★ ご相談予約をお待ちしております。

寄託契約とは?賃貸借契約との違いと民法改正のポイントを解説

解説の執筆者

弁護士法人浅野総合法律事務所

代表弁護士

浅野英之

東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。

「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

>>弁護士の詳細はこちら

寄託契約は、当事者の一方が相手方のために物を保管することを内容とする契約です。

物品を預けることを合意することで成立する「諾成契約」であり、例えば、倉庫での商品保管やコインロッカーの利用など、身近な場面でも活用されます。一方で、物を利用するための契約としては「賃貸借契約」もよく利用されるため、区別して理解する必要があります。

2020年4月施行の民法改正では、寄託契約にも変更が加えられました。契約が成立するタイミング、寄託物の返還、第三者の権利主張への対応など、実務上重要なポイントがあります。

今回は、寄託契約の基本的な考え方、成立要件、当事者の権利・義務について解説します。賃貸借契約など類似の契約との違いや、民法改正による変更点についても弁護士が説明します。

この解説のポイント
  • 寄託契約は物の保管を内容とする契約で、合意のみで成立する諾成契約である
  • 2020年民法改正で、寄託物の引渡し前でも契約が成立することとなった
  • 有償寄託と無償寄託で、受寄者が負う保管義務の程度が異なる

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

目次(クリックで移動)

寄託契約とは

ハート

はじめに、寄託契約とはどのようなものか、基本的な知識を解説します。

寄託契約とは、当事者の一方が相手方に対して物の保管を委託し、相手方が承諾することで成立する契約です。物を預ける側を「寄託者」、物を預かる側を「受寄者」といいます。

民法657条は、寄託契約について次のように定めています。

民法657条(寄託)

寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

民法(e-Gov法令検索)

原則として無償・片務契約ですが、保管料などの報酬の合意をすることで、有償・双務契約とすることができます。原則として、受寄者は寄託物を使用せず、自ら保管しなければなりません。寄託者は、返還時期を定めていてもいつでも返還を請求できる一方、受寄者による返還には制限があります。

寄託契約の典型例として、倉庫で荷物を預かってもらう際に締結する「倉庫寄託契約」、トランクルームやロッカーの契約などが挙げられます。

寄託契約の成立要件

寄託契約では、受寄者が寄託物を保管することを、当事者間で合意する必要があります。

現在の民法では、寄託物の引渡し前でも、当事者が保管について合意すれば成立する「諾成契約」の性質とされます。従来は、目的物の引渡しによって成立する「要物契約」とされていましたが、2020年4月施行の民法改正で諾成契約に変更されました。したがって、実際に寄託物を引き渡す前でも、保管について当事者が合意すれば寄託契約が成立します。

また、寄託契約では、契約書の作成などの特別な形式は求められておらず、口頭の合意でも成立します。ただし、保管期間や報酬、保管方法、滅失・損傷した場合の責任などをめぐるトラブルを防ぐために、契約内容を「寄託契約書」などの書面で明確にしておくことが望ましいです。

なお、寄託の対象となる物は、寄託者自身が所有する物に限られません。他人の所有物であっても寄託契約を締結でき、寄託者は契約に基づいて受寄者に返還を請求できます。

寄託契約が活用される具体例

寄託契約は、個人間の物品の授受から事業者間の商品の保管まで、様々な活用例があります。例えば、よく寄託契約が活用されるのは、次のようなケースです。

  • 倉庫業者が顧客の商品や原材料を預かって保管する。
  • ホテルや旅館が宿泊客の手荷物をクロークなどで預かる。
  • 店舗などが顧客の手荷物や所持品を預かって管理する。
  • 知人の旅行中に、その所有物を預かって保管する。

一方、物を一定の場所に置く内容でも、寄託契約になるとは限りません。例えば、「敷地内に自動車を置く」という内容の場合、寄託契約ではなく賃貸借契約の性質を有します。銀行の貸金庫についても、銀行が収納物を預かる契約ではなく、金庫を利用させる契約と考えられています。

寄託契約に該当するかどうかは、契約の名称や物が置かれているという外形だけではなく、受寄者が目的物について保管義務を負っているかどうかを踏まえて判断する必要があります。

寄託契約の種類

寄託契約は、報酬の有無によって「有償寄託」と「無償寄託」に分けられます。また、保管方法や寄託物の性質に着目した特殊な寄託として「混合寄託」と「消費寄託」があります。有償か無償かにより受寄者の注意義務に違いがあるため、どのような寄託契約かを確認することが重要です。

それぞれの特徴は、次のように整理できます。

有償寄託

有償寄託とは、寄託者が受寄者に対し、保管の対価として報酬を支払う寄託契約です。

例えば、倉庫業者に保管料を支払って商品を預ける場合、「有償寄託」となります。有償寄託では、受寄者には善管注意義務が課され、寄託物の安全かつ適切な保管が求められます。また、受領前に解除した際の費用や損害賠償請求など、金銭面の条件についても寄託契約書で事前に取り決めておくことが重要となります。

一方で、寄託者は受寄者に対して報酬を支払う義務を負い、双方が対価的な債務を負担する「双務契約」となります。

無償寄託

無償寄託とは、受寄者に報酬を支払わず、無償で物を保管させる寄託契約です。

例えば、知人に荷物を無償で預かってもらう場合、「無償寄託」となります。無償寄託は、個人間をはじめ、善意の委託関係で利用されるケースが多く、受寄者の注意義務は「自己の財産に対するのと同一の注意」にとどまり、善管注意義務より軽くなります。

無償寄託では、受寄者の保管義務のみで、寄託者は義務を負わないため、受寄者が一方的に義務を負担する「片務契約」となります。

混合寄託

混合寄託とは、種類及び品質が同一である複数の寄託物を混ぜ合わせて保管する契約です。寄託者に返還するときも、預けたのと同じ数量を返還すれば足ります。例えば、倉庫業者が複数の企業から同一規格の商品を預かる場合、「混合寄託」となります。

通常の寄託では預かった物そのものを保管し、返還しますが、混合寄託では、各寄託者の承諾があれば、同じ種類・品質の寄託物を混合して保管することが認められます。

混合した寄託物の一部が滅失した場合は、各寄託者が預けた数量に応じた割合で返還することとなります。そのため、トラブルを防ぐために、返還方法、一部滅失時の按分方法、損失の補填などについて定めておく必要があります。

消費寄託

消費寄託とは、受寄者が寄託物を消費・処分することが認められる寄託契約です。

受寄者が消費した場合、後に同じ種類・品質・数量の物を返還しなければなりません。消費寄託の代表例が、銀行などへの預貯金です。金融機関は、預金をそのまま保管するのではなく、利用・処分し、預金者から返還を求められた際には同額を返金します。

消費寄託では、返還の方法や時期、返還時の寄託物の評価方法などが争いになりやすいので、事前に寄託契約書で具体的に定めておく必要があります。

寄託契約における当事者の義務

寄託契約が成立すると、受寄者と寄託者には一定の義務が生じます。

受寄者は、寄託物を適切に保管し、契約終了後は返還しなければなりません。一方、寄託者も、有償寄託なら報酬の支払いを要し、保管に必要な費用の負担などの義務を負うことがあります。以下では、当事者それぞれが負う主な義務を解説します。

受寄者の主な義務

まず、受寄者の義務について解説します。

受寄者の義務の中心は、寄託物を適切に保管することです。その他に、無断で使用しないことや、一定の場合に寄託者に通知すること、寄託物を返還することなどが求められます。

寄託物を適切に保管する義務

受寄者は、寄託物を適切に保管する義務を負います。

受寄者に求められる注意の程度は、有償寄託か無償寄託かによって異なります。無報酬の受寄者は、「自己の財産に対するのと同一の注意」をもって寄託物を保管すれば足りるとされています(民法659条)。つまり、自分の物を普段扱うのと同程度の注意で足ります。

一方、有償寄託の場合、善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負います。これは、受寄者の職業や専門性、寄託物の性質などに照らし、社会通念上要求される合理的な注意をもって保管しなければならないことを意味しており、義務違反によって寄託物を滅失・損傷させた場合、債務不履行に基づく損害賠償責任を負います。

ただし、具体的にどのような保管方法が求められるかは、まずは当事者間の契約内容によって決まります。そのため、寄託契約書で、保管場所や保管方法、その他、寄託物の性質によって必要となる場合は温度や湿度の管理など、具体的な条件を定めておく必要があります。

寄託物を使用しない義務

受寄者は、寄託者の承諾がなければ寄託物を使用することができません(民法658条1項)。寄託契約は、あくまでも物を「保管する」ことを目的とする契約であり、受寄者が自由に使用することを認める契約ではないためです。

寄託物を第三者に保管させない義務

受寄者は、原則として自ら寄託物を保管しなければならず、寄託者の承諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときに限って、第三者に保管させることができます(民法658条2項)。第三者に保管を任せることを「再寄託」といいます。

再寄託した場合の再受寄者は、寄託者に対し、その権限の範囲内で受寄者と同一の権利を有し、義務を負います(同条3項)。そのため、寄託物の返還義務を負う一方で、報酬や費用の支払いを求めることができます。

したがって、事業者が寄託物の保管業務を外部業者へ委託する可能性がある場合、あらかじめ契約書で再寄託の可否や条件、再寄託者の範囲などを定める必要があります。

寄託物に関する通知・報告義務

寄託物について第三者が権利を主張するなど、一定の事態が生じた場合には、受寄者は寄託者に通知する義務を負います。

受寄者はまず、寄託物について権利を主張する第三者が訴えを提起し、または差押えなどをしたときは、受寄者は、寄託者が既に知っている場合を除き、遅滞なく通知しなければなりません。また、寄託者から指示がない限り、受寄者は原則として寄託者に対して寄託物を返還する義務を負い続け、勝手に第三者へ引き渡すことは認められません(民法660条)。

例えば、預かっている商品について第三者が「自分の所有物である」と主張し、訴訟を提起したような場合が考えられます。

契約終了後に寄託物を返還する義務

寄託契約では、受寄者は契約終了時などに寄託物を寄託者へ返還する義務を負います。

通常の寄託では、預かった物そのものを返還するのが原則ですが、混合寄託や消費寄託では、同じ種類・品質・数量の物を返還することになります。

また、寄託契約で返還時期を定めていても、寄託者はその時期より前に寄託物の返還を請求することができます。返還の場所や方法、返還にかかる費用などをめぐるトラブルを防ぐためにも、契約書で返還条件を具体的に定めておくことが重要です。

寄託者の主な義務

次に、寄託者の義務について解説します。

有償の場合は報酬の支払い義務があり、寄託物の保管に要した費用の負担、寄託物の性質・瑕疵によって受寄者に損害が生じた場合には損害賠償責任を負うこともあります。

約定した報酬を支払う義務

有償寄託では、寄託者は契約で定めた報酬を受寄者に支払う義務を負います。

ただし、寄託契約は当然に有償となるわけではなく、報酬を支払う旨の合意がなければ無償寄託となります。事業者間の寄託契約では、報酬額、計算方法や支払時期のほか、保管期間を延長した場合の追加料金などについて契約書で明確にしておきましょう。

保管に必要な費用を負担する義務

寄託物の保管に費用を要した場合、寄託者が負担すべき場合があります。

例えば、寄託物の性質上、特別な保管や設備・装置を要し、費用がかかる場合が考えられます。この場合の「費用」は、寄託の「報酬」とは別物です。もっとも、費用負担をめぐるトラブルを避けるため、あらかじめ費用が想定される場合には、通常の保管料に含まれるか、別途負担する場合はその金額や支払方法などを、契約書に明記すべきです。

寄託物の性質・瑕疵による損害を賠償する義務

寄託物の性質や瑕疵によって受寄者に損害が生じた場合、寄託者はその損害を賠償しなければなりません(民法661条)。例えば、寄託物の中に危険なものがあり、それによって受寄者の設備が損傷したケースが考えられます。ただし、寄託者が過失なく性質・瑕疵を知らなかった場合や、受寄者がそれを知っていた場合は、損害賠償責任は負いません。

そのため、危険物や壊れやすい物、特殊な管理を必要とする物を寄託するときは、その性質や取扱上の注意事項をあらかじめ受寄者に伝えておくことが重要です。

寄託契約の終了と期間制限

寄託者は、返還時期を定めていた場合でも、原則としていつでも寄託物の返還を請求できます(民法662条1項)。ただし、期限前の返還請求によって受寄者に損害が生じた場合、受寄者は寄託者に対して損害賠償を請求できます(同条2項)。

受寄者は、返還時期の定めがない場合はいつでも寄託物を返還できますが、返還時期を定めている場合には、やむを得ない事由がなければ期限前に返還できません(民法663条)。返還場所は、原則として寄託物を保管すべき場所です(民法664条)。

また、寄託物の一部滅失・損傷に関する損害賠償請求や、受寄者が支出した費用の償還請求には期間制限があります。これらの請求は、原則として寄託者が寄託物の返還を受けた時から1年以内に行う必要があります。

そのため、寄託物の返還を受けた際には、できるだけ早く状態を確認し、損傷などがある場合には速やかに対応することが重要です。

寄託契約と他の契約の違い

寄託契約と似た契約として、賃貸借・使用貸借や、委任・請負などがあります。

寄託契約は、物の保管を目的とする契約ですが、物を相手方に引き渡す契約には、賃貸借契約や使用貸借契約などがあり、実際の取引ではどの契約に該当するかの判断が難しいことがあります。また、物の保管という事務を相手方に委ねる点で、委任契約や請負契約と似た性質もあります。

契約の種類の違いは、形式的な名称で判断するのではなく、契約の目的や当事者が負う義務などから、実質的に判断しなければなりません。

賃貸借・使用貸借との違い

賃貸借契約は、物を有償で使用・収益させる契約、使用貸借契約は、物を無償で使用・収益させる契約です。いずれも、物を受け取った側がそれを使用することが契約の目的となります。これに対し、寄託契約は、物を保管・管理してもらうことを目的とした契約であり、受寄者は、寄託者の承諾がない限り、原則として寄託物を使用できません。

したがって、相手方に物を「使わせる」ことが目的であれば賃貸借・使用貸借、物を「預けて保管してもらう」ことが目的であれば寄託契約という点が、基本的な違いです。

委任・請負との違い

委任契約は法律行為の遂行を相手方に委託する契約であり、法律行為以外の事務の委託は準委任契約となります。また、請負契約は、一定の仕事を完成させることを目的とする契約です。これに対し、寄託契約は、物そのものの保管・管理を主な目的としています。

例えば、商品の保管を依頼する場合は寄託契約となりますが、在庫管理などの事務処理を依頼する場合は準委任、商品の加工や修理など一定の仕事の完成を依頼する場合は請負となります。なお、実際の取引では、物の保管と在庫管理、発送などを一括して委託する場合のように、寄託と委任・請負などの複数の契約が結ばれることがあります。

2020年の民法改正で寄託契約はどう変わった?

2020年4月施行の民法改正では、寄託契約についても変更がありました。なお、改正の全体像は、「民法改正(2020年4月施行)」の解説をご参照ください。

要物契約から諾成契約になった

改正前の寄託契約は、寄託物が引き渡されることで成立する「要物契約」でしたが、法改正により、物の引渡し前でも当事者の合意のみで成立する「諾成契約」に変更されました。要物契約とすることは実務の慣行と乖離しており、実際の倉庫業などでも諾成契約的な寄託契約が広く浸透していました。そのため、取引の実情に合わせた改正といえます。

合意のみで契約が成立するため、寄託契約の成立時期が前倒しされます。これにより、寄託物の受け渡し前から法的拘束力が発生することに備え、特に受寄者にとって、受領前の解除権や損害賠償請求のリスクに備え、寄託契約書の規定により一層の注意が必要となります。

解除のルールが明確化された

寄託が諾成契約になったことに伴い、解除権の定めが明確化されました。

2020年4月施行の民法改正で、寄託が諾成契約となったことに伴い、解除権の定めが明確化され、寄託者と受寄者のリスク分担が明らかにされました。

  • 寄託者による解除
    寄託者は、有償・無償を問わず、寄託物の交付前であれば寄託契約を解除できます。ただし、解除によって受寄者に損害が生じたときは賠償責任を負います(受寄者が寄託物を受領する前に準備した費用、得られたはずの報酬など)。
  • 受寄者による解除
    受寄者は、書面によらない無償寄託であれば、寄託物を受領するまでは解除できます。また、有償寄託や書面による無償寄託でも、約束した時期に寄託物が引き渡されず、相当の期間を定めて催告しても引き渡されないときは解除することができます。これらの解除権は、受寄者の法的地位の安定を目的とした規定です。

寄託者・受寄者双方から解除が認められるため、契約成立後も状況の変化に柔軟に対応できる反面、解除権行使やその際の損害賠償に関する契約書の定めが重要となります。

再寄託のルールが緩和された

従来、再寄託には寄託者の承諾を要するのが原則でしたが、承諾を得るのが困難なケースもありました。委任契約では「やむを得ない事由」があれば復委任が認められることとの整合性から、再寄託もまた「やむを得ない事由」がある場合には認められることとなりました。

なお、再寄託について「受寄者の主な義務」で詳しく解説しています。

第三者の権利主張への対応が明確化された

2020年4月施行の民法改正では、第三者が寄託物の所有権などを主張した場合の受寄者の対応が明確化されました。受寄者は、第三者から権利主張などがあったことを寄託者に通知しなければならず、寄託者の指示がない限り、勝手に第三者へ引き渡すことは認められません(民法660条)。

なお、第三者の権利主張への対応は「受寄者の主な義務」で詳しく解説しています。

寄託契約書の作成時の注意点

寄託契約の内容や権利義務について記した重要な文書が「寄託契約書」です。

前述の通り、寄託契約は口頭の合意でも成立するものの、トラブルを避けるため、書面化して合意内容を証拠に残すのが適切です。無償寄託では特に、書面がないと、寄託物を受け取るまで受寄者が解除できるため、書面化することがリスク軽減につながります。

寄託契約書のテンプレート

寄託契約書のテンプレート・ひな形を紹介します。

寄託契約書

【寄託者の氏名】(以下「甲」という)と【受寄者の氏名】(以下「乙」という)とは、両者の間で締結された寄託契約の内容について、以下の通り合意した。

第1条(寄託)

甲は、別紙「寄託物目録」に記載した物品(以下「寄託物」という)を乙に寄託した。

第2条(保管方法及び保管場所)

乙は、本契約に基づき、寄託物を指定の場所(◯◯市◯◯町所在の倉庫内)にて、善良なる管理者の注意義務に従って保管する。なお、乙は、甲の書面による事前承諾なしに寄託物の保管場所を変更してはならない。

第3条(保管期間)

1. 本契約に基づく保管期間は、20XX年XX月XX日から1年間とする。

2. 乙は保管期間終了又は甲の返還請求があった場合、◯日以内に寄託物を甲の指定する場所に返還する。

第4条(寄託料)

甲は乙に対し、寄託料として月額◯◯万円を支払う。料金の支払いは、毎月末日限り、乙の指定する金融機関の口座に振込送金する方法による(振込手数料は甲負担)。

第5条(損害賠償)

乙は、故意又は重過失によって寄託物に損傷、滅失を生じさせた場合、甲に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、天災その他の乙の責に帰さない事由による場合はこの限りでない。

第6条(譲渡及び再寄託の禁止)

乙は、甲の書面による承諾なく、寄託物を第三者に譲渡し、又は再寄託してはならない。やむを得ない事由によって再寄託する場合、再受寄者もまた乙と同等の義務を負う。

第7条(契約解除)

1. 甲又は乙は、次の各号のいずれかに該当する場合、相手方に催告を行うことなく、本契約を解除することができる。
① 相手方が本契約に定める義務に著しく違反した場合
② 甲又は乙の財務状態が著しく悪化し、信用不安が生じた場合
③ その他、契約履行が困難と認められる事由が生じた場合

2. 本条に基づき契約が解除となった場合、甲乙いずれか責のある方は、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。

第8条(紛争解決)

1. 本契約に定めのない事項については、甲及び乙が誠実に協議して決定する。

2. 本契約に関する紛争は、東京地方裁判所を第一審の専属管轄裁判所とする。

本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙が署名押印の上、各1通を保有するものとする。

【作成日・署名押印】

なお、上記の例文はあくまでサンプルなので、寄託契約の内容や状況に合わせて、追記・修正をする必要があります。

寄託契約書に記載すべき内容

次に、寄託契約書のテンプレートをもとに、記載すべき内容とその注意点を解説します。

寄託物の特定

寄託契約では、受寄者は預かった物の返還義務を負うため、「何を預けたか」が分かるよう、寄託物を具体的に特定しておく必要があります。寄託物にもよりますが、品名や数量、品質、シリアル番号など、他と区別できるように明確に特定することが重要です。混合寄託や消費寄託といった特殊な寄託の場合には、その旨を明記してください。複数の物品を寄託する場合、「別紙物品目録記載の物品」などと特定する方法も有効です。

保管方法と保管場所

有償寄託の受寄者は善管注意義務を負うため、その寄託物の特定に応じた保管方法を契約書に明記するのがおすすめです。例えば、次のような記載例があります。

  • 保管場所の温度や湿度
  • 入出庫時の注意点
  • 火災保険や地震保険の有無

保管場所を具体的に特定する場合、住所や施設名などを寄託契約書に記載し、変更できる場合の条件も定めるのがよいでしょう。

保管期間と返還時期

寄託期間の開始日と終了日、返還時期や方法、返還場所について定めます。また、返還時の手続きとして、点検や検品、目録との照合の方法や、一部が滅失・毀損していた場合の対処法などについても寄託契約書に定める例もあります。返還が遅れた際の遅延損害金や違約金も合わせて規定すると、紛争防止につながります。

報酬と費用負担

有償寄託の場合、保管料や寄託料といった報酬の金額、支払方法や期限を定めます。また、有償・無償を問わず、保管のために費用が生じる場合、その負担についても寄託契約書に明記しておくことが重要です。

滅失・損傷時の責任

寄託物が滅失・毀損した際の責任として、損害賠償を定めます。受寄者側では責任を限定するため、損害賠償額の上限を寄託料までとするよう交渉することがあります。一方、寄託者は、被害回復を図るため、違約金の定めを入れるよう交渉すべきです。

再寄託の可否や条件

前述の通り、再寄託は、寄託者が承諾した場合や、やむを得ない事由がある場合に許されます。そのため、再寄託の可否や条件については、寄託契約書に定めておきましょう。特に、再寄託を承諾する場合には、再受寄者の負う責任、違反時の措置(解除や損害賠償)、再受寄者として認められる範囲などについて明記しておいてください。

契約解除・中途解約

契約を中途で解除できる条件も定めておきましょう。例えば、重大な契約違反、支払停止、破産などがよく列挙されます。民法改正で、寄託物の受領前に受寄者側から解除できる規定が新設されたため、その場合の手続きや賠償についても定めるのがよいでしょう。

寄託契約書の印紙について

寄託契約書は、「金銭又は有価証券の寄託」に該当する場合には印紙税の課税対象となり、収入印紙が必要です。一方、物品の寄託契約には課税されません(国税庁「寄託の意義」)。

【まとめ】寄託契約について

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、寄託契約について詳しく解説しました。

物を預かる点で、寄託契約と賃貸借契約は共通しますが、その目的が異なります。寄託契約の目的が「物を保管してもらうこと」であるのに対し、賃貸借契約は「物を使用・収益させること」を目的とします。当事者の権利・義務も異なるため、どの契約に該当するか慎重な判断が必要です。

また、2020年4月施行の民法改正で、寄託契約は原則として物の引渡しを待たず、当事者の合意によって成立する「諾成契約」となりました。これに伴い、寄託物の引渡し前から法的効力が生じ、寄託者・受寄者の双方に解除権が認められるなど、実務上の影響が生じます。

寄託契約を締結する際は、寄託物や保管方法、保管期間、報酬や費用負担、滅失・損傷時の責任、再寄託の可否などを寄託契約書で具体化することが重要です。契約交渉やリーガルチェックを十分に行うために、弁護士のサポートを受けるのが有益です。

この解説のポイント
  • 寄託契約は物の保管を内容とする契約で、合意のみで成立する諾成契約である
  • 2020年民法改正で、寄託物の引渡し前でも契約が成立することとなった
  • 有償寄託と無償寄託で、受寄者が負う保管義務の程度が異なる

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

目次(クリックで移動)