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監護権とは?親権との違いと、監護権を勝ちとるためのポイント

監護権とは、子どもを監護する権利のことです。わかりやすくいうと、監護権を勝ちとることができれば、子どもと一緒に暮らし、その成長を見守ることができます。

離婚時に子の親権者を指定するときには、親権者が、親権と監護権をどちらも取得するのが通常です。しかし、親権者とは別に監護者を指定しておくと、子の監護については監護者が行使すると取り決めておくことができます。特に、親権について不利な立場に立たされやすい「男性側の離婚(父親側の離婚)」で、親権と監護権を分けることで、少なくともどちらか一方の獲得を目指すケースがあります。

監護権もまた、親権と同じく、夫婦間の話し合いで決まらないときは離婚調停、離婚訴訟で争われます。この際、家庭裁判所は、「子どもの福祉」の観点から監護権についての判断を行います。

今回は、監護権と親権の違いと、監護権を勝ちとるための方法について、離婚問題にくわしい弁護士が解説します。

この解説でわかること
  • 監護権は、親権の一部の内容であり、子の監護・養育をおこなう権利
  • 離婚時に親権を決めるとき、親権者が監護者となるのが原則
  • 例外的に親権者と監護者を分けるケースがあるが、法律関係が複雑になるなどデメリットもある
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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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親権と監護権の違い

本

離婚時に、夫婦間で特に激しく争われるのが「離婚と子ども」の問題であり、なかでも、子どもを将来育てるのがどちらかという点にかかわる親権・監護権の問題は大きな争点となります。

親権と監護権は、あわせて議論されることが多いですが、厳密には違うもので、それぞれを分けて、一方を母、他方を父に属すると定めることも可能です。そこではじめに、親権、監護権の具体的な内容と、親権と監護権の違いについて解説します。

親権とは

親権と監護権の内容
親権と監護権の内容

親権は、未成年の子に対する親の権利です。両親が婚姻している間は、父母の共同親権となるのが原則ですが(民法818条3項)、未成年の子がいる夫婦の離婚では親権者を決めなければ離婚することができません。

親権は、財産管理権と身上監護権の2つによって成り立っています。親権は「親の権利」ではありますが、これによって未成熟な子どもを守り、保護するという「親の義務」という側面もあります。

財産管理権は、包括的な財産管理権と、法律行為に対する同意権(民法5条)から成っています。

財産管理権とは
  • 包括的な財産管理権
    子どもの財産を管理する権利のことです。
  • 法律行為に対する同意見
    未成年者が契約などの法律行為をするとき、親権者の同意がなければ行えません。同意なくされた法律行為は、取消可能です。

身上監護権は、身分法上の行為に対する親の同意権・代理権(民法737条、775条、787条、804条)、居所指定権(民法821条)、懲戒権(民法822条)、職業許可権(民法823条)を内容とする権利です。

身上監護権とは
  • 身分法上の行為に対する親の同意権・代理権
    子どもが結婚、養子縁組などの身分行為を行うときには、親権者の同意が必要となります。また、嫡出否認や認知の訴えについて親権者が代理して行うことができます。
  • 居所指定権
    子どもの生活する場所を定めることができます。この権利により子どもと一緒に暮らし、育てることができます。
  • 懲戒権
    子どもを叱り、注意したりしつけをしたりする権利です。
  • 職業許可権
    子どもが職業を営むためには親の許可が必要です。

監護権とは

監護権は「子の利益のために子の監護及び教育をする権利」(民法820条)のことであり、具体的には、子どもに関する親の権利のうち、親権に含まれるものの一部のことを指します。前章で解説した親権の内容のうち、子どもの日常的な養育・監護を行う権利ないし義務が、監護権の内容です。

つまり、親権の2つの内容(財産管理権と身上監護権)のうち、身上監護権のみを内容とするのが、ここでいう監護権です。監護権を有する親を、監護者といいます。

なお、監護権は子どもの世話をし、身の安全を守る権利であるため、監護者が監護を怠って子どもの安全が害されたときは、保護責任者遺棄(致死)罪(刑法219条、205条)の責任を問われるおそれがあります。

監護者を決める手続きの流れ

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次に、監護者を決める手続きの流れについて解説します。

監護者を決める手続きは、親権者を決める手続きと共通する部分が多いです。しかし、親権が離婚にともなって問題となるのに対して、監護権はかならずしも離婚と同時でなくても争いとなる点で、争い方が異なることがあります。

離婚前に監護者を決めるには

離婚前は、親権は父母が共同で行使するのが原則です(共同親権)。しかし、夫婦がすでに別居しているとき、離婚前であっても、どちらが子どもと共に暮らし、育てるかという点で、監護権の帰属が問題となります。そのため、離婚前であって、まだすぐには離婚しないときでも、監護権については父母のどちらかに決めておくことができます。

親権と監護権の違い
親権と監護権の違い

監護者の指定は、まずは話し合いで解決しますが、子連れ別居子の連れ去りなどが問題となるような対立の大きいケースでは、家庭裁判所に調停もしくは審判の申立てして、監護者を決めてもらうことができます。これを「監護者指定の調停(審判)」といいます。

別居し、離婚が近づいてきたら、早めに監護権を定めておくことが子どもの養育環境を整え、環境の急変を避けるという点で子どもの福祉にかなうものです。

離婚時に監護者を決めるには

離婚時に監護権を定める手続きは、離婚時の親権に関する争いの流れと同じです。

つまり、夫婦が離婚する流れは、離婚協議・離婚調停・離婚訴訟という順で進みますが、いずれの方法でも親権者を定めなければ離婚できないことから、協議離婚、調停離婚であれば夫婦の合意によって親権者を定め(民法819条1項)、裁判離婚であれば裁判所の判断によって親権者を決定します(民法819条2項)。

監護者を定める手続きについても同様に、まずは夫婦間の話し合いをし、合意に至るときには離婚協議書に記載することで決定します(なお、離婚届に監護者を記載する欄がないため、必ず離婚協議書を作成し、証拠化すること)。

話し合いで決まらないとき、家庭裁判所に離婚調停を申立て、この中で、離婚とともに監護者についても争うことができます。調停が不成立に終わるときには、最後に、離婚裁判を提起し、その手続中でも離婚とともに監護者について裁判所の判決で決定してもらうことができます。

離婚後に監護者を変更するには

離婚時に親権者ないし監護者を定めたときにも、調停ないし審判の申立てをすることで離婚後に変更できます。

家庭裁判所における調停では、家庭裁判所調査官による調査などを経て、子どもの福祉の観点から、子どもの利益に即して親権者の変更ないし監護者の指定についての判断が下されます。

親権を得た親が育児を放棄している、育児が困難な病気にかかったなどの事情で監護能力がなくなってしまったなどのケースでは、親権者の変更や監護者の指定が認められます。

なお、親権者は離婚時にかならず定めますが、監護者は(親権者が親権・監護権のいずれも行使する場合のように)離婚時に定めていないこともあります。監護者を定めなかったときでも、離婚後に「親権者が監護権を有することが不適切だ」という考えに至ったときは、監護者の指定の調停(審判)を申し立てることができます。

監護者を決めるときの判断基準

両親の話し合いでは解決できず、監護権について家庭裁判所の判断を求めるときには、裁判所が監護権を指定するときの判断基準について理解しておくのが重要なポイントです。

家庭裁判所が行う監護権の判断は、子どもの利益と子どもの福祉の観点から「どちらの親を監護者とするのが子どもにとって幸せか」という基準で行われる点で、親権の判断と同じように考えることができます。

家庭裁判所が監護者を指定する際に考慮する判断基準には、主に次のようなものがあります。

  • 子どもの年齢
    子どもが幼いほど監護権は母親に属するとされる傾向にあります。特に乳幼児(0〜5歳)の監護は母親がすべき考えられています。
  • 従来の監護実績・子への愛情
    これまで子どもの監護を中心的に行っていた親が監護権を取得すべきと考えられます。そのため、監護実績を十分積み上げ、子どもとの関わりについて証拠(育児日記、母子手帳、保育園とのやりとりなど)により積極的に立証することが重要。
  • 現在の養育環境
    現在の養育環境が整備されており、問題がないかどうかも、家庭裁判所が監護権について判断する際の考慮要素となります。現在の子どもの監護状況について家庭裁判所調査官による調査がなされます。
  • 監護者の監護能力
    親の年齢、精神状態、健康状態などから、子どもを監護するための能力を十分に有しているかが考慮されます。
  • 監護者の経済力
    親の経済力が、子どもを監護するのに十分安定しているかが考慮されます。なお、仕事による収入だけでなく養育費による収入も考慮されます。
  • 適切な監護補助者の有無
    子の監護を代わりに手伝ってくれる人(親や親族など)がいるかどうかも、監護者を指定するときの判断基準となります。
  • 再婚する可能性の有無
    再婚する可能性があるかどうかが、監護者指定の判断基準となることがあります。再婚者が養育・監護に協力的なこともあれば、DV・モラハラ気質であることもあるので、プラスにもマイナスにもはたらく可能性があります。
  • 子どもの意思
    子の年齢が高くになるにつれ、子の意思が考慮されます。10歳を超える頃から徐々に反映され、15歳以上では、家庭裁判所で監護者を決めるとき、子の意思確認が義務(家事手続法152条2項)とされ、子の意思が尊重されます。
  • 非監護親の面会交流が可能か
    子どもの福祉の観点からも、両親と定期的に会うことが健全な発育にとって重要です。

なお、どうしても監護権が取得できないとき、子どもと暮らすことはできませんが、親である以上子どもに会うことができます。そのため、監護者になれなかったとしても、面会交流によって子どもとの交流を途絶えさせないことが大切です。

監護権と親権とを分ける方法と、メリット・デメリット

メリット

監護権は、親権のうちの一部(身上監護権)のことを意味しており、通常は、親権者があわせて行使します。しかし、例外的に、親権者と監護者が別々となることがあります。例えば、「親権者は母親だが、監護権は父親が行使する」という例です。

親権と監護権を分けるケースには例えば次の事情があります。

  • 親権者となる父親がしばらく出張で育児ができない
  • 父親は経済力があり親権者としてふさわしいが、乳児を育てるため母親の監護が必要
  • 養育費の不払いを避けるため財産管理を父親に任せるが、養育は母親が行う
  • 子の取り合いで離婚争いが長期化し、子どもの養育環境や教育に悪影響である

親権と監護権を分けたとき、実際に子どもと一緒に暮らせるのは監護権を持つほうの親(監護者)です。そのため、親権について不利な立場となりやすい父親側にとって、親権と監護権を分けて子どもを引きとる方法は、とても有効に見えます。しかし、実際にはデメリットも多く存在します。

監護権と親権とを分ける方法

親権と監護権とを分けるためには、協議離婚をするときには、将来の争いを避けるために離婚協議書にかならずそのことを記載しておくようにします。離婚届には親権者を書く欄はありますが監護者を記載する欄はないため、離婚協議書などで証拠化しておかなければ、監護権について合意した証拠が残りません。

離婚調停による話し合いの結果、親権と監護権を分ける解決となるときには、同じく、調停調書にその旨を記載します。

なお、次に解説するデメリットが大きいことから、家庭裁判所は基本的に親権と監護権を同一の親に帰属させるべきと考えており、離婚裁判の判決では、親権と監護権を分ける解決はほとんどとられません。

メリット

親権と監護権を分ける解決をするときにも、離婚後の子育ては母親が行うことが多いです。つまりこのようなとき、親権者が父親、監護者が母親となることとなります。父親に親権を与えることで、父親の子どもへの愛情を維持することができ、養育費の未払いを回避するメリットが期待できます。

また、子の親権に争いのある離婚問題は長期化しがちであり、離婚協議、離婚調停では解決できずに離婚訴訟となる可能性の高いケースといえます。このような紛争の激化を避け、互いの情報による中間的な解決とすることで早期円満に離婚できるというメリットがあります。

離婚のトラブルが長引かず、早期解決できることは、子どもの生活の安定につながります。子どもにしっかり説明することで両親それぞれの愛情を感じることができ、子どもを安心させることもできます。そのため、夫婦にとってはもちろんのこと、子どもにとっても大きな利益があります。

デメリット

親権と監護権は、同一の親に属するほうが子どもの利益になると考えられています。

親権と監護権とを分けると、法律関係が複雑になり、特に子どもの身に危険が迫ったときなどに、親権者の同意(財産管理権に基づく同意)が必要となって即座の対処が難しくなってしまうというデメリットがあります。

特に、子どもが事故などのトラブルに巻き込まれ、損害賠償請求などの対応が必要となったり、子どもの財産を売却したり相続を受けたりといったとき、別れた夫婦が連絡を取り合わなければならないという煩雑さがあります。

デメリットが大きいことが容易に想定できるケースでは、「どうしても親権をとりたい」という父親の勝手な考えから親権と監護権を分けるという方法を便宜的にとってしまわないよう注意が必要です。

親権をとることが難しいとされる父親側(男性側)においてできる努力は、「父親側が親権をとるためのポイント」も参照ください。

まとめ

今回は、「監護権」の問題を中心に、その権利の内容、親権との違いや、親権と分けて監護権を取得する方法のメリット・デメリットなどの法律知識について解説しました。

通常は、監護権もまた、親権と同様に親権者に属することとなりますが、例外的に、離婚の話し合いを円滑に解決するため、親権と監護権とを分けて、父母に別々に属させることがあります。しかし、このような解決は、法的関係を複雑化し、かえって子どものためにならないおそれがあります。

親権と監護権を分ける方法は、離婚問題を早く解決できますが、問題の先延ばしにすぎず、離婚後にもトラブルを持ち越してしまうおそれがあります。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚問題を数多く取り扱い、子どものからむ深刻なケースについて豊富な実績があります。

子の親権・監護権をはじめ、離婚問題にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

離婚問題のよくある質問

監護権とは、どんな権利ですか?

監護権とは、親権のうちの一部であり、子どもの監護・養育を実際におこなう権利のことです。監護権を有する親を監護者といい、子どもと一緒に住んで育児や教育をするのは、監護者が行います。もっと詳しく知りたい方は「親権と監護権の違い」をご覧ください。

監護権はどのように決めますか?

監護権もまた親権と同じように、最初は夫婦の話し合いをし、決裂したときには離婚調停、離婚訴訟で決めるようにします。ただし、監護権は、離婚と同時でなくても問題となることがあるため、その場合には、監護権を指定するための調停(審判)を申し立てます。詳しくは「監護者を決める手続きの流れ」をご覧ください。

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