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離婚届を書いたのに出してくれないときの対処法は?

「離婚届に署名・押印したのに、相手が提出してくれない」という予想外の状況に、戸惑いや不安が隠せない方もいるでしょう。

しかし、ただ「合意した」だけでは離婚の効力は発生せず、届出されてはじめて離婚できます。つまり、相手が離婚届を出してくれないと、たとえ合意していても、離婚の効力は発生しません。「離婚届を書いたのに出してくれない」理由は様々ですが、早期離婚を実現するためにも、相手の立場に立ってよく分析する必要があります。

今回は、相手が離婚届の提出に応じない場合に、考えられる理由やリスク、対処法について弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 離婚に同意していても、離婚届を出してくれないと法的効力が生じない
  • 離婚届を出すよう、具体的な期限を決めてはたらきかける
  • たとえ離婚届を書いたとしても、話し合いで出してもらえないなら調停に進む

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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離婚届を書いたのに出してくれないのはどういう状態?

はじめに、相手が離婚届を出さない理由と、その際の注意点を解説します。

離婚届に署名・押印しても、役所の窓口に届出されない限り、離婚の効力は発生しません。相手が離婚届を出してくれない事態に陥ったとき、その理由によって取るべき対応は異なります。

相手が離婚届を出してくれない理由

離婚届を提出しない理由は人それぞれですが、以下のような理由で、相手が届出を拒むケースがよく見られます。

  • もともと離婚する気がなかった
  • 気が変わって離婚を迷い始めた
    離婚届を書いた時点では離婚する気だったが、その後に考えが変わり「やはり離婚したくない」と気持ちが揺らぐケース。特に、「一方的に話を進められた」と感じている人は、反発して提出を拒否することがあります。
  • 離婚条件に合意できない
    離婚そのものに同意していても、財産分与や慰謝料、真剣や養育費などで話がまとまらず、「このまま提出すると損するのでは」と不安を感じて提出を引き伸ばすケース。
  • 感情的対立、意地の張り合い
    「自分が優位に立ちたい」「最後までコントロールしたい」という思いから非協力的になるケース。離婚直前は感情が高ぶり、冷静な判断ができないことがあります。
  • 相手が現実逃避して提出を避けている
    現実に向き合うことを避け、話し合いを拒否したり無視したりするケース。
  • 経済的・精神的に離婚後の生活が不安
    特に、専業主婦(主夫)やパート就労の方などは、離婚後の生活に不安を感じ、届出を先延ばしにすることがあります。一度は離婚に同意しても、「今の生活が不満でも、一人になるのは怖い」と感じてしまうのです。
  • DV・モラハラなど力関係に差がある
    配偶者が離婚そのものを「許さない」と言い張るなど、支配的な関係にある場合、離婚届の提出を通じてコントロールを続けようとすることがあります。
  • 嫌がらせ目的で引き延ばす
    「離婚はさせてやるが、今はまだ出さない」「苦しめたい」といった悪意から、提出をわざと遅らせるケースでは、長期化する傾向があります
  • 本音では復縁したいと思っている
    相手に配慮して一度は離婚届に署名・押印したものの、過去を懐かしみ、やはり復縁したいという気持ちが募っていくケース。

実際は、これらの理由が複数重なって、離婚届を出してくれないことも考えられます。そのため、相手の立場になって気持ちを理解し、その理由に応じて対処する必要があります。

妻が別れてくれない」の解説

離婚届を出してくれないとどうなる?

協議離婚では、離婚届の提出が成立要件となっています。

そのため、たとえ合意があっても、離婚届が出されないと、法律上は婚姻関係が継続します。戸籍上は夫婦とされ、配偶者の扶養義務も残り続けるため、婚姻費用を支払わなければなりません。このことは別居していても同様です。その間に行われた異性との肉体関係が「不貞」と評価されて慰謝料の対象となったり、財産の増減が財産分与に影響したりする可能性もあります。

その後、離婚に向けて動くことになったとしても、慰謝料や財産分与などの条件について改めて話し合い、着地点を探る必要があるでしょう。

離婚に伴うお金の問題」の解説


離婚届を出してくれない場合の対処法

次に、離婚届を出してくれない場合の対処法について解説します。

夫や妻が離婚届を出してくれないとき、その理由を把握して適切に対処することが肝要です。理由次第では、話し合いを工夫したり、離婚条件を調整したりすれば、相手に離婚届を出してもらいやすくすることができます。

出してもらうよう話し合う

まず、離婚届を出してもらえるよう、冷静な話し合いの場を持ちましょう。

直接会えるなら良いですが、冷静に話せそうにないときは、電話やビデオ通話、家族や共通の友人などの第三者を交えた話し合いも有効です。感情的にならず、相手の意見や不安も聞きながら進める姿勢が大切です。

離婚そのものや条件に争いがないなら、相手が離婚届を出してくれないのは小さな誤解が原因かもしれません。離婚届を早く出してもらうことを目標とするなら、相手が「いつ出してもいい」と考えている場合に備え、「◯月◯日までに提出しなければ調停を申し立てる」といったように期限を設定して行動を促すのがよいでしょう。

この際、離婚に向けた自分の気持ちを、強く伝えることが重要です。離婚届の提出に応じない相手を説得するには、あなたの本気度や、離婚に向けた具体性を示す必要があるからです。

離婚までの流れ」の解説

相手の気持ちを理解する

相手の気持ちを理解することも重要です。

なぜ、離婚届を出さないのか、相手の立場でよく考えてみましょう。

離婚をためらう相手の気持ちには、経済的な不安や世間体、子供への心配などがあることも少なくありません。例えば、自分の収入の方が高い場合、離婚後の生活水準が下がることへの不安から離婚届を出す決断ができない人もいることを理解してください。離婚について、挫折や汚点といったネガティブなイメージを持つ人も少なくありません。

離婚についての相手の不安や迷いを受け止めることが大切で、ただ「早く出して」と迫るばかりではいけません。「なぜ離婚届を出さないのか」と相手を責めたり、攻撃的な態度に出たりすることは逆効果です。対立を煽るのではなく、信頼関係を意識しながら冷静に話し合うことが大切です。

子供のために離婚しない」の解説

再スタートのために前向きな提案をする

相手が離婚届を出してくれないときは、再スタートに向けて前向きな提案をすることも意識してください。

相手が離婚後の生活に不安を感じているなら、財産分与や養育費といった金銭面の条件を見直すことが効果的です。将来の生活の拠点などを、具体的に計画することも大切です。また、相手が離婚に対してネガティブなイメージを持っていることで離婚が進まないなら、「あまり自分を責め過ぎないでほしい」といった言葉をかけてみましょう。

お互いに新たな人生を歩むスタートと捉えられるような話し方を心がけると、相手の拒否感がやわらぐこともあります。

離婚後の財産分与」の解説

離婚条件を調整する

離婚届を出してくれない理由の一つに、「離婚条件に納得していない」ことが挙げられる場面もあります。離婚には同意しても、納得できる条件でなければ進みません。

このようなケースでは、離婚条件に同意できれば、相手が離婚届を出してくれる可能性は高まります。子供がいる場合、親権や養育費、面会交流の頻度などについて、柔軟に対応して再調整するのがよいでしょう。また、相手が不公平感を感じていて離婚届を出し渋っているなら、財産分与や慰謝料、養育費といった金銭的な条件についても現実的な落としどころを探ってください。

また、離婚条件について合意に至ったら、書面に残すことで相手の不安を払拭しましょう。証拠化しないと、「離婚したら、金銭の支払いが滞るのではないか」と不安視した相手が、離婚届を出してくれないおそれがあるからです。養育費や財産分与など、将来の支払いをしないのではないかと疑われているなら、公正証書を作成することでより安心感を与えられます。

離婚協議書の書き方」の解説

離婚調停・離婚裁判で争う

離婚条件について譲歩しても、離婚届を出してもらえそうにない場合は、いつまでも待つ必要はありません。家庭裁判所に離婚調停を申し立て、それでも解決しなければ離婚裁判(離婚訴訟)へ進み、離婚を目指すことになります。

一旦離婚届を書いたとしても、出してくれなければ協議離婚は成立しません。時間をかけても話し合いが進まないケースは、法的手続きを利用する方が、かえって早い可能性があります。

なお、日本の法律ではいきなり離婚裁判を提起することはできず、先に離婚調停を経るのがルールです(調停前置主義)。そのため、まずは家庭裁判所に調停を申立てる必要があります。申立は自分でもできますが、その後に離婚裁判に発展する可能性を踏まえると、早い段階で弁護士に相談しておくことが有効です。

離婚で弁護士を立てるタイミング」の解説

離婚届を出してもらえないときの対処法と注意点

次に、離婚届を出してくれないときの対処法と、具体的な注意点を解説します。

速やかに別居を開始する

相手が離婚届を出してくれないのは、「離婚に同意しない」という意思の表れです。少なくとも、「いますぐ、希望の条件で離婚してくれる」ことは期待できません。

この場合、離婚に対する覚悟の強さを示すためにも、早めに別居を開始しましょう。別居をした事実は、あなたの覚悟を示すだけでなく、別居期間が長くなるほど、婚姻関係が実質的に破綻していることを示す証拠となり、後の調停や裁判で考慮される事情となります。

相手に不貞やDVといった法定離婚事由に当てはまる事情がない場合、長期の別居期間こそが、裁判所に離婚を認めてもらうための重要な事情となります。

具体的には、通常は3年〜5年程度、有責配偶者の場合には8年〜10年程度の別居が必要と判断した裁判例があります。

なお、別居後も、離婚するまでは、収入の少ない配偶者(例えば妻)は、他方(例えば夫)に対して、生活費として婚姻費用の支払いを求めることができます。実際には一緒に生活していないのに、毎月の支払いに応じなければならないため、この婚姻費用のプレッシャーが離婚を早める要因となることもあります。

勝手に別居すると不利?」「別居中の生活費の相場」の解説

弁護士に相談する

相手に離婚届を出してもらうよう交渉するなら、弁護士に相談しましょう。

弁護士から代わりに連絡をすれば、離婚に向けた意思を強く示すことができ、離婚届を出してもらえる可能性が高まります。また、代わりに交渉を進めてもらうことで、精神的な負担も軽減することができます。調停や訴訟に発展した場合も、法律知識に基づくサポートを受けられます。

特に、DVや悪質なモラハラがある場合など、緊急性の高い事案ほど、弁護士が介入した方がスムーズに解決することができます。

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離婚届にまつわるその他のトラブル

最後に、離婚届を出してもらえないケース以外にも、離婚届にまつわるトラブルを解説します。

そもそも離婚届を書いてくれないときは?

本解説は、既に書いた離婚届を相手が出してくれないケースですが、そもそも相手が離婚を拒否していたり、離婚条件に折り合いがつかなかったりすると、離婚届を書いてもくれないでしょう。相手にDVやモラハラがあると、話し合いが難しいケースも少なくありません。

この場合こそ、弁護士を介した交渉が効果的です。交渉がまとまらないことが明らかなら、早々に調停の申立てに踏み切るのが現実的な解決策となります。特に、相手に不貞やDVといった法定離婚事由に該当する事情がある場合、法的手続きによって離婚を早めることができます。

離婚調停を弁護士に依頼するメリット」の解説

記入済みの離婚届は勝手に出せる?

相手が記入した離婚届を自分が持っていた場合でも、無断で出すことは問題です。

無断の提出でも、記載に不備がなく、提出者本人の確認ができれば、離婚届は受理されます。しかし、相手が離婚無効確認訴訟を提起すれば、覆されてしまいますし、慰謝料の請求を受けるおそれもあります。また、有印私文書偽造罪、同行使罪、電磁的公正証書原本不実記載罪といった犯罪の責任を問われる危険があります。

離婚届を出したくない側の対応は?

逆に、自分が離婚届を出したくない側のときの対応も解説します。

相手から署名・押印済みの離婚届を渡されたものの、どうしても離婚届を出したくない場合は、拒絶の意思をしっかりと伝えましょう。なぜ拒絶するのか、理由を併せて伝えるのが効果的です。離婚自体には同意しているものの、財産分与や養育費などの条件に納得できないなら、希望する条件を率直に伝えるべきです(相手が早期離婚を望む場合、条件に応じてもらえる可能性があります)。

既に離婚届を書いてしまったものの、どうしても出したくない場合は、離婚届不受理申出の制度を活用してください。この制度は、不受理申出を取り下げるまでの間、離婚届が受理されなくなるもので、勝手に提出されるトラブルを防げます。

離婚届を勝手に出すのは問題?」の解説

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、離婚届を作成したのに、相手が提出してくれない場合の対処法を解説しました。

あなたが自分の判断で離婚届を書いて相手に渡した場合はもちろん、一度は夫婦の合意で離婚届を書いた場合であっても、その離婚届が役所に提出されなければ、離婚は法的に成立しません。そのまま放置すれば、婚姻関係は継続します。精神的な負担が続くだけでなく、再婚もできません。婚姻費用などの金銭的な負担がかさむおそれもあり、将来の人生設計に影響するでしょう。

相手が離婚届を出してくれないとき、まずは冷静に話し合い、理由を尋ねることが重要です。しかし、夫や妻が頑なで、離婚に応じない意思が明らかなら、家庭裁判所での離婚調停や離婚裁判(離婚訴訟)といった法的手段を検討する必要があります。

感情的なもつれによって、相手との話合いが難しい場合は、弁護士のサポートを受けることで、円滑に問題解決を試みることが有益です。

この解説のポイント
  • 離婚に同意していても、離婚届を出してくれないと法的効力が生じない
  • 離婚届を出すよう、具体的な期限を決めてはたらきかける
  • たとえ離婚届を書いたとしても、話し合いで出してもらえないなら調停に進む

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参考解説

協議離婚は、夫婦の話し合いで離婚条件に合意し、離婚届を提出することで成立します。この手続きは比較的簡単で迅速に進められる一方、難しい法律問題があっても自分達で乗り越えなければなりません。

合意内容が曖昧なままだと後にトラブルが生じるおそれがあるので、「協議離婚」の解説を参考にして進めてください。

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