復縁したい人が知っておいてほしい法律知識をすべてまとめて解説します。
配偶者(夫または妻)から離婚を要求されると、離婚までの流れは離婚協議から離婚調停、離婚訴訟と進みます。この流れのなかでも早いうちであれば、仲直りして復縁できる可能性は十分にあります。当事務所に相談いただく事例でも、早めに復縁の努力をしたことで、協議中、調停中などのタイミングで復縁を実現した解決実績があります。
相手が離婚を求め、ましてや調停を申し立てたり、訴訟を起こしたりしたとき、離婚に向けた相当強い覚悟があると理解しなければなりません。そのため、離婚を拒否し、復縁を求める戦いは、困難な道です。
復縁できる可能性を少しでも上げるためにも、離婚についての法律知識を十分に得ておく必要があります。
復縁を求めるときの心構え
まず、復縁を求める戦いは、相当困難な道だと理解していただいた上で、それでもなお進むときには、心構えが重要です。
相手(夫または妻)が離婚を求めてきている覚悟を上回るほどの強い覚悟をもってはじめて、復縁に成功することができるのです。ここでは、はじめに理解しておいてほしい復縁の基本的な心構えを解説します。
復縁意思はできるだけ早く伝える
相手が離婚を求めてきたとき、離婚を回避し、復縁したいならば、その意思をできるだけ早く相手に伝えることが大切です。
離婚を求める側の戦い方には、離婚協議、離婚調停、離婚訴訟という順序があります。これは、早期解決がお互いのためであるとともに、「調停前置主義」というルールがあるからです。あなたが離婚を拒否していることが明らかになれば、相手は次の段階へ進めていく動きをするでしょう。そして、離婚を明確に拒否しなくても、なにも回答せずに放置していれば、すぐに次の段階(例えば、協議から調停)へと進んでいってしまうことが予想されます。
さらに次のような点でも、時間が経過してしまうことは、復縁を求める方にとって「自分の意思を直接伝えることがますます難しくなる」ことを意味し、復縁へのハードルが上がってしまいます。
別居されてしまう
相手が家を出て別居するのに、あなたの同意は不要です。別居されてしまうと、毎日顔をあわせて話をすることはできず、あなたの復縁意思はますますうまく伝わらなくなります。
弁護士を依頼されてしまう
弁護士を依頼され、話し合いの窓口として指定されると、その後に直接連絡をとることができず、復縁の意思を効果的に伝えられなくなってしまいます。
調停・訴訟を申し立てられてしまう
離婚要求に回答しないまま時間が経ってしまうと、「離婚に応じる意思はない」ということが明らかになってしまい、調停・訴訟の申立てへ進まれてしまいます。
相手の準備が進むほど、相手は時間とお金を投下することとなり、後には引けなくなります。
相手の気持ちを理解する
復縁を求めるときには、あなたの独りよがりになってはいけません。まずは相手の気持ちを理解した上で、復縁交渉することが有効な手となります。復縁が成功したときには、将来も家族として一緒に生活を続けるわけですから、あなたの気持ちの押し付けが強すぎると、結局はうまくいかなくなってしまいます。
特に、相手があなたのDV・モラハラを指摘しているときには、復縁の気持ちを強く押し付けすぎると、相手から「結局変わっていない」、「反省がない」、「復縁しても同じことのくり返しだろう」という失望を抱かれてしまいます。
相手の気持ちを理解して復縁交渉を進め、行き過ぎてしまわないようにするためには、次のような禁止行為を頭に入れて行動しましょう。
- 相手の言い分を一方的に否定しない
- 暴言を吐いたり怒鳴ったりしない
- 威圧的な態度をとらない
- 感情的なメール、LINEや、長文のメッセージを送らない
- 返事がないのに何度もくり返し連絡をとらない
- 相手が弁護士を窓口にするときは直接連絡をとらない
復縁できるケースと、その理由
離婚を要求されてしまったときにも、すみやかに復縁交渉を進めるべきなのは、実際に復縁できる可能性のあるケースも少なくないからです。
相手が弁護士に依頼し、離婚協議、離婚調停、離婚訴訟と進んでしまうと、「復縁はもうあきらめたほうがよいのではないか」と絶望する人もいます。しかし、次に解説するケースにあてはまるとき、まだ復縁をあきらめてしまうのは早いかもしれません。
離婚を求める側にも悩みがある
離婚調停、離婚訴訟などの法的手続きに発展する時点では、もはや「離婚したい」という気持ちが十分固まっている人も多いです。しかし、まだ離婚の交渉をはじめたばかりのタイミングだと、離婚を求める側にも悩み、不安があることも少なくありません。
離婚を求める側によくある悩みには、次のようなものがあります。
- 経済的な悩み
(例)離婚してしまったら将来の収入が減ってしまうのではないか、仕事が見つかるまでどうやって生活するのか、ローンは払ってもらえるのかなど - 子どもの悩み
(例)1人で子育てできるのか、片親だと子どもの発育によくないのではないか、養育費がきちんと払ってもらえるのだろうかなど - 社会的な不安
(例)離婚したことがみんなにバレて恥ずかしい思いをするのではないか、親に怒られるのではないか、会社内でどう発表したらよいのかなど
特に、相手がまだ弁護士を依頼していないのであれば、復縁のチャンスは十分ありますから、あきらめてはいけません。
一時の感情で強く離婚を求めていたとしても、別居して頭を冷やして考えた結果、やり直す気持ちがわくケースもあります。離婚を求めている側にも悩み、迷いがありそうなときには、復縁をあきらめてしまうのは時期尚早です。
子どもへの愛情が残っている
離婚して他人になっても、子どもとの親子関係はなくなりません。そして、子どもの健全な発育にとって、両親のいずれからも愛情を受けることがとても重要です。
そのため、離婚を求める側に、子どもへの愛情が残っているときは、子どもが復縁のきっかけとなることがよくあります。
子どもをきっかけに復縁を求めるとき、重要なのは、すべてのことを「子どものために」考えることです。「子どものために」と建前をいいながら、実際は自分の主張を押し付けるだけになってしまわないよう、第三者の客観的な意見を聞きながら進めるのが復縁に成功するポイントです。
離婚するときに考えなければならない「離婚と子ども」の問題には、親権・監護権、面会交流、養育費など多くの問題があります。これらの条件を話し合ううちに「子どものためにも離婚しないほうがよいのではないか」と説得し、復縁に成功するケースがあります。
合意のない離婚には時間がかかる
相手が離婚をどれほど強く求めても、あなたが復縁を求めているとき、「合意のない離婚」を実現するためには相当な時間がかかります。離婚は、話し合いにより解決しないとき、離婚調停、離婚訴訟と進みます。あなたが復縁を求め続けるなら、離婚調停は不成立で終了し、離婚訴訟でなければ強制的に離婚することはできません。
すみやかに進めたとしても、離婚の話し合いに1〜2ヶ月、離婚調停に2〜6ヶ月、離婚訴訟に3〜8ヶ月ほどはかかることが多いです。この期間を使って、復縁を求める側では、復縁の意思や条件を伝え続けることができます。
離婚調停では、調停委員が間に入って、夫婦双方の意見を仲介してくれます。これまで面と向かっては言いづらかったことも、調停委員をはさんで率直に伝えあうことによって問題が解消され、復縁につながることも期待できます。
破綻の責任が相手にある可能性
不貞やDVのように、離婚の責任を有する配偶者は、「有責配偶者」といいます。有責配偶者の側から、相手の合意なく一方的に離婚することは、裁判例の実務ではとても難しいです。
あなたが復縁を求めているときで、相手に離婚についての責任があると考えられるときには、粘り強く交渉し、復縁する努力をしておくことが功を奏します。
有責配偶者の側から離婚するためには、少なくとも8〜10年以上の別居期間が必要とされています。そのため、あなたが離婚を拒否し、復縁を求めているときは、それだけの長期間も離婚することができないことを意味します(その上、収入が高いときは、その期間中の婚姻費用を支払わなければなりません)。
「不倫をしたのに離婚を求めてくるなんて、納得できない」といった不満を抱かないよう、不貞をされてしまったときは、すぐに誓約書を書かせる方法により、その責任を認めさせ、将来のための有利な証拠として活用してください。
復縁するための離婚調停のポイント
離婚調停は、あくまでも話し合いの延長線にあり、夫婦の一方が離婚に反対したときは、離婚を強要することができません。
相手が調停を申し立ててきてしまったときでも、復縁を目指す側では、離婚調停をうまく活用することで、復縁できる可能性を高めることができます。また、復縁を求める側から、円満調停の申立てをしたほうがよいケースもあります。
ここでは、復縁するための離婚調停のポイントについて解説します。
復縁するときの調停の目的を理解する
離婚調停では、話し合いの延長でありながら、調停委員、裁判官という第三者が関与してくれます。
調停では、調停委員をまじえ、時間をかけてよく議論することが大切です。調停が不成立で終了してしまうと、離婚訴訟を起こされ、さらに復縁が難しくなってしまうからです。離婚調停での希望のつたえ方には、細心の注意を払わなければなりません。
復縁のために調停をうまく活用するには、離婚調停で復縁したい側が達成したい次の2つの目的を理解しておいてください。
相手に離婚を思いとどまってもらう
離婚を強く求めてくる相手にはたらきかけ、離婚を思いとどまってもらい、復縁してもよいという気持ちを抱いてもらうことが最大の目的です。
調停を不成立に終わらせない
復縁を求めたいからといって、強くつたえすぎると、まったく合意の余地がないとみられ、早めに調停不成立で終了されてしまうおそれがあります。
離婚調停当日の対応の注意点
復縁を目指すとき、相手が離婚を求めてきた調停に参加したくないという気持ちがあるでしょう。しかし、復縁に向けた気持ちを伝えるチャンスととらえ、かならず調停期日には参加するようにしてください。
復縁したい側での調停当日の対応では、調停委員を見方につけられるかどうかが勝負となります。
調停委員は、離婚調停を申し立てられたとき、離婚に向けた調整をする役割を担っています。このことを十分に理解して、自分の主張を一方的に伝えすぎて、調停委員を敵にしてしまわないよう注意しなければなりません。調停委員も人間ですから、あなたに好意的な印象を抱かないとき、相手にも良い伝え方はしないと予想されます。
調停委員がまったく味方になってくれず、離婚の話を早く進めようとしてくるとき、こちらから円満調停を申し立てる方法が有効です。
復縁するための離婚訴訟のポイント
離婚調停が不成立になったときには、離婚を求める側が、離婚訴訟を起こすかどうかを選択することになります。
離婚訴訟を起こされてしまったときには、対立は決定的であり、また、相手の離婚に向けた覚悟もとても強いものです。そのため、復縁に向かう道はより困難となってしまいますが、離婚訴訟で最終的に負けてしまうまで、あきらめてはいけません。
調停不成立となったら行うべきこと
離婚調停で話し合っても、夫婦が合意に至らないときには、調停不成立となり、離婚調停は終了します。そのため、あなたが復縁を求め、相手が譲らないとき、不成立となる可能性は高いといえます。
調停の終了後、離婚訴訟を起こすかどうかは離婚したい側が決めますが、復縁したい側では、このとき、離婚訴訟を起こされないようにするため次の努力をすることが重要です。
- 明確な離婚原因がなく、離婚訴訟で勝ち目がないことを主張しておく
- 相手に有責性があり、離婚訴訟で勝ち目がないことを主張しておく
- 離婚訴訟となっても、復縁を強く主張しつづけ、譲歩の余地はないことを伝えておく
- 離婚することとなったときでも、離婚条件について徹底的に争うことを伝えておく
そして、このような連絡をしておくことにより、相手が、離婚するかどうかを迷っている場合や、離婚条件についてこだわりがある場合、不貞などの有責性があり勝ち目が薄そうなときなどに、離婚訴訟をすぐには申し立ててこないことが期待できます。
離婚調停が終わってから離婚訴訟までに一定の期間がおかれたとき、一旦これまで依頼していた弁護士が解任され、直接の交渉を再開できる可能性もあります。
離婚訴訟で復縁するには「離婚拒否」が重要
離婚訴訟では、法律にしたがって、離婚が認められるかどうかについての最終判断が下されます。
このとき、裁判所の判決によって離婚が認められるかどうかは、民法に定められた次の「法定離婚原因」があるかどうかが重要となります。
民法770条1項
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
民法(e-Gov法令検索)
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
離婚訴訟を申し立ててきた時点で、相手の離婚に向けた思いはとても強いと考えられ、訴訟中に話し合いで復縁を実現できる可能性は、相当低いものと考えられます。そのため、少しでも復縁する気持ちになってもらうためには時間的な余裕が必要です。
離婚訴訟で、民法に定められた離婚原因がないことを主張することで、離婚を拒否し、離婚の判決が下されないよう戦うことが重要なポイントとなります。
復縁したい人が依頼すべき弁護士とは
弁護士を依頼するというと、離婚を求める側だけのことと思っている方も多いかもしれませんが、復縁を求める側でも、弁護士に依頼したほうが結果的にうまく進むケースも多く存在します。当事務所では、復縁を求めて交渉することを依頼いただき、実際に復縁に成功した解決実績があります。
最後に、復縁したい人でも弁護士に依頼すべき理由と、弁護士の選び方を解説します。
復縁を求めるときでも弁護士を依頼すべき理由
復縁を目指す方針のとき、まずは夫婦でしっかり話し合いを行えれば一番なのですが、そのようなことがもはや難しいケースも多くあります。
離婚を求める側が、速やかな離婚を求めているときには、離婚調停、離婚訴訟といった法的手続きに進んでいってしまいます。法的手続きを有利に進めるためには、離婚問題の経験豊富な弁護士に依頼し、付き添ってもらうことが有効です。
復縁したいからといって、自分の考えだけ押し付けてしまっては、かえって相手から反発を招いてしまいます。
弁護士から客観的なアドバイスを受けることで冷静に対応できれば、復縁の可能性を上げることができます。復縁を求める側でも、弁護士を依頼することはマイナスではありません。
復縁を求めるときの弁護士の選び方
復縁を求めるときでも弁護士を依頼すべきケースがあることを解説しました。しかし、「復縁を目指す」という目的が弁護士としっかり共有できていないと、弁護士を依頼したことでかえって離婚に進んでしまう危険もあります。
復縁問題を依頼するのに適した弁護士かは、今回の解説を参考に、初回の法律相談をすることで理解いただけます。
復縁を求めて戦うときには、もし復縁に成功したときには将来ずっと続くことですし、相手が離婚をあきらめないときには調停、訴訟へと進んでいく長い戦いとなります。長い期間を戦い抜くパートナーとなることから、単に知識があるというだけでなく、人間的にも合った弁護士を選ぶようにしてください。
復縁を求めるときの弁護士を選ぶときには、「離婚問題を得意とする弁護士」というだけでなく、次の点からしっかり検討する必要があります。
離婚問題の経験が豊富
復縁を目指す場合とは、逆に言うと、離婚を求める相手からの「防御」です。そんため、離婚を求める側の手の内を知るためにも、離婚問題の経験が豊富にあることが重要です。
復縁に成功した実績がある
復縁を目指す戦いは、離婚を求める戦いよりも困難な道です。そのため、復縁に成功した実績のある弁護士でなければ、有効な戦略を立てることができません。
方針変更にも対応してくれる
復縁を目指すとき、「離婚」という明確なゴールのある場合に比べ、方針変更が頻繁に生じます。また、途中から「有利な条件で離婚したい」という方針に変わることおあります。
そのため、方針変更に柔軟に対応してくれる弁護士に依頼するのがおすすめです。
復縁に特化した料金体系がある
復縁を目指すときは、離婚を目指すケースに比べて「成功」がはっきりと決めづらい面があります。
そのため、弁護士費用を定めるとき合理的な内容となるよう、復縁のケースに特化した料金体系があり、わかりやすく説明してくれる弁護士に依頼するようにしてください。
まとめ
離婚を求められてしまったけれど復縁したいという方の立場で、復縁を目指すために知っておいてほしい法律知識、進め方のポイントなどを解説しました。
「離婚したくない」、「復縁したい」と考える人にとって、離婚の話し合い、離婚調停はつらいでしょう。しかし、将来後悔しないためにもきちんと向き合い、少しでも復縁できる可能性を高めるための努力を尽くしてください。
相手が離婚を強く望むとき、 復縁を実現するためには、あきらめない心と粘り強い交渉が必要です。決して、投げやりになって感情的になったり、自分の考えばかりを強くおしつけてしまってはいけません。
当事務所のサポート
弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚問題を得意分野としています。一方で、復縁したいという方のご相談も多くお受けしてします。
復縁を目指すときには、相手の離婚請求を拒否し、相手が求める離婚の内容に応じて、適切な反論をこころみながら調整をすることが大切です。そのため、離婚問題を多数解決してきた経験は、復縁交渉にも有効です。
復縁についてよくある質問
- 復縁に成功できるのは、どのようなケースですか?
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離婚を求められたとしても、離婚したい側にも悩みがあることを忘れてはなりません。あなたの反対を押し切って離婚するには相当な手間と時間がかかるため、離婚したい側に迷いがあったり、子どもへの愛情があったりするとき、復縁できるケースも少なくありません。詳しく知りたい方は「復縁できるケースと、その理由」をご覧ください。
- 復縁したいとき、相手が申し立てた離婚調停にどう対応すべきですか?
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復縁したいとしても、相手が申し立てた離婚調停には必ず出席し、気持ちを伝えるようにしてください。あなたの気持ちを伝えるチャンスであるとともに、不成立になって離婚訴訟を起こされないための対応が必要だからです。もっと詳しく知りたい方は「復縁するための離婚調停のポイント」をご覧ください。