離婚調停が不成立に終わったとき、次のステップは離婚訴訟(離婚裁判)です。調停不成立のとき、訴訟までの期間は、法律に定まったルールがありません。

いつまでに裁判を起こすべき?

そもそも裁判に期限はあるの?
このような疑問に具体的な決まりはありません。ただ、「調停前置主義」のルールで訴訟より先に調停をすべきなのに、あまりに長期間(2年以上など)放置すると調停を経た意味がなくなり、再び調停からやり直すよう求められるおそれがあります。実務では、調停不成立から1年以内に訴訟を提起することが目安とされ、この期間内なら、再度の離婚調停は不要と考えられています。
今回は、調停不成立後に離婚訴訟を起こすまでの期間の目安や、長い期間が空いてしまったときの対応方法について弁護士が解説します。
- 調停前置主義のルールにより裁判の前に調停不成立となる必要あり
- 調停不成立となってから期間が空きすぎると、再び調停からやり直しとなる
- 調停不成立から2週間以内なら、調停の申立手数料を訴訟に充当できる
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離婚調停不成立から訴訟までの期間の目安

まず、離婚調停不成立から訴訟までの期間の目安について解説します。
調停が不成立となった後は、離婚を求める側(多くの場合、調停の申立人)が、「離婚訴訟を起こして引き続き離婚を求めるかどうか」を選択します。
離婚訴訟は、調停が不成立になったとしても自動的に始まるわけではなく、裁判を起こす必要があります。「離婚が認められるか(勝訴できるか)」の見通しに不安があったり、証拠収集などの準備に時間を要したりすると、調停不成立から訴訟までに期間が空いてしまう人もいます。
法律上の期限はないが早めの対応が重要
離婚訴訟について、法律上の明確な提訴期限はありません。
つまり、調停が不成立でも、いつまでに裁判を起こさなければならないかというルールはなく、いつ提訴してもよい(提訴しなくても)ことになっています。その理由は、夫婦の事情は様々なので、画一的な期限を設けるのは不適切だからです。ただし、「いつ裁判を起こすべきか」は、以下の考慮要素をもとに慎重に判断し、最適なタイミングを図るべきです。
- 離婚調停に費やした期間
- 離婚訴訟に予想される期間
- 離婚訴訟で勝訴できるか(離婚が認められるか)の見通し
- 子への影響の少ないタイミングはいつか
とはいえ、調停不成立の後も離婚を求める気持ちが変わらないなら、できるだけ早く離婚訴訟に進める方がメリットが大きいです。時間を空けると、次のようなリスクがあるからです。
- 証拠が散逸してしまう
時間が経過するほど、離婚に必要な証拠(DVの記録、財産の状況、メールやLINEのやり取りなど)が失われ、入手困難となるおそれがあります。 - 相手方の状況が変化する
相手方が財産を処分したり、居住地が変わって連絡を取りづらくなったり、再婚するなど状況が変わって争点が複雑化したりするおそれがあります。 - 調停からやり直しになる
「期間が空くと調停からやり直しとなることがある」参照。
これらのリスクを避けるには、調停不成立後はできるだけ早めに訴訟の準備を進めるのがお勧めです。必ずしも「勝訴が確実」といえるケースでなくても、裁判を起こして離婚に向けた強い決意を示すことで、相手があきらめて離婚に応じてくれる可能性もあります。
「調停不成立とその後の流れ」の解説

期間が空くと調停からやり直しとなることがある
調停前置主義の理由は、裁判に進む前に、調停の場で話し合い、合意の可能性を探ることにあります。そのため、調停が無駄にならないよう、不成立から長い期間が経つと、再び離婚調停からやり直すよう求められるおそれがあります。
一度調停が不成立になったとしても、期間が経過し、状況が変化していると、「再度調停をすれば別の結論となる可能性もある」と裁判所が考えるからです。あなたの気持ちは変わらないとしても、相手の事情が変化したり態度が軟化したりして、再調停による方が、迅速に離婚を実現できる可能性があることも否定できません。
目安として、調停不成立後1年以内であれば、離婚訴訟が受理されることが多いです。一方で、調停で相手が全く話し合いに応じる意思がないことが明らかな場合など、例外的に、長期間経過した後でもすぐに離婚訴訟することが許されるケースもあります。

「離婚までの流れ」の解説

2週間以内なら手数料を充当できる
調停不成立から2週間以内に訴訟を起こしたときには、調停の申立手数料(収入印紙代)を、訴訟提起の手数料に充当することができます。そのため、強く離婚を求める方針が固まっているなら、できるだけ早めに離婚訴訟を起こす方が、経済的な面でもメリットがあります。
「離婚調停を弁護士に依頼するメリット」の解説

調停不成立から期間が空いてしまったときの注意点

次に、離婚調停が不成立となった後、期間が空いてしまった場合に注意すべきポイントを解説します。調停不成立から1年以内に訴訟を提起すれば、裁判へスムーズに進める可能性が高い解説しましたが、様々な事情で、どうしてもすぐには裁判が起こせないケースもあります。
長期間経過後に訴訟を起こすとどうなるか
調停不成立後2年など、長期間が経過してから訴訟を起こしても、裁判そのものが許されないわけではありません。また、離婚についても不利益が生じるわけでもありません。
ただし、「調停前置主義」が採用される理由は、離婚のような家族の問題について、夫婦間での話し合いを重視すべきという考え方に基づいています。そのため、長期間が経過してから訴訟を提起すると、その間に状況や相手の気持ちが変わっている可能性があり、再び調整して解決できる可能性を模索するためにもう一度離婚調停を行わなければならなくなります。
具体的には、家庭裁判所が職権で、その事件を再び調停に付す「付調停」という手続きが行われます。この手続きによって、調停の場で再度話し合いをする機会が設けられるのです。なお、再度の離婚調停を申し立てる際の方法や注意点は、次の解説を参考にしてください。
「調停成立後の再申し立て」の解説

例外的に訴訟を進めてもらえるケース
調停不成立から長期間が経った後に起こされた訴訟が、再調停に付される(付調停)理由は、「話し合いの可能性を模索すべき」とする調停前置主義の考え方に基づきます。しかし、以下のケースでは、再度調停で話し合っても成立する見込みがないと考えられるので、例外的に、訴訟をそのまま進めてもらえる可能性があります。
- 相手(夫または妻)が行方不明で連絡が取れない場合
- 相手が精神障害などで話し合いが不可能な場合
- 離婚拒否の姿勢が明確で、調停成立の見込みがない場合
これらの状況では、話し合いの意義が認められないため、調停を経ずに訴訟が進められることがあります。
「離婚裁判の流れ」の解説

調停不成立となった経過を伝える
前章の通り、調停不成立から期間が経過した場合でも、状況によっては例外的に訴訟を進めてもらえるケースがあります。しかし、離婚訴訟が認められるかどうかは事情によって異なり、ケースバイケースで判断されます。
迷って裁判を起こすのが遅れてしまった場合も、再調停に付されないためには、調停不成立に至った経緯や裁判までの期間経過の理由を、裁判所に説得的に伝えることが重要です。特に、離婚調停時の配偶者の交渉態度や、相手の求める離婚条件などを詳しく記録しておくことで、再び離婚調停する意味が薄いことを裁判所に理解させれば、離婚訴訟を進めてもらいやすくすることができます。
調停から裁判まで弁護士に依頼していれば、その経過を詳細に説明してもらうことができます。
「離婚に強い弁護士とは」の解説

調停不成立とその後の訴訟にかかる期間の目安
最後に、調停不成立と、その後の訴訟にかかる期間の目安について解説します。
調停で解決できず訴訟に発展するケースは、思いのほか長い期間がかかり、焦る気持ちも理解できます。ただ、離婚のトラブルは相手のあることで、自分だけ急いでも解決は早まりません。重要なのは「自分の決断で変えられる期間はできるだけ短くする」ことであり、審理期間はある程度かかる以上、「調停不成立になったら速やかに訴訟する」という心がけが、期間短縮に役立ちます。
裁判所の統計によると、離婚調停の平均審理期間は4ヶ月〜6ヶ月程度、離婚訴訟の平均審理期間は9ヶ月〜12ヶ月程度です。
【離婚調停の平均審理期間】
【離婚訴訟の平均審理期間】
「離婚調停の流れと進め方」の解説

まとめ

今回は、離婚調停が不成立になった後、訴訟までの期間について解説しました。
離婚調停が不成立になった場合、いつまでに離婚訴訟を起こすべきかは、法律で明確に定められていません。調停不成立だと「裁判しても離婚できないのではないか」と悲観し、訴訟提起の決断が固まるまで時間を要してしまう人もいます。しかし、長期間放置すると、再び調停から始めるよう裁判所に指示されるおそれがあるので、不成立後は早めの行動が大切です。実務では、1年以内に裁判を起こせば、スムーズに次の手続きに進める場合が多いです。
離婚問題は個々の事情によって最適な対応が異なります。不安を抱えたまま放置せず、弁護士のアドバイスを受けることで、より良い解決策を見つけることができます。
- 調停前置主義のルールにより裁判の前に調停不成立となる必要あり
- 調停不成立となってから期間が空きすぎると、再び調停からやり直しとなる
- 調停不成立から2週間以内なら、調停の申立手数料を訴訟に充当できる
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