企業法務

民法改正で寄託契約書はどう変わる?【民法改正と契約書 第16回】

2020年6月4日

民法の債権法を改正する法律が、2020年4月1日に施行されました。新民法に対応した契約書の書式・ひな形を整備していない会社は、大至急対応が必要となります。

寄託契約とは、わかりやすく説明すると「物を預けるときに結ぶ契約」のことをいいます。寄託契約書を締結したことを証明する契約書が、寄託契約書です。

この度の民法改正においては、債権法分野における大きな改正がなされており、契約書の記載内容に大きな変更が必要となる場合があります。寄託契約でいうと、改正民法では「要物契約」から「諾成契約」へと大きく変更されました。

そこで今回は、2020年4月1日に施行された改正民法のうち寄託契約に影響する改正内容と、寄託契約書を作成・契約書チェックする際のポイントなどを弁護士が解説します。

浅野総合法律事務所のアドバイス

2020年4月1日に施行された民法改正(債権法改正)にともない、従来の書式・ひな形を使いまわしていた企業は、2020年4月1日以降、改正民法に適合した内容の契約書などを準備する必要があります。

改正後の民法に適合しない契約書、利用規約などの書式・ひな形を利用した場合、予想していなかった損失を被るおそれがあります。

弁護士法人浅野総合法律事務所では、民法改正前から定期的に勉強会を開催することで、十分な知識とノウハウを蓄積しています。現在ご利用中の契約書などの書式、ひな形について一括して修正・変更のご相談をうけたまわっております。

「民法改正と契約書」弁護士解説まとめ

寄託契約とは

寄託契約とは、当事者の一方が相手方のために物の保管をすることを約束する契約をいいます。寄託契約をおこなったことを書面化したものが寄託契約書です。

物を保管する側を受寄者、預ける側を寄託者といい、寄託される対象物のことを寄託物といいます。

民法では、寄託契約について次のように定められています。

民法657条(寄託)

寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

寄託契約は、対象物の貸し借りをおこなうという点で賃貸借契約に似ていますが、「保管」を目的としておこなわれる点で異なります。また、労務の提供がなされるという点で委任契約に似ていますが、「物の保管のため」におこなわれるという点で異なります。

例えば、倉庫で荷物を預かってもらう場合に締結される「倉庫寄託契約」や、トランクルームを借りて物を預ける場合などが寄託契約の典型例です。

寄託契約について、2020年4月1日に施行された民法改正によって新設ないし改正された点は、主に次のとおりです。

寄託契約の改正点

  • 寄託契約の諾成化(民法657条)
  • 寄託物を受け取るまでの間の寄託者の解除権(民法657条の2)
  • 再寄託(民法658条2項)
  • 混合寄託(民法665条の2第1項)
  • 消費寄託(民法666条)

 
以下では、それぞれの改正点について改正前の民法と比較した上で、契約書作成上のポイントについても解説します。

【改正1】寄託契約の諾成化

当事者の合意だけで契約の効果が生じる契約のことを「諾成契約」といいます。典型的な諾成契約には、売買契約、委任契約などがあります。

一方、契約の効力が生じために、当事者の合意だけでなく目的物の引渡しが必要となる契約を「要物契約」といいます。

民法改正前まで、要物契約、すなわち、寄託物の引渡しがなければ契約が成立しないとされていた寄託契約が、この度の民法改正によって「諾成化」されました。すなわち、これまで要物契約であった寄託契約が諾成契約になったということです。

改正前は、寄託の対象となる物を交付することが契約成立の要件とされていましたが、民法改正後は、寄託物の交付がなくても、当事者間の合意さえあれば、契約が成立することになります。

実務上、倉庫寄託契約を中心とした諾成的な寄託契約が広く浸透していることなど、民法の規定と取引の実情が合わないことを理由に今回の改正で諾成契約と明文化されました。

【改正2】寄託者・受寄者の解除権

寄託契約が諾成契約とされたことにともなって、寄託物を交付する前であれば、寄託者は、有償であると無償であるとを問わず寄託契約を解除することができます(民法657条の2第1項前段)。もっとも、解除によって受寄者が損害を被った場合には、寄託者が損害を賠償する必要があります(民法657条の2第1項後段)。

ここでいう損害とは、一般的に寄託者が当該契約を解除しなければ受寄者が得られたはずの利益から受寄者が債務を免れたことによって得た利益を控除したものをいいます。

一方、受寄者については、寄託者がいつまでも寄託物を引き渡さず、解除もしない場合には、法的に不安定な地位に置かれることになります。そこで、改正民法は、有償寄託と書面による無償寄託の場合において、寄託者が定められた時期に寄託物を引き渡さず、受寄者が相当の期間を定めて引き渡しの催告を行ったにもかかわらず寄託者が寄託物を引き渡さないときには契約を解除することができることを明文化しました(民法657条の2第3項)。

このように、受寄者が寄託契約の解除によって損害を受けたときは、受寄者は、寄託者に対して、損害賠償請求が可能であるため、その損害額について後日紛争になる可能性があります。

そのため、有償寄託契約において契約書を作成・チェックする場合には、受寄者による寄託物の受取前に契約が解除された場合に支払われる報酬額(損害賠償の予定)について契約書内で具体的に規定しておくことが必要です。

【改正3】再寄託

再寄託とは、受寄者が寄託物を第三者(再受寄者)に保管させることをいいます。

寄託契約は、受寄者と寄託者との信頼関係に基づくため、改正前の民法では、寄託者の承諾を得た場合にのみ再寄託が認められていました。しかし、寄託者の承諾を得ることが困難なことも多いことや、寄託と同様に人的信頼にもとづく委任契約では「やむを得ない事由があるとき」に復代理が認められていることとの整合性がとれないことが指摘されていました。

そこで、2020年4月1日に施行された改正後の民法では、やむを得ない事由があるときにも再寄託が認められることとなりました(民法658条2項)。

「やむを得ない事由」とは、委任と同様、受寄者において保管することができない事情が存在するだけでは足りず、寄託者の承諾を得ることが困難な事情が必要とされています。

再寄託した場合の再受寄者は、寄託者に対して、受寄者と同一の権利及び義務を負いますので(民法658条3項)、再受寄者は寄託者に対して、寄託物の返還義務を負う一方で、報酬や費用の支払を求めることができます。

「やむを得ない事由があるとき」には再寄託が認められてしまう可能性があることから、寄託者としては、契約書に「再委託禁止」の条項を盛り込むことや、「やむを得ない事由」を可能な限り限定的に列挙して記載することが大切です。

一方、再寄託を考えている、受寄者としても、後の紛争を回避するために、再寄託ができる場合について、詳細に列挙する共に、再委託できる業務の範囲を明確にしておく必要があります。

【改正4】混合寄託

「混合寄託」とは、受寄者が寄託を受けた代替性のある寄託物を、他の寄託者から寄託を受けた種類及び品質が同一の寄託物と混合して保管し、寄託されたものと同数量のものを返還する寄託のことをいいます。例えば、受寄者が、寄託者AとBから寄託を受け、同種であり、品質が同一な液体の化学薬品をそれぞれ10トンずつ混ぜて保管する場合には、混合寄託にあたります。

寄託物の保管のための場所や労力の負担を軽減することで、寄託費用の削減にもつながっていたことから実務上も混合寄託は多く利用されてきました。その実情を反映する形で、改正において混合寄託が明文化されました。

混合寄託の要件は、次の2つです(民法665条の2第1項)。

  • 寄託物の種類及び品質が同一であること
  • 合寄託をすることにつき、各寄託者の承諾があること

混合して保管されている寄託物の一部が滅失した場合、寄託者は、総寄託物に対する自己の寄託した物の割合に応じた数量の物の返還得を求めることができるにとどまるとし、寄託した物との数量の差は損害賠償によって補填することになります(民法665条の2第3項)。

混合寄託契約を結ぶ場合には、後日の紛争を予防するためにも、寄託契約書において混合寄託の方法によることを明記し、寄託物をどのように混合して保管するのかについて具体的に記載することが大切です。

寄託物の一部が滅失した場合については、具体的な返還割合等に関し、事前に契約書内に記載しておくことで、紛争を事前に防ぐことが可能です。

【改正5】消費寄託

「消費寄託」とは、受寄者が契約により、寄託物を消費することができる寄託をいいます。実務上は、銀行預金等の金融取引の他に、金属や原油などについて消費寄託が利用されています。

改正前の民法では、消費寄託については基本的に消費貸借の規定が準用されることとなっていました。もっとも、寄託する利益が寄託者にある点で、借主が目的物を利用するための消費貸借とは性質が異なっていました。

そこで、今回の民法改正で、消費寄託については目的物の処分移転に関するものを除き、寄託に関する規定が適用されることになりました(民法666条2項)。そのため、預金・貯金に関する金銭の寄託以外の消費寄託については、受寄者は、返還時期の定めがある場合には、やむを得ない事由がない限り、寄託物を期限前に返還することはできません(民法663条2項)。

一方、預金・貯金に関する金銭の寄託については、受寄者にも預かった金員を運用できるという利益がありますので、消費貸借に性質が近いため、消費貸借の規定が準用されます(民法666条3項、民法591条2項ないし3項)。

これにより、受寄者は、寄託契約における返還時期の定めにかかわらず、いつでも寄託物を返還でき、寄託者は、受寄者が期限前に返還したことによって、損害を受けたときにはその損害賠償を請求することができます。

消費寄託契約においては、受寄者が期限前に寄託物を返却できる場合も存在するため、かかる場合に寄託者に生じる損害につき、算定方法等につき事前に契約書に記載しておくことで、後の紛争を予防することに繋がります。

「寄託契約と民法改正」は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回は、2020年4月1日に施行された民法改正において多くの改正の影響を受ける「寄託契約」について弁護士が瑕疵悦しました。

上記で解説したとおり、寄託契約においては、契約書に影響する改正点が多く、従来の契約書では十分に対応できない可能性があります。

そのため、寄託契約書を含め、民法の改正に適切に対応するためには、今一度、契約書を見直す必要があります。民法改正に対応した契約書のご準備にお悩みの会社は、ぜひ一度当事務所へ法律相談ください。

「民法改正と契約書」弁護士解説まとめ

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