DV問題は年々深刻となり、社会問題化しています。2001年にDV防止法が制定され、被害者の手厚い保護が進んでいます。配偶者暴力相談支援センターによせられたDVの相談件数は114,481件(平成30年統計、男女共同参画局「配偶者からの暴力に関するデータ」)となり、年々増加しています。
DVが増えて社会問題化する一方、本来であればDVとまではいえないような家庭内の不和が、DVとしてでっちあげられてしまうケースも残念ながら存在します。DV被害者への保護が手厚いほど、その制度が悪用されるおそれがあります。
これが「DV冤罪」、「でっちあげDV」の問題です。「偽装DV」、「偽DV」と呼ぶこともあります。
DV冤罪のでっちあげは、被害者の悪意によるケースもあれば、過失によって生み出されることもあります。「有利な条件で離婚したい」という意図から、計画的に嘘のDVがつくりだされることもあります。DV冤罪までして早急に離婚しようと求めてくる相手に対して、時間的な余裕がないなかで、嘘をあばいて戦わなければなりません。
今回は、DV冤罪、でっちあげDVの対処法について解説していきます。
- 相手にDVがあると有利に離婚できるため、嘘のDVがでっちあげられる
- DV冤罪をでっちあげられたら、証拠を集めて反論する
- 日ごろからDVを疑われる行動をあらため、予防することが大切
なお、男性側の離婚について深く知りたい方は、次のまとめ解説をご覧ください。
DV冤罪とは
DV冤罪とは、実際にはDVが行われていないにもかかわらず、あったかのように被害主張をすることです。DVとは、「ドメスティックバイオレンス」の略称で、家庭内暴力のことです。
つまり、DV冤罪では、実際は殴る、蹴る、たたく、物を投げるなどの暴力行為を受けていないにもかかわらず、身体的暴行を加えられたと嘘をつかれます。夫婦喧嘩はどのような夫婦でもありますが、すべての喧嘩が暴力に発展するわけではありません。DV冤罪は、このような夫婦の「不仲」を超えて、「暴力を振るわれた」と主張をすることで発生します。
DVと似た考え方に、モラハラ(モラルハラスメント)があります。これは、罵詈雑言、誹謗中傷や暴言、無視といった精神的な苦痛を与える行為全般をいいます。
DVのでっちあげは、広くはモラハラのでっちあげを含みますが、モラハラはDVよりも評価が明らかでないため、相手が嘘をついていても「冤罪なのかどうか」が更にわかりづらいです。なお、夫婦の両者がお互いにモラハラ被害を主張するケースの解説も参考にしてみてください。
DV冤罪がでっちあげられる理由
DV冤罪がでっちあげられる最大の理由は、「有利な条件で離婚したい」ということです。
離婚をするとき決めなければならない離婚条件は、大きく分けて次の2つです。
そもそも夫婦の求める条件に開きがあるとき、早期の離婚は困難です。
これに対して、片方がDVをしていたのであれば、離婚条件のうち、特に慰謝料について有利な判断を得ることができます。子どもに暴力をふるっていたり、そこまでいかなくても子どもの前で暴力をふるい子どもの成長に悪影響を与える可能性のあるとき、DVは親権の判断にも不利に影響します。
更には、明確な離婚原因(不倫や暴力)がなく、相手が離婚に反対しているときは、法定離婚原因(民法770条1項)がなく、離婚が頓挫してしまったり長期間の別居期間が必要となってしまったりすることがあります。法定離婚原因は次のとおりで、DVは、民法7701条1項2号「配偶者から悪意で遺棄されたとき」もしくは5号「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に当たり、すぐに離婚できる理由となります。
民法770条1項
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
民法(e-Gov法令検索)
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
これらに当たる事情のないときは、離婚協議、離婚調停を経て離婚訴訟になっても離婚ができないため、DV冤罪をでっちあげることによって「法定離婚原因がある」と主張し、離婚を早めようとしてくるのがDV冤罪をでっちあげる大きな理由の1つです。
よくあるDV冤罪のケース
DVは「家庭内で暴力をふるう」という意味であり、男女の別を問いません。しかし、よくあるDV冤罪は「夫側が、妻側に暴力をふるった」という嘘をつくパターンです。つまり、妻側が被害者のふりをして嘘をつくケースがほとんどです。
実際のDV相談のなかには「妻が夫に暴力をふるう」というケースもあります。包丁など凶器を持ち出すケースでは、力の強さは関係ありません。しかし、一般的には「男性は女性より力が強い」ということから、DV冤罪で嘘をつくのは、女性側が多いのです。
「DV被害を受けた」と相談するにとどまらず、自分でケガをしたのを「殴られた」といって写真をとったり、医師の診断書をとったりと、証拠偽装までおこなわれることもあります。
よくあるDV冤罪のケースは、次のものです。
- 本人が離婚協議を進めるケース
突然別居をした妻から手紙が来て、DVを受けたので離婚と慰謝料を請求するといわれた。 - 弁護士が代理人となり、離婚協議を進めるケース
突然別居をした妻から依頼をうけた弁護士から通知が届き、暴力の証拠(ケガの写真と診断書)が存在するといわれた。 - 離婚調停を申し立てられたケース
突然、家庭裁判所から離婚調停の呼出状が届き、同封されていた離婚調停申立書にはDVがあると記載されていた。
DV冤罪は、でっちあげられた夫側にとっては突然のことでしょうが、妻側は、同居中から計画的にDV冤罪にしようとたくらんでいることも少なくありません。「DVの被害を受けた」といいながら同居しつづけるのは矛盾するため、DV冤罪の多くは別居後におこります。そのため、DV冤罪のでっちあげを受けてしまった後では、当事者での話し合いをしたり、認識違いを正したりすることは難しいです。そして、合わせて離婚の要求がなされます。
そのため、DV冤罪のでっちあげを受けた後では時間的猶予がなく、早急な対処を要します。なお、相手の弁護士から突然きてしまった連絡への対応方法は、次の解説もご覧ください。
DV冤罪のでっちあげへの正しい対応6つ
DV冤罪のでっちあげの被害者となってしまったとき、どう対処したらよいでしょうか。DV冤罪をかねてから計画的に進められてしまったとき、実際にでっちあげが発覚したときにはもう嘘で塗り固められてしまっている危険もあります。
そこで次に、DV冤罪のでっちあげへの正しい対処法について6つにわけて弁護士が解説します。
すでに相手にも弁護士がついていて、相手の弁護士からモラハラ夫よばわりされるケースなどでは、お早めに弁護士にご相談ください。
【対応1】冷静にDVを否定する
正しい対応の1つ目は、感情的にならず、冷静にDVの事実を否定することです。
DV冤罪が起こるような場合、DVは嘘だったとしても、夫婦関係は必ずしも円満とはいえない状態かもしれません。配偶者(パートナー)やその弁護士から「DV加害者だ」と指摘をされれば、冷静でいるのは難しいことでしょう。
しかし、感情的になって反論すれば、相手の思うツボです。汚いことばで罵ったり怒鳴ったり、誹謗中傷したり、暴言をはいたりすれば、「暴力的な人物だ。家庭内で暴力をふるっていたとしてもおかしくない」というイメージを生む結果となります。当事者の話し合いで、感情的になって手を出してしまっては元も子もありません。
裁判では、証拠によって証明する責任を負うのは「DV被害を受けた」と主張する側であり、あなたが「DVをしていない」ことを証明しなければ負けてしまうわけではありません。むきになって反論するのではなく、まずは冷静にDVの事実を否定することから始めてください。
【対応2】離婚不受理申出をする
正しい対応の2つ目は、離婚不受理申出をすることです。
DV冤罪をでっちあげる目的は「有利な条件で離婚したい」という点にあると解説しました。そのため、DV冤罪のでっちあげを受けてしまったあながた「離婚したくない」もしくは「少なくとも今すぐ不利な条件の離婚に応じる気はない」というのであれば、離婚不受理申出をすべきです。
DVのような暴力行為は、民法770条1項に定める法定離婚原因となり、離婚裁判では判決により離婚をさせられるおそれがあります。このことは、たとえ冤罪だったり偽の証拠だったりしても、裁判所を説得できてしまうかどうかにかかっています。
裁判に至る前の離婚協議、離婚調停の段階であれば、あなたが同意しないかぎり離婚は成立しませんが、相手はありもしないDVをでっちあげるような人だとすると、離婚届を勝手に出したり、偽造したりするおそれもあります。
ひとたび離婚届が受理されると離婚が成立してしまうため、まずは、DV冤罪の虚偽を暴く戦いをする前に、離婚届の不受理申出をしておくのがおすすめです。離婚届不受理申出をしておけば、たとえ妻が偽造した離婚届を役所に提出しても、受理されなくなります。
【対応3】嘘の主張をよく聞く
正しい対応の3つ目は、嘘をついてDV冤罪をでっちあげようとしている側の主張をよくきくことです。
あなたにとってはやってもいない暴力に関する作り話なわけですから、聞いていると不快になるにちがいありません。それでもなお、相手の嘘の主張とそれを基礎づける証拠をしっかり把握することが、的確な反論への第一歩です。
嘘の主張には、よく聞けばわかる問題点、矛盾点があることがあります。いずれも、DV冤罪を暴くための大きな武器になります。
- 客観的な事実に反するDV主張
例えば、出張中で家にいなかった日にDVされたと主張されているケースなど。客観的な事実に反するのが明らかな主張でが多いとき、そのDV被害の主張自体の信用性が薄れる。 - 以前の主張と矛盾するDV主張
例えば、以前に主張していた暴行の態様とは異なる暴行を主張しているケースなど。自分の記憶にもとづいてDV被害の主張をしたにもかかわらず、発言がときによって異なるとき、そのDV被害の主張自体の信用性が薄れる。 - 具体性、迫真性のないDV主張
例えば、殴られたと主張しながら、いつ殴られたかや、経緯について記憶がないというケースなど。実際に自分が体験したのであれば具体的に語れるのが通常で、抽象的で曖昧なDV主張には信用性がない。
【対応4】でっちあげ目的を理解する
正しい対応の4つ目は、DV冤罪をでっちあげる目的をよく理解することです。
DV冤罪をでっちあげる大きな目的が「有利な条件で離婚をすること」にあると解説しましたが、実際には、DV冤罪をでっちあげる時点では、妻側は、その目的や求める離婚時期、離婚条件などについて明らかに主張をしてこないことがあります。まずはDVを主張し、有利な立場を確保してから離婚話を進めたほうがうまくいくからです。
しかし実際には、DV冤罪の裏側では不倫をしており「他の人と一緒になりたいから、DVだと嘘をついて離婚を早めよう」、「好きな人ができてしまった」という別の離婚理由があることも少なくありません。自ら不倫をしている場合、離婚理由について責任のある配偶者(有責配偶者)となり、自分から離婚をすることが難しくなってしまいますから、DV被害を主張することが重要となるわけです。
ただし、正面から「DVは冤罪だけど、実際にはどのような理由で離婚をしたいのでしょうか」と聞いても、正しい回答は得られません。妻のこれまでの言動、別居時の言動、別居理由、これまでに指摘された夫婦間の問題点などを冷静に分析し、本当の離婚理由を検討するようにしてください。
なお、DV冤罪のでっちあげを行う妻側に、不倫、浮気が疑われる場合には、探偵や興信所を使って調査し、証拠収集することが有効です。
【対応5】言いなりにならない
正しい対応の5つ目は、相手の言いなりにはならないことです。
たとえDV冤罪がでっちあげられ、診断書やケガの写真など証拠が偽造されたとしても、離婚協議、離婚調停では、合意のない限り離婚は成立しません。そのため、嘘のDVを理由に不利な条件での離婚を迫られても、納得のいかないときは離婚に同意してはなりません。
突然DVの加害者だといわれ、しかも、相手が弁護士に依頼し、ケガの写真や診断書といった有効な証拠があると攻め立てられると、つい弱気になり、あきらめてしまう方もいます。実際、肉体的には男性が強いのが一般的ですが、家庭内では妻のほうが発言権を持っていることも少なくありません。
しかし、DV冤罪がでっちあげられる大きな原因は、有利な条件で離婚をしようとしたり、「自分が不貞をしている」など本来であれば早期離婚が難しいのに離婚をしようとしたりといったことにあることが多く、あなたの人生にとって非常に重要な問題ですから、相手の言いなりにならないことが重要です。
財産分与や慰謝料の問題はもちろん、養育費の問題は将来もずっと続きます。離婚したことやその条件について、軽い気持ちであきらめてしまって後悔することは避けましょう。
【対応6】虚偽の証拠をあばく
正しい対応の6つ目は、虚偽の証拠をあばくことです。
離婚協議、離婚調停の段階では、あなたが同意しない限り離婚が成立することはないですが、離婚訴訟では、合意がなくても、法定離婚原因(民法770条1項)が存在すると証明されれば、判決により離婚が決まってしまいます。そして、DVは、民法7701条1項2号「配偶者から悪意で遺棄されたとき」もしくは5号「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に当たる可能性があります。
そのため、証拠を偽造してまでDV冤罪をでっちあげてくる相手には、不利な条件での離婚を避けるためにもDV冤罪を裏付ける嘘の証言をあばかなければなりません。でっちあげた証拠には、不自然なところや矛盾する部分、自分の主張と整合しない部分が見つかることも多く、分析することで、証拠の信用性を低下させることができます。
離婚問題を多く経験している弁護士に相談することで、冷静な第三者の立場から客観的に証拠を分析してもらい、嘘の証拠、矛盾する証拠を指摘してもらうことができます。
DV冤罪の証拠の嘘を突き崩す方法
DV冤罪をでっちあげられてしまったケースの中でも、虚偽の証拠をつくってDV被害をうったえるケースが最も悪質です。離婚訴訟において、裁判所では証拠がとても重視されるため、虚偽であっても証拠が十分なときは、裁判所の目をあざむいてDV冤罪が認められてしまうおそれがあります。
DV冤罪が裁判所に認められてしまうと、慰謝料を含む不利な条件での離婚が成立してしまいます。
そこで次に、DV冤罪のでっちあげのなかでも最も悪質なケースに対処するため、嘘の証拠をあばくポイントを解説します。
別の理由でケガをしていないか
DV冤罪で、嘘の証拠をでっちあげるときよくあるのが、別の理由でケガをしたのをきっかけに、そのケガの写真をとったり診断書を入手したりして、これを夫からの暴力によって受けたケガだと嘘をつくケースです。
このでっちあげの手法を防ぐためには、ケガの写真、診断書などの証拠が示されたとしても、「別の理由で受けたケガではないか」と疑う視点が大切です。次に解説するようにカルテ開示をすれば、医師の診察時に語ったケガの理由が書かれていて、嘘をあばけることもあります。
また、医師の診断を受けておらずケガの写真だけが証拠提出された場合でも、次のような証拠を準備することで、別の理由で負ったケガであると反証できます。
- 目撃者の証言
- 同居の家族や子どもの証言
- 当時のメールやLINE
- 当時の日記、SNS
いずれにせよ、的確な反論をするためには、ケガを負った日時、DVの経緯を、まずは妻側に明らかにしてもらう必要があります。DVを受けたと主張するのであれば、日時や経緯などは具体的に主張できるほうが自然であり、むしろ抽象的で曖昧な主張しかできないのであれば、証拠の信用性もそれだけ低下します。
カルテ開示を請求する
次に、DV冤罪をめぐる裁判で、医師による診断書が証拠提出されたときには、必ずカルテの開示を求めることです。
診断書には、病名や症状などしか記載されていないことが多いですが、カルテその他の医療記録には、診察の状況、診察時の発言、細かい症状やケガの状況の説明などが書かれていることが多いからです。そして、これらの細かい記載が、DV冤罪のでっちあげの嘘を暴くのに有効なことがあります。
カルテの開示は、裁判手続きでは、文書送付嘱託もしくは文書提出命令という手続きを利用します。
これに対して、離婚協議の段階でDV冤罪のでっちあげが行われた場合、交渉においてカルテの開示を求めることとなります。そして、万が一妻側が応じてこないときは、冤罪の疑いが強くなると考えられることから、慰謝料請求や離婚要求などを拒絶することを伝えるようにしてください。
DV冤罪前後のやりとり
DV冤罪の夫婦間の前後のやりとりもまた、証拠の嘘を暴くのに役立つことがあります。
例えば、「暴力をふるった」とDVの疑いをかけられている日の翌日に、円満を示すような夫婦間のLINEがあるとき、特別な事情のない限り、その直前にDVがあったと考えるのは不自然だということになるでしょう。
日常的にDVを行うような人は、メールやLINE、通話のやりとりにおいてもモラハラ気質であることが多いですが、日常的なやりとりの中でそのような暴力性、攻撃性を示すようなものがないのであれば、DV冤罪の嘘の証拠を暴くために役立ちます。
DV冤罪をでっちあげられない予防策
痴漢の冤罪ケースが有名ないように、「やっていないことの証明」は非常に困難です。そのため、「DVがあった」と主張する側に証明責任があり、「DVをしていない」と反論する側は証明の必要はありません。「やっていない」ことの証拠が出せないことを専門用語で「悪魔の証明」といいます。つまり、誰も証明できないという意味です。
特に、家庭内で行われるDVは、突然の冤罪をかけられても反論するのに十分な証拠が手元にあることは少なく、目撃者もいないのが通常です。DV冤罪をでっちあげられないためには、日常的な注意が必要となります。
そこで、DV冤罪のでっちあげを受けてしまわないための普段の注意点を解説しておきます。
日頃から疑わしい行為を避ける
DV冤罪のでっちあげを回避するための予防策の1つは、日ごろからDVを疑われる行為を避けることです。
DVを行うような夫にはモラハラ気質の人が多いです。例えば、モラハラと評価できるような暴言、誹謗中傷をしたり、モラハラととれるLINEやメールを送ったり、しつこく電話をかけ続けたり、逆に一切会話をしなかったり家の中でも目をあわせなかったりといった行為は、「実際にはDVまであったのではないか」と推認する事情となってしまうことがあります。
酔って帰ってきて怒鳴ったり、妻に対して理不尽な発言をすることは避けたほうがよいでしょう。
特に、DV冤罪をでっちあげようと相手が計画しているとすれば、些細な出来事でも、DVを証明する証拠として利用されてしまうかもしれません。
離婚を検討している人の中には、後の離婚の話し合いを有利に進められるよう、毎日の日記をつけている人も多いです。そのため、あなたがDVを疑わせるような行為をすれば、その事実は毎日日記につけられ、その積み重ねは、まさに暴力夫、DV夫のイメージを作出することにつながります。
早期に弁護士に相談する
やってもいない嘘のDV被害を主張され、暴力夫、DV夫呼ばわりされた上、慰謝料まで支払わなければならないのでは、目もあてられません。このような最悪の事態を避けるためにも、DV冤罪をでっちあげられるおそれのある場合には、早期に弁護士に相談するのがおすすめです。
DV冤罪の相談例の多くは、「突然、妻からDVだといわれた」というものですが、一方で、妻側としては前々から計画的に動いていることがほとんどです。妻は、裏で弁護士に相談し、DVの証拠はどのようなものが重視されるかアドバイスを受けたり、証拠収集の方法を聞いたりしています。
「やってない暴力なのだから、否定していれば負けることはない」と安易に考えてはなりません。
妻側の弁護士が悪意をもってDV冤罪を助けていることは少ないと思いますが、妻が嘘をついて「DVを受けている」と相談すれば、証拠収集についてアドバイスするのは当然です。その結果、弁護士の指導のもと、しっかりと収集し、場合によっては偽造された証拠をもとに裁判をすれば、DV冤罪といえども慰謝料請求、離婚要求が認められてしまう可能性は十分にあります。
このような事態を避けるため、DV冤罪をかけられる兆候を少しでも感じた場合には、早めに離婚問題に強い弁護士にご相談ください。
離婚協議を有利に進める
万が一、DV冤罪をでっちあげられそうな状況になってしまったとしても、それ以外の離婚条件をうまく話し合うことで、離婚協議を有利に進めることができないかどうか、検討してみてください。
DV冤罪を計画的に進められたとしても、あなたとしても離婚はしかたないと考えている場合、離婚協議を誠実に、かつ着実に行うことによって、有利な条件で離婚をするよう進めていくこともできるかもしれません。特に、DV被害を訴えている相手も、結局は離婚が目的だったというとき、話し合いをすることでスムーズに進められることもあります。
また、DVの被害を配偶者(パートナー)が主張していたとしても、その主張に具体性がなく証拠も乏しいとき、慰謝料は払わないまま離婚することを求める方針も考えられます。
DV冤罪を名誉棄損で訴えられる?
暴力をふるった事実がないにもかかわらず「暴力夫」、「DV夫」呼ばわりされ、「名誉毀損なのではないか」というご相談を受けることがあります。指摘されたDVが存在せず、嘘だったとき、名誉棄損で訴え返すことができるのでしょうか。
「名誉棄損」は、刑法、民法のそれぞれに定められています。
刑法では「公然と事実を摘示し、人の名誉を棄損した」とき名誉毀損罪となり、「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」という刑事罰を受けると定められています(刑法230条)。また、民法上は不法行為となり、損害賠償請求(民法709条、710条)できるほか、原状回復措置としての謝罪広告(民法723条)を請求できます。
しかし、これらの民法、刑法で定められた名誉棄損はいずれも、「公然と」事実を摘示することがその要件とされてます。これは不特定または多数の第三者に対して、事実を示すことを意味するとされてします。
つまり、夫婦間で「暴力夫」「DV夫」呼ばわりされたり、DV冤罪をでっちあげられて慰謝料請求されたり離婚要求されただけでは名誉棄損とはならず、インターネット上に公開したり匿名掲示板に書き込んだり、SNSで公表したりしたときにはじめて、名誉毀損にあたる可能性があるわけです。
なお、インターネット上の匿名の書込みによる誹謗中傷ついては、その書込みが本当に妻のものであるかを特定する必要があるため、発信者情報開示請求という手続きが必要となります。
まとめ
今回は、DV冤罪のでっちあげを受けてしまったときの適切な対処法について解説しました。
DV冤罪をでっちあげてまで有利な解決を狙おうとする相手は、かなり過大な離婚条件を勝ちとろうとしているか、もしくは、本来であれば離婚が困難な有責配偶者(例えば、不倫・浮気をしているなど)の可能性があります。
証拠を偽造してまで、存在しないDVを主張されてしまうケースでは、冤罪を晴らす側も適切な準備が必要となります。
当事務所のサポート
弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚分野について専門性が強く、豊富な知識と経験を有しています。
DV冤罪のケースについても取扱い事例が多く、証拠の準備、反論として指摘するポイントについてわかりやすくお教えすることができます。DV冤罪の疑いを感じる方は、ぜひお気軽にご相談ください。
モラハラ・DVのよくある質問
- やってもいないDV冤罪をでっちあげられたとき、どう対応したらよいですか?
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DV冤罪を受けてしまったら、まずは嘘のDVについて相手の主張をよく聞き、証拠をよく見て、反論の準備をするようにしてください。もっと詳しく知りたい方は「DV冤罪のでっちあげへの正しい対応6つ」をご覧ください。
- 相手から出された嘘のDVの証拠をあばく方法はありますか?
-
嘘の証拠までつくるDV冤罪ケースは深刻ですが、よく分析すれば、矛盾点が生じていることも多いものです。客観的な事実と相違がないかなど、よく検討するようにしてください。詳しく知りたい方は「DV冤罪の証拠の嘘を突き崩す方法」をご覧ください。