男性(夫)の風俗やキャバクラ通いが問題視される一方で、女性(妻)もまた、異性からの接待を「娯楽」として楽しむケースが増えています。中でも注目されるのが「妻のホスト通い」の問題であり、不倫や浮気、更には離婚問題へと発展する事例も少なくありません。
ホストクラブに頻繁に通い詰めるようになると、お気に入りのホストと肉体関係を持ってしまう女性もいます。ホスト通いは多額の支出となることも多く、家計に負担をかける浪費に繋がるほか、家事や育児に割く時間も減ってしまう危険があります。
今回は、妻のホスト通いに悩まされる男性(夫)の視点で、ホスト通いが不倫や浮気にあたるかどうか、またその場合に慰謝料請求できるかといった問題について、弁護士が解説します。
- ホストは「サービス」だが、肉体関係を持つと不倫や浮気に該当する
- 妻のホスト通いが不貞行為に当たるなら、慰謝料を請求できる
- 家庭や育児に影響する悪質なホスト通いなら、離婚をする理由となる
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妻のホスト通いが不倫・浮気にあたるか
![喧嘩する男女](https://aglaw.jp/wp-content/uploads/2021/08/danjokenka.jpg)
はじめに、妻のホスト通いが不倫・浮気に該当するかについて解説します。
女性の社会進出が進む現代、「性風俗は男性の娯楽」といった従来の考えは変化しています。現在では、「男性とお酒を飲みながら楽しみたい」という女性の欲求を満たすホストクラブや、女性向け風俗サービスも増加しています。
しかし、たとえ男女平等が進んだ社会でも、結婚して家庭を築いた以上、パートナーである夫に精神的苦痛を与える楽しみ方は、許されるべきではありません。
不貞行為とは?
法律上、不倫や浮気は「不貞行為」と呼ばれます。妻のホスト通いが法的に許されるかどうかを判断するには、この「不貞行為」に該当するかを検討する必要があります。
民法770条1項1号は、不貞行為があったときは離婚の訴えを提起できると定めます。不貞行為をはじめ、法律上、相手の同意がなくても離婚が認められる事情を「法定離婚事由」といいます。
民法770条1項
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
民法(e-Gov法令検索)
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
最高裁判例は、「不貞行為」とは「自由な意思に基づき、自己の配偶者以外の者と性関係を結ぶこと」(最高裁昭和48年11月15日判決)と定義します。要するに、不貞行為とは、夫婦の一方が、配偶者以外の異性と性交渉することです。不貞が認められると、離婚の原因になるだけでなく、その行為によって配偶者が受けた精神的苦痛に対して、慰謝料を請求することができます。
「男性が離婚を有利に進めるための全知識」の解説
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ホストクラブのサービスは不貞行為に該当する?
ホスト通いをする妻が「店のサービスを楽しんだだけで、不倫や浮気ではない」と反論するケースがあります。しかし、店のサービスでも、不貞行為に該当する可能性は十分にあります。
ホストクラブでは、主にお酒を飲んだり会話を楽しんだりすることが主なサービスで、性行為や、いわゆる「枕営業」は本来のサービスには含まれません。しかし、仮にホストと肉体関係を持つに至った場合、たとえ「店のサービス」と主張しても、不貞行為とみなされる可能性が高いです。この場合、妻側に離婚原因があることとなり、かつ、妻とホストに対して慰謝料請求が可能です。「女性だから」といって不貞にならないわけではありません。
なお、男性がキャバクラや風俗に通うことも、不貞行為になる可能性があるので注意が必要です。
「離婚までの流れ」の解説
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裁判例にみる枕営業の評価
いわゆる「枕営業」は、裁判例によって判断が分かれるケースがあります。
例えば、東京地裁平成26年4月14日判決では、クラブのホステスによる枕営業が、夫婦生活を破壊してはいないとし、不貞行為に該当しないと判断され妻からの慰謝料請求を認めませんでした。ただし、同判決は「性欲処理に過ぎない」と判断するなど、女性蔑視とも取られかねない裁判例であるとの批判もあり、決して一般化はできません。
一方、最高裁昭和54年3月30日判決では、クラブのホステスの枕営業が不貞行為に該当すると認定され、慰謝料請求が認められています。このような裁判例の傾向からしても、枕営業が不貞行為になるかどうかは具体的な事情によって異なりますが、特別な事情がない限り不貞行為と判断される可能性が高いと考えるべきです。
妻のホスト通いを理由に慰謝料を請求する方法
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妻のホスト通いが不貞行為に該当する場合、次に考えるべきは、これを理由に慰謝料を請求する手続きです。以下では、その具体的な手順や注意点について解説します。
証拠収集が重要
慰謝料を請求するためには、証拠収集が重要です。問い詰めても、妻が不貞行為を否定するなら、裁判を通じて真実を争う必要があります。この際、裁判所の審理では「不貞行為の証拠があるかどうか」が重視されます。
ホスト通いを理由に慰謝料請求する際、次の資料が有効な証拠となります。
- ホストからの営業連絡(LINE・メール・通話履歴など)
- ホストとラブホテルに入る様子を捉えた写真や動画
- 探偵や興信所が作成した調査報告書
不貞行為が法律上「肉体関係(性交渉)」を指すことから、「ホストとの肉体関係(性交渉)」を証明するための証拠を確保することが重要です。単に「ホストと仲が良い」「アフターで食事をした」程度では、不貞行為とは認められません。
妻を問い詰める前に収集しておかないと、証拠隠滅され、十分な証拠を入手できないおそれがあります。慰謝料請求を切り出す前に、確実な証拠をつかむことが必要です。
慰謝料請求の交渉を行う
証拠が揃ったら、ホスト通いを理由に慰謝料を請求し、交渉を始めましょう。
交渉時には、冷静な対応が重要です。感情的になって強く問い詰めると、妻が逆上して収拾がつかなくなるおそれもあります。暴力や脅しを使うと、「DVやモラハラである」と主張され、逆に夫側が不利になるおそれもあります。復縁を目指すなら、慰謝料を払わせて反省させ、今後の不倫や浮気を防ぐために「不倫・浮気の誓約書」を作成させる方法が効果的です。
更に、ホスト通いが不貞行為にあたるケースでは、妻だけでなく相手のホストに対しても慰謝料を請求できます。妻との直接の対話が難しいときは、ホストを相手取って請求する方法も選択肢に入れておいてください。
訴訟で慰謝料請求する
交渉で合意に至らない場合や、妻やホストが慰謝料の支払いに応じない場合、裁判を起こして慰謝料請求します。特に、肉体関係(性交渉)の有無に争いがあるとき、交渉では解決せず、裁判に発展する可能性の高い事案です。
裁判所の審理では、証拠の有無が極めて重要です。裁判所は、証拠の裏付けがない主張を認めないからです。したがって、裁判に訴える予定なら、肉体関係(性交渉)を証明する資料や報告書を事前に確保しておくことは不可欠です。
ホストと肉体関係のない場合の対応
ホスト通いの事実はあっても、肉体関係がないケースもあります。つまり「ホストクラブで飲むだけ」「同伴やアフターでも食事だけ」という場合で、法的には「不貞行為」に該当しません。
しかし、法的に「不貞行為」に該当しないとしても、不倫や浮気の線引きは、夫婦の価値観によって異なります。妻の行動が、夫婦関係に深刻な悪影響を与えている場合は、慰謝料請求が可能なケースもあります。夫婦生活の平穏を害し、家庭環境を悪化させたなら、それが「不貞行為」でなくても慰謝料請求の対象になるからです。このとき、「不貞行為」(民法770条1項1号)でなく「婚姻を継続し難い重大な事由」(同5号)にあたるなら離婚請求も可能です。
この場合、次のような事情が、悪質性を判断するポイントとなります。
- ホスト通いの頻度が多く、継続的である
- 深夜や朝帰りが増え、夫婦生活が破綻している
- ホストに多額の金銭を貢ぎ、家計に悪影響を及ぼしている
- ホスト通いが原因で家事に支障をきたし、育児を放棄している
これらの事情を立証できれば、たとえ肉体関係がなくても、家庭の平穏を害した妻の責任を問うことができます。妻のホスト通いに悩まされているなら、まずは冷静に証拠を集め、適切な手順で慰謝料請求を進めることが重要です。
ホスト通いが夫婦間で問題となる理由
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次に、妻のホスト通いが原因で夫婦喧嘩や離婚問題に発展するケースで、よく見られる問題点について解説します。
夫が稼いだお金を浪費する
ホスト通いが問題となる大きな理由の一つは、妻が夫の収入を浪費している点です。
特に、妻が専業主婦だと、夫から「自分が稼いだお金をホストに貢ぐのは納得できない」という相談を受けることがあります。例えば、夫から渡された小遣いや生活費を使ってホストクラブに通ったり、高額なプレゼントをホストに贈ったりする場合、浪費が深刻だと判断されることがあります。この場合には、たとえ肉体関係(性交渉)がなくても慰謝料請求の対象になったり、離婚理由になったりする可能性があります。
また、他の異性にお金を費やす行為は、夫の「男としてのプライド」を傷つけるため、精神的な負担が大きくなることが予想されます。
「借金を理由とする離婚」の解説
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女性は気が浮つく
「自分はキャバクラや風俗に行っているのに、ホスト通いをする妻を責めてよいのか」という夫からの相談も少なくありません。「男女の価値観は違う」「男性は肉体関係のみで割り切れるが、女性は性交渉を伴うと気持ちが入ってしまう」といった意見も見られます。
このような意見は理解できるものの、現実には、キャバ嬢に恋をして高額なプレゼントを貢ぐ男性も少なくありません。したがって、必ずしも「男女の違い」として説明できる問題ではありません。重要なのは、「女性だから」「ホストだから」という偏見に基づく判断ではなく、ホスト通いが不貞行為や夫婦関係の破綻に繋がるのかどうかを、冷静に見極めることです。
近所の評判が悪くなる
「妻がホストに通っている」という噂が広まり、近所での評判が悪化することを心配する夫もいます。特に、年配の方々は、ホストクラブやキャバクラなど、水商売全般に対して否定的な印象を持つことが多く、嫌悪感や不快感を抱く人もいます。
ただし、ホストもまた一つの職業に過ぎず、職業に貴賎はありません。また、家庭環境の悪化や夫婦関係の乱れが近所の評判を悪化させることはありますが、ホストクラブの利用だけが直接の原因であるとは言い切れません。
子供の教育に悪い影響を与える
妻のホスト通いが子供の教育に悪い影響を与える、と心配する夫からの相談も多く寄せられます。「教育に悪そうだ」という理由だけで、すぐに慰謝料請求や離婚理由に結びつけることはできませんが、少なくとも子供が幼く感受性が豊かなうちは、頻繁なホスト通いは悪影響でしょう。
例えば、次のような妻の行動は、育児放棄(ネグレクト)に繋がります。
- ホストにはまり込んで、他のことが手に付かない
- 深夜の外出や朝帰りが頻繁で、家族の団らんの時間が取れない
- 夕食が作り置きは外食で済まされる
- 家事を放棄して家が荒れている
- 育児をおろそかにする
育児放棄は、暴力を伴う身体的虐待や、心理的虐待などと同じく、子供の健全な成長に悪影響を与える「虐待」の一種とみなされます。
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妻のホスト通いが子供に悪影響を与えているとき、離婚時には父親(夫)側が親権を取得するための準備を進める必要があります。具体的には、妻の行動による子供への影響について、証拠を集めておくことが重要です。
「父親が親権を取る方法」の解説
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ホストとの不倫・浮気問題を弁護士に相談するメリット
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最後に、ホストとの不倫・浮気問題を弁護士に相談するメリットについて解説します。
妻のホスト通いは、まずは夫婦で話し合い、家庭内で解決できるのが最善です。しかし、妻がホストに恋愛感情を持つケースや、ホスト通いが夫の問題からくるストレスの発散だと反論されるケースなど、単なるホスト通いの問題のみに留まらない複雑な事例もあります。
夫婦間の問題をまとめて解決できる
ホストとの不倫や浮気の問題をきっかけに離婚を決意するとき、不貞慰謝料の問題だけでなく、離婚に伴う夫婦関係の清算について、多くの法律問題が発生します。
ホスト通いの慰謝料請求を開始すると、これまで我慢してきた家庭の問題がいっきに噴出し、多くの法律問題を解決しなりません。妻が「夫との関係に起因するストレスの発散だ」と反論してくるケースでは、離婚に伴う他の問題と複雑に絡み合うので、弁護士に全体像を把握してもらい、戦略的に解決するためのアドバイスを得ることが重要です。
更に、これまで表面化していなかった家庭の問題を、離婚時に解決するために、弁護士に一括してサポートしてもらうのがお勧めです。
「離婚に伴うお金の問題」「子供がいる夫婦の離婚」の解説
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感情的にならず冷静に協議を進められる
夫婦間の話し合いは感情的になり、かえって問題をこじらせることがあります。妻のホスト通いが原因だと、「プライドを傷つけられた」と感じて激しく問い詰める夫も少なくありませんが、問題を悪化させ、解決を遠のかせてしまいます。
弁護士に相談すれば、冷静に状況を整理して、円滑に話し合いを進めることができます。「ホストとの浮気を止めて、夫婦関係を続けたい」といったように、離婚を避けたい場合でも、復縁に向けた方針でサポートすることも可能です。
証拠収集のサポートを受けられる
ホストとの不倫・浮気を理由に慰謝料を請求するには、法的に「不貞行為」とみなされる証拠が必要です。不貞行為は、法律上「肉体関係(性交渉)」のことを指します。そのため、肉体関係を裏付ける証拠を入手しないと、裁判で慰謝料の支払いを命じてもらうのは難しくなります。
弁護士に相談することで、適切な証拠収集の方法についてアドバイスを受けられるだけでなく、不貞行為の証拠収集に強い探偵や興信所にも協力を求めることができます。
「離婚に強い弁護士とは?」「男性側の離婚に強い弁護士の選び方」の解説
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まとめ
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今回は、妻のホスト通いに悩む夫の立場から、「妻のホスト通いが不倫・浮気に該当するか」という点について解説しました。
男女平等な社会において、「女性だから」「ホストだから」という偏見を持つべきではありません。しかし、夫婦は互いに貞操義務が負い、ホスト通いは不倫や浮気となるケースがあります。この場合に夫側は、不貞行為を理由に慰謝料を請求したり、離婚を求めたりすることができます。
ホストとの肉体関係(性交渉)が認められる場合や、高額の金銭をホストに貢ぐなど浪費が激しい場合は、その証拠をしっかり集めておくことが重要です。妻のホスト通いが夫婦関係の破綻を招いた原因であると証明できれば、慰謝料請求や離婚の交渉を有利に進めることができます。
妻のホスト通いなど、妻側の問題行為の責任を追及したいときは、男性側の離婚について豊富な解決実績を有する弁護士にご相談ください。
- ホストは「サービス」だが、肉体関係を持つと不倫や浮気に該当する
- 妻のホスト通いが不貞行為に当たるなら、慰謝料を請求できる
- 家庭や育児に影響する悪質なホスト通いなら、離婚をする理由となる
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離婚を検討する際、男性に特有の課題や悩みを理解してください。離婚は男女いずれにとっても重要ですが、特に不利な状況に陥りやすい男性側では、早めの準備が欠かせません。
男性側の離婚について、具体的な解決策を知りたい方は、「男性側の離婚」に関する解説を参考にしてください。