相手(妻または夫)の別居後、突然、離婚調停の通知が自宅に届くことがあります。驚きが大きく、どのように対応してよいか、戸惑ってしまう人も多いのではないでしょうか。
離婚調停にどう対応すればよいのか
裁判をされてしまったのだろうか?
突然に裁判所から書類が届くと、このような不安を抱くのも無理はありません。しかし、離婚調停は必ずしも対立を深める場ではなく、あくまで話し合いによって互いの納得できる解決策を探るための手続きです。堅苦しく考えすぎず、冷静に準備するのが対応のポイントです。
今回は、離婚調停を申し立てられた側として、どのように対応すべきか、準備のポイントや注意点について弁護士が解説します。
- 協議するか、調停を申し立てるかは、離婚を求める側が決めることができる
- 離婚調停を突然申し立てられてしまっても、慌てず冷静に対応する
- DV・モラハラを疑われているときは、弁護士を依頼して離婚調停に対処する
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離婚調停を申し立てられたら
突然に調停を申し立てられると様々な気持ちが沸くでしょう。「離婚調停は初めて」「どうしてよいか分からない」という不安はもちろん、「なぜ調停なのか」「誠実に話し合うべきだ」などと相手に怒りを抱く人もいます。しかし、感情的な対応は不利な結果を招くおそれがあります。
「調停を申し立てるかどうか」は、離婚を求める側が決めます。あなたが離婚を拒否して復縁を求めれば、相手の離婚意思が固いほど調停に進むでしょうし、双方が離婚に合意していても、求める条件に差があれば「有利に離婚したい」と考える側が調停を決断します。調停を申し立てられた時点で「相手より決断が遅かった」と考え、速やかに調停の準備をすべきです。
離婚調停は、夫婦の話し合いでは離婚できないケースで、家庭裁判所の調停委員に調整のもとで解決を目指す手続きです。あくまでも、冷静に話し合って合意することが目的なので、調停を申し立てられたからといって「離婚に応じなければならない」わけではありません。
離婚調停は、双方が納得できる形で離婚するための柔軟な手段です。ただ、調停が成立してしまえば法的な拘束力があるので、申し立てられた側でもしっかりと準備しなければなりません。
「離婚調停の流れと進め方」の解説
離婚調停を申し立てられたら最初にすべきこと
次に、離婚調停を申し立てられたら、最初にすべきことを解説します。
裁判所から突然書類が届くと、焦るのも当然です。しかし、離婚調停を申し立てられたと分かったら、速やかに準備を進める必要があります。期日前の初動対応が結果に大きく影響するので「調停期日で対応すればよい」という甘い考えではいけません。
裁判所から届いた通知書を確認する
離婚調停を申し立てられると、裁判所から通知が届きます。まずは封書の内容を慎重に確認してください。調停を申し立てられた側で確認すべきポイントは、以下の点です。
- 調停期日
指定された調停期日(日時)を、「期日呼出状」で確認します。出席しないと調停が不成立となって裁判に進むおそれがあるので、スケジュール調整して必ず出席してください。期日は平日に行われ、東京家裁の実務では「午前10時〜正午」「午後1時〜3時」「午後3時〜5時」の3パターンで指定されます。 - 答弁書の提出期限
期日の1週間前を目処に、答弁書の提出期限が設けられるのが通常です。こちらの主張を調停委員に知らせるため、必ず提出しましょう(「答弁書を作成する」参照)。 - 調停場所
調停が行われる家庭裁判所の場所を確認し、当日に遅れないよう、交通手段や所要時間を把握しておいてください。 - 調停申立人の主張内容
裁判所からの通知には、申立書や証拠が同封され、相手の主張を把握することができます。しっかりと読み、どのような点に争いがあるか、期日にどのように答えるかを考えておきましょう(「調停申立書の内容を確認する」参照)。
調停申立書の内容を確認する
次に、同封された調停申立書を確認します。調停申立書は、離婚を求める際に家庭裁判所に提出する書類で、相手(夫または妻)の主張を伝える重要な役割があるので、しっかり分析して検討する必要があります。調停を申し立てた側が有利に進めるには、自分の意見を押し通すだけでなく、相手の主張を聞き、噛み合った反論をすることが大切だからです。
申立書は、簡易的な定型の書式で作成されることが多く、相手の真意を知るために、あわせて陳述書や証拠も確認しましょう。協議の段階で相手の意向を汲み取れなかった場合、調停申立書を通じて初めて知ることができるケースもあります。
申立書や証拠には、相手の言い分が一方的に書かれているので、あなたに不利な内容や事実と異なる記載が含まれる場合もあります。それでもなお、感情的にならず、冷静に対処することが肝心です。調停の初期段階で過剰に反応することは避け、これからきちんと反論を重ねて、調停を有利に進める努力をすることが重要です。
答弁書を作成する
相手の主張が分かったら、反論のための事情を整理します。通知書に事実と異なる記載があるなら、証拠を集めておきましょう。相手に不利な事情(不貞やDVなど)の証拠も欠かせません。
整理した事情は、答弁書に記載して提出することで、あなたの主張や言い分、気持ちを、期日前に調停委員にわかりやすく伝えることができます。家庭裁判所の通知に、答弁書の書式・ひな型が同封されますが、簡易なものに過ぎません。書ききれない内容は別紙に記載したり、主張書面や陳述書を追加で提出して補ったりする工夫が必要となります。
なお、初期の段階で強く伝えすぎると、DV・モラハラ気質、性格に難のある人といったイメージを調停委員に与えるおそれもあります。答弁書は適度な内容に留め、相手に対する悪口や誹謗中傷は控えるようにしてください。
「離婚調停の陳述書の書き方」の解説
離婚調停を申し立てられたら弁護士に相談すべき
次に、離婚調停を申し立てられた側の立場で、弁護士の活用について解説します。
離婚調停の通知を受け取ったとき、冷静に対応すべきといっても難しいことでしょう。調停を有利に進めるために、申立人側だけでなく、離婚調停を申し立てられた相手方側でも、弁護士に相談することが非常に有効です。
なお、調停同行を依頼するときは、弁護士の日程調整も必要となるため、早めに相談して、依頼する弁護士を選ぶようにしてください。
調停を申し立てられた側の弁護士の役割
離婚調停において弁護士は、期日に同席し、法律知識に基づいて調停委員や裁判官への対応をサポートしたり、必要に応じて書面作成や証拠収集を担ったりすることができます。
離婚調停を申し立てられた側にとっては、相手の主張への反論において弁護士が重要な役割を果たします。調停を申し立てられた時点で、先に申立書によって主張が伝えられた状況から、反論によって覆していかなければなりません。相手の主張が不公平だったり事実ではなかったりするとき、弁護士の支援を受けることで論理的に反論し、自分の言い分を通さなければなりません。
調停委員は、中立・公平な立場で話し合いを進めますが、法律の専門家ではない場合もあります。そのため、法的な視点を正しく説明するために、弁護士に依頼するのが有益です。
「調停委員を味方につけるには?」の解説
弁護士に依頼するメリット
離婚調停は、弁護士に任せるべき手続きの一つです。特に、調停を申し立てられた側にとって、弁護士を依頼することは多くのメリットがあります。
離婚調停への対応は、自分で行うことも可能です。しかし、申し立てられた側の場合、自ら積極的に調停を進めたわけではないため、受け身の姿勢になりがちです。それでも、調停を有利に進めるためには、弁護士に依頼することの重要性を理解し、サポートを受けるのが賢明です。
法律知識を補完できる
法律の知識がない人が、自分だけで調停に対応するのは困難です。離婚協議の段階と比べて、裁判所で行われる法的な手続きだからです。
財産分与や親権、養育費など、法律に基づく議論が求められる場合や、申立人側に弁護士が付いているときは、申し立てられた相手方の側でも弁護士のサポートを受けるべきです。専門家の助けを借りることで、公平に調停を進めることができます。
交渉を代行してもらえる
調停では、自分の主張を調停委員にわかりやすく伝えることが求められます。しかし、感情が先行すると、冷静に交渉を進めるのが難しくなってしまいます。
申し立てられた側は特に、相手の主張の矛盾を付いたり、法律の誤りを指摘したりしなければならず、交渉力が必要となる場面が多いです。そのため、経験豊富な弁護士に依頼するメリットは非常に大きいです。
DV・モラハラ気質でないことを示す
申立人の一方的な主張が、調停委員のイメージを左右してしまうことがあります。DV・モラハラ気質であると主張されたときは、弁護士を依頼することで誠実に話し合う姿勢をアピールすることが大切です。
精神的負担を軽減できる
離婚調停は、精神的な負担が大きい手続きです。申し立てられた側は、申立人から問題点を指摘されたり、夫婦生活における責任を追及されたりすることもあり、不安やストレスを抱えやすい状況です。
弁護士に依頼することで、調停の場に同席してもらい発言のサポートを受けられるだけでなく、離婚に関する悩みや準備を一人で抱え込む必要がなくなります。
「離婚調停を弁護士に依頼するメリット」「離婚に強い弁護士とは」解説
調停を申し立てられた側の依頼にかかる弁護士費用
離婚調停を申し立てられた場合、弁護士を依頼するかどうかの判断は、費用が大きな決め手となることがあります。
申し立てられた側でも、弁護士費用は申立人側と同じです。離婚調停は「夫婦いずれが申し立てたか」によって決定的な有利不利はないからです。具体的には、申し立てられた側の依頼にかかる離婚調停の弁護士費用は、次の通りです。
着手金 | 44万円 |
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報酬金 | 44万円+経済的利益の11% |
弁護士費用は決して安くはないものの、離婚調停を申し立てられた側にとって、不利な結果を回避し、最善の解決を得るための「投資」であると考えることができます。費用の内訳や支払い方法を事前にしっかりと確認し、疑問のあるときは弁護士に質問してから契約してください。
「離婚・男女問題の弁護士費用」「離婚の弁護士費用の相場」の解説
申し立てられた離婚調停に対応しないとどうなる?
次に、申し立てられた離婚調停に対応しないとどうなるかについて解説します。
突然に相手から離婚調停を申し立てられると、不安や怒りが湧き、対応したくないと感じる気持ちは理解できます。しかし、調停の通知を無視したり、期日に出席しなかったりすると、申し立てられた側にとって不利益が生じるおそれがあります。
調停不成立となる
離婚調停は、双方が出席して話し合いをする手続きです。そのため、一方が出席しなくても裁判所が強制的に判断を下すことはなく、調停不成立として終了します。調停が不成立になると、申立人は離婚訴訟(離婚裁判)に進むことが可能ですが、裁判は、調停よりも負担の重い手続きです。
申し立てられた側にとっても、裁判に移行することで争点が複雑化したり、相手が離婚の意思を一層固める結果につながったりするリスクがあります。そのため、求める離婚条件に大きな隔たりがない場合などは、感情的になって調停を拒否するのは得策ではありません。裁判になってもあなたが不利になるケースでは、調停から逃げたとしても相手があきらめることはありません。
「調停不成立とその後の流れ」の解説
調停委員や裁判所の心証を悪くする
調停に出席しないことで、調停委員や裁判所から「誠意がない」と見られ、心証を悪化させるおそれがあります。「反論はないのだろう」と思われることも避けなければなりません。離婚調停は話し合いの場なので、強制的に離婚させられはしませんが、調停委員や裁判所に敵視されると、不利な条件を提案される危険があります。
裁判所は、調停を通じた問題解決を尊重する態度を重視します。特に、DV・モラハラ気質であると申立人が指摘していたり、親権についての争いがあったりするケースでは、「問題のある人物だ」と評価されることの弊害が非常に大きいです。
未解決の問題が放置される
調停に対応しないと、問題が未解決のまま長引き、放置されます。どのような主張をするにせよ、夫婦間にトラブルがあるなら、家庭の問題にしっかりと向き合う必要があります。問題から逃げていても解決することはなく、かえって精神的・経済的な負担が増えてしまうこともあります。
調停が不成立になった後で離婚訴訟になると、判決で強制的に離婚が決定されるおそれがあります。全く反論がないと、財産分与や慰謝料についても相手に有利な判断となる可能性が高いです。離婚のトラブルが長引くことが、子供の生活に悪影響となってしまうことも避けるべきです。
「離婚裁判の流れ」の解説
離婚調停を申し立てられた側のよくある質問
最後に、離婚調停を申し立てられた側で、よくある質問に回答しておきます。
離婚調停は申し立てられた側が不利?
離婚調停を申し立てられたからといって、必ずしも不利になるわけではないので安心してください。調停は、あくまで双方の話し合いの場です。調停委員も中立的な立場で進行し、どちらか一方を有利に扱うことはありません。
ただし、以下の場合に、申し立てられた側が不利になるおそれがあります。
- 申立人の主張に反論しない場合
- 必要な書面を提出せず、証拠を準備しない場合
- 調停期日に出席せず、自分の意見を伝えない場合
したがって、離婚調停を申し立てられたら、冷静に準備し、適切に対処することによって、不利な状況に陥ることを回避すべきです。
裁判所からの通知はいつ届く?
離婚調停の申し立てが家庭裁判所に受理されると、通常は2週間から1ヶ月以内に、相手方にも調停期日の通知が送られてきます。通知が届いたら、速やかに内容を確認して準備を進めましょう。
相手(夫または妻)から「調停を申し立てた」と言われたのに通知が届かない場合、相手に事件番号を確認して、家庭裁判所に問い合わせることができます。
離婚調停を申し立てられたけど離婚したくないときの対応は?
離婚調停を申し立てられたとしても、離婚を受け入れる必要はありません。離婚したくない場合はその意思を明確に伝えてください。「申し立てられた離婚調停に対応しないとどうなる?」の通り、欠席はリスクがあるので、たとえ離婚したくなくても調停には出席しましょう。調停離婚の方法がうまくいかなくても相手があきらめるとは限らず、裁判に進むのを早めるおそれがあります。
離婚調停では、ただ拒否するのではなく、離婚を拒否する理由を具体的に示して、調停委員に誠実な姿勢を見せることが重要です。あわせて、関係修復のために改善点を示すなど、具体的な提案をすれば、調停を通じて復縁できるケースもあります。
「離婚調停での復縁」の解説
協議なく突然調停を申し立てられたら?
離婚を求める側にとって、話し合いで早期に離婚できるのは理想ですが、難しいケースもあります。調停の申立てに相手の同意は不要なので、あなたの意に反して、協議なく突然に調停を申し立てられてしまうこともあります。
協議を経ずに調停を申し立てられたケースでは、DVやモラハラを疑われたり、「話し合いでの解決は困難」「妥協できない」と思われていたりするおそれがあるので、調停での振る舞いに注意を要します。相手の弁護士や調停委員に反発したり、本人に直接連絡したりといった行動はかえって悪いイメージを与え、余計に状況を悪化させます。
まとめ
今回は、離婚調停を申し立てられた場合の適切な対応方法について解説しました。
家庭裁判所から突然に通知が届いたときこそ、感情的にならず冷静に対処すべきです。離婚の争いは協議から調停、訴訟の順に進みますが、事前の話し合いなく調停になるケースもあります。この場合でも過剰な反応は避け、適切に準備を進めてください。直接連絡したり問い詰めたりする行為は、DVやモラハラのイメージを強め、不利な状況を招くリスクがあります。
離婚調停は、裁判所を通じて双方の意見を調整する場です。裁判所からの通知を受けたら、内容をしっかりと確認して、相手の主張を把握した上で調停に臨みましょう。申し立てられた側でも、調停対応を弁護士に依頼することで、法的なアドバイスを得て、有利に進めることができます。
- 協議するか、調停を申し立てるかは、離婚を求める側が決めることができる
- 離婚調停を突然申し立てられてしまっても、慌てず冷静に対応する
- DV・モラハラを疑われているときは、弁護士を依頼して離婚調停に対処する
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離婚調停を有利に進めるには、財産分与や親権、養育費、不貞行為の慰謝料請求など、状況に応じた法律知識が必要です。お悩みの状況にあわせて、下記の解説もぜひ参考にしてください。
複数の解説を読むことで、幅広い視点から問題を整理し、適切な解決策を見つける一助となります。