ご相談予約をお待ちしております。

離婚後に財産分与を請求する方法と、請求できる期限(離婚後2年)

財産分与というと、離婚時に話し合うケースが多いですが、離婚後であっても財産分与を請求することはできます。財産分与は、婚姻期間中の財産の清算ですが、法律上、離婚前に限定されているわけではないからです。

しかし、民法の定めによって、離婚後2年を経過してしまうと、その後は財産分与を請求できなくなります。また、離婚時に「財産分与をしない」と合意してしまったときにも、離婚後の財産分与を求めることはできません。

一方で、たとえ2年を経過してしまっても、相手が悪質な財産隠しをしているときなどは、財産分与を勝ちとれることもあるので、あきらめてはいけません。

今回は、財産分与を請求できる期限と、期限をすぎても財産分与請求する方法、注意点について、離婚問題にくわしい弁護士が解説します。

この解説でわかること
  • 離婚後に財産分与を求めるとき、期限は2年間
  • 離婚時に財産分与について取り決めしなかったとき、かならず2年以内に調停を申し立てる
  • 相手が話し合いに応じるときや、財産隠しがあるとき、期限後でも財産分与を請求できる

なお、財産分与について、もっと深く知りたい方は、次のまとめ解説を参考にしてください。

まとめ 財産分与について離婚時に知っておきたい全知識【弁護士解説】

目次(クリックで移動)

解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

\相談ご予約受付中です/

離婚後も財産分与できる!

OK

財産分与とは、夫婦の公平の観点から、婚姻期間中に夫婦が協力してつくりあげた財産について折半することを内容とする手続きです。

財産分与の原則的なルールをわかりやすくまとめると次のとおりです(詳細はリンク先で解説しています)。

「早く縁を切りたい」と思うあまりに、財産分与や慰謝料などのお金のことをあまり話し合わず、離婚届を出してしまうことがあります。争いのある離婚条件について、こだわりを少なくしたほうが、早期に離婚を成立させられるのはたしかです。

このようなときでも、離婚後に財産分与請求ができ、基本的なルールや分け方は、離婚前と変わりありません。財産分与を定める民法768条1項は「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」とし、離婚時や離婚前に請求しなければならないとは定めていません。

離婚後に財産分与を請求できる期限(離婚後2年)

時計

財産分与の請求には、法律上の期限があります。民法に定められた財産分与の期限は、離婚から2年間です(民法768条2項但書)。

民法768条(財産分与)

1. 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2. 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3. 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

民法(e-Gov法令検索)

離婚の時点では、さまざまな事情で早く離婚をしたいとか、強く離婚を要求されてやむなく応じてしまったなど、財産分与について満足に話し合いできていないケースもあります。

しかし、離婚後の財産分与が可能とはいっても、いつまでも放置することを許してしまっては、請求を受ける側の法的安定を害することとなります。長期間放置され「もはや財産分与は求めてこないだろう」と思って財産を減らしてしまった後で請求を受けると困ったことになってしまうからです。

そのため、民法では、財産分与を請求する側、請求される側それぞれの保護のバランスをとって、家庭裁判所の調停で財産分与を請求できるのは、離婚後2年間までという期限を設けているのです。

離婚後の財産分与の期限は2年
離婚後の財産分与の期限は2年

この期限は「時効」ではなく「除斥期間」と考えられていることから、内容証明で請求しても期間の進行を止めることはできず、2年以内に必ず調停の申立までしなければなりません。

離婚時に問題となる慰謝料請求(不貞・DVなど)もまた、離婚後も請求できますが、こちらも期限があります。

慰謝料請求は、不法行為(民法709条)を理由とするため、離婚の成立から3年以内に請求する必要があります(生命・身体に関わる不法行為については5年)。

期限(離婚後2年)を過ぎても財産分与を請求できるケース

案内する女性

財産分与を家庭裁判所に求めることができるのは、離婚後2年という期限があることを解説しました。

しかし、この原則には例外があります。例外的に、離婚後2年の期限を過ぎても財産分与を請求できるケースは、次の2つです。

相手が話し合いに応じてくれる場合

離婚後2年という期間は、家庭裁判所に財産分与を求めて調停をすることができる期限です。そのため、当事者同士で財産分与の話し合いをすることには、期間の期限はまったくありません。

そのため、2年を過ぎた後でも、財産分与の話し合いを行い、相手が一定の財産を分与してくれるのであれば、財産分与を獲得することができます。

相手が財産隠しをしていた場合

離婚後2年を過ぎていたときでも、相手が財産を不当に隠していたことが理由で、財産分与請求を妨げられていたときには、例外的にその後も財産分与請求をすることができます。

相手が不当に財産を隠していたにもかかわらず、2年間の期限が過ぎたら請求できないとしたら、悪質な相手にとっては「2年間逃げたらOK」ということになってしまうからです。

裁判例では、このような悪質な財産隠しの例で、形式的には財産分与を請求できなくなったとしても、不法行為を理由とする損害賠償請求を認めることによって救済した事例(浦和地裁川越支部平成元年9月13日判決)があります。この裁判例では、次のように判断されています。

…(略)…国債中金200万円分については夫婦の共有財産に属しており、したがって、離婚に際しては財産分与の協議対象とすべき財産であったことになる。しかるに原告は被告に対しそれを秘していたことから、被告は原告に対する共有持分権ないしは財産分与請求権の行使をする機会を失ってしまったことになる。そうすると、原告の右行為は、被告に対する共有持分権侵害の不法行為ということになる。

三 右認定の事実からすると、被告の反訴請求は、原告に対し金200万円の2分の1である100万円の支払を求める限度で正当ということになる。

同様に、相手の悪質な行為によって財産を把握できなかったり、財産について誤った認識をもったりした結果、財産分与請求権の放棄に同意してしまった場合や、脅されて財産分与の放棄を強要された場合にも、期限を過ぎた後でも救済される余地があります。

浦和地裁川越支部平成元年9月13日判決

離婚後に財産分与を請求するときの注意点

注意

最後に、離婚後に財産分与を請求するときの注意点について、弁護士が解説します。注意点は、次の5点です。

原則は離婚前に請求する

離婚後も財産分与の請求ができると説明しましたが、やはり原則的には、離婚前に請求しておくのがおすすめなのは当然です。これは、離婚前に請求したほうがメリットが大きいからです。

離婚前の段階では、相手が強く離婚を求めているとき、早期に離婚に応じることとの引き換えで、財産分与についてより多くの分与をしてくれる可能性があります。逆に、分与を与える側でも、相手が「早く別れたい」と考えているとき、少ない分与額で納得してくれる可能性があります。

このように、離婚届をしてしまう前に、離婚と同時に解決するほうが、交渉のカードが多く、財産分与の交渉で有利に立ち回ることが期待できます。

離婚前後での考え方の違い
離婚前後での考え方の違い

また、万が一、相手の財産分与請求が不当であり、どうしても応じたくないときには、離婚自体にも応じず、一旦距離を置くという選択をすることも、離婚前であれば可能です。

期限前に必ず調停を申し立てる

離婚後の財産分与の争いでは、必ず離婚後2年の期限内に調停を申し立てるようにしてください。

離婚後の財産分与の期限は、「その期限までに調停申し立てをしなければならない」という意味があるからです。

財産分与の話し合いがスムーズに進めばよいですが、離婚後しばらく経っていると、もはや相手は財産分与の話し合いになど気が向かないおそれがあります。話し合いで解決しないとき、離婚後の財産分与請求では、「財産分与請求調停」を申し立てて争うこととなりますが、調停までたどりつくためには一定の時間を要してしまいます。

このとき、財産分与の期限は「除斥期間」であり中断がないため、この期限内に内容証明で請求しても期間の進行を止めることができません。財産分与の調停を、必ず2年以内に申し立てて置かなければ、財産分与がもらえなくなってしまいます。

調停の申立てを離婚から2年以内にすれば、実際に調停や審判による解決は2年を過ぎてからでも問題ありません。

財産分与を請求しない合意をしたら、離婚後に請求できない

離婚時に、財産分与の請求をしないという合意をしていたときには、離婚後に財産分与を求めることができません。離婚協議書を作成しているときには、協議書の内容をよく検討していただく必要があります。

離婚後の財産分与請求ができないような合意には、次のものがあります(「財産分与をしない」と明記していない場合にも離婚後の財産分与請求ができないことがあるため、注意が必要です)。

  • 離婚前の夫婦財産契約で、財産分与をしないことを合意した
  • 離婚時の離婚協議書で「財産分与は請求しない」と合意した
  • 離婚時の離婚協議書で「財産分与請求権を放棄する」と合意した
  • 離婚時に清算条項(当事者間に一切の債権債務がない)つきの合意書を締結した

これらの離婚後の財産分与請求を妨げるような合意は、書面になっていなくても、口頭やメールで行ったときも有効です。ただし、とても重要な意思表示なので、書面化していないときには、その意思表示はまだ確定的ではなかった、もしくは、相手にだまされたり相手の不当な圧力に屈してしてしまったと反論できる場合もあります。

このような事情があるとき、一旦はしてしまった「離婚後の財産分与はしない」という意思表示も、次の理由により取り消し可能と主張して争うことができます。

  • 錯誤(民法95条)
    重要な内容を理解せずに合意してしまったとき
  • 強迫(民法96条)
    相手に脅されて合意してしまったとき
  • 詐欺(民法96条)
    相手にだまされて合意してしまったとき

財産分与の基準時(別居時)は変わらない

財産分与の請求をするとき、相手の財産を調査し、基準時時点の財産を確定しておくことが必要です。

財産分与の対象財産の確定をする基準時は、別居時が原則とされています。別居後は、夫婦の財産をつくりあげることについての協力関係がなくなると考えられるからです。そして、このことは、離婚後の財産分与の請求をするときでも同じです。

対象財産の「確定」の基準時
対象財産の「確定」の基準時

つまり、財産分与の請求を離婚後しばらくたったあとに行ったとしても、「いつの財産をわけるか」という基準時については、別居時を基準とするわけです。そのため、離婚後に財産分与請求をするときは、相当過去の時点の財産を把握しておかなければならないおそれがあるため、できるだけ早く財産の調査を進め、記録をとっておかなければなりません。

特に、離婚後の財産分与では、相手が協力的に財産開示に応じてくれる可能性が非常に少ないです。このようなとき、弁護士会照会や調査嘱託といった法的手続きを検討するようにしてください。

財産の評価が争いとなるおそれ

前章で解説した「財産分与の対象財産確定の基準時」とは別に、「対象財産の評価の基準時」は、財産分与をするときを基準とするとされています。

対象財産の「評価」の基準時
対象財産の「評価」の基準時

これは、不動産や株式など、評価が増減する財産を分けるときには、その分けるときの価値を参照することが公平だと考えられているからです。

しかし、離婚後しばらくたってから財産分与請求をするとき、放置されていたことによって価値が大幅に上がった場合など、価値評価を適正に行わなければ、かえって夫婦間の公平感をそこなってしまうことがあります。

まとめ

今回は、離婚後の財産分与について解説しました。財産分与を請求したい方はもちろん、すでに離婚して、財産分与を受けられるかどうか不安な方も、ぜひ理解しておいてください。

離婚後でも財産分与請求をすることができますが、離婚後2年という期限があり、期限後に請求することは原則としてできません。調停の申立てを、かならず2年以内に進めるため、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。

また、離婚後にある程度の期間を経てから財産分与請求をすると、財産の内容が変わっていたり、評価額が増減していたりすることがあり、新たなトラブルが起こる可能性もあります。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚と財産分与の問題について、多数の解決実績があります。

離婚後の財産分与について、機会を逸してしまわないよう、お悩みの方は、ぜひお早めにご相談ください。

財産分与のよくある質問

離婚後でも、財産分与を請求できますか?

離婚後でも財産分与は請求できますが、調停によって財産分与を得ようとするときには、離婚後2年以内に調停を申し立てなければなりません。もっと詳しく知りたい方は「離婚後に財産分与を請求できる期限(離婚後2年)」をご覧ください。

離婚後2年の期限を過ぎてしまってから、財産分与を求める方法はありますか?

離婚後2年の期限は、あくまで調停によって財産分与を得ようとするときの期限なので、相手が話し合いに応じてくれるときには、期限経過後も財産分与を得ることができます。また、相手が悪質な財産隠しをしたときは、不法行為として請求できるケースもあります。詳しくは「期限(離婚後2年)を過ぎても財産分与を請求できるケース」をご覧ください。

目次(クリックで移動)
閉じる