ご相談予約をお待ちしております。

妻のホスト通いは不倫・浮気?慰謝料は発生する?【弁護士解説】

男性側(夫側)の風俗・キャバクラ通いが夫婦間の問題となることがありますが、最近では、女性側(妻側)でも、風俗やキャバクラのように異性からの接待を「娯楽」として楽しみ、不倫・浮気や離婚の問題に発展してしまうケースがあります。

それが、今回解説する「妻のホスト通い」の問題です。

ホストクラブに毎晩のように入りびたり、ホスト通いをするようになると、お気に入りのホストと肉体関係をもってしまう人もいます。また、ホスト通いにはかなりのお金がかかるため浪費も増えてしまいますし、家事や育児をする時間もなくなるおそれがあります。

今回は、妻のホスト通いに悩まされている男性側(夫側)の相談者に向けて、妻のホスト通いが不倫・浮気にあたるかどうか、また、慰謝料請求できるかといった問題について、離婚問題にくわしい弁護士が解説します。

この解説でわかること
  • ホストは店のサービスだが、肉体関係を持つなど、不倫・浮気にあたるケースがある
  • 妻のホスト通いが不貞行為になるとき、慰謝料請求できる
  • 家庭や育児に影響するようなホスト通いでは、離婚することができる

なお、男性側の離婚について、深く知りたい方は、次のまとめ解説をご覧ください。

まとめ 男性側の離婚について知っておきたい全知識【弁護士解説】

目次(クリックで移動)

解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

\相談ご予約受付中です/

妻のホスト通いが不倫・浮気にあたるか

喧嘩する男女

女性の社会進出が進む現代、「性風俗は男の娯楽」という考えは過去のものです。「男性とお酒を飲んで楽しみたい」という女性の誘惑を叶えるホストクラブや、さらには女性向けの風俗も増えています。

しかし、男女平等といえども、結婚して家庭を築いた以上、パートナーである夫に精神的苦痛を与えるような楽しみ方は許されません。そこで、妻のホスト通いが不倫・浮気にあたるかどうかについて解説していきます。

不貞行為とは

不倫・浮気のことを、法律用語で「不貞行為」といいます。妻のホスト通いが「法的に許される行為かどうか」を理解するためには、この「不貞行為」にあたるかどうかについて検討する必要があります。

不貞行為について法律は、「配偶者に不貞な行為があったとき」と定め、これにあたるときには離婚の訴えを提起できることを定めています(民法770条1項1号)。不貞行為のように、法律上、相手の同意がなくても離婚が認められる事情のことを「法定離婚原因」といいます。

民法770条1項

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

民法(e-Gov法令検索)

最高裁判例は、「不貞行為」とは「自由な意思に基づき、自己の配偶者以外の者と性関係を結ぶことをいう」(最高裁昭和48年11月15日判決)と判示しています。わかりやすくいうと、不貞行為とは、夫婦の一方が他の異性と性交渉をすることです。

不貞行為にあたるときは、上記のように法定離婚原因(民法770条1項)にあたることから裁判で離婚することができ、加えて、不貞行為によって負った精神的苦痛について慰謝料請求ができます。

ホストクラブのサービスでも不貞行為にあたるのか

ホスト通いをする妻側の反論として「店のサービスを受けているだけだから不倫・浮気ではない」というものがあります。

しかし、店のサービスだったとしても不貞行為となる可能性は十分にあります。不貞行為は先ほど解説したとおり性交渉を指すわけですが、ホストのサービスはあくまで一緒にお酒や会話を楽しむことがメインであり、性交渉や枕営業は本来のサービスには含まれないはずです。

したがって、ホスト通いで、ホストと肉体関係をもつに至ったときは、たとえ店のサービスと言い訳しても、不貞行為として慰謝料請求の対象となったり離婚原因にあたったりします。女性だからといって不貞行為にならないわけでもありません。

なお、逆に夫側(男性側)のキャバクラ・風俗通いも不貞行為となりうるので、注意が必要です。

クラブのホステスが行った枕営業が、妻に対する不貞行為にはあたらないとし、妻からの慰謝料請求を認めなかった裁判例(東京地裁平成26年4月14日判決)が有名です。この裁判例は、枕営業は夫婦生活を破壊しないといった判断をしましたが、ごく特殊なケースと考えられ、批判も多くあります。枕営業は性欲処理に過ぎないなどといった判断で、女性蔑視ととられかねないケースでもあります。

同じく、クラブのホステスの枕営業の事例で、過去の裁判例では慰謝料請求を認めている例(最高裁昭和54年3月30日判決など)もあることから、特別な事情のない限り、枕営業でも不貞行為にあたると考えるべきです。

妻のホスト通いを理由に慰謝料請求する方法

矢印

妻のホスト通いが不貞行為にあたるとき、次に、ホスト通いを理由として慰謝料請求するための方法について解説します。

証拠収集が重要

慰謝料請求するためには証拠収集が重要です。問い詰めても妻が不貞行為を否定するときには裁判を起こさなければなりませんが、裁判所の審理では「不貞行為の証拠があるかどうか」が重視されるからです。

ホスト通いを理由に慰謝料請求するとき、次のような資料が証拠となります。

  • ホストからの営業連絡(LINE・メール・電話など)
  • ホストとラブホに入った写真・動画
  • 探偵・興信所の調査報告書

このとき、法的には、不貞行為とは肉体関係(性交渉)のことだと解説したとおり、「ホストとの肉体関係(性交渉)を持った」ということを証明できるだけの証拠を集めておくことが重要です。単に「ホストと仲良くしていた」、「ホストとアフターで食事にいった」という程度では、不貞行為とはいえません。

妻を問い詰めてしまった後では証拠隠滅されてしまい、十分な証拠が入手できなくなるおそれもあります。かならず、慰謝料請求を言い出すよりも前に、動かぬ証拠をつかむよう注意してください。

交渉で慰謝料請求する

十分に証拠をつかんだら、ホスト通いしていることを理由に慰謝料を請求するとつたえて、交渉をスタートさせましょう。

最初から強く問い詰めてしまうと、妻が感情的になり収拾がつかなくなってしまうおそれもあるため、冷静に要件を伝えるようにしてください。暴力や脅しを使ってしまうと、DVといわれて逆に夫側(男性側)が不利になってしまいます。

慰謝料を払って妻が反省するのであれば、復縁して夫婦としてやりなおす意思があるというときは、しっかり話し合いを行った上で、今後は不倫・浮気をしないという誓約書を書かせる方法が有効です。

ホスト通いが不貞行為にあたるケースでは、妻に対してだけでなく、相手のホストに対しても慰謝料請求できます。ホスト通いをやめさせたいが妻にはなかなか言い出せないとき、相手に対してだけ慰謝料請求をする方法も有効です。

訴訟で慰謝料請求する

慰謝料請求をされた妻や相手のホストが、交渉では任意に慰謝料を支払ってこない場合や、肉体関係(性交渉)があるかどうかについて争いがある場合には、裁判を起こして慰謝料請求をすることとなります。

このとき、裁判所の審理では証拠が重要であり、証拠のない事実は裁判では認められないことから、肉体関係(性交渉)のあったことの証拠をしっかり収集しておくべきことは前述のとおりです。

ホストと肉体関係のないケース

以上のようにホストと肉体関係(性交渉)があり不貞行為であることに疑いのないケースに対して、ホストに通い詰めているが肉体関係(性交渉)はないケース、つまり「ホストクラブで飲むだけ」、「アフターも食事だけ」というケースです。

肉体関係(性交渉)がなければ法的には「不貞行為」にあたりません。

不倫・浮気と不貞行為の違い
不倫・浮気と不貞行為の違い

しかし、不倫・浮気の線引きは夫婦それぞれですから、夫側が悲しい思いをしたのであれば、慰謝料請求が可能なケースもあります。夫婦生活の平穏を害し、家庭環境を悪化させれば、たとえ「不貞行為」でなくても慰謝料請求の対象となります(このとき民法770条1項1号「不貞行為」でなく同5号「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚請求が可能です)。

肉体関係(性交渉)のないケースでは、次のような事情によってその悪質性を主張することが、慰謝料請求するためのポイントとなります。

  • 妻のホスト通いの回数が多く、頻度が高いこと
  • 妻のホスト通いにより深夜や朝帰りとなり夫婦生活を破壊していること
  • 妻がホストに高額のお金を貢ぎ、家計に悪影響であること
  • ホスト通いが原因で、家事をしない、育児放棄などの家庭問題が生じたこと

ホスト通いが夫婦間で問題となる理由

注意点

次に、妻のホスト通いが原因で夫婦喧嘩となり離婚問題になってしまったケースにありがちな、ホスト通いの問題点について解説していきます。

夫が稼いだお金を浪費する

ホストとの不倫・浮気の1つ目の問題点は、夫が稼いだお金を妻が浪費している点です。特に妻が専業主婦のとき、夫から「自分が稼いだ金をホストに貢ぐのは納得いかない」と相談を受けることがあります。

妻が専業主婦で、夫からもらった小遣いでホストにいったり、家計の生活費でホストに高額なプレゼントをあげたりするなど浪費が激しいときは、たとえ肉体関係(性交渉)がなくても慰謝料請求の対象となったり、離婚理由となったりします。

他の異性にお金を払うことは、夫の「男としてのプライド」を傷つけることにもつながります。

女性は気が浮つく

自分はキャバクラや風俗にいくのに、ホスト通いをする妻を問い詰める夫からは、「男女の価値観は違う」という相談を受けることがあります。「男性は体だけの関係をもてるが、女性は性交渉すると気持ちが入ってしまう」という意見です。

1つの意見としては理解できますが、実際にはキャバ嬢に恋をして高額なプレゼントを貢ぐ人もいますから、かならずしも男女差による問題ではありません。「女性だから」というのではなく、ホストとの不倫・浮気が「不貞行為」かどうか、冷静に判断するのが大切なポイントです。

近所の評判が悪くなる

「奥さんがホストに通っている」と噂されると、近所の評判が悪くなってしまうことを心配する夫からの相談もあります。特に、年配の方ほどホストなどの水商売に悪いイメージを持ち、嫌悪感、不快感を抱く人がいます。

ただ、職業に貴賎はなく、ホストもまた1つの職業です。家庭環境を悪化させて近所の評判が悪くなる理由は、ホストクラブだけに限りません。

子どもの教育に悪影響

妻のホスト通いが、子どもの教育に良くないのではないかという相談を受けることがあります。「子どもの教育に悪影響の可能性がある」というだけで慰謝料請求したり離婚理由としたりはできませんが、子どもが幼く感受性が豊かなうちは、子どもがいるのに妻のホスト通いが頻繁だと、早急に夫婦の話し合いが必要となります。

ホストにはまって深夜の外出が頻繁になり、家族の団らんの時間がとれなかったり夕食が作り置きになっていたり、朝帰りを繰り返したりといったことは育児放棄(ネグレクト)につながるおそれもあります。「虐待」と呼ばれる行為のうち、暴力をともなう身体的虐待、怒鳴る、脅すなどして心理的ダメージを与える精神的虐待はわかりやすいですが、逆に育児をまったくせずに子どもと関わらないことも虐待にあたります。

虐待の4つの分類
虐待の4つの分類

妻のホスト通いが子どもに悪影響を与えているとき、離婚の際には、父親側(男性側/夫側)であっても子どもの親権をとる努力をしておいてください。

ホストとの不倫・浮気問題を弁護士に相談するメリット

弁護士浅野英之
弁護士浅野英之

最後に、ホストとの不倫・浮気問題について弁護士に相談するメリットを解説します。

妻のホスト通いもまた、家庭内の問題ですから、まずは夫婦間でじっくり話し合う機会を持つのが大切です。しかし、妻がホストに恋愛感情を持つケースや、ホスト通いが夫の問題点からくるストレスの発散だと反論されるケースなど、単なるホスト通いの問題だけにとどまらない複雑な事例では、当事者間の協議では解決困難なこともあります。

夫婦間の問題をまとめて解決できる

ホストとの不倫・浮気の問題をきっかけに離婚を決意するときは、不貞慰謝料の問題だけでなく、離婚にともなう夫婦関係の清算について、多くの法律問題が発生します。

ホスト通いの慰謝料請求を開始すると、これまで我慢してきた家庭の問題がいっきに噴出し、多くの法律問題を解決しなりません。妻がホストと不倫・浮気をはじめた根本には、ホスト通いでストレス発散をせざるをえなくなってしまった夫側の原因や問題があるといわれてしまうケースもあります。

これらの問題は複雑に絡み合い、影響し合うため、有利に進めるためには戦略を練らなければならず、弁護士のアドバイスが有効です。なお、離婚で検討しておくべき法律問題については「離婚とお金」「離婚と子ども」の解説もご参照ください。

感情的にならず、冷静に協議できる

夫婦として復縁を求めている場合でも、当事者間で話し合いをしてしまうと感情的になり、かえって問題をこじらせてしまうことがあります。妻のホスト通いが原因のとき、夫としてはプライドが傷つけられた気がして、激しく問い詰めてしまうことがあります。

そのため、今後も夫婦関係を継続したい場合などのように、円滑に話し合いをまとめたいときでも、弁護士に依頼するメリットがあります。

弁護士は、依頼者の目的にあわせて最適な方針を選択しますから、かならずしも慰謝料請求、離婚請求という方針でなくてもサポートが可能です。「妻のホストとの浮気を止めたいが離婚はしたくない」という方でも、弁護士とともに戦略を検討するメリットがあります。

証拠収集のサポートを受けられる

弁護士浅野英之
弁護士浅野英之

ホストとの不倫・浮気を理由に慰謝料請求するとき、裁判などの法的手続きを進めるには「不貞行為の証拠」が必要です。

慰謝料請求の対象となる「不貞行為」は、前述のとおり、法的には肉体関係(性交渉)を指すものとされているため、ホストとの肉体関係(性交渉)の証拠を確実に入手しなければなりません。この点で、弁護士に相談した上で、不貞行為の証拠収集を得意とする探偵・興信所にも協力を求めることが有益です。

まとめ

今回は、妻のホスト通いに悩む夫側の立場で、「妻のホスト通いが不倫・浮気にあたるのか」という点について弁護士が解説しました。

男女平等の社会で「女性だから」、「ホストだから」と偏見を持つことはいけませんが、夫婦として互いに貞操義務を負っている以上、ホスト通いが不倫・浮気となるケースがあります。このようなとき夫側は、不貞行為の慰謝料を請求したり、離婚請求したりすることができます。

ホストと肉体関係(性交渉)があるときや、ホストに高額のお金を貢ぐなど浪費が激しいとき、その証拠をしっかり集めておいてください。夫婦関係を破綻させた原因が妻のホスト通いにあることを証明することで、慰謝料請求や離婚の交渉を有利に進めることができるからです。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚問題に精通しており、男性側の離婚についても豊富な解決実績があります。

離婚問題についてお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

男性側の離婚のよくある質問

ホスト通いは不倫・浮気にあたりますか?

ホスト通いは、その態様や程度によっては不倫・浮気にあたります。ホストとの肉体関係(性交渉)があるときは民法に定められた法定離婚原因にあたり、妻が拒否しても一方的に離婚でき、慰謝料も請求できます。もっと詳しく知りたい方は「妻のホスト通いが不倫・浮気にあたるか」をご覧ください。

妻のホスト通いを理由に慰謝料請求したいとき、どのように進めたらよいですか?

妻のホスト通いに対し、慰謝料請求したいときは、まずは証拠収集が大切です。夫婦の話し合いで解決できないとき、裁判を起こして争うときには証拠が重要となるからです。まだ十分な証拠がないのに妻を感情的に問い詰めてしまうと、証拠が入手できなくなり解決が遠のくおそれがあります。詳しくは「妻のホスト通いを理由に慰謝料請求する方法」をご覧ください。

目次(クリックで移動)
閉じる