます。10歳を超える頃から徐々に反映され、15歳以上では、家庭裁判所で監護者を決めるとき、子の意思確認が義務とされます(家事事件手続法152条2項)。

なお、監護権が取得できないときは、子供と暮らすことはできませんが、親である以上、子供と会って交流することができます。監護者になれなくても、面会交流を求めることで、子供との交流を絶やさないことが大切です(逆に、相手の面会交流に寛容でない人は、監護者として不適切であると判断される可能性があります)。

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監護権をとるために注意すべきポイント

離婚や別居のときに、監護権が争いとなることがあります。監護権を勝ち取った方が子供と一緒に暮らすことができるため、父母のいずれにとっても重要です。監護権は、容易には譲歩できないため、親同士が感情的に対立し、争いが長引く傾向にあります。

以下では、監護権をとるために注意すべきポイントについて解説します。

冷静かつ慎重に行動する

監護権をはじめとした子供に関する争いは、感情的な対立になりやすい傾向にあります。しかし一方で、裁判所での判断は、あくまでも冷静に、証拠に基づいて行われます。そのため、裁判所で、監護権について有利な判断を得たいなら、冷静かつ慎重に行動する必要があります。

少なくとも、相手の欠点や問題点を非難するのではなく、子供の利益を重視して議論すべきです。裁判所も、監護権の争いでは、子供の幸福な未来を重視するため、そのために自分がどのように貢献できるかを積極的にアピールすべきです。

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客観的な証拠を準備する

家庭裁判所に対し、自分が監護者としてふさわしいことを示すには、客観的で信頼性のある証拠を提出するのが有効です。例えば、「監護者を決めるときの判断基準」に基づいて、次の証拠を用意しておきましょう。

  • 子供の生活環境を示す証拠
    • 住居の状況を示す写真(清潔さ、安全性、子供部屋の様子など)
    • 学校や保育園への通いやすさ
    • 周辺地域の治安の良さ
  • 養育の状況を証明する記録
    • 子供の食事の記録
    • 生活習慣を記録した育児日記やカレンダー
    • 学校行事や病院への付き添いなどを示す証拠
  • 経済的基盤を示す証拠
    • 給与明細や源泉徴収票
    • 銀行口座の残高など
    • 雇用契約書(安定した雇用が補償されていること)

物的な証拠のほかに、学校の先生や保育士、近隣住民など、中立的な第三者が日々の親子の状況について証言してくれる場合、証人による証言も有力な証拠となります。

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子供への悪影響は避ける

監護権争いが子供の負担となるとき、裁判所から不利な評価を受けるおそれがあります。何より、子供にとって不利益なため、悪影響を及ぼすような戦い方は避けましょう。

子供の前で相手を批判したり、暴力や虐待につながったりすることは避けるべきです。争いに巻き込まれた子は、不安感が強くなったり、「両親の不仲は自分のせいではないか」といった罪悪感を抱いたりするおそれがあります。「どちらと暮らしたいか」といった無理な選択を迫ることも、子供にとって精神的な負担となります。

監護権と親権を分ける方法とメリット・デメリット

次に、監護権と親権を分ける、例外的なケースについて解説します。

監護権は親権の一部(身上監護権)であり、親権は全てを包含するのが通常ですが、離婚時に、親権と監護権を分けることも可能です。例えば「親権者は父、監護者は母とする」場合です。

監護権と親権を分けるべきケースの具体例

監護権と親権を分けるべきケースには、例えば次の事情があります。

子供の生活環境を維持したい場合

子供が現在の生活環境に馴染み、離婚時に居住地を変えるのが負担なとき、監護権と親権を分けることがあります。例えば、離婚後は母親が親権者となるが、通学の便宜から父親と暮らしており、転校を避けるために父親に監護権を与えるケースがあります。

親権者に同居が難しい事情がある場合

親権者が子供と同居することが難しい場合、監護権と親権を分けることがあります。同居が難しい理由には、次の例があります。

  • 親権者である父親の長期出張が多い場合
  • 親権者である母親が病気療養中である場合
  • 両親の一方が海外居住である場合

この場合、両親がそれぞれの強みを生かし、監護権と親権を分担することで、子供の利益を最大化することができます。

子供の意思を尊重した結果である場合

一定の年齢に達し、成熟した子供が、明確な意思を示した場合、その意向を尊重する方が適切なことが多いです。そして、子供が、監護者となる親と同居したいと強く希望する場合には、その意向に従って親権と監護権を分けることがあります。

経済的な理由がある場合

両親の経済力に差がある場合、財産管理を行う親が親権者となり、日常の養育は他方の親が行うことが合理的な場合があります。例えば、養育費の未払いを回避したり、学費を支払いやすくしたりするために父親を親権者としながら、監護権は母親が持つケースがあります。

監護権と親権を分ける方法

離婚時に監護権と親権を分けるには、離婚の流れに従って次の方法によります。

STEP

協議離婚時に合意する

協議離婚時に親同士で話し合い、親権と監護権を分ける合意をすることができます。

この場合、離婚届には監護者を記載する欄がないので、必ず離婚協議書に監護者を指定して、証拠化しておかなければなりません。

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STEP

離婚調停または審判

親同士で合意できなければ、調停を申し立て、家庭裁判所の判断で監護者を指定することがあります。親権と監護権を分ける解決となるときは、調停調書に記載されます。

離婚調停の流れ」の解説

STEP

離婚裁判における判決

調停が不成立となった場合、離婚裁判(離婚訴訟)における判決で、親権と監護権を分ける判断が下されることがあります。

裁判所は、「子の福祉(利益)」に基づいて決めるので、「分ける方が子供のためになる」と判断される必要があります。次に解説する通り、デメリットも大きいことから、家庭裁判所は基本的に、親権者が包括して監護権も行使すべきであると考えることが多いです。

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監護権と親権を分けるメリット

親権と監護権を分けるメリットは、次の通りです。

  • 離婚に関する争いを短縮できる
    子の親権に争いがあると離婚問題は長期化しがちですが、一方に監護権を与えるという譲歩をすることで、早期円満な離婚を実現できるメリットがあります。
  • 子供の生活環境を安定させる
    親権者とは別に監護者を指定することで、子供が現在の生活環境を維持しやすくなり、混乱を避けて安心して生活を続けることができます。
  • 双方の親が子供に関わりやすくなる
    親権者と監護者が、異なる役割を通じて子供に関与しやすくなります。例えば、経済力のある父親に親権を与えることで子供への愛情を維持し、養育費の未払いを防ぐメリットがあります。

親権について不利な立場と置かれやすい父親側にとって、親権と監護権を分ける方法は、子供との絆を維持する上で有効な方法となります。

監護権と親権を分けるデメリット

親権と監護権を分けるデメリットは、次の通りです。

  1. 親同士の対立が増える可能性がある
    監護権と親権が分かれると、子供の養育や教育方針、財産管理などについて意見が分かれると、離婚後も親同士の争いが続くリスクがあります。
  2. 法律関係が複雑になる
    意思決定の過程が複雑になることで、緊急性の高い場面における決定が遅れるおそれがあります。例えば、子供の身に危険が迫ったとき、医療に関する決定について親権者の同意を即座に得られないケースがあります。
  3. 子供の混乱を招く
    監護者と親権者が別だと、子供がどちらを頼ればよいか迷い、精神的なストレスを感じることがあります。

デメリットが大きいことが予想されるケースでは、「どうしても親権が欲しい」という父親の勝手な考えから親権と監護権を分ける方法を安易に取らないよう注意が必要です。

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監護権についてのよくある質問

最後に、監護権についてのよくある質問に回答しておきます。

不貞行為があっても監護権はとれる?

不貞行為(浮気や不倫)があっても、監護権の取得は可能です。不貞行為そのものが監護権の判断に直接影響することは少なく、「子の福祉(利益)」が重視されます。

ただし、不貞行為があることによって育児放棄された場合や、不貞相手が子供に暴力を振るったり虐待したりする場合、監護権の取得は難しいです。また、一方に不貞があるケースは、夫婦関係が悪化し、感情的な対立を招きやすいため、冷静に交渉するのが難しいときは弁護士を窓口とするのがお勧めです。

監護権を変更するには?

監護権は、一度決まった後でも変更することが可能です。

ただし、話し合いによって監護権を変更しようとしても、現在子供を養育している親が同意しないことがほとんどなので、裁判所に申し立てをし、変更した方が「子の福祉(利益)」にかなうと認められる必要があります。

例えば、監護者が育児放棄や虐待をしていたり、健康を害して育児が困難になったりするときは、変更の必要があります。子供の年齢が上がって意思表示が可能となった場合、その意見が尊重されるケースもあります。

具体的には、子の監護者の指定調停・審判を申し立てます。なお、監護権の変更は、子供の生活に大きく影響するため、容易には認められません。どうしても変更したいなら、相手の養育に問題があることを示す証拠などを準備する必要があります。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、監護権に関する基本的な法律知識を解説しました。

監護権は、子供の成長や将来の生活に直結する重要な権限です。別居や離婚の際には、監護権の内容をよく理解して、どちらの親が取得するべきか、その方法やメリット・デメリットも踏まえて慎重に判断しなければなりません。離婚時には、親権者が監護権も取得するのが通常ですが、親権と分けて帰属させることも可能です。

監護権について大切なポイントは、親の都合ではなく、子供の最善の利益を考慮して決めることです。監護権について争いになるケースでは、弁護士に相談して、事前準備をしながら進めることが重要です。

この解説のポイント
  • 監護権は、子の監護・養育を行う親の権利義務であり、親権の一部となる
  • 離婚時の親権者が監護権を得ることが多いが、そうでない例もある
  • 親権と監護権を分けるケースは、法律関係が複雑になるデメリットがある

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参考解説

親権や監護権は、子供の生活に大きく関わる重要な権利です。親権者や監護者の選定に関する知識を深めることが、子供にとって最適な環境を整える助けとなります。

子供の親権や監護権について、有利な判断を望む場合、「親権・監護権」に関する解説を参考にしてください。

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