
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
共同養育とは、父母が離婚後も協力して子の監護・教育を継続することを指します。
子の健全な発育と親子関係の維持のため、共同養育は有効な方法です。一方、元配偶者との関係が悪化していたり、一方が再婚したりする場合、共同養育は困難なこともあります。
2026年4月施行の民法改正で共同親権制度が導入され、父母の双方または一方を親権者と定めることが可能となりました。また、監護の分掌や監護者の定めを通じて、父母が柔軟に役割を分担することができるよう整備されました。
たとえ夫婦が離婚しても、子供にとっての両親であることに変わりはなく、法改正も相まって共同養育の考え方は今後もますます注目されるでしょう。
今回は、共同養育の基本的な方法、メリットとデメリット、再婚時に注意すべきポイントなどについて、弁護士が解説します。

共同養育とは、離婚後も父母がともに子育てに関わることを指します。はじめに、共同養育についての基本的な知識を解説します。
共同養育の具体的な実施方法には、いくつかの典型的なパターンがあります。
共同養育に法律上の決まった方法はないため、日程や面会の実施方法など、具体的な内容について父母間で話し合い、子供の意見を取り入れながら決めるのがよいでしょう。
例えば、両親が交代で子供と一緒に生活をする「同居型」、一方が主たる監護者となり、他方が週末や平日の夜などの決められた時間に定期的にサポートする形式などがあります。両親の接触が難しい場合、第三者機関による連絡の調整や付き添いなどのサポートを受ける家庭もあります。また、両親が離れた地域に居住している場合は、長期休暇を利用して交流する「滞在型」、定期的なオンライン通話を取り入れる「遠距離型」も有効な選択肢となります。
各家庭の生活スタイルや子供の年齢に合った方法を選択し、共同養育計画を立てることが大切です。なお、離婚後の同居については「離婚後の同居は可能?」で解説しています。
共同養育と似た言葉に、「共同親権」があります。
親権とは、成年に達しない子の身上の世話と教育を行い、その財産を管理するために父母に認められる権利及び義務のことであり、具体的には次の内容を含みます。
一方、共同養育とは、父母が離婚後も引き続き共同して子供を育てていくことを意味する一般用語であり、権利義務を表す親権とは別の問題です。
なお、2026年4月施行の民法改正により、離婚後の親権について父母の一方または双方に帰属させることのできる共同親権制度が導入されました。
「離婚までの流れ」の解説


次に、共同養育のメリットについて解説します。
共同養育は、離婚後も変わらず父母が協力して子育てをするため、子供の精神の安定、経済的負担の軽減、責任分担といった点でメリットがあります。
離婚は、子供にとって大きなストレスになる経験でしょう。
転校や引越し、親との交流断絶などが重なると、ストレスで体調を崩したり、攻撃的になったりする子もいます。「離婚の原因は自分にあるのでは」と自責の念に駆られることもあります。
共同養育なら、離婚後も父母双方とこれまで通りの交流を維持できます。両親からの愛情や積極的な関与を感じられるため、子供の精神を安定させ、成長においてプラスの影響があります。暮らす場所は別でも、一緒に遊びに行くなどの経験を重ねることで「父親(母親)が自分を見てくれている」という安心感を持てるようになります。
「子連れ別居の注意点」の解説

シングルマザー(ファザー)として子供を単独で養育する負担は非常に大きいです。
共同養育であれば育児や教育の負担を両親で分担できます。費用面はもちろん、話し合って悩みやストレスを共有して、親が精神的に追い詰められる危険も避けられます。例えば、子供が重病になった場合でも、両親で助け合って対応を決めることができます。片方の親が親子交流(面会交流)をしている間に、他方の親は自分の時間を持ち、息抜きすることもできます。
共同養育によって親としての自覚が生まれ、養育費の支払いが継続されやすくなります。
法的には親子交流(面会交流)と養育費の支払いは別問題であり、交流が実施されなくても養育費を支払う義務があります。とはいえ、子供と長期間会っていないと愛情を失い、支払いを怠るケースも見られます。未払いのリスクを軽減するために共同養育の形を取ることには一定の意義があるといえます(なお、離婚協議書を公正証書にしておけば、強制執行も可能です)。
「養育費が支払われないとき」の解説

共同養育とすることで、学校行事への参加や進路の相談、習い事の選択など、育児や教育に関する様々な意思決定を両親で分担できます。どちらか一方に負担が偏ることなく、双方が親としての役割を果たすことができます。また、育児や教育に関する長期的な方針を両親で共有することは、子供の健全な成長にとっても重要です。両親が協力して一貫した方針のもとで子育てをすることで、子供に安心感を与え、安定した成長が期待できるでしょう。
共同養育は、同居親に万が一のことがあった場合のセーフティネットとして機能します。
突然の病気や不慮の事故に巻き込まれることは誰しもあり、別居親に長期間会っていないと、子供は急な環境の変化に耐えきれないおそれがあります。共同養育を通じて日頃から交流し、信頼関係を築いていれば、子供が路頭に迷うリスクを軽減できます。
離婚前後は互いに感情的になり、落ち着いて話し合うのが困難なケースも多いものです。一方で、離婚後に物理的に離れ、適度な距離を置くことで冷静さを取り戻せるようになります。
直接顔を合わせることがストレスになる場合、メールやチャットツールを通じて親子交流の日程調整のみ行うなど、間接的なやり取りにとどめることも可能です。適度な距離感を保つことで、子供のために協力し合える良好な関係を築きやすくなるメリットがあります。
「親権を父親が取るには?」の解説


一方で、共同養育にはデメリットもあるため、注意が必要です。
例えば、子供が父母のトラブルに巻き込まれたり、生活環境の変化によって不安定さを感じたりするなど、共同養育がかえって悪影響となるおそれがあります。また、離婚の理由や経緯によっては、そもそも共同養育が現実的でない場合もあります。
共同養育にしたことで子供の混乱を招くおそれがあります。父母の家を行き来する形だと、生活の拠点が複数になり、体力的にも精神的にも負担が増してしまいます。父母間で生活のルールに違いがあると、どちらに合わせるか迷ってしまうでしょう。
親同士の関係が良好ではなく、子供の前で他方の悪口を言うといった事態になり、子供が板挟みになるケースも少なくありません。
「子供がいる夫婦の離婚」の解説

教育方針や習い事、面会交流の回数や方法を巡って父母の意見が食い違う場合、これをきっかけにトラブルに発展するおそれもあります。また、一度決めたルールを一方的に変更されたり、違反する行動をとられたりすると、精神的に大きな負担となります。
DVやモラハラがあって離婚した場合、現実問題として共同養育は困難です。離婚後も相手が子育てに関与すると接触は避けられず、再び暴力や暴言が再発するリスクがあるためです。子供に対する虐待に発展している場合にも、共同養育が不可能なのは当然です。
こうした状況では、自分と子供の安全確保が最優先です。相手から共同養育を求められても応じてはなりません。納得のいかない相手に、親子交流調整(面会交流調停)を申し立てられることもありますが、DVやモラハラがあったことを主張して争うべきです。
「モラハラやDVから逃げるための別居」の解説

一方の親が子育てに非協力的な場合にも、共同養育を続けることは困難です。
面会交流が拒否されている、連絡が取れない、子供に関する情報が共有されないなど、父母の円滑なコミュニケーションが取れない状況では、子供を一緒に育てることは困難です。また、養育費の未払いなど、相手方が無責任な行動を取り続けている場合も同じく、共同養育には向きません。
「養育費の強制執行」の解説


共同養育を実現するには、両親が協力して養育計画を立てることが重要です。
共同養育計画には、面会交流の回数や方法、子供の教育方針や費用負担の割合など、具体的な取り決めを盛り込みましょう。書面化しておくことで、将来のトラブル防止に役立ちます。
当事者間の協議が進まないときは、弁護士に相談したり、家庭裁判所へ調停を申し立てたりするのが有効です。第三者を介することで感情的な対立を避け、冷静に話し合いを進められます。当事者のみでは親子交流(面会交流)を実施できない場合は、第三者機関の利用も検討してください。
共同養育を続けるために、離婚後も親同士のコミュニケーションが欠かせません。連絡手段や頻度、緊急時の連絡先なども、あらかじめ決めておきましょう。共同養育は、互いに協力し合う姿勢が基本ですが、無理をするとかえって関係が悪化するおそれもあります。それぞれの生活を尊重しながら、できる範囲で協力し合う体制を整えることが重要です。
「親権争いは母親が有利?」の解説

共同養育の仕組みを整えた後も、子供の健全な成長のためには日常的な配慮が欠かせません。以下では、協力体制を維持し、共同養育を長続きさせるための心がけについて解説します。
離婚した相手に負の感情を抱いても、子供の前で悪口や非難をしてはいけません。子供にとってはどちらも大切な親であり、悪く言われれば深く傷ついてしまいます。同居親に配慮して別居親との関わりを拒絶したり、無理に悪口に同調して精神的に追い詰められたりする子もいます。感情を吐き出したいときは、紙に書き出すなど、子供の目に触れない工夫をすべきです。
「子供のために離婚しないという判断基準」の解説

子供は親の所有物ではなく、意思を持った一人の人間として尊重すべきです。
例えば、「自分が元夫に会いたくないから、子供も同じように思っているはずだ」といった決めつけは止めるべきです。親の感情と子供の気持ちは別物であり、子供は心の中で「離れて暮らす親に会いたい」と切実に願っているケースも多々あります。
子供が両親の顔色をうかがうことなく素直な気持ちを発言できるよう、安心できる環境を整えることが、共同養育においては重要となります。
共同養育計画は一度決めたら終わりではありません。
子供の成長や生活環境の変化に合わせ、柔軟な見直しが求められます。進学や部活動の開始などで、従来の交流ペースが子供にとって負担になることも少なくありません。この場合、親の考えを押し付けるのではなく、子供の意見を尊重しながら見直すことが重要です。
年1回程度は見直しの機会を設け、交流日をずらしたり、オンラインでのやり取りに切り替えたりなど、状況に応じた最適な方法へ変化させていく柔軟性を持ちましょう。

次に、共同養育中の一方の再婚について解説します。
離婚後に共同養育をしていても、再婚すること自体は可能です。しかし、共同養育の場合ほど、再婚が子供に与える影響は大きいため、十分な配慮が欠かせません。
再婚が共同養育に与える影響は非常に大きいと考えるべきです。
一緒に暮らしている親(例えば「母」)が再婚する場合、子供に「新しい父親」が現れることとなります。実の父親との親子交流(面会交流)を続ける一方で、新しい父親との生活を始めると、子供を混乱させたり、拒絶感を抱かせたりすることは珍しくありません。
同居していない親(例えば「父」)の再婚であれば子供の生活に変化は生じませんが、再婚後に交流が途絶えると、共同養育であったからこそ「見捨てられた」という感情が強くなります。
また、再婚によって生活スタイルや価値観が変わることで、親子交流の取り決めや教育方針の調整がこれまで以上に難しくなることもあります。新しい配偶者が意見を差し挟むことで、父母間の合意形成が難しくなるケースも少なくありません。
「再婚したら養育費はどうなる?」の解説

再婚を希望しても、共同養育である以上、子供の気持ちに配慮して行動すべきです。
子供が再婚に否定的な反応を示した場合、何に不安を感じているのかを丁寧に聞き取り、その気持ちに寄り添うことが大切です。また、新しい父親・母親との良好な関係を築くには、時間をかけて信頼関係を構築する必要があります。焦って再婚に踏み切るのではなく、一緒に出掛けるなどして交流を深め、子供と再婚相手の相性を見極めることも大切です。
再婚にあたっては、元配偶者との間で共同養育をしていること、その際の役割分担などについて再婚相手に伝え、理解を求めましょう。再婚が原因で、父母の一方と交流が断絶してしまうのは、子供にとって大きなストレスになります。トラブルを避けるためにも、再婚については事後報告ではなく、事前に報告することが大切です。
「離婚後の復縁は可能?」の解説


最後に、共同養育について弁護士に相談すべきケースを解説します。
共同養育そのものは、両親が合意すれば、特別な法的手続きがなくても行えます。ただし、当事者間で今後の子育てについて意見が対立したり、話し合いがまとまらなかったり、実際に共同養育を始めた後でトラブルになったりするケースは少なくありません。
次のようなトラブルが予想される場合、弁護士に相談しておくべきです。
また、再婚による親権・監護権の変更を検討している場合や、養育計画書の作成に困難を感じている場合も、早めに弁護士に相談しましょう。
共同養育は、離婚後も相手との関係が続くことを意味します。自分も相手も、価値観も周囲を取り巻く環境も、時間が経過すれば変わる可能性は大いにあります。開始時に取り決めたことは、状況の変化によって変えざるを得ないこともあります。
当事務所では、離婚後に共同養育を予定している方の相談も多くお受けします。弁護士に依頼すれば、相手との交渉から、合意文書の細かい文言の調整まで、トラブルを未然に防ぐためのサポートを受けることができます。
「離婚に強い弁護士とは?」の解説

今回は、共同養育の考え方や注意点について解説しました。
共同養育は、離婚後であっても両親が協力して育児をすることで、子供の健やかな成長と安定した環境を実現する方法として有効です。ただ、多くのメリットがある一方で、親同士の関係性が悪化しているにもかかわらず、一方の親が共同養育を強く求めたり、再婚して関係が複雑化することがかえって子供の負担になったりといったデメリットもあります。
大切なのは、親の都合ではなく、子供の利益を第一に考える姿勢です。双方で歩み寄り、無理なく責任を分担することで、より良い共同養育の形を築くことができます。
話し合いが難しいなど、不安を感じる場合、離婚前の段階で弁護士に相談するのがおすすめです。法律知識に基づくアドバイスを受けることは、子供にとっても両親にとっても、安心して向き合う助けになります。