民法改正で保証の契約書はどう変わる?【改正民法と契約書 第6回】

今回の民法改正では、保証に関する規定が一部変更・追加されました。保証契約は、企業の事業運営において必須のものであるとともに、個人にとっても身近な契約類型でもあります。

債権法改正によって新たに追加された、保証についてのルールを変更する規定も多く、重要性が高い分野です。

そこで、今回は、保証についての民法の改正点の中でも、特に重要な規定を中心に、弁護士が解説します。

1. 保証契約とは?

保証契約とは、主たる債務者がその債務の履行をしないときに、その履行をする責任を負うことを約する契約をいいます。

例えば、Y(主たる債務者)がX(債権者)から家を賃貸するに際して、Zに保証人になることを依頼し、XとZとの間でYの賃料債務等の支払いを保証する場合をいいます。

保証契約は債権者と保証人となろうとする者との間で締結され、書面でしなければ効力を生じません(現行民法446条2項、改正民法446条2項)。
  
保証契約には、催告の抗弁権等がない連帯保証、一定の範囲に属する不特定の債務を保証する根保証、会社に雇用される人が、会社に対して損害を与えた場合に保証人が弁償する旨の身元保証など、様々な種類の保証契約が存在します。

2. 「事業のための貸金債務についての個人保証」の改正

「事業のための貸金債務についての個人保証とは、例えば、債務者が新たな工場を建設するための資金を借り入れたりする場合に、個人がその債務を保証することをいいます。

事業のための貸金債務は多額になることが多く、個人保証の意思確認を厳格にすることで、保証人となろうとする個人を保護する趣旨で、改製がなされました。

そのため、保証人となろうとする者が法人である場合には適用がありません(改正民法465条の6第3項、同法465条の8第2項)。

改正民法では、事業のための貸金債務についての個人保証契約は、保証契約締結前の1カ月以内に、保証意思が公正証書で確認されなければ無効になります(改正民法465条の6第1項、同法465条の8)。

もっとも、主たる債務者が法人である場合の取締役や執行役、これに準じる者、株式の過半数を有する者が保証人となる場合や共同事業者、事業に従事している配偶者については保証人となるニーズがあることから本条の適用はありません。(改正民法465条の9)

3. 「個人根保証契約」の改正

3.1. 根保証とは?

「根保証」とは、継続的な取引関係から生ずる、不特定多数の債務のためにする保証をいいます。

根保証契約は、その内容によって、次の2つにわけることができます。

  • 保証期間と保証金額の上限を定めない「包括根保証契約」
  • 保証の期間・上限の一方あるいは両方を定めた「限定根保証契約」

法人ではなく、個人が債権者と根保証契約を締結する場合を個人根保証契約といいます(改正民法465条の2第1項)。現行民法では、個人根保証契約のうち貸金等に関する根保証についての規定(貸金等根保証契約)しかありません(現行民法465条の2)。整理すると以下のようになります。

  • 現行民法→個人根保証契約のうち貸金等根保証契約について規定
  • 改正民法→個人根保証契約一般に関する規定+個人貸金等根保証契約(=現行民法の貸金等根保証契約)

3.2. 極度額とは?

極度額とは、保証人が保証する額の上限のことをいいます。

例えば、極度額を1000万円とした場合には、主たる債務者が1500万円の債務を負ったとしても、保証人は1000万円を超える部分については責任を負いません。他方、債権者からすれば、保証人が信用のある者である限り、極度額の範囲内であれば、安心して繰り返し債務者と取引することができます。

現行民法と異なり、改正民法では、全ての個人根保証契約において、極度額が設定されなければ無効となります(改正民法465条の2第2項)。

現行民法においては、平成16年に貸金債務等を個人が根保証する場合(貸金等個人根保証)は、極度額を定めなければ無効とされましたが、今回の民法改正では、賃貸借契約等の個人根保証契約においても極度額を定めなければ無効となります(改正民法465条の2第2項)。

裏を返せば、改正民法が施行されるまでは、貸金等以外の個人根保証は極度額を定めなくても無効ではありません。

3.3. 「責任の範囲」の民法改正

個人根保証契約を締結した保証人が負う責任の範囲について、「主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部にかかる極度額を限度として、その履行をする責任を負う。」と規定しています(現行民法465条の2第1項、改正民法465条の2第1項)。

3.4. 「元本の確定事由」の民法改正

根保証は一定の期間に継続的に発生する不特定の債務を担保する保証ですから、一定の時点で保証の対象を特定し、債務の範囲を特定する必要があります。これを元本確定といいます。

改正民法における元本確定事由をまとめると以下の通りになります。

  • 個人根保証契約
  • ①保証人についての強制執行、担保権実行の申立て②保証人についての破産手続開始決定③主債務者または保証人が死亡(改正民法465条の4第1項)

  • 個人貸金等根保証契約
  • ①から③に加え、④主債務者についての強制執行、担保権の実行⑤主債務者についての破産手続開始決定(改正民法465条の4第2項)

保証人と債権者の合意で元本が確定する日を予め契約で定めておくことは可能ですが、保証人保護のため、個人貸金等根保証契約については、契約締結から5年以内の日であることが必要です(改正民法465条の3)。

この場合、契約で定めた日が到来することで元本が確定します

4. 「保証人の保護のための情報提供義務」の導入

4.1. 保証契約締結時の主債務者の情報提供義務 

事業のために生じる債務の個人保証を依頼するときは、主たる債務者は、当該個人に対して主たる債務者の財産や収支、債務の状況、担保として提供するものがあるか等を説明する必要があります。

主たる債務者がその説明をしなかったり、事実と異なる説明をしたこと(以下「不実の説明等」)によって個人が保証人となった場合で、債権者が不実の説明等があったことを知っていたか又は知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことができます(改正民法465条の10第1項、同条2項)。

4.2. 主債務の履行状況に関する債権者の情報提供義務

保証人が、主たる債務者の委託を受けて保証した場合において、保証人(個人か法人かは問いません。)の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主債務の元本及び主債務に関する利息、損害賠償、その他、主たる債務に関する全ての債務について、不履行の有無、残額、履行期限が経過している債務額を知らせなければなりません(改正民法458条の2)。

保証人の保護の趣旨から新たに規定されました。この規定に違反しても直接の罰則規定はありませんが、債権者が債務不履行責任等を追及される可能性はあります。

なお、本条は、委託を受けた保証人による情報請求権のみです。

委託を受けていない保証人からの情報提供請求に応じて、債権者が保証人に対して主債務に関する情報を提供した場合には、契約上の守秘義務に反する可能性がありますので、注意が必要です。

4.3. 主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務

主たる債務者が期限の利益を喪失した場合、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から2カ月以内に、その旨を通知しなければなりません(改正民法458条の3第1項)。

債権者が、通知を怠った場合、保証人に対して、期限の利益喪失時から通知までの間に生じるはずであった遅延損害金についての保証債務の履行を請求することができません(同条第2項)。

5. 保証についての改正民法はいつから適用される?

保証に関する規定については、保証契約の締結時を基準に、改正民法の適用の有無が判断されます(改正民法附則第21条1項)。施行後に保証契約が更新された場合、更新後は改正民法が適用されます。

また、相続との関係においては、既に発生した保証債務は相続されるため、相続放棄の手続等をする検討する必要があります(現行・改正民法915条)。

5. まとめ

今回の改正では、個人の根保証に関する規定や契約締結時の説明義務等が新設され、より保証人を保護する法律に改正されます。

そのため、債権者は、保証契約書を改正民法にきちんと対応させる必要があります。契約書のチェックなど保証契約に関する問題でお困りの際は、一度弁護士に相談してみてください。

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