
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
離婚調停が長引くと精神的にも経済的にも負担である一方、メリットもあります。
一般に、離婚調停は6ヶ月〜1年程度で終わりますが、親権や財産分与といった互いに譲れない争点があると長期化しがちです。長い期間かかることでかえって冷静に検討できたり、証拠集めの時間が確保できたりすることがあります。また、収入の少ない側であればその期間中も生活費(婚姻費用)を受け取ることができ、養育実績も積み上げられます。
一方で、婚姻費用を支払う側にとっては長期化することで経済的負担が増してしまいます。精神的にも疲弊し、弁護士費用も増加するなど、デメリットも見逃せません。特に、相手が意図的に引き延ばそうとしてくるとき、短期間で調停を終了させるための対策を理解しておきましょう。
今回は、離婚調停を長引かせるメリット・デメリットと、短期間で調停を終了させるための対策について、弁護士が解説します。
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はじめに、離婚調停の期間と審理回数の目安について解説します。
「令和6年司法統計年報」(裁判所)によると、離婚調停の約半数は6ヶ月以内に終結しています。一方で、1年を超えて長期化しているものも一定数あります。
| 審理期間 | 件数 |
|---|---|
| 1月以内 | 3,230 |
| 3月以内 | 12,446 |
| 6月以内 | 18,045 |
| 1年以内 | 17,204 |
| 2年以内 | 6,815 |
| 2年超え | 689 |
また、同統計によれば、調停が開かれた回数(実施期日回数)は以下の通りです。
| 実施期日回数 | 件数 |
|---|---|
| 0回 | 4,712 |
| 1回 | 7,591 |
| 2回 | 11,471 |
| 3回 | 9,708 |
| 4回 | 7,657 |
| 5回 | 5,396 |
| 6〜10回 | 10,196 |
| 11〜15回 | 1,451 |
| 16〜20回 | 203 |
| 21回以上 | 44 |
調停期日の回数で最も多いのは「2回」ですが、長引く場合は6〜10回程度になるケースも少なくありません。したがって、6ヶ月の期間、6回または10回程度が一つの目安となります。特に、争点が複数あったり、親権や財産分与のように夫婦のいずれも譲歩が難しかったりする場合、離婚調停が長期化する傾向があります。
自身のケースで標準的な期間・回数を超える場合、それが事案の複雑さによるものか、それとも相手が意図的に引き伸ばしているのかを見極める必要があります。
「離婚調停の流れ」の解説

では、離婚調停が長引くのはなぜでしょうか。離婚調停が長引く主な原因を知っておけば、事前の対策が講じやすくなります。例えば、次のようなケースがあります。
【相手が離婚自体を拒否している】
相手が離婚を頑なに拒否する場合、調停は平行線となり、長引きがちです。
不貞行為や暴力(DV)といった明確な「法定離婚事由」がない場合ほど、この傾向が顕著です。調停が不成立になってもその後の裁判で離婚が認められる可能性は低く、相手としても譲歩せず、強気の姿勢を崩さないからです。その結果、合意形成は困難を極め、長期化していくこととなります。
【争点が多い、または対立が激しい】
財産分与、慰謝料、子供の親権や養育費、親子交流(面会交流)など、離婚時に決めるべき条件が多岐にわたる場合、合意形成に時間がかかり、調停が長引きがちです。特に、子供に関することは夫婦双方にとって譲りにくく、対立が激化しやすいです。
【主張を裏付ける客観的な証拠がない】
不貞行為などの責任を追求しようとしても、客観的な証拠がない場合、相手から反論されたり事実を否定されたりして水掛け論になることがあります。この場合、調停委員としても相手を強く説得することはなく、調停は長引きます。
以上の通り、離婚調停が長引く原因には、「強硬な姿勢」といった相手の要因だけでなく、「主張や証拠の準備不足」といった自身の要因もあります。相手の態度を変えるのは容易ではないため、少なくとも自身の準備は万全に整えておくべきです。
「離婚を弁護士に相談する前の準備」の解説


離婚調停の長期化はデメリットばかりではありません。ここでは、調停が長引いた場合に、その時間を戦略的に活用することで得られるメリットについて解説します。
調停を長引かせることには、焦って不利な条件で合意してしまうリスクを避け、離婚条件について十分な時間をかけて検討できるメリットがあります。
一度成立した調停を後から覆すのは困難です。調停調書に記載された内容は確定判決と同じ法的効力を有し、違反すれば強制執行が可能です。相場からかけ離れた養育費や不十分な財産分与に安易に合意すれば、離婚後の生活が苦しくなりかねません。
また、時間の経過が、お互いの感情的な対立を和らげる冷却期間となり、建設的な話し合いにつながる可能性もあります。
「離婚に伴うお金の問題」の解説

離婚調停が進行している間も、主張を裏付ける証拠を収集することが可能です。
調停を長引かせれば、証拠集めの時間を確保できるメリットがあります。例えば、不貞行為が継続している場合には新たな調査を行ったり、財産隠しの疑いがある場合には、弁護士会照会や調査嘱託といった手続きを用いて資料を取り寄せたりといった方法が可能です。
客観的な証拠で主張に説得力を持たせることができれば、調停委員が相手を説得しやすくなり、離婚に向けた話し合いを有利に進められます。
「離婚裁判で証拠がないときの対処法」「不倫の証拠写真」の解説


離婚調停を長引かせることには金銭的なメリットもあります。
婚姻中は、たとえ別居していても相互に生活保持義務を負うため、収入の多い側は少ない側に対し、生活費(婚姻費用)を分担する義務を負います。婚姻費用の金額は、「養育費・婚姻費用算定表」に基づき、権利者・義務者の年収、子供の年齢・人数に応じて算出されます。毎月支払われるのが基本であるため、離婚までの期間が長引くほど受け取れる金額は増えていきます。
収入が少ない側にとって、婚姻費用は、目先の生活費に困って不利な条件で離婚する事態を避け、腰を据えて交渉を続けるための重要な役割を果たします。
「別居中の生活費の相場」の解説

最後に、離婚調停が長引くことが、親権の判断に有利に働く可能性があります。
親権について、家庭裁判所では「子の福祉(利益)」を最優先に判断します。子供の生活環境の安定が重視されるため、監護の継続性が重要な考慮要素となります。離婚調停が長引いている間、安定して養育できれば、監護実績を蓄積し、監護者としての適格性を示すことができます。さらに、子供が15歳以上の場合、裁判所は必ず子供の意見を聴かなければならず(家事事件手続法152条2項)、この点でも、調停期間中に良好な親子関係を維持することが親権獲得に有利に影響します。
ただし、親権について有利な判断を得たい一心で、子供を連れ去ったり不当に離婚調停を長引かせたりするのは不適切です。違法な連れ去りと判断されると、親権者としての適格性が疑われ、親権争いにおいて極めて不利になります。
「連れ去り別居」の解説

離婚調停の期間を長引かせるメリットを活かしたい場合でも、単なる時間稼ぎと見なされると調停委員の心証を損ねてしまいます。そのため、検討の時間が必要であるなど、正当な理由を調停委員にしっかりと伝えることが重要です。
調停期間を延ばす有効な理由の一つが、専門家に相談する時間を確保することです。
例えば、不動産の評価額を算定するために不動産鑑定士などに相談すべきケース、複雑な親権判断について自分一人では進められないために弁護士に相談すべきケースなどが典型例です。
この場合、調停委員に「専門家の意見を聞いた上で、適切な判断をしたい」というように前向きな姿勢を伝えることで、時間を空けることへの理解を得やすくなります。具体的な相談の予定日などもあわせて伝えると説得力が増します。
相手からの主張にその場ですぐ反論するのではなく、精査が必要となることもあります。
この場合、調停期日に口頭で回答するのではなく、内容を十分に検討してから書面で回答すると伝えることが、時間を確保するために有効です。相手の主張の法的根拠を確認し、反論を吟味したり、証拠を整理したりするには一定の時間を要します。事前に書面を提出することは、次回の調停期日で建設的な話し合いを進めることにも役立ちます。

一方で、離婚調停が長引くことにはデメリットもあります。そのため、メリットとの比較が必要であり、闇雲に引き延ばすのは決して得策ではありません。
離婚調停が長引くと精神的に疲弊し、冷静な判断を下せなくなることがあります。
早く終わらせたい一心で正当な権利を我慢したり、不利な条件で合意してしまったりする人もいます。じっくり考えられるメリットはあるものの、精神的な負担が増大する場合は、一定の譲歩をして区切りを付ける判断が必要となることもあります。
弁護士に依頼した場合、離婚調停が長引くほど費用の負担が増えるおそれがあります。
料金体系にもよりますが、調停期日への出廷回数に応じて日当がかかることが多いためです。また、業務時間に応じて費用が加算されるタイムチャージ方式を採用していることもあります。調停が不成立となって訴訟に移行する場合には、着手金が別途必要となるのが通常です。したがって、長引かせることで、弁護士費用以上の利益が得られるかを検討しなければなりません。
「離婚調停にかかる費用」の解説

離婚調停で合意に達しない場合、調停は不成立となって終了します。
その後、離婚を求める側は、訴訟を提起するか、または一旦様子を見るかを選択します。離婚裁判(離婚訴訟)を選択した場合、紛争はさらに長期化することとなります。なお、離婚調停が非公開の話し合いの場であるのに対し、離婚裁判は公開の法定で行われ、夫婦のプライバシーを第三者に知られる可能性が生じます。
「離婚調停の不成立とその後の流れ」の解説

離婚調停の長期化は、当事者だけでなく子供にも深刻な影響を及ぼします。
両親が離婚をめぐって争っているという不安定な状況が続くと、子供に大きなストレスがかかります。思春期の場合は特に、環境の変化や両親の対立に敏感であり、長期間の葛藤に晒されることで心に深い傷を負うことも少なくありません。
子供の健全な成長や精神的な安定を最優先に考えるのであれば、必要以上に調停を長引かせるべきではないケースも多く存在します。
離婚調停の期日は基本的に平日の日中に開かれるため、長引くほど仕事を休む回数が増えてしまいます。最初のうちは有給休暇で対応していても、長期化すると何度も休みを申請することとなり、業務や社内の評価に影響が出やすくなります。
頻繁な休暇申請によって、周囲に隠しておきたかった離婚調停について説明せざるを得ない状況に追い込まれるケースもあり、社会生活への影響は見過ごせません。
次に、相手が意図的に離婚調停を長引かせようとするときの対処法を解説します。
ここまで説明した通り、調停の長期化にはメリットとデメリットがありますが、相手が引き伸ばしを図っているなら、あなたにとってデメリットが大きいと考えられます。
相手が意図的に調停を長引かせる場合、問題点を調停委員に伝え、協力を求めるのが有効です。
調停委員は中立ですが、手続きの円滑な進行について責任を負う立場です。一方が非協力的な態度で進行を妨げていると判断すれば、是正するよう働きかけてくれることが期待できます。次のような相手の行為がある場合は、感情的にならず、客観的な事実をもとに調停委員に伝えましょう。
この際、自身は早期解決を望んでいることも明確に伝えましょう。調停委員が相手の非協力的な姿勢を認識すれば、協力するよう説得し、場合によっては「これ以上話し合っても合意に達する見込みがない」と判断して調停不成立とすることがあります。
「調停委員を味方につけるには?」の解説

相手の引き延ばしによって調停が困難である場合には、訴訟への移行を検討しましょう。
訴訟は、調停より厳格な手続きであり、相手が不誠実な対応を取り続け、不当な引き伸ばしをすることは今まで以上に難しくなります。調停を打ち切るには、次の方法があります。
いずれの場合も自動的に訴訟へ移行するわけではなく、自身で家庭裁判所に訴訟を提起する必要があります。なお、前述の通り、訴訟に移行することで弁護士費用が増え、審理期間がさらに長期化するリスクがあるため、調停で解決できる可能性がないかは慎重に見極めてください。
「離婚裁判の流れ」の解説

意図的に相手が離婚調停を長引かせているとき、弁護士への依頼も有効です。
弁護士は、調停の状況を分析し、相手の引き延ばしの意図を見抜いた上で、今後の方針や必要な証拠、法的に説得力のある主張の組み立てについてアドバイスできます。これまで本人だけで調停に対応していた場合、弁護士に同席してもらうことで法的な観点から的確な主張・反論が可能です。また、相手や裁判所とのやり取りを一任し、長期化による精神的負担も軽減できます。
弁護士費用は必要ですが、調停を無用に長期化させられることによる経済的・精神的な損失と比較すれば、早い段階で専門家に依頼する方が、納得のいく解決が実現できます。
「離婚に強い弁護士とは?」の解説


最後に、長引きがちな離婚調停において、早期解決を目指す方法を解説します。
調停委員との良好な関係を築くことが、早期解決への近道となります。
調停委員は、中立的な立場で合意形成を促進する役割を担いますが、こちらが早期解決を希望しているなら、長期化させようとする相手を説得してくれる可能性があります。良好な関係を築くためにも、調停には誠実な態度で臨み、時間厳守や丁寧な言葉づかいといった基本的な礼儀やマナーを守り、質問には誠実に回答するなど、協力的な姿勢を示しましょう。
また、調停委員が示す解決案には、真摯に耳を傾けましょう。双方の主張の妥協点を探り、柔軟な姿勢を示すことが、調停委員や裁判所からの信頼につながります。
「離婚調停の服装」の解説

離婚調停は、当事者が提出する書面や証拠をもとに進みます。準備が不十分だと主張が説得力を欠いたり、資料提出が遅れたりして、長引く原因となってしまいます。こうした事態を防ぐため、離婚に至る経緯を時系列で整理し、離婚を求める理由、親権、養育費、財産分与、慰謝料といった争点について、希望を事前にまとめておきましょう。
不貞慰謝料を請求するなら証拠となる写真、財産分与であれば預貯金や不動産、保険、有価証券などの財産のリスト、養育費を請求するなら収入を証明する資料など、裁判所から必ず提出を求められるものは、あらかじめ準備しておくと円滑に進めることができます。
離婚調停が長引くことを避けるには、落とし所を考えることも重要です。
離婚調停は、双方の妥協点を見出す手続きでもあります。全ての要求について固執すれば、相手も譲らず、調停が停滞してしまいます。このような事態を避けるためにも、絶対に譲れない条件と譲歩しても良い条件は区別し、優先順位を付けておきましょう。
相手の性格やこれまでの交渉経緯から、どのような主張をしてくるかを予測することも大切です。相手が固執しそうな点を見極め、それに対する反論や、相手が納得しやすい代替案をシミュレーションしておけば、冷静かつ優位に調停を進めることができます。
「離婚調停で勝つには?」の解説


今回は、離婚調停を長引かせることのメリットについて解説しました。
離婚調停の多くは、6ヶ月から1年程度で終結しますが、争点が多かったり、相手が非協力的だったりすると長引くおそれがあります。調停が長期化しても、その時間を活用して有利な証拠を集めたり、婚姻費用を受け取りながら交渉したりして、戦略的に動けばリスクは軽減できます。
ただし、それ以上に、精神的・経済的な負担が増大し、訴訟に発展する可能性が高まるなど、デメリットも深刻です。調停の長期化によって冷静な判断力を失い、本来であれば受け入れるべきでない不利な条件で合意してしまうことは絶対に避けなければなりません。
離婚調停を「ただ長引かせる」のは得策ではありません。自身の状況を客観的に分析し、時間をかけるメリットがあるかどうかを冷静に検討してください。判断に迷う場合や、相手が不当に引き延ばしてくる場合、一人で悩まずに専門家である弁護士に相談してください。
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