「妻が別れてくれない」、「妻が離婚してくれない」という法律相談を、男性側(夫側)からよくお受けします。今回は、離婚してくれない妻と別れる方法を解説します。
妻が別れてくれないとき、それでもなお離婚したいなら、次の手順で進めるようにしてください。
- 「なぜ離婚したくないのか」、「なぜ別れてくれないのか」という妻側の理由を考える
- 妻側の理由に応じた対策を立てる
妻側の視点に立って考えるのがポイントです。妻が離婚したくない理由、別れたくない理由を解決できれば、すんなり離婚に応じてくれる可能性もあるからです。
そして、民法に定められた法定離婚原因があるときは、話し合いではどうしても妻が離婚に応じてくれないなら、思いきって離婚調停、離婚訴訟に進めることで「離婚したい」という目的を達成できます。
- 妻が別れてくれない理由は、離婚に応じると妻や子どもにデメリットがあるから
- 妻が離婚したくないのは、経済的理由が大きいが、それだけではない
- 困難なケースでも、あきらめず離婚調停、離婚訴訟することが早期離婚につながる
なお、男性側(夫側)の離婚について、もっと深く知りたい方は、次のまとめ解説をご覧ください。
妻が離婚を拒否する理由は?
あなたが離婚したいと強く望んでいるのに、妻がなかなか離婚に応じてくれないとき、「なぜ離婚してくれないのか」、「なぜ別れてくれないのか」という妻側の理由を検討するようにしてください。
別れてくれない理由、離婚を拒否してくる理由ごとに、夫側でとるべき適切な対策がことなるからです。よくある妻側の理由には次のものがあります。
当事務所へご相談いただくケースのなかには、「離婚してほしい」という男性側の主張だけを押し付けてきたからうまくいかないのではないか、と思えるご相談は少なくありません。話し合いと合意により「協議離婚」を成立させることが目的なら、まずは相手の意図や主張を理解することが大切です。
【理由1】離婚しないほうが楽だから
「離婚をしたい」と何度も妻に求めても断られ、理由も明らかにしてもらえないというときによくある理由が「離婚しないほうが楽だから、という抽象的な理由です。このような軽い理由ではなかなか納得いかないでしょうが、まずはそう思う妻側の気持ちに理解を示してください。
離婚をすることはかなり手間がかかります。離婚届を記載するだけでなく、両親や親族、職場に離婚したことを説明し、理解を得ることに時間と手間を要します。
特に、婚姻期間が長く、職場でも氏を変更して新しい姓で仕事をしていたり、子どもの親同士の交流があったりすると、「離婚をすると世間体が悪い」という点が、妻が離婚に応じる大きな支障となることがあります。
また、離婚をしたという過去(離婚歴)は戸籍に残るため、再婚するときにも知れることになります。「離婚歴をつけたくない(バツをつけたくない)」という点が、妻が離婚に応じない理由となるケースもあります。
【理由2】経済的に苦しいから
夫側がとても高収入だったり、そうでなくても夫婦の収入に格差があったり、結婚を機に妻が主婦になって無収入の状態であるったりといったケースでは、経済的な理由が、離婚の大きな支障となります。
籍を入れたままであれば、たとえ夫婦関係がうまくいっていなくても、別居中の生活費(婚姻費用)として毎月一定額をもらうことができますが、離婚してしまえばこの収入は途絶えてしまいます。
「離婚をすると、経済的に困窮してしまう」という理由で妻が離婚に応じてくれないことがわかったら、「手切れ金」的な意味合いで解決金を支払ったり、少し多めに財産分与したりすることで早く別れてもらえるケースもあります。
【理由3】財産分与を払いたくないから
夫婦が離婚をすると「財産分与」が発生します。財産分与の基本的な考え方は、夫婦の共有財産について、離婚時に折半(2分の1)する、というものです。
妻が専業主婦として無収入になり、夫は仕事を継続する家庭では、妻の離婚後の生活を守るためのものですが、逆に妻のほうが多くの財産を持つとき、妻から夫に財産分与を支払わなければならないこともあります。「財産分与を払いたくない」ことが、妻が離婚してくれない理由だとわかったときは、まず、法律の正しい考えにしたがって「いくらの財産分与が発生するのか」を検討してみてください。
そもそも、結婚前から持っていた財産や、結婚後であっても親から相続した財産などは財産分与の対象とならない「特有財産」にあたることを、妻が理解していない可能性があるからです。
【理由4】慰謝料を支払いたくないから
不貞行為(不倫・浮気)や暴力が妻側にあったときは、妻から夫に対して慰謝料を払う義務が生じます。
離婚を拒む理由について、明らかにしてこない場合、実は不倫をしていて、その慰謝料を支払いたくないから離婚をしてくれないのだ、といったケースがあります。
一方で、不貞行為は、後ほど解説するとおり、法定離婚原因となり、離婚訴訟をすれば離婚できる理由の典型的なケースです。そのため、妻が不貞行為をしていることを知ったときには、交渉によって協議離婚が成立しなくても、粛々と離婚調停、離婚訴訟を進めていくことが、離婚への近道です。
【理由5】子どもの教育に良くないから
妻から、「離婚をすると、子どもの教育に良くない」といわれることがあります。例えば「小学校に入学するまで」とか、「成人するまで」などと、離婚を先延ばしにされている方もいます。
しかし、「離婚をすることが子どもに悪影響かどうか」はケースによります。例えば、とても仲が悪く、家では常に喧嘩ばかり、もしくは、口も利かない、という場合、夫婦が一緒に暮らすことは、本当に子どもの教育にとって良いこととは言い切れません。
離婚に応じない理由を子どものせいにしながら、実は隠れた理由として経済面の不安がある、というケースも少なくありません。
なお、子どもについて、男性側(父親側)の立場で争うときは、次の解説もあわあせてご覧ください。
【理由6】他の女性にとられるのが悔しいから
子どももおらず、離婚時に多額の財産分与、慰謝料、解決金などを支払うことを約束しており経済的な不安もない、というケースでも、「妻が離婚してくれない」という相談は発生します。
不自由なことなど何もないのではないか、と思えるようなケースでも、妻が離婚をしてくれない理由には、感情的な理由がひそんでいる可能性があります。
夫が不倫をしており、慰謝料は十分に支払うとしても、「他の女性にとられるのが悔しい」「あの女と幸せになるくらいだったら、意地でも離婚したくない」といった感情的な問題が、離婚に応じてくれない理由の背景にあるケースです。
離婚したくないと拒否する妻と離婚する方法
ここまでの解説で、「離婚をしたくない」と主張する妻側の理由に思い当たるものはありましたか?
いずれも、弁護士のもとに寄せられる相談のなかで、妻側が離婚をしたくない理由によくあるものばかりですから、これらにあてはまるときには、「それでもなんとか離婚を実現する」という道筋をお示しできるケースが多いです。
そこで次に、離婚したくないと拒否する妻と、離婚する方法について、次の4ステップに分けて解説します。
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【方法1】法律相談する
離婚をしたくないと拒否する妻と離婚をしたいと望むとき、はじめに離婚問題を多くとりあつかう弁護士に法律相談してください。
ここまで「離婚をしたくない」と主張する妻側の理由の典型的な例を解説しましたが、これらの理由について、妻側から積極的に、夫に対して教えてもらえることは少ないです。妻側としては、「離婚をしたくない」と主張するわけですから、その理由まで詳細に夫に説明してあげる必要はなく、ただ単に離婚を拒否し続け、夫があきらめてくれれば、目的を達成できるからです。
今後、離婚の協議、離婚調停、離婚訴訟へと進めていくにあたり、妻の主張や交渉過程から、妻が離婚をしたくない理由を察して、これに適した対策を打ちながら、「裁判に進めることが得かどうか」も検討しなければなりません。
離婚訴訟へと進めていき、強制的に離婚することができるのであれば、妻側の主張に対してそれほど譲歩する必要がない場合もあります。
「離婚したい」と考える夫側の主張について、法的にも正しい、認められる主張なのかどうかを最初に知っておくためにも、弁護士への法律相談が有益です。「離婚」というよくある一般的な問題であっても、法律問題について、自己判断は危険です。
【方法2】別居する
離婚したくないと主張する妻との離婚を強く推し進めていくためには、まずは別居することが重要です。
法定離婚原因がなく、離婚訴訟に勝てそうにないケースでも、ひとまず一定の別居期間を確保することにより、裁判所にも夫婦関係が破綻していることを示すことができ、離婚しやすくなるからです。
夫婦には、同居義務(民法752条)が定められていますが、夫の意思によってこれを強制することは、裁判によっても不可能です。
これ以外にも、離婚を進める早期段階で別居しておくことには、次のような多くのメリットがあります。
- 離婚したいという強い意思を示せる
- 本気度、覚悟を妻に示せる
- 別居期間が長くなるほど、妻側の離婚への抵抗を減らせる
- 外面的に離婚と同じ状況をつくり、周囲の理解を得られる
- 一時的な感情の対立を抑えることができる
ただし、別居期間中の生活費として婚姻費用を払わなければなりません。
万が一、自分が不貞行為(不倫)をしていて、別の人と結婚したいという場合も、別居をすることによって、不貞行為(不倫)の証拠を捕まれづらく、慰謝料請求などの責任追及をされづらくなります。
ただ、「離婚したくない」と主張する妻と離婚をするために、不貞行為(不倫)をすることは大きなハードルになりますので、注意が必要です。自分側に非がある場合に、裁判所に離婚を認めてもらうことがとても難しいからです。
【方法3】離婚調停を申し立てる
妻が別れてくれず、離婚の話し合いが困難なときには、離婚調停を申し立てます。
話し合いによって解決できるならよいですが、夫婦間の意見が真っ向から対立しているとき、話し合いをどれだけ長期間続けても、これ以上は意味がないこともあります。当事者間での話し合いが平行線となったとき、第三者である調停委員の仲介のもとに離婚についての話し合いをする離婚調停が有益です。
調停委員はあくまでも中立な第三者として夫婦間を取り持ちますが、夫側が、離婚の意思が固いことを伝え続ければ、別れてくれない妻に対して、「今後、夫婦として継続していこうことは難しい」という現実を伝え、客観的な立場から説得してもらうことができます。
ただし、離婚調停は、あくまでも話し合いの延長に過ぎないため、「離婚をしたくない」という妻の意思が固いときは、調停不成立で終了します。
【方法4】離婚訴訟を提起する
夫婦が離婚すべきかどうかについて、最終的な決定を行うのが離婚訴訟です。離婚訴訟は、離婚調停を先にしなければ行うことができません(調停前置主義)。
離婚訴訟では、民法に定められた法定離婚原因(民法770条1項)がある場合には、妻側がどれほど「別れたくない」と主張しようとも、判決によって離婚を成立させることができます。
そのため、妻側がどうしても別れてくれない場合で、法定離婚原因が存在するのではないかと考えられるとき、早めに離婚訴訟まで進めていくことがおすすめです。
民法の定める法定離婚原因は次のとおりです。
民法770条1項
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
民法(e-Gov法令検索)
妻側が、かたくなに離婚を拒絶している場合でも、これらの離婚原因にあたる事情がある場合には、離婚訴訟を行う方法によって、離婚できます。
妻側の不貞行為とは、夫以外の人と性的な関係を持つことです。不倫・浮気のあるときは、興信所・探偵を依頼するといった証拠収集を検討してください。
妻側の悪意の遺棄とは、同居義務違反、生活費の支払をしないなど、夫婦としての義務を果たさないことです。
妻が強度の精神病にかかり、結婚生活の継続が難しいほど重度のときには、離婚することができますが、今回解説するように「別れたくない妻」と離婚をするときにこの条件を満たすことは難しいでしょう。
「その他婚姻を継続し難い重大な事由」には、モラハラ、DV、経済的虐待、正確の不一致、家族との不和等さまざまな事情があるものの、「重大な事由」であることを主張する必要があります。
困難なケースでも妻と離婚できる?
妻が離婚に対して強硬に反対するとき「永遠に離婚できないのではないか」と不安に思うのではないでしょうか。
最後に、妻が別れてくれない事案のなかで、特に離婚を実現するのが困難なケースについて、どのように対応したら早期に離婚できるのかを、弁護士の解決事例を通じて説明していきます。
【ケース1】妻が無茶な離婚条件をつけてきた
妻が、離婚をしたくないがために、無茶な離婚条件を突き付けてくる場合があります。
「離婚をするのであれば、慰謝料1億円ほしい」と、高額の慰謝料を突然ふっかけられました。
さらに、財産分与については婚姻期間中にためたすべての貯金を請求され、「離婚するなら子どもには一切会わせない」等、無茶な離婚条件を提示されました。
このように、妻からの要求が過大で離婚が難しいというケースでは、まず、その離婚条件を飲まなくても離婚できる道がないかどうかを検討する必要があります。
特に、妻側に法定離婚原因があるときには、離婚訴訟において強制的に離婚することができるため、妻側の条件に応じてしまうよりも、離婚調停、離婚訴訟という順に進めていったほうが有利なケースもあります。法的手続きを先に進めることで、妻に対しても、「無茶な離婚条件に応じる可能性はない」と理解させ、条件が緩和される可能性を上げることもできます。
【ケース2】夫側に不貞行為などの責任がある
夫側に不貞行為があるケースでは、夫が「有責配偶者」になります。
「有責配偶者」とは、「離婚について、その原因を作った側の配偶者」という意味です。有責配偶者からの離婚請求は、裁判においてはとても認められづらく、ハードルの高いものです。
過去に不倫をしてしまったことがバレていて、証拠をとられています。
そのため、妻はこのことを根に持って、絶対に離婚しないの一点張り。まったく離婚に応じれくれる気配がありません。
あなたが不倫をしてしまっていて、妻にバレていると、離婚のハードルはいっきに高まります。しかし、このケースでも、早く離婚したいのであれば、離婚調停、離婚訴訟を進めるべきです。
有責配偶者といっても絶対に離婚できないわけではありません。
- 別居期間が長期のケース
- 妻側にも非があるケース
- 離婚しても妻の不利益がそれほど大きくないケース
といった例では、有責配偶者でも、裁判で離婚が認められた例もあります。
「有責配偶者」が、別居期間のみを理由に離婚をしようとすると、裁判例によれば8年~10年ほどの別居期間を要するケースも見受けられます。離婚調停から離婚裁判に至る流れを進めるのですら、数年を要する場合もあり、早急に着手するのがおすすめです。
【ケース3】妻が、離婚訴訟に出席してくれない
先ほど解説したとおり、夫婦間の離婚についての争いは、話し合い(協議)や調停で解決しない場合には訴訟となり、夫婦関係が破綻していれば、離婚条件はさておくとしても裁判所に離婚を認めてもらえる可能性は十分あります。
ところが、離婚に応じてくれない妻が、離婚調停に出席しない、離婚訴訟に出廷しないといったケースがあります。
離婚の話し合いが難しくなったため、離婚調停を申し立てましたが、妻が出てきてくれず、話し合いができないまま調停不成立で終了してしまいました。
調停委員からは、離婚調停はあくまでも話し合いなので、妻が出席しないとこれ以上は進められないといわれました。
離婚調停はあくまで話し合いのため、相手が欠席すると終了となります。しかし、その後に行う離婚訴訟では、訴訟に参加しない当事者は最終的に敗訴することとなります。つまり、別れてくれない妻との離婚が実現できるわけです。
訴訟では、言い分があるなら、出席して反論する必要があるからです。正当な理由なく訴訟を欠席すると、相手の言い分を認めたこととなり、これにもとづいて判決が下されます。離婚理由について夫側がきちんと主張立証できていれば、妻が欠席すれば、妻側の敗訴が決定し、離婚することができます。
まとめ
離婚をしたくない、と拒否する妻と話し合いをし、離婚を実現することは、1人ではなかなか難しいことがあります。
特に、離婚をしたくないという妻の主張があくまでも建前であり、実際には異なる理由が心中にあったりするとき、これを的確に察知し、離婚をするための方策をとらなければ、スムーズな離婚はできません。
むしろ、妻側から、離婚の条件として高額な解決金を要求されたり、いちじるしく不利な離婚条件を突き付けられたりしたとき、離婚調停、離婚訴訟へ進めることとも比較して、「どちらの方が得なのか」を検討する必要があります。
当事務所の離婚サポート
弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚問題に注力し、解決事例を豊富に有しています。
妻側が離婚を拒否してくるとき、弁護士に依頼することで、速やかに、より有利な条件で離婚を実現できるケースがあります。ぜひお気軽にご相談ください。
男性側の離婚によくある質問
- 妻は、なぜ離婚してくれないのでしょうか?
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妻が離婚してくれない、妻が別れてくれないというとき、その理由の多くは経済的理由ですが、これに限りません。大切なことは、理由を知り、的確な方針を選択することです。もっと詳しく知りたい方は「妻が離婚を拒否する理由は?」をご覧ください。
- 離婚してくれない妻と別れる方法は?
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妻が別れてくれなくてもあきらめてはなりません。まずは弁護士に法律相談して戦略を立て、離婚調停、離婚訴訟の順で進めていきます。もっと詳しく知りたい方は「離婚したくないと拒否する妻と離婚する方法」をご覧ください。