離婚・男女問題

離婚届を勝手に出されてしまったときの対応!犯罪?取り消せる?

2021年6月23日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

離婚届を勝手に出された

夫婦の一方が、相手に無断で、承諾を得ずに勝手に離婚届を提出してしまうことがあります。勝手に離婚届が出されてしまっていたとしても、役所では形式の整った離婚届が出されている限り離婚が成立してしまいます。

離婚は、夫婦の双方の合意なくして成立しないのが原則です。しかし、離婚届は、夫婦それぞれの欄に署名・捺印がされていれば、役所に受理してもらうことができてしまうため、このような相談は後を絶ちません。

婚姻届は夫婦で一緒に提出しにいく方が多いでしょうが、離婚届は夫または妻が単独で出したり、代理人である弁護士が出したりするケースもあるため、役所も「相手の同意がないのでは」とは疑いません。

今回の解説では、

  • よくある無断で離婚届が出されるケースと、その対処法
  • 離婚を取り消す方法
  • 勝手に離婚届を出したことに対する責任追及の方法

といった問題について、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

離婚届が勝手に出されてしまう問題とは

離婚届を勝手に出された

「離婚届が勝手に出されてしまう」といってもなかなか現実味がないかもしれません。実際にそのような非常事態に直面しなければ、どのようなケースで「離婚届が勝手に提出されてしまう」という問題が起こるのか、容易には想像しづらいことでしょう。

しかし、実際にはこのような問題はよく相談のある事例です。役所は、離婚届の形式面しか審査せず、実際に離婚の同意があるかどうかまで調べません。

初めに、離婚届があなたの承諾なく勝手に出されてしまうケースにどのようなものがあるのか解説します。

署名押印を偽造されるケース

「離婚届が勝手に提出されてしまう」ケースの1つ目は、離婚届に記載すべきあなたの署名押印が、相手方配偶者によって偽造されてしまうケースです。

署名押印が偽造されたものでも、役所はその署名が本物かどうか、印鑑が実印かどうか、といった点をチェックしてはくれません。

離婚届の夫・妻の欄のそれぞれに正しい氏名が記載されており、印鑑が押されていれば、役所には受理されて離婚が成立してしまいます。

預けた離婚届を同意なく提出されるケース

「離婚届が勝手に出されてしまう」ケースの2つ目は、離婚届に記載された署名捺印は本物だが、離婚届の提出には同意していなかったというケースです。

提出の意思のない離婚届を作成してしまう例とは、不貞行為(不倫・浮気)が発覚し、その責任として「次不倫したら離婚届を提出する」と言われて署名押印済みの離婚届をあずけてしまうケースが典型例です。

このような場合、離婚届を提出して離婚をする気はないものの、浮気をしたことに負い目を感じて、相手の言うなりになって離婚届に署名押印をしてしまっているという方も多いです。

途中で気が変わったり、円満な夫婦関係に戻ったりしても、一度署名押印した離婚届がある以上、その離婚届を勝手に出されてしまうと、役所に受理されて離婚が成立してしまうことになります。

勝手に出された離婚届を「無効」にする方法

離婚届を勝手に出された

離婚は夫婦双方の意思の合致によって成立します。結婚が夫婦双方の合意がなければ成立しないことは当然のことであり、夫婦関係のはじまりがそうである以上、その終わりである離婚もまた合意によるのは当然です。

離婚の意思がお互いに合致していない限り、勝手に離婚届を出されてしまったり、離婚届の署名押印を偽造されてしまったりしても、その離婚届は無効です。

とはいえ、無効な離婚届であるとしても、一旦は役所に受理され、離婚が成立してしまっていますから、あなたの側で離婚届が無効であることを証明し、取り消すための手続きを行わなければなりません。

そこで次に、勝手に出された離婚届を「無効」にするための方法について解説します。

調停・審判で、離婚を「無効」にする

あなたの同意がない離婚届は法的には無効ですが、役所は、形式をきちんと整えていれば離婚届を受理してしまいます。「無効な離婚届であるかどうか」を役所が調査しれくれるわけではありません。

そのため、勝手に提出された離婚届を「無効」と主張し、離婚を取り消すためには、あなたが離婚届の無効を証明しなければなりません。

具体的には、家庭裁判所に調停を申し立てて、相手方が「離婚届が無効である」ということに合意する場合には、「合意に相当する審判」を入手し、これを役所に届け出て戸籍を訂正してもらう、という手続きの流れになります。

しかし、調停手続きでは、離婚届を勝手に出した相手が「離婚届が無効である」ということに同意してくれないことも多いです。このような場合、調停は不成立となり、その後に離婚無効を請求する訴訟を起こす必要があります。

訴訟で、離婚を「無効」にする

勝手に離婚届を提出してしまった相手が、「離婚届が無効である」ことに調停で合意してくれないときは、家庭裁判所に訴訟を起こして、「離婚届が無効である」という確定判決を得る必要があります。

訴訟は、話し合いを重視する手続きである調停とは異なり、裁判所が証拠を審理し、判断を下してくれます。離婚届が偽造であることや、あなたの意思に反して一方的に提出されたものであることを証明できれば、裁判所の判決で離婚の無効が認められます。

勝手に出された離婚届の無効を争うときには、「調停前置主義」がとられています。つまり、訴訟を起こす前に、まずは調停を申し立てて話し合いを行わなければならないというルールです。

そのため、離婚届があなたの意思に反して勝手に提出されてしまい、相手が話し合いに応じてくれない可能性がある場合にも、速やかに調停申立てをしなければなりません。

離婚を「無効」にするために必要な証拠

ここまで解説した調停・審判、訴訟によって離婚届の「無効」を認めてもらうためには、「離婚届が偽造であった」とか「離婚届があなたの意思に反して勝手に出された」ということを証拠によって証明しなければなりません。

相手方が、「離婚届を勝手に提出してしまった」、「離婚届を偽造してしまった」と認めてくれればよいのですが、犯罪行為ともなる重大な行為であるため、相手が協力的に認めてくれるということは考え難いです。むしろ、「あなたが自分で書いたはずだ」、「不貞の責任として預けたとき、出しても構わないと言っていた」などの反論を受けることも多いです。

離婚届が無効であることを証明するための証拠は、ケースによって次のようなものを準備してください。

  • 離婚届に押された印鑑の保管場所
  • 離婚届を預けた理由
  • 離婚届を預けた際の録音
  • 当時の日記
  • メール、LINE、SNSなどのやりとり

戸籍を訂正する手続が必要

最後に、裁判所の手続きで「離婚が無効である」という審判・判決を勝ち取った場合、離婚を無効とするためには、戸籍訂正の申請を行う必要があります。

戸籍訂正の申請は、審判または判決が確定した日から1か月以内に、確定した審判書、判決書の謄本と、家庭裁判所で発行してもらえる確定証明書を、役所に提出することで行うことができます。

「合意に相当する審判」の審判書、離婚無効請求訴訟における判決書は、いずれも確定をすれば、戸籍を訂正するための書類となります。

離婚届を勝手に出すと犯罪になる

離婚届を勝手に出された

相手の同意なく、無断で離婚届を出してしまうことは「犯罪行為」です。つまり、刑法によって禁じられる行為で、違反すると逮捕されたり刑事罰を科されてしまったりするということです。

離婚届の無断提出は、犯罪という意識なく軽い気持ちで行われることが多いですが、れっきとした犯罪行為です。該当する可能性のある罪には次のようなものがあります。

電磁的公正証書原本不実記録罪

結婚・離婚などの身分関係は、国の役所が戸籍によって公的に記録しています。離婚届などの手続きについて不正を行うことで、国の役所による記録を誤ったものに変更してしまうことができてしまいます。

今回解説するように相手の同意のない離婚届を勝手に出すことは、夫婦関係についての戸籍を誤った内容に変更する行為であり、電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法157条1項)にあたります。

電磁的公正証書原本不実記録罪にあたると、刑法157条1項によって「5年以下の懲役また50万円以下の罰金」に処せられる可能性があります。

刑法157条1項(公正証書原本不実記載等)

1. 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

有印私文書偽造罪・偽造有印私文書行使罪

戸籍が公的な文書であるのに対し、離婚届自体は「私文書」です。ただし、離婚届には押印がなされていることから、私文書の中でも「有印私文書」として保護の必要な重要書類とされています。

夫婦の一方の欄に、相手の署名を勝手に書いたり、相手の印鑑を勝手に押したりする行為は、有印私文書である離婚届を偽造する違法行為です。加えて、違法に作成した文書を提出することもまた違法行為です。その双方を合わせて、有印私文書偽造罪・偽造有印私文書行使罪(刑法159条1項、161条)にあたります。

有印私文書偽造罪・偽造有印私文書行使罪にあたると、刑法159条1項、161条により「3か月以上5年以下の懲役」に処せられる可能性があります。

刑法159条1項(私文書偽造等)

1. 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

刑法161条1項(虚偽私文書等行使)

1. 前二条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。

重婚罪

勝手に離婚届を提出したり、偽造した離婚届を提出したりすると、その離婚は後に解説するとおり、調停や訴訟で無効と判断される可能性があります。

このようなとき、離婚届提出後に別の人との間での婚姻届を提出すると、重婚罪(刑法184条)が成立する可能性があります。

重婚罪にあたると、刑法184条により「2年以下の懲役」に処せられるほか、民法によって重婚にあたる後の婚姻が取り消しうることとなります。

刑法184条(重婚)

配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、2年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。

刑事罰の時効は5年

離婚届を勝手に提出したり偽造したりする行為は、以上のとおりれっきとした犯罪行為です。とはいえ、警察は民事不介入が原則であり、捜査を開始し、逮捕・送検してくれることはなかなか難しいです。犯罪行為の責任を追及したいのであれば、告訴をすることとなります。

上記で解説した犯罪行為の法定刑はいずれも「長期5年未満の懲役」に該当することから、刑事訴訟法250条により、公訴時効は3年と定められています。

刑事訴訟法250条

1. 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については三十年
二 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については二十年
三 前二号に掲げる罪以外の罪については十年
2. 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年

つまり、離婚届を勝手に受理されてしまってから3年間に告訴を行わなければ、刑事事件としての責任追及は難しいということです。また、時間の経過とともに証拠は散逸していきますから、捜査機関に立件してほしいと考えるのであればできるだけ早めに告訴しなければなりません。

告訴して捜査機関(警察・検察)に捜査してもらったり刑罰を科してもらったりするためには、「他の異性と結婚したい」、「不倫相手と結婚したい」などの相手の悪質性を示す動機を立証することが有効です。

不受理申出をして、離婚届の無断提出を防ぐ

離婚届を勝手に出された

今回の解説は、既に離婚届を無断で提出されてしまったり、署名押印を偽造されてしまったりしたときの事後対応です。このようなとき、調停・審判や訴訟で証拠によって違法性を証明し、離婚の無効を認めてもらい、戸籍を訂正してもらうことができると解説しました。

一方で、勝手に離婚届を提出されてしまわないようにするための対策として「離婚届不受理申出」という制度が用意されています。

この不受理申出は、役所に申出を行っておくことによってあなたに離婚の意思がないことを明らかに示し、その後に勝手に離婚届が提出されたり離婚届が偽造されたとしても、受理されないようにしておいてくれる制度です。

不受理申出には特に有効期限はなく、撤回するまで無期限に、離婚届の無断提出を防いでくれる効果があります。これにより、不受理申出が撤回されるまでの間は、あなたの意思なく離婚届が受理されることはありません。

参考解説

勝手に離婚届を出されたとき、弁護士に依頼するメリット

離婚届を勝手に出された

無断で勝手に離婚届を提出されてしまい、自分の意思に反して離婚させられてしまったとき、いち早く戸籍を元に戻すためには、弁護士に依頼することが有効です。

そのまま放置しておけば、相手が他の異性と結婚してしまったり、無効を証明するための証拠が失われてしまったりします。あなたの同意のない離婚届は法的に無効ではあるものの、放置しておくと、事実上、元の円満な夫婦生活に戻ることは困難です。

勝手に出された離婚届の無効を主張するためには、家庭裁判所における手続きや法律の専門知識が必要となるため、弁護士に依頼することに大きなメリットがあります。

調停での話し合いを有利に進められる

離婚無効を争うための調停は、裁判所で行われるとはいえあくまでも話し合いを基本とします。

そのため、調停委員と会話をしながら進める必要があるため、調停期日における手続をよく理解して、戦略的に、調停委員を説得しなければ、有利に進めることはできません。

離婚問題を多く取り扱う弁護士は、家庭裁判所の調停に多く出席した経験から、調停委員に有利な判断をしてもらうための戦略的な話し方・ふるまい方を心得ています。特に、相手に弁護士がついているとき、直接交渉は控えなければなりません。

なお、離婚届の撤回を求め、復縁を望むようなケースでは、協議や調停の途中に相手に手紙を出す方法が有効です。

参考解説

申立書・訴状の記載に迷わない

勝手に離婚届を出されてしまったり、偽造した離婚届を出されてしまったりしたときに、調停・審判や訴訟など、面倒な法的手続が必要なことは納得いかないかもしれません。

しかし、役所が、形式的な審査しかしないのがルールであるため、離婚の無効を証明したいのであれば、あなたが調停申立てや訴訟提起をしなければなりません。

調停を申し立てるときには「調停申立書」、訴訟を提起するときには「訴状」が必要であり、それぞれ法的な要件を満たした書面を、必要な部数用意する必要があります。戸籍や印紙、郵券なども必要となります。

離婚問題を多く取り扱う弁護士は、家庭裁判所に提出しなければならない調停申立書、訴状などの書面を書きなれていますし、書式も豊富に準備しております。

法的に有効な証拠収集ができる

離婚届が無効なものであることを、家庭裁判所に理解してもらわなければ、離婚の無効を勝ち取ることはできません。そして、家庭裁判所を説得するためには、証拠が重要となります。

離婚届を、あなたの意思に反して勝手に提出されてしまったことを、裁判所に対して説得的に理解してもらうための証拠を収集する必要があります。

そのためには勝手に提出された離婚届の写しを入手したり、その他に、離婚届提出の時点で、離婚の意思がなかったことを示す証拠を収集する必要があります。

離婚問題は浅野総合法律事務所にお任せください!

離婚届を勝手に出された

今回は、あなたの意思に反して離婚届を勝手に出されてしまった事例について、対応方法を解説しました。預けておいた離婚届を無断で提出されてしまったとか、離婚届の署名押印を偽造されてしまったなどといった事例について、よく相談を受けることがあります。

離婚は夫婦双方の同意がなければ成立しませんから、勝手に出された離婚届は「無効」です。しかし、この「無効」を認めてもらい、戸籍を修正してもらうためには、裁判所において調停・審判や訴訟で立証する必要があります。

不倫やDV・モラハラなど、過去に行った自分の行為が後ろめたく、離婚届を勝手に出されてしまっても泣き寝入りしている方もいます。

しかし、どのような責任があっても、離婚条件については離婚前に十分話し合いをすることが当然であり、離婚届を勝手に出すという卑劣な行為についてはきちんと戦わなければなりません。

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「離婚問題」に注力し、豊富な実績を有しています。離婚は身近な問題ですが、実は多くの法的リスクを内在しています。

自身での解決が難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

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