民法改正で法定利率・利息はどう変わる?【民法改正と契約書 第8回】

今回、2020年4月より施行される改正民法(債権法改正)では、法定利率について重要な変更がされました。

法定利率は、人からお金や物を借りる「消費貸借契約」の利息を決める、とても重要な条項です。

あわせて、消費貸借、使用貸借についての民法の規定も改正されています。消費貸借では諾成化が認められ、使用貸借は諾成契約になります。

今回の改正では、法定利率について、変動性が設けられたことが重要です。そこで今回は、法定利率、消費貸借契約、使用貸借計笏について、民法改正の基本的な内容を中心に、弁護士が解説します。

1. 法定利率とは?

「法定利率」とは、法律によって定められている利率のことをいいます。

法定利率には様々なものがあります。民法に定められた基本的な法定利率以外にも、元となる債権の種類によって特別な法定利率があります。

例えば、現行商法では、商取引に基づいて発生した債権の利率は6%です。これを「商事法定利率」といいます。
    
一方、当事者間で契約などによって定められた利率のことを「約定利率」といいます。

当事者間の合意により、貸主が暴利をむさぼる危険があるため、利息制限法などの法律によって、「約定利率」には一定の制限があります。

2. 法定利率についての民法改正の内容は?

さきほど解説した「法定利率」について、この度2020年4月に施行される民法改正(債権法改正)で、重要な改正がされることとなりました。

2.1. 改正の経緯

改正の経緯は、現行民法の法定利率は、「市場金利」を前提に定められていましたが、現代においては、市場金利に比べて法定利率が高すぎることから改正をすることになりました。

銀行預金につく利息をイメージしていただければ、「年5%」という民法の民事法定利率が、一般的な市場金利より明らかに高いことを用意に理解していただけるのではないでしょうか。

2.2. 現行民法の「法定利率」

現行民法の定める法定利率は、「年5%」です(現行民法404条)。「年5分」と表現することもあります。

商法において、商行為によって生じた債権については「年6%(年6分」とされています(商事法定利率。現行商法514条)。

金銭債務の不履行による損害賠償額は、原則として法定利率により定められますので(現行民法419条1項)、遅延損害金は別段の合意がない限り、年5%の割合で算定されます。

現行法は中間利息の控除(将来得られたであろう利益を現時点の金額に換算すること)を計算する際の利率について、規定を設けていませんが、判例は法定利率の割合(5%)で控除することとしています。

そのため、この度の民法の改正にともなって、控除される中間利息の計算方法についても、変更が必要となります。

2.3. 改正民法の「法定利率」

改正法では、下記のような内容の変動性が採用されました(改正民法404条)。

  • 法定利率は年3%から始まります(改正民法404条2項)。
  • 法務省令に定める方法で、3年ごとに法定利率を見直します(同条3項)。
  • 見直し時点の短期貸付の平均利率を「基準割合」とし、法定利率に変動があった期のうち直近の基準割合から1%以上変動があった場合、当該基準割合の変動分(1%未満は切捨)が、法定利率に加減されます(同条5項)。
  • 「基準割合」は、法務省令の定めに従い、各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月における銀行の短期貸付け(貸付期間1年未満)の平均利率をさらに平均化したものとして法務大臣が告示するものを用います(同条5項)。

以上の通り、1%以上の増減があった場合には1%刻みで反映させることで、比較的安定的な変動ルールとなっています。

民事法定利率が、変動制となり、現在よりも低率に調整されることにより、これと並行して、商事法定利率は廃止されることとなりました。

3. 改正民法の法定利息は、いつから適用される?(適用利率の基準時)

「適用利率の基準時」の問題とは、すなわち、2020年4月に施行される改正民法の法定利息が、いつから適用されるか?という問題です。

特に、改正前後をまたいで契約が締結されたり、契約上の債務が発生したりする場合に、改正前後いずれの法定利息が適用されるのかが、重要な論点となります。

別段の意思表示がないときには、利息が生じた最初の時点における法定利率が適用されることとなっています(改正民法404条1項)。

これに対して、契約上、利息について法定利率と異なる合意をしている場合には、その利率が利息制限法などの法律に反しない限り、契約書に書いてある約定利率が優先します。

遅延損害金は、遅滞責任が生じた時点における法定利率が適用されます。

特に、契約によって別段の定めを設けることのできない「不法行為」の場合、「不法行為時に遅滞に陥る」こととされているため、法定利率は、「不法行為時」の法律が適用されます。

4. 「消費貸借契約」についての改正内容

消費貸借契約とは、契約当事者が、お金や物を貸す契約のことをいいます。

法律的にいうと、「当事者の一方が種類、品質及び数量が同じ物をもって返還することを約して相手方より金銭その他の物を受け取ることを内容とする契約」です。

消費貸借契約のうち、金銭を貸すことを目的とする契約を、金銭消費貸借と呼びます。

金銭消費貸借契約を結ぶ際には、利息を契約書によって定めることが一般的であり、「法定利率」の改正とともに問題となります。

4.1. 【改正①】消費貸借契約の「諾成化」

現行民法では、消費貸借契約は「要物契約」とされています。「要物契約」とは、物やお金など、消費貸借の対象となる物を相手方に交付して初めて契約が成立するということです。

言い換えるとつまり、対象となる物を相手方に交付するまでは、消費貸借契約は成立しないということです。

これが、改正民法では、書面(電磁的記録を含みます。)でする消費貸借契約については、「要粒契約」ではなく「諾成契約」であることとされました。

つまり、対象となる物を交付しなくても、「受け取った物と同じ種類、品質、数量の物を返す」と約束をして、合意をした時点で、消費貸借契約が成立することとなりました。
   
また、改正法では、借主は目的物を受取るまでは契約を解除でき、貸主はその解除によって損害を被った場合には損害賠償請求ができるとしています(改正民法587条の2第2項)。

4.2. 【改正②】期限前返還の貸主の損害賠償請求権

現行民法においては、借主が弁済期前に貸金を返還した場合には「相手方の利益を害することができない」と規定されていました(現行民法136条2項)。

改正民法では、「利益を害することができない」だけでなく、害した場合にどのような責任が追及できるか、より明確に定められました。

つまり、借主による期限前の返還によって貸主に損害が生じた場合には、貸主が借主に対して損害賠償を請求することができることとされています(改正民法591条3項)。

この場合に貸主に生じる「損害」とは、貸主が現実に被った損害のことをいいます。そのため、将来発生するであろう「約束した利息」などの生べかりし利益が「損害」に含まれるわけではない点には注意が必要です。

例えば、「損害」にあたる例としては、ローンの繰り上げ返済の際に生じる事務手数料などが念頭に置かれています。

5. 「使用貸借契約」についての改正内容

使用貸借契約とは、無償で物を借りる契約のことをいいます。

法律的にいうと、「当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすことを約して相手方から目的物を受けることを内容とする契約」です。

5.1. 【改正①】使用貸借契約の「諾成化」

現行民法では、使用貸借契約もまた、消費貸借契約と同様に「要物契約」とされていました。

つまり、消費貸借契約もまた、貸す物を交付するのと同時にでなければ契約が成立しないということです。

この点について改正民法においては、消費貸借契約もまた諾成契約であることが明示されました。そのため、使用貸借契約の成立においては、当事者間の合意のみで成立することになります(改正民法593条)。

使用貸借が経済的な取引の一環として行われることも多く、目的物が引き渡されるまで契約上の義務が生じないとすれば取引の安全を害するおそれがあるという理由から改正がされました。

また、諾成契約となったことから、借主が目的物を受け取っていない段階での貸主の解除権を認めています(改正民法593条の2)。もっとも、書面による使用貸借では、この解除権は認められません(同条ただし書き)。

5.2. 【改正②】使用貸借終了後の収去義務及び原状回復義務

借主は、使用貸借が終了した時には、その付属させた物を収去する義務を負いますし、借主に責に帰すべき事由があり、借用物等に損傷があれば原状に復する義務を負います(改正民法599条1項、3項)。

貸主としては、借主の帰責事由の有無にかかわらず借用物の損傷についての原状回復義務が生じると契約書等に記載しておく必要があります。
    

6. まとめ

今回の民法改正によって、法定利率に関する大幅な変更がされました。

特に、商事法定利率については、民法改正と同時に撤廃されることによって、従来の「年6%」から「年3%」へ、大きな変更を伴います。

法定利率が下がることによって、思わぬ損害を被る可能性のある企業等は、しっかりと事前に契約書を作り、利率等を定めておくことが、これまで以上に大切です。

改正前に作成された契約書が改正民法に対応しているかについて、不安な部分のある方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

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