離婚にあたって決めるべき「財産分与」は、共働きでも問題になります。
財産分与は、婚姻中に築いた財産を分ける手続きですが、共働きの家庭が増加する現代では「どのように分けるのが公平なのか」、夫婦の働き方や収入、生活実態を反映して話し合いをしなければなりません。特に、分与の割合について2分の1が原則となっているものの、共働きだと単純に半分ずつにするのがそぐわないケースもあります。
今回は、共働き夫婦の財産分与について、弁護士が解説します。共働き夫婦ならではの事情を踏まえた財産分与の考え方や、よくあるトラブルと対処法などを理解してください。
- 共働き夫婦の場合でも、財産分与は公平の考え方から判断する
- 夫婦ともに収入や資産があると不正が起きやすいので、証拠収集を徹底する
- 共働きの場合は、財産分与だけでなく他の金銭的条件を総合して話し合う
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共働き夫婦の財産分与の基本

はじめに、共働き夫婦の財産分与の基本的な考え方を解説します。
財産分与を理解するには、対象となる財産について知ることが不可欠です。特に、共働き夫婦では、夫にも妻にも収入があることに加え、「家事や育児をどのように分担しているか」が、公平な財産分与を決める重要な要素となります。
共働き世帯の増加とメリット・デメリット
近年、女性の社会進出や働き方の多様化に伴い、共働き世帯が急増しています。
経済的な自立を目指す夫婦が増えたことで家計全体の収入が安定する一方、共働きならではの課題も浮上しています。厚生労働省の統計では、2020年時点での日本の共働き世帯の数は1,240万世帯でした(妻が専業主婦の世帯は571万世帯、厚生労働省:「共働き等世帯数の年次推移」)。
共働き世帯が増加した要因には、世帯所得の減少、キャリアアップを志向する女性の増加、企業側の仕事と育児・介護の両立体制の整備といった事情があります。
共働きには、次のようにメリットとデメリットがあります。
共働きのメリット
- 経済的安定性の向上
夫婦2人で働くことで世帯収入が増え、経済的に安定します。生活費や教育費、将来のための貯蓄もしやすくなります。 - キャリア形成の促進
特に女性は、働き続けることでキャリアを形成し、自己実現を図れます。 - 生活の多様性
夫婦それぞれが異なる職場や人脈を持つことで、情報や価値観の共有が進み、家庭内にも新たな視点が生まれます。
共働きのデメリット
- 家事・育児の負担の偏り
共働きでも、家庭内ではどちらか一方が家事や育児の大半を担うことになりがちで、不平等感が生まれやすいデメリットがあります。 - 時間的な制約
仕事と育児・家事の両立が必要となり、多忙になりがちです。夫婦間でうまく時間や役割を調整できるのが理想ですが、共働きだとコミュニケーションや協力体制が取りづらいことも問題です。 - 経済面以外の貢献の評価が難しい
家事や育児といった非金銭的貢献は、収入に直接反映されず、財産分与の際にその価値が評価されにくい点も問題となります。結果的に、互いに不満を溜め込み、積もり積もると離婚に至る危険性も高まります。
共働きの財産分与の対象となる財産は?
共働き夫婦でも、財産分与の対象は「婚姻期間中に夫婦で形成・維持してきた財産」(共有財産)です。具体的には、預貯金や不動産、自動車、有価証券や投資信託、家具や家電、美術品や貴金属、退職金などが挙げられます。
「共働きなのだからそれぞれの財産は各自のもの」「財産分与するのはおかしい」といった意見もありますが、いずれも誤った考えです。なぜなら、夫婦の協力により形成・維持されていれば、どちらの名義になっているかは関係なく、財産分与の対象になるからです。
一方、結婚前に夫婦が各自で得た財産は「特有財産」となり、対象外とされます。相続や贈与によって得た財産や別居中に得た財産も、対象には含まれません。
重要なポイントは、共働きだと夫・妻の両方が財産を持っている点を考慮すべきことです。各自が別々に管理する口座がある場合、共同管理する貯金や生活費用の口座との間で出し入れがあるとき、どの部分が夫婦の共有財産であるかを明確にする必要があります。
また、共働きだと、それぞれの収入の多寡が争点となりがちですが、実際には収入や資産だけでなく、家事・育児といった非金銭的な貢献にも配慮しなければなりません。
「離婚時の財産分与」の解説

共働きの場合の財産分与の方法と注意点

次に、共働きの場合の財産分与の方法と、その注意点について解説します。
共働き夫婦であっても、妻が専業主婦の家庭と同じく、法律や裁判例に従って財産分与を考えるべきことは変わりません。ただし、共働きにもかかわらず妻が家事や育児を一手に引き受けていたり、極端な収入差があったりする夫婦も少なくありません。
単純に一般的なルールにあてはめるだけでは不公平な場合は、各家庭の役割分担や事情に応じて、総合的に考えなければなりません。
財産分与の割合は2分の1が原則
民法768条は、財産分与について「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と定めます。具体的な割合について法律の定めはありませんが、共同生活における貢献度は「男女平等」の考えに基づき、2分の1ずつとするのが基本です。
なお、共働きでも専業主婦(主夫)でも、この基本を前提として、事情に応じた例外的な調整が行われるケースも存在します。
「財産分与の割合」の解説

妻の財産も分与の対象となる
財産分与では、夫の財産だけではなく、妻自身が積み上げた資産も対象になります。財産分与の対象となるのは「夫婦が婚姻期間中に築いた財産」であって、名義は関係ないためです。
特に、共働き夫婦の場合、妻もキャリアを積み上げ、収入や貯蓄があるケースが珍しくありません。状況によっては、妻から夫に対する財産分与が必要となる可能性もあります。
また、夫婦間における家事・育児の分担割合についても、財産分与に影響を及ぼす要素の一つです。例えば、共働きなのに妻が家事・育児の大半を担っていた場合、貢献度の高さから妻が2分の1を超える割合で財産分与を受ける可能性もあります。
例えば、次の裁判例も参考にしてください。
夫が画家、妻が作家の夫婦で、生活費は双方が収入に応じて負担していたが、家事はもっぱら妻が担っていた家庭における財産分与について判断した審判。
離婚に際しての財産分与の割合は、生活費の負担割合や収入、家事の負担などの要素を総合的に考慮して、夫が10分の4、妻が10分の6であると判断された。
共働きでも育児や家事の負担が偏っている家庭もある
共働きの夫婦が必ずしも同じ割合で育児や家事をしているとは限りません。
一方の労働時間が長くほとんど家にいないなどの事情があったり、単に面倒で避けたりしている家庭もあります。共働きでも、実際には育児・家事の負担が偏っている場合には、非金銭的な貢献も財産分与に反映すべきです。実態としては専業主婦(主夫)とほとんど変わらないほど重い負担があるケースもあります。
共働きで収入が同程度でも、育児や家事の貢献度が高いなら、公平な財産分与を実現するために、その証拠を示す準備をしてください。例えば、以下の資料を収集しておきましょう。
- 夫の出勤・帰宅時間を記録する。
- 日々の家事分担や育児実績を記録する。
- 家事や育児をするよう相手に求め、拒否された音声、メールやLINEなどを保存する。
- 一方が家事をせずに散らかったままの部屋の写真を撮る。
- 両親など第三者の証言を得る。
互いに納得して家事や育児の負担を決め、財産分与でも揉めずに合意できるなら問題ありません。しかし、多くのケースでは互いに主張を譲りません。話し合いでは解決困難なら、調停や裁判に移行しますが、裁判所の審理においても証拠が非常に重要です。
「子供がいる夫婦の離婚」の解説

共働きでも一方の収入差が大きいケースもある
共働きでも、どちらか一方が相手より高い収入を得ていることはあり得ます。
例えば、夫は正社員、妻は育児中のためパートや時短勤務、育休中といったケースでは、夫の収入の方が妻よりも高くなります。また、医師・弁護士など高度な専門職に就いていたり、会社を経営していたりする家庭も、収入差が大きくなります。
財産分与の割合は、男女を同等として考え、2分の1ずつ分け合うのが原則とされますが、収入差が大きい夫婦の場合、2分の1ずつ分けるとかえって不公平なこともあります。この場合、以下の裁判例のように、個別の事情に応じた調整がされるのが、実務上の扱いです。
夫は上場企業の代表取締役であり、婚姻中に約220億円の資産を形成。妻は会社経営に具体的・直接的に寄与したとは認められないが、扶養の意味合いも加味して10億円の分与が命じられた。
夫が船員(1級海技士)であり、年間6ヶ月~11ヶ月海上で勤務していたため多額の収入を得られたことから、資産7,600万円のうち、約3割にあたる2,300万円を妻に分与するよう命じた。
共働きの財産分与によくあるトラブルと対処法

次に、共働きの財産分与によくあるトラブルとその対処法について解説します。
共働き夫婦の財産分与では、「お互いに収入があり、財産もある」という事情に由来する特有のトラブルがあります。別会計であることで、財産隠しや使い込みといった問題が発生しやすい状況にあることを理解し、正しい対処法を取るようにしてください。
共働きで別財布(別会計)の場合
共働き夫婦だと、家計の管理が「別財布(別会計)」のことがあります。
例えば、夫婦が家計の支出をまかなうために毎月一定額を共有口座に入金する方法、夫婦がそれぞれ自分の収入と貯蓄から生活費を出す方法などがあります。それぞれのお金の使い方に干渉しないメリットがありますが、離婚時の財産分与ではデメリットとなることもあります。
婚姻中に夫婦が形成した財産が分与の対象となりますが、別財布(別会計)だと、各自の資産のうち、どの部分が「共同で築いた」といえるか、個人資産との境界が曖昧になりがちです。財産分与がトラブルになると、互いに自分の財産を正直に開示するとも限りません(正直に開示してもなお「財産隠し」を疑われるでしょう)。
このようなリスクを回避するため、共働き夫婦は次の点に注意してください。
- 資産の整理と記録を徹底する
金融機関の入出金履歴やクレジットカードの利用明細など、夫婦がどのように財産管理していたかを明確に記録することが重要です。 - 事前に合意しておく
共働きの場合、事前に夫婦間で合意形成をしておく家庭も多いです。例えば、「互いに自分の貯蓄を取得する」「口出しはしない」という合意をすることで、別財布(別会計)であることで紛争が激化しないよう配慮することができます。
共働きで相手が財産を隠した場合
共働き夫婦が離婚する際に起きやすいトラブルに、「財産隠し」の問題があります。
それぞれに稼ぎがあり、相手に知らせずに貯めたり、高額の出費をしたりすることも十分に可能なため、一方の収入で暮らす家庭より「財産隠し」が容易です。共働きでよく起こる具体的な手口の例を紹介します。
- 複数の銀行口座(特にネット銀行や地方銀行)の隠し口座を利用する。
- 金融機関の貸金庫に入れる。
- 子供や実家の両親名義の口座に入金する。
- タンスや本棚などに現金を隠す。
- 有価証券、不動産、自動車など高額な財産を購入する。
- 住宅ローンや奨学金の返済に充てる。
このような行為は、正当な財産分与の妨げとなるため、深刻な問題です。相手の財産隠しを疑うなら、証拠を集めることが対策となります。
知らない口座の通帳やキャッシュカード、ログイン情報や金融機関からの郵便物などを見つければ、隠された資産を洗い出すきっかけとなります。本人に直接開示を求めても、正しい情報を開示してくれるとは限りません。自分で交渉するのではなく、弁護士に相談したり裁判手続きに進んだりすれば、弁護士会照会、調査嘱託といった制度を利用して調べることができます。
「相手の財産を調べる方法」の解説

財産を使い込まれた場合
共働きの場合、それぞれに収入と財産がありますが、婚姻期間中に稼いだお金は個人資産ではなく、たとえ一方の名義でも、夫婦の共有財産となる可能性が高いです。そのため、共有財産が一方によって不正に流用されたり、使い込まれたりするケースが少なくありません。
例えば、「自分で稼いだお金だから」という誤解から、高価なブランド品を購入したり、趣味に高額の支出をしたりするのは、夫婦共有の財産を損なう行為です。特に、「夫の収入で暮らし、妻の給与は将来に貯金に充当する」などの役割分担がされているケースで、本来であれば夫婦のために貯金しておくべきだった資産を使い込まれると、将来の財産分与に大きな影響を及ぼします。
共有財産の使い込みが判明した場合には、離婚時の財産分与において、使い込んだ分を考慮して取り分を減らす調整を行うのが適切です。ただし、使い込みを特定するために、証拠の収集は欠かせません。また、財産管理を徹底したり定期的にチェックしたりして、予防策を講じるべきです。
「別居時に持ち出した財産」の解説

共働き夫婦が財産分与をしないケースもある
共働きの夫婦は、離婚する際に、財産分与をしないケースもあります。
共働き夫婦なら、それぞれに収入と資産があるので、必ずしも「離婚後の生活を守るため」という理由で財産分与を行う必要はなく、双方の経済状況や希望する条件に応じて調整できるからです。
協議離婚なら、お互いに話し合って財産分与をしない選択が可能です。離婚協議書に「財産分与は行わない」旨を盛り込めば、後のトラブルを防ぐことができます。また、そのような未来が予想されるなら、婚姻前に離婚時の財産の扱いを決める「夫婦財産契約」を結ぶ方法もあります。
そもそも、財産分与にはお互いの財産を清算するという目的だけでなく、離婚により夫婦のどちらか一方が生活に困窮するのを防ぐという目的もあります。そのため、共働きかつ別収入・支出で、女性側も自立しているなど、生活に困窮する可能性が低いなら、あえて財産分与を求めない人も珍しくありません。
また、話し合いでの解決が難しい離婚トラブルで、早期に離婚することを優先して財産分与をあきらめるケースもあります。
なお、その際は将来のトラブルを避けるため、合意内容を明確にし、離婚協議書などの書面を作成する必要があります。
「離婚協議書の書き方」「財産分与は放棄できる?」の解説


共働き夫婦が離婚をスムーズに進めるには?

最後に、共働き夫婦が離婚をスムーズに進めるための考え方を解説します。
早期離婚を優先するなら、あえて財産分与にこだわらなくてよいのも、共働き夫婦の良い点です。別財布(別会計)であれば、財産分与以外の金銭にも目を向け、全体的な解決を試みるべきです。
慰謝料・養育費・年金分割も考慮する
離婚では、財産分与だけでなく、慰謝料や養育費、年金分割など、別の方法でお金を受け取る手段もあります。共働きの場合、双方に収入や資産があるので、必ずしも財産分与を受け取らなくても生活に困窮しないケースでは、様々な選択肢を検討することができます。
- 慰謝料
不貞(不倫や浮気)、DVなど、相手に明らかな落ち度があって離婚する場合は、慰謝料を請求できます。 - 養育費
子供の生活や教育に必要な費用を請求することができます。ただし、養育費の金額は「養育費・婚姻費用算定表」に基づいて夫婦の収入と子供の人数・年齢によって決まるので、共働きの場合は金額が低く抑えられるおそれがあります。 - 年金分割
共働き夫婦でも、双方が積み上げた年金が分割の対象となります。
「財産分与で高い金額を得たい」という点に固執するだけでなく、総合的に考慮して、離婚後の生活が安定するような合意形成を目指すのが望ましいです。
「離婚に伴うお金の問題」の解説

円満離婚なら「財産分与なし」もあり得る
円満離婚なら「財産分与なし」もあり得ます。
互いの合意によって協議離婚したり、調停離婚で終わったりする場合には、財産分与を行わずに離婚を成立させる選択もあるからです。円満離婚を目指すには、しっかりと話し合いを行い、各自の資産状況や今後の生活設計について、互いに納得できる解決とするのが重要です。
ただし、財産分与をしないことで、将来にリスクを先送りしてしまう危険もあります。そのため、財産分与をなしにするなら、合意内容を明確にして書面化し、トラブルを防止する努力が必要です。
「離婚までの流れ」の解説

まとめ

今回は、共働き夫婦の財産分与に特有の法律知識について解説しました。
共働き夫婦でも、財産分与は2分の1ずつの割合で行うのが基本的な考え方です。しかし、実際は一方の収入が極めて多かったり、結局は妻が家事や育児を担っていたりなど、単純に2分の1ずつの割合で分けるのが適さないこともあります。また、別財布で生活していた場合、お互いがすべての財産を正直に開示せず、分与財産が特定できずにトラブルとなるケースもあります。更に、相手が財産を隠したり、使い込んだりなどのトラブルも起きやすい状況です。
財産分与は、どのような夫婦にとっても重要ですが、特に共働きの場合には、それぞれの収入や資産の状況や、家庭生活の実態に合わせた細かい調整が必要となります。
夫婦だけで話し合って解決を目指すのに限界があるなら、早い段階で離婚の知識・経験が豊富な弁護士に相談してください。
- 共働き夫婦の場合でも、財産分与は公平の考え方から判断する
- 夫婦ともに収入や資産があると不正が起きやすいので、証拠収集を徹底する
- 共働きの場合は、財産分与だけでなく他の金銭的条件を総合して話し合う
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財産分与は、結婚期間中に形成された資産を整理し、公平に分割するための重要な手続きです。財産の評価方法や分割の割合などが争われると、法律知識に基づいた解決が必要となります。
トラブルを未然に防ぐために、以下の「財産分与」に関する詳しい解説を参考に対応してください。