離婚では、金銭トラブルだけでなく、精神的なストレスも生じます。
財産分与は、婚姻中に夫婦が築いた財産の分配が基本ですが、離婚原因が相手にあるとき、責任追及のために「慰謝料的財産分与」を請求するケースもあります。慰謝料的財産分与は、「慰謝料」と「財産分与」の2つの側面を併せ持つものの、いずれとも異なり、離婚時の金銭的な条件について柔軟に解決するために利用されます。

慰謝料に納得いかないので財産分与で調整したい

慰謝料的財産分与を含めた有利な解決はないか?
基本的な「清算的財産分与」だけでは納得がいかないとき、相手に非があるなら、慰謝料的財産分与の請求を検討しましょう。また、不貞行為の疑いがあって慰謝料を請求したいが証拠が必ずしも十分でないときも、慰謝料的財産分与で調整するケースがあります。
いずれの場合も、財産分与を約束するなら、「どのような性質の分与か」を夫婦間で話し合い、明確にしておくことが大切です。
今回は、慰謝料的財産分与の考え方と、有利に進める方法について弁護士が解説します。
- 財産分与には清算的、扶養的、慰謝料的といった3つの性質がある
- 相手に離婚の責任があるなら慰謝料的財産分与による増額を目指すべき
- 慰謝料的財産分与を有利に解決するには、慰謝料と同じく証拠が重要
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慰謝料的財産分与とは

慰謝料的財産分与とは、離婚時の財産分与の中で、慰謝料的意味合いを持つものです。
財産分与は、夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に公平に分配する手続きですが、それだけでなく、離婚原因となった配偶者の有責行為(不倫や浮気、DVなど)で生じた精神的苦痛を補償する意味合いを含むことがあります。つまり、通常の財産分与(清算的財産分与)が夫婦の寄与や貢献に基づいて「共有財産」を2分の1ずつ分けるのに対し、慰謝料的財産分与は、精神的苦痛という無形の損害を補償するために金銭支払いをさせる点が特徴です。
慰謝料的財産分与にも、財産分与について定めた民法768条が適用されます。
民法768条(財産分与)
1. 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる
2. 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3. 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
民法(e-Gov法令検索)
この条文の通り、家庭裁判所は、「協力によって得た財産の額その他一切の事情」を考慮して分与の額や方法を決めます。この「一切の事情」の中に、離婚原因や各自の経済状況、精神的被害の程度などを考慮するのが、慰謝料的財産分与です。
したがって、不貞行為(不倫や浮気)、DVといった配偶者の有責行為が明確なケースでは、共有財産の清算に加えて、相手の責任追及や被害の補償といった意味で、慰謝料的要素を含めた財産分与を請求することができます。
なお、慰謝料的財産分与の相場は、責任や被害の程度にもよりますが、不貞慰謝料の相場が100万円〜300万円程度が目安とされる点を参考にすることができます。
「離婚時の財産分与」の解説

慰謝料的財産分与の法的な位置付け

次に、慰謝料的財産分与について、法的な位置付けを解説します。
「慰謝料」や「財産分与(その他の種類のもの)との区別を知ることが、慰謝料的財産分与がどのようなものかを詳しく理解する助けになります。
そもそも慰謝料と財産分与の違いは?
そもそも財産分与と慰謝料は別物で、性質が全く異なることを理解してください。
いずれも、離婚時の争いの中で議論される条件であることは共通します。
しかし、「慰謝料」は、相手の故意または過失による不法行為によって生じた精神的損害に対する賠償金であるのに対し、「財産分与」は夫婦が協力して築いた財産を貢献度に応じて分配する手続きです。慰謝料は離婚や不貞だけでなく、交通事故や暴力など、一般的な不法行為でも問題となります。
つまり、慰謝料は「相手の責任を追及する」という趣旨がありますが、財産分与はそのような意味ではなく、相手の非とは関係なくこれまでの寄与に応じて分配をします。
以上の基本に対し、慰謝料的財産分与は、財産分与の中に「慰謝料」として精神的苦痛への補償の側面も盛り込んだものという特殊性があります。
「不倫による離婚でも財産分与は必要」の解説

慰謝料的財産分与と純粋な慰謝料の違い
純粋な慰謝料は、不貞などの有責行為や離婚そのものに際し、受けた精神的苦痛を賠償する金銭です。これに対し、慰謝料的財産分与は、そのような意味を、財産分与の一環として組み込んでおり、「財産分与」という枠組みの中で一括して解決を目指す点が異なります。
慰謝料を請求するには、有責行為を立証するのに十分な証拠を準備しなければなりません。例えば、不貞行為があったことを立証して不貞慰謝料を請求するケースが典型例です。これに対し、離婚原因となっていることは明らかでも、慰謝料を認めるほどの証拠はないケースで、「慰謝料的な意味合いで、財産分与を少し増額する」という解決策を取るのが、慰謝料的財産分与の典型例です。
慰謝料的財産分与とその他の種類の財産分与の違い
財産分与には、「清算的財産分与」「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」の3種類があり、最もよく見られるのが「清算的財産分与」です。
- 清算的財産分与
夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を、公平の観点から清算する財産分与。 - 扶養的財産分与
離婚後の生活に不安のある配偶者を保護する必要のあるケースにおいて、扶養的な意味合いで認められる財産分与。 - 慰謝料的財産分与
離婚原因を作出した有責配偶者に対する責任追及の意味合いを含んだ財産分与。
実務的には、財産分与のほとんどは清算的財産分与の意味を持っています。慰謝料的財産分与との違いは、相手の責任を追及するという意味合いを含んでいるかどうか、という点です。その意味では、慰謝料的財産分与は、あくまで例外的なケースで認められるものです。
「離婚時の財産分与」の解説

慰謝料的財産分与を請求すべきケースとその理由

次に、慰謝料的財産分与を請求すべきケースと、その理由を解説します。
慰謝料的財産分与は、責任追及という意味合いがあるため、不倫や浮気といった相手の有責行為が前提となります。ただ、純粋な慰謝料との違いを意識し、どのような場合に財産分与の中で一括して解決するメリットがあるのかを理解してください。
一括して効率的に解決すべき場合
原則として、慰謝料と財産分与は全くの別物です。しかし、離婚原因について明確に一方の責任があるとき、慰謝料的財産分与の考え方を用いれば、慰謝料と財産分与を一括して議論することができ、効率的な解決が可能です。
重要なのは、「慰謝料として」「財産分与として」という名目ではなく、「離婚時に結局いくら受け取れるのか(払わなければならないのか)」といった点でしょう。そのため、離婚の責任が一方にあることに争いがないなら、一括して議論し、いくらの支払いが必要なのかを話し合う方が簡便です。
「離婚に伴うお金の問題」の解説

証拠が不足していても公平な補償が必要と考えられる場合
不倫などの被害者側の精神的な損失の補償のために用いられることもあります。
不貞行為(不倫や浮気)について慰謝料を請求しようとしても、必ずしも十分な証拠があるケースばかりではありません。一方の責任で離婚することが明らかなのに、証拠不足などが理由で十分な慰謝料を見込めない場合、財産分与の一部に組み込んで解決することで、全体として離婚時の公平な補償を実現する方法が考えられます。
慰謝料的財産分与を考慮することによって妥当な額を支払わせれば、迅速に、実情に即した解決を実現することができます。
「離婚裁判で証拠がないときの対処法」の解説

早期の離婚を希望する場合
不倫をされた側が早期離婚を希望する場合、「慰謝料について徹底的に争う」という方針を取りづらいことがあります。このようなケースでも、慰謝料的要素を財産分与に組み込んで解決すれば、責任追及をすることができる一方で、争いを長期化させずに速やかに離婚できます。
請求される側にとっても、明示的に「慰謝料」として払うのでなく財産分与の一環とすれば、「自分の非を認めた」という色彩を薄めることができ、合意しやすいメリットがあります。
「協議離婚の進め方」の解説

慰謝料的財産分与を請求する方法

最後に、慰謝料的財産分与を請求する方法と、有利に進めるための注意点を解説します。
慰謝料的財産分与の請求の流れ
まず、慰謝料的財産分与を請求する流れについて解説します。
財産分与は、離婚後も2年の間は請求できますが、離婚に関する責任を追及する「慰謝料」の意味合いを含むならば、通常は離婚の争いと共に、離婚時に請求します。
交渉
まず、配偶者との直接交渉を試みます。
離婚の協議をする際、その原因が相手にあり、精神的苦痛を負ったことを伝えて補償を請求します。交渉で円滑に解決するには、裁判になった際に認められる慰謝料的財産分与や慰謝料そのものの見通しを伝えるのが重要で、そのためには証拠の準備が欠かせません。
- 婚姻期間中の財産状況を証明する資料
財産分与の証拠として、夫婦の財産状況を証明する資料を準備します(例えば、通帳や口座の残高証明、不動産登記簿謄本、生命保険契約書など、対象となる財産の種類に応じて、その情報が記載された資料)。 - 離婚原因を証明する資料
財産分与に慰謝料的な意味合いを持たせるなら、相手の非を証明しなければなりません。例えば、不貞行為の証拠(写真や動画、不貞相手とのメール、探偵の報告書など)が重要です。 - 精神的苦痛があったことを示す資料
精神的苦痛を負ったことを示すため、医師の診断書を取得してください。
協議で合意に達したときは、離婚協議書を交わして証拠化しておきましょう。
慰謝料的財産分与の支払いに合意したときは特に、将来未払いとなるおそれがあるため、公正証書にしておくのがお勧めです。公正証書があれば、裁判を経ずに強制執行することができます。
「離婚協議書の書き方」の解説

調停
協議がまとまらないときは、調停に移行します。
離婚時の条件として慰謝料的財産分与を求めたとき、相手がこれに応じないと離婚は成立しません。したがって、離婚を強く希望する側が、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、その手続き内で慰謝料的財産分与の請求を続けます。
調停では、調停委員が中立的な立場で夫婦の主張を仲介し、妥当な解決案を提案します。
「調停委員を味方につけるには?」の解説

裁判
調停でも合意が得られなければ、最終的に裁判となります。
離婚裁判(離婚訴訟)では、双方の提出した主張や証拠に基づいて、裁判所が妥当な分与額や方法を決定します。また、裁判では、財産分与だけでなく、親権や養育費など他の離婚条件についても裁判所の判断を仰ぐことができます。
「離婚裁判の流れ」の解説

慰謝料的財産分与の時効や期限
慰謝料的財産分与の請求には、期限が存在します。
民法768条2項但書によって、財産分与の請求は、離婚後2年経過すると行うことができません。この期間は「時効」ではなく「除斥期間」とされるので、請求によっても中断されず、期間が経過すると自動的に権利が消滅します。
一方、純粋な慰謝料には不法行為の時効が適用され、「損害及び加害者を知った時から3年間(生命又は身体の侵害の場合は5年)」「不法行為の時から20年」となります(民法724条)。
「離婚後でも財産分与は請求できる?」の解説

まとめ

今回は、慰謝料的財産分与のポイントについて解説しました。
離婚時に問題となる財産分与は、「清算的財産分与」「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」の3種類の性質があり、そのほとんどが清算的な分与です。財産の金額にもよりますが、一般に、離婚時の財産分与が相当高額となるケースもあるので、その中に様々な意味合いを含めることで夫婦間の離婚トラブルを一括して解決することができます。
中でも、慰謝料的財産分与は、相手の有責性について言及しながら、その一方で純粋な慰謝料を請求するよりは円滑に解決できる可能性があります。財産分与で損をしないためにも、どのような性質の請求であるかを理解して交渉することが大切です。
- 財産分与には清算的、扶養的、慰謝料的といった3つの性質がある
- 相手に離婚の責任があるなら慰謝料的財産分与による増額を目指すべき
- 慰謝料的財産分与を有利に解決するには、慰謝料と同じく証拠が重要
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財産分与は、結婚期間中に形成された資産を整理し、公平に分割するための重要な手続きです。財産の評価方法や分割の割合などが争われると、法律知識に基づいた解決が必要となります。
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