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退職代行サービスは、労働問題に強い弁護士にお任せください!

退職代行サービスは、現代の世相を表すビジネスとして、新聞やテレビ、ネットニュースで話題になり、新たなビジネスとして注目を集めています。

退職代行サービスを取り扱う業者は急増していますし、実際に利用して退職した人の体験談や口コミなども、インターネット上でよく目にするようになりました。

しかし、労働問題を扱う弁護士にとって、退職代行は、最近になってはじめてでてきた問題ではありません。労働者の自由な退職を認めず、仕事を続けるよう強要するブラック企業は昔から多く存在しており、労働者はこのような卑怯な会社に悩まされつづけてきました。

今回は、弁護士に退職代行を依頼すべき理由、相談方法と解決までの流れなど、退職代行についての法律知識を、労働問題にくわしい弁護士が解説します。

この解説でわかること
  • 労働者には、会社を自由に退職する権利があるため、「会社を辞められない」ということはない
  • ブラック企業では、無理に退職しようとすると、不利益を被るおそれがある
  • 弁護士に退職代行を依頼すれば、退職の意思を代わりに伝え、退職時の窓口になってもらえる
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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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退職代行とは?

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退職代行とは、その名の通り、「退職」を「代わりに」、「行ってもらう」サービスのことです。はじめに、退職代行とはどのようなものなのかについて解説します。

「退職するなら、自分ですればよい」、「ゆとり時代が生み出した無意味なサービス」という評価もありますが、一方で、ブラック企業に入社してしまい、自分からは退職したいと言い出せないまま、苦しみ続ける労働者も数多くいます。特に、真面目で、責任感が強く、重要なポジションについている人ほど、「いきなり退職するのは無責任ではないか」、「突然の退職は非常識だ」と思いつめ、自由に退職できない方がいます。

労働者の生活をかえりみず、低賃金で長時間、働かせ続け、会社の利益を追求するといった「ブラック企業」では、本来であれば自由なはずの退職が、ワンマン社長のパワハラによって制限されてしまっていることもあります。

このような真面目で誠実な労働者の気持ちを悪用して、退職を妨害する会社の強要行為は、「働き続けることを強要する」という意味で「在職強要」といいます。在職強要を打ち破るためには、労働者側でも、法律と弁護士のちからを借りて、退職代行を実施するのが有効です。

退職代行のサービス内容は、運営主体により異なる

退職代行と一言でいっても、その運営主体にはさまざまな種類があります。退職代行サービスの運営者情報を見ると、よくあるのは、弁護士、労働組合、民間企業などです。そして、「退職代行」と一言でいっても、どこまでの業務を、労働者の代わりになって担当できるのか」は、その運営主体によっても異なります。

退職代行の運営主体
退職代行の運営主体

後ほど解説するとおり、弁護士であれば、法律問題に関するトラブルを含めて、労使間に生じたすべての問題を代わりに行えますが、弁護士以外の運営主体の場合には、「法律問題の交渉ができない」など、サービスの範囲に制限があります。

以下では、弁護士が行う退職代行で、代わりにお任せいただくことのできるサービス内容について解説していきます。

退職の意思表示の代行

退職代行をご依頼いただくときに、もっとも重要なサービス内容は、「退職の意思表示を、労働者に代わって、会社に伝えてもらうこと」、つまり、退職の意思表示の代行です。

退職をしようと決意しても、本人からは、人間関係上、なかなか言い出しづらいケースがあります。パワハラの横行するブラック企業では、退職の意思表示をつたえたら、報復になにをされるか不安なこともあるかもしれません。

このような場合に、あなたの代わりに意思表示を伝えてくれるのが、退職の意思表示の代行です。法的には「使者」もしくは「代理人」として退職の意思表示を伝えると、あなたが直接伝えたのと同じ効果を生みます。代理とは、本人から付与された代理権にもとづいて代理人が意思表示し、その効果が本人に帰属することをいい、使者とは、本人がした意思表示を相手に伝えることだけを行うという点が異なります。

代理と使者の違い
代理と使者の違い

退職代行サービスでも、法律問題となるため、代理人として意思を伝えられるのは弁護士だけであり、民間企業などが行うときには、あくまでも使者として意思を伝達するにすぎません。

退職日・退職方法・退職理由の交渉

単に「退職」といっても、諸条件のすり合わせを行わなければ、スムーズに退職することはできません。

退職時に、かならず決めておくべきこととして、退職日、退職方法、退職理由がありますが、これらの退職条件を代わりに決めてくれたり、有利な条件となるよう交渉してくれることもまた、弁護士の行う退職代行サービスには含まれています。

細かい退職条件として、最終出社日がいつになるのか、有給休暇を利用することができるのか、賞与、最終給与、退職金などが支払われるのかなど、直接会社に言いづらいこともまた、退職代行サービスの一環として、代わりに伝えてもらえます。

退職前後の事務手続の代行

会社を退職するときは、さまざまな事務手続きが発生します。例えば、離職票の交付、社会保険の資格喪失、源泉徴収票の交付、貸与品の返還、私物の回収といった事務です。

退職代行サービスを利用したいと考える方のなかには、会社が過度な干渉をしてきて困っているというケースもあります。このようなとき、これ以上、会社との直接のやりとりをしたくないという利用者が多いです。

そのため、退職前後の事務手続についても、弁護士を窓口として行うこともまた、退職サービスのサービス内容に含まれます。これら、退職前後の行為の代理についても、別途費用を頂戴することはありません。

退職代行について知っておくべき法律知識

はてな

次に、退職代行を利用するにあたって一般の方にも知っておいてほしい法律知識を、弁護士が解説します。

「退職代行を利用するのは卑怯だ」、「退職代行はよくないサービスだ」と、相手方となった企業から言われることがあります。一方で、「会社を辞められなかったので、退職代行を利用して良かった」という喜びの声も多く聞きます。

退職代行について、その実態を正しく理解し、是非を判断するためには、労働問題に関する法律、裁判例の知識が必要です。

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退職代行と「憲法」

憲法22条には、次のとおり、居住移転、職業選択の自由が定められています。

憲法22条

1. 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

2. 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

憲法(e-Gov法令検索)

「職業を選ぶ自由がある」ということは、「どのような仕事についてもよい」のはもちろん、その反面として「仕事を辞めてもよい(仕事を強要されることはない)」ことも意味しています。

憲法は、すべての法律の基本となる法律であり、退職代行を利用するときにも「退職は労働者の自由である」という憲法の基本的な考え方が根底にあります。また、憲法18条に定められた奴隷的拘束の禁止もまた、意に反した仕事を強制されない憲法上の根拠となります。

退職代行と「民法」

「会社の脅しが怖くて退職できない」というご相談がありますが、退職が自由だということは、民法にも定められています。「退職」は、法的にいうと、労働者が、会社との間で締結している雇用契約(労働契約)を、労働者側から一方的に解約することと言い換えられます。

民法には、退職のルールについて、期間の定めのない雇用は、2週間の予告期間さえおけば「いつでも」解約できると定められています(民法627条1項)。なお、この原則に対して、6か月以上の期間によって報酬を定めている場合には3か月前に予告しなければならないこととなっています(同条3項)。

民法627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)

1. 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

2. 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

3. 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。

民法(e-Gov法令検索)

そのため、一定の予告期間をおけば、退職代行によって自由に退職できるのは、民法からも明らかです。退職代行によって退職するとき、退職日を決める際には、これらの民法のルールにしたがった退職日とする必要があります。

賃金を月給制で定めている場合には、2020年4月施行の改正民法以前は、当期の前半に意思表示しなければ、次期移行にしか解約できないという制約がありました。しかし、改正民法により、この制約は使用者側からの解約申入れのみに適用されることとなり、労働者側からの解約申入れであれば特に制約なく、原則どおり2週間前に伝えればいつでも解約できるものと変更されました。

退職代行と「労働法」

民法は、私人間の一般的なルールを定めた法律です。これに対して、労働者(被用者)と会社(使用者)との間では、雇う側である会社のほうが強いという力関係があります。

弱い立場にある労働者を保護するため、民法の特別法として定められたのが、労働基準法をはじめとする労働法です。

「退職は、労働者の自由である」と解説しました。これに対して、会社側からの一方的な労働契約(雇用契約)の解約を「解雇」といいますが、「解雇」は自由ではありません。解雇は、労働者に与える経済的、社会的ダメージが大きいことから、限定的に制限されています。

解雇権濫用法理とは
解雇権濫用法理とは

つまり、合理的な理由があり、かつ、社会通念上相当でない限り、その解雇は「不当解雇」として違法、無効であることが、労働契約法という法律で明らかにされています。このルールを、「解雇権濫用法理」といいます。

退職代行と「就業規則」

憲法、民法、労働基準法といった法律は、国家が定めるルールです。これに対して、会社が定める、会社内に適用されるルールを「就業規則」といいます。

退職を不当に妨害しようとするブラック企業のなかには、就業規則や雇用契約書において、民法で定められた2週間よりも長い期間の予告期間を強制している企業もあります。

退職代行に関する法律と就業規則
退職代行に関する法律と就業規則

学説では、「2週間を超える予告期間がある」というだけで無効とはしない説もありますが、正当な理由なく、長期間の予告期間を強制するような就業規則の定めは、退職の自由を不当に侵害しているものと考えられます。少なくとも、就業規則や雇用契約書の記載によって、退職代行の依頼ができなくなることはありません。

退職代行を弁護士に依頼すべき理由

弁護士浅野英之
弁護士浅野英之

以上で解説したとおり、憲法、民法といった法律によって、労働者に「退職の自由」があると定められており、退職は、労働者だけでも進めていけます。

しかし、弁護士による退職代行サービスが普及した背景には、退職代行を弁護士に依頼すべき理由、メリットがあります。

迅速に退職できる

弁護士による退職代行サービスを依頼する理由、メリットの1つ目は、迅速に退職できることです。

労働者自身ではなく、弁護士が代わりに退職の意思を伝えることで、「会社を辞める」という強い意思、覚悟を会社に伝えられます。これにより、会社からのこれ以上の引きとめ行為を防ぐことができるからです。

法律の専門家である弁護士に相談していると示せば、違法かつ不当な引きとめをつづければ労働審判や訴訟などの争いごとになってしまうというプレッシャーを会社に与えることができます。

円満に退職できる

「退職代行を利用すると、ますますもめてしまうのではないか」という不安な方もいるのではないでしょうか。ブラック企業であることがわかったとき、退職するのはしかたないですが、「できれば円満に退職したい」というのが労働者の本音であることは、弁護士もよく理解しています。

弁護士が、退職代行をするときにも、かならずしも「喧嘩をする」というイメージばかりではなく、円満に退職できた事例も多くあります。

円満に退職を進める場合の、退職代行サービスの役割は、労働者のストレスを減らし、煩雑な手続きについて労働者に代わって窓口になることです。

安全に退職できる

弁護士浅野英之
弁護士浅野英之

退職代行サービスは、新しいサービスであるため、「危険」「怪しい」「詐欺ではないか」といったイメージを抱かれることがあります。

しかし、退職代行サービスを利用することは、かえって、安全な退職を実現する助けとなります。退職代行によって、精神的にも身体的にも、楽に退職できるからです。

ブラック企業における長時間労働、セクハラ、パワハラなどによって精神疾患などの病気になってしまった場合、自分で退職の意思表示を行うことは大きな負担になってしまいます。

ブラック企業が、勝手に退職をしていく社員に対して解雇、損害賠償請求などで対抗しようとするとき、退職代行を担当する弁護士が「盾」の役目を果たします。つまり、退職代行を利用するほうが、解雇されづらく、損害賠償請求されづらいなど、安全な退職ができるということです。

残業代請求できる

弁護士は、退職代行サービス以外にも、法律問題について幅広いサービスを提供しています。労働問題にくわしい弁護士であれば、退職代行のほかにも、労働審判、訴訟など、労働問題を戦った経験、実績が豊富にあります。

そのため、退職を自分1人で進めるのではなく、弁護士に退職代行を依頼することによって、労働問題に関するすべてのトラブルを一括して解決してもらうことが可能です。法律相談の中で、自分では気づいていなかった権利侵害、労働問題を、弁護士から指摘してもらえることもあります。

その最たる例が、残業代請求です。「なぜ残業代が支払われないのか」を知らず、残業代請求をあきらめてしまっていた方は、退職代行サービスの依頼とともに、未払残業代の問題についても、弁護士に相談するのがおすすめです。

長時間労働の慰謝料を請求できる

会社(使用者)は、労働者(被用者)の健康と安全を守る義務があります。これを「安全配慮義務」といいます。

長時間労働を労働者に強要することによって、労働者がうつ病、適応障害などの精神疾患(メンタルヘルス)にかかってしまえば、安全配慮義務違反という責任が会社に生じます。この場合、労働者は会社に対して、労災申請への協力を求めるほか、慰謝料の請求をすることができます。

退職代行を依頼して、会社をどうしてもやめたい理由が長時間労働、仕事の苦痛にある場合には、長時間労働の慰謝料請求が可能かどうかについても、弁護士にご相談ください。

パワハラ・セクハラの慰謝料を請求できる

退職したい理由の上位に、「職場の人間関係」があります。職場は、人がその生活の大部分を過ごす場所であるため、人間関係が悪化すると、仕事を継続することが困難ともなりかねません。

なかでも、セクハラ、パワハラに代表されるハラスメントが存在する場合には、労働者は、会社がこれらのハラスメントを防止するなど適切な対応をとらなかったことについて、慰謝料を請求できるケースがあります。

退職代行を弁護士に依頼すべき理由の1つに、これらハラスメントに対して適切な対応を行い、慰謝料請求などもまとめて代行してもらえる点があります。

罪悪感なく退職できる

退職代行を利用するか迷っている方のなかには、他人に代わりに伝えてもらう方法について、罪悪感を感じる方がいます。「退職代行を利用するのは無責任ではないか」、「残された上司、部下に迷惑をかけるから申し訳ない」、「自分で退職をいいだせないなんて卑怯だ、ずるい」といった批判的な意見もあるからです。

しかし、退職代行サービスを提供している弁護士としては、このような意見はごく一面的なものに過ぎません。むしろ、退職したいのに退職できない状況を作り出している会社に責任があるのであって、本来的には退職は自由なはずだからです。

一人で思い悩むのでなく、弁護士に法律相談していただくことで、弁護士が適切なアドバイスにより罪悪感を払しょくし、退職への一方を踏み出すお手伝いをします。

なぜ「弁護士」に退職代行を依頼すべきなの?

びっくり

退職代行には、例えば「退職代行士」「退職代行業」などといった専門資格はありません。そのため、各種士業をはじめ、さまざまな資格者が、「退職代行の専門家」を名乗ってサービスを提供しています。退職代行サービスを提供する母体には、弁護士のほか、司法書士、社労士、行政書士や、合同労組・ユニオン(労働組合)などがあります。

このなかで、なぜ、退職代行サービスを「弁護士に」依頼すべきなのかについて、他の資格や法人、団体との比較をしながら解説します。どの資格が、どこまでの範囲のサービスを行うことができるかを理解することが、適切な退職代行サービスを選択する秘訣です。

司法書士に退職代行を依頼できる?

司法書士は、不動産の登記、法人の登記など、法務局で扱われる「登記」を主な業務とする国家資格です。司法書士のうち、「認定司法書士」という資格をとると、「140万円未満の争い」という限られた範囲について、法的な紛争の代理権があり、当事者の代理として訴訟で争うこともできます。

司法書士による退職代行のデメリット
司法書士による退職代行のデメリット

140万円以下の問題については当事者に代わって交渉できますから、未払い賃金などが発生する場合も、140万円を超えなければ、訴訟で請求できます。司法書士に退職代行を依頼する場合、弁護士に比べて、業務として扱える範囲が限定的な分、弁護士が行う退職代行よりも、料金が割安な場合がありますが、140万円を超える争いについては、認定司法書士であっても取り扱うことができません。

また、退職代行以外に、労働問題を取り扱っていないことが多いため、労働法、裁判例の知識にあまりくわしくないことが多い傾向にあります。

社労士に退職代行を依頼できる?

社労士(社会保険労務士)とは、社会保険(健康保険、厚生年金保険)、労働保険(労災保険、雇用保険)など、人事労務分野を専門とする国家資格です。「企業の味方(顧問社労士)」のイメージが強いですが、中立の立場であり、労使双方のために労働問題を取り扱うのが、本来の業務です。

社労士による退職代行のデメリット
社労士による退職代行のデメリット

社労士の場合には、法的紛争(トラブル)を、当事者の代理となってサポートすることはできません。その代わりに、退職代行の際によく生じる、離職票、保険関係の問題について知識が豊富で、スムーズに対応してもらえると予想されます。

その他に、退職代行にともなって、傷病手当金の支給申請、労災申請、離職票の離職理由についての異議申立てなど、社会保険、労働保険にかかわる手続が必要となる場合には、社労士によるサポートを検討してもよいでしょう。

行政書士に退職代行を依頼できる?

行政書士は、主に行政に提出する手続書類などの作成を業とする国家資格です。事業に必要な許認可や、外国人が日本に滞在するためのビザ申請手続きなどを扱います。行政書士の場合、弁護士、司法書士とは異なり、法的紛争について当事者の代理をすることがまったくできないため、当事者に代わって書類を作成するのがメインのサービス内容となります。

行政書士というと「カバチタレ!」という漫画のイメージが強く、なんでも代わりに交渉してくれるのではないか、と考えて相談する方も多いようですが、実際には、退職代行が争いに発展したとき、会社との間で交渉をすることは、行政書士にはできません。

会社と揉めてはおらず、交渉はまったく不要なのだけれど、上司が嫌で顔合わせせずに辞めたい、といった方は、行政書士による割安の退職代行に依頼するのがおすすめです。

ユニオン(労働組合)に退職代行を依頼できる?

労働組合とは、憲法、労働組合法によって権利を保障された労働者の団結した集団のことをいいます。なかでも、一企業の労働者を構成員とするのではなく、さまざまな会社の社員が、労働者1人からでも加入できる社外の組合を「ユニオン」、「合同労組」といいます。

ユニオン、合同労組による退職代行サービスは、労働組合に認められた団体交渉権にもとづいて会社と交渉をしてくれます。

退職代行サービスを、ユニオン、合同労組に依頼する場合には、その団体が、労働組合としての要件を満たしているのか、どのような組合であるのかについて、事前に確認しておきましょう。

労働基準監督署(労基署)に退職代行を依頼できる?

労働基準法、労働安全衛生法(労安衛法)などの重要な労働法について、企業に法律違反がないかを監督、調査し、処罰を下すのが、労働基準監督署(労基署)の役割です。

労働者の立場で、労働問題に困ったとき、労働基準監督署(労基署)が相談先として思いつくのではないでしょうか。しかし、労働基準監督署(労基署)は、主に、刑事罰を科すことのできる労働法違反について、企業を監督するのが主要な業務であり、「退職できない」とお困りの労働者に対して、退職代行のサービスを提供してくれはしません。

「退職できない」だけでなく、大きな労働法違反がある場合に、労働者の告発をきっかけとして調査し、会社を処罰してくれることがあるかもしれませんが、退職代行と同様のサービスまでは、労働基準監督署は取り扱ってくれません。「退職を安く済ませたい」、「手っ取り早く済ませたい」という場合、労働基準監督署は費用はかからないものの、窓口などで相談をし、アドバイスを受ける程度に留めておくのがよいでしょう。

退職代行業者に依頼したときの失敗、トラブルとは?

「退職代行業」は、以上のような資格がなくても取り扱えるため、「退職代行業」を謳う業者のなかには、残念ながら質の低いサービスもあります。業者の行う退職代行サービスには、求人サービス、ヘッドハンティングサービスなどと提携して、退職代行の費用を安くする代わりに転職をあっせんすることを狙い、手数料を稼ごうとする会社もあります。

一時の甘えから退職代行を頼んでしまったことによって、逆に後悔してしまうことのないように、弁護士以外の退職代行業者に依頼したときの失敗例、トラブル事例もあります。退職代行サービスのなかには、「絶対に、会社からは訴訟されない。」、「争いになることはない」と強調して、弁護士に依頼する必要はないことを強調するホームページもあります。

たしかに、退職をすることは、労働者の正当な権利なのですから、正しく進めていけば、紛争になる可能性はそれほど高くはありません。しかし、問題のあるブラック企業だからこそ、退職代行を依頼しないといけない事態に陥っているのではないでしょうか。

実際には、問題のあるブラック企業の中には、退職を巡るトラブルを発端として、損害賠償請求をされるなどの訴訟問題に発展するケースは、残念ながら一定数存在します。ブラック企業の社長には「勝てなくても、嫌がらせで訴えたい」という人もいるため、労働者側としても、しっかりとした防御が必要となります。

なお、「弁護士監修」、「顧問弁護士」といった表現にだまされることなく、実際にその弁護士が会社との交渉を担当してくれるのかどうかについても確認しておきましょう。

退職代行を依頼するタイミングはいつから?

時計

次に、退職代行を依頼すべきタイミング、時期について、弁護士が解説します。

ブラック企業からのひどい仕打ちに悩まされる労働者にとって、「会社を辞めたい」という希望は四六時中抱いていることでしょう。「退職代行を依頼するタイミングはいつですか?」というご相談を受けることがありますが、労働者が希望し、退職する覚悟ができていれば、退職代行サービスはいつでも利用できます。

即日退職はできる?

いつでも退職代行サービスが利用できるといえども、退職代行を依頼したすぐその日に退職することができるのでしょうか。

当事務所では、退職代行をご依頼いただいたら、すぐその当日に、退職の意思表示を会社に伝えることができます。そのため、退職代行をご依頼いただいたその日から、出勤をする必要がなくなります。

会社にとっては、「突然退職の意思表示を伝えられた」、「いきなり退職するなんてひどい」と言われるかもしれませんが、これまでずっと苦しんできた方にとって「突然」、「いきなり」ではないことを、弁護士はよく理解しています。

そのため、「何日前に、退職代行のご依頼をいただかなければ対応できない」といったルールを決めることはありません。即日の対応も可能ですので、ぜひご相談ください。

退職代行を依頼すると、退職日はいつ?

退職代行サービスの相談、依頼をいただいたら、即日に対応し、その日から出勤をしなくてもよいと解説をしました。

しかし、民法における退職のルールによれば、原則として2週間の予告期間をおいて退職すべきことが定められています。そのため、即日に退職の意思表示をして出勤をやめたとしても、すぐに退職できるかどうかは、ケースバイケースでの判断が必要となります。この点で、「即日退職可能」を宣言する業者の退職代行サービスには誤りがあるケースもあります。

いつ退職できる?
いつ退職できる?

会社が即日退職に合意する場合には、即日退職が可能となるため、退職代行をする際に、会社の合意をとれるよう、弁護士が労働者に代わって交渉します。

会社としても、弁護士に依頼するほど退職の強い意思を持った労働者と揉めるよりは、早く会社から出て行ってもらって、トラブルの火種を解消したいと願うことも少なくありません。

連休明けにすぐ退職できる?

GW(ゴールデンウィーク)、夏季休暇(お盆)、年末年始休暇など、連休が続くと会社に嫌気がさし、連休明けに出社せずそのまま退職したい、という退職代行のご依頼を多くいただきます。

連休中は、休業している法律事務所も多いですが、当事務所では、連休明けにすぐに退職したい労働者の方に向けて、365日、退職代行サービスのお問い合わせを承っています。

ただし、連休中は郵便局が休みになるなど、退職代行の意思表示が、平日に比べてスムーズに伝わりづらいことがあります。連休明けに、すぐ退職したいとご希望の場合、連休中に、できるだけ早く、相談、依頼をご検討ください。

【業種別】退職代行を依頼すべきブラック職種とは?

ブラック

退職代行サービスは、あらゆる業種に対応することが可能です。退職に関するルールを定めた憲法、民法、労働法といった法律は、どんな業種や業態、企業規模でも、平等に適用されるからです。

ただ、そのなかでも、退職代行を依頼いただくことの多いブラック企業の多い職種について、その種類別に解説します。

営業職の退職代行

営業職の社員の場合、賃金体系が完全歩合制(完全成果報酬制)だったり、労働時間を把握できないこと、事業場外みなし労働時間制をとっていることなどを理由に残業代が払われていなかったりといった、賃金面でも違法な疑いの強いブラック企業が多い傾向にあります。

過大なノルマ、自爆営業、自腹営業を強要する会社もあります。

このようなブラック企業では、営業職の金銭的な負担のもとに会社が得する構造にあるため、違法な引きとめにあって退職が困難となってしまうケースがあります。

営業職の社員が、退職代行サービスを利用する際には、未払残業代など、在職中に支払われていなかった正当な金銭の請求が可能ではないか、あわせて弁護士に相談するのがおすすめです。

病院(医師・看護師)の退職代行

病院に勤務している医師、看護師の方にも、退職代行サービスの利用がおすすめなケースがあります。

すぐに辞めたくなるようなブラックな労働環境の病院の場合、宿直、当直の際の残業代計算が違法であったり、健康被害の出てしまうような長時間労働が常態化していたりするケースがあります。

美容師の退職代行

美容室で働く美容師の中にも、ブラックな労働環境に耐えかねて、退職を希望する方が少なくありません。

特に、ブラックな美容室では、最低賃金を下回るほどの低賃金が横行していたり、居残り作業、カット練習などの時間に対して本来支払われるべき残業代が払われていなかったりといったケースが存在しています。

建設業(親方・職人)の退職代行

建設業ではたらく職人、一人親方の場合、退職代行を利用するにあたっては、まず、雇用契約であるのか、業務委託契約・請負契約であるのかを判断する必要があります。

一人親方であっても、実質的には雇用契約に等しい時間的拘束、場所的拘束を受けている場合には、在職中に支払われるべきであった未払残業代を、退職代行の際に、同時に請求するのがおすすめです。

水商売(キャバクラ・風俗・AV)の退職代行

キャバクラ、風俗、AVなどの水商売をしている労働者の方もまた、退職代行サービスを利用すべきケースが少なくありません。特に、「意に反して過度なサービスを求められた」「水商売で働き続けたくない」という場合、引きとめにあって嫌な思いをしないために、退職の意思表示を弁護士が代わりに行います。

また、キャバクラ、風俗などの夜のお店では、退職をした後も、看板や店のホームページに写真が残り続けることがあります。店側として、たくさんの女の子が所属しているように見せることが目的ですが、退職後も、プライバシーが侵害され続けることとなります。

退職代行サービスをご依頼いただいた場合、退職後にホームページや看板から顔写真を即座に削除するよう、退職の意思表示と同時に、弁護士から強く要求します。

【雇用形態別】退職代行の利用方法

悩む男性

次に、雇用形態ごとの、退職代行サービスの上手な利用方法について、弁護士が紹介します。

退職代行サービスのなかには、正社員の退職代行と、非正規社員(契約社員・アルバイト社員・派遣社員など)の退職代行とで、費用を区別しているものもあります。これは、雇用形態によって、難易度や業務量に差があることが理由です。

働き方改革において、「同一労働同一賃金」のルールが提唱され、「非正規社員だから」というだけの理由で賃金を下げることはできなくなりました。しかし、退職代行をうまく進めるためには、雇用形態に応じた注意点も理解しておかなければなりません。

正社員の退職代行

正社員は、一般的に、新卒一括採用によって、大学を卒業したらすぐ入社し、定年まで同一の会社で雇用されつづけるのが、日本の旧来の雇用慣行でした。

そのため、正社員は、雇用期間の定めがされていないことが多く、2週間前に退職の意思を示せば、自由に退職できるのが基本です。

しかし、日本の旧来の雇用慣行では、長期雇用を前提としていて、会社に長らく貢献することを予定して年功序列型の賃金としていることが多いため、古い社風の会社ほど、退職を言い出しづらい空気にあります。このような古い会社に嫌気が指してしまったケースこそ、退職代行サービスを利用すべきタイミングといえます。

契約社員(有期雇用社員)の退職代行

上記のような無期雇用の正社員に対して、雇用期間の定めのある社員のことを一般に、契約社員、有期雇用社員と呼びます。

雇用期間の定めのある社員の場合は、ずっと同じ会社で働くとは予定されていない分、雇用期間が満了すれば、退職をすることができます。他方で、雇用期間の途中で退職をするためには、「やむを得ない理由」が必要となるため、会社との間の交渉が難航する場合があります(民法628条)。

民法628条(やむを得ない事由による雇用の解除)

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

民法(e-Gov法令検索)

とはいえ、契約社員の中途退職といえども、退職を希望する場合には、会社との間で粘り強く交渉すべきであり、このような場合、弁護士による退職代行サービスが有効です。

アルバイト・パートの退職代行

アルバイト社員、パート社員もまた、雇用期間の定めがある契約となっていることが多いですから、契約社員と同じく、雇用期間の途中で退職を希望する場合には、「やむを得ない理由」を主張するか、会社の同意を得る必要があります。

一方で、長年パート社員として勤務し、正社員と同じ仕事をし、同等の責任を負担しているパート社員の場合には、ますます、会社からの違法な引きとめに遭う可能性が高まります。

アルバイト、パート社員の場合には、退職代行を弁護士に依頼する際にかかる費用も少なく済む場合が多いため、違法な引き留めが予想される場合には、退職代行サービスの利用が有益です。

派遣社員の退職代行

派遣社員とは、派遣元会社との間で雇用契約を締結しながら、派遣先会社に派遣され、派遣先会社の指揮命令を受けて働く社員のことをいいます。

派遣と正社員の違い
派遣と正社員の違い

派遣社員の場合には、その雇用契約は派遣元会社との間に存在しているため、退職代行サービスを利用する場合にも、派遣先会社だけでなく、派遣元会社に対しても、退職の意思表示を通知する必要があります。

SES社員の退職代行

SES社員とは、SESを行う会社と雇用契約を締結しながら、その会社と業務委託契約を締結した常駐先の会社に常駐し、サービス提供を行う労働者のことです。法律的には、クライアント企業(常駐先)との間には雇用契約は存在しません。

SESで働く社員の働き方は、派遣や請負と類似していますが、雇用契約は、SESサービスを提供する会社(ベンダー企業)との間に存在しています。

そのため、退職代行を行う際にも、退職の意思表示は、SESサービスを提供する企業に対して行う必要があります。また、この場合、クライアント企業に対する引継などが、退職の大きな支障となるケースも少なくなく、雇用主から損害賠償請求を受けるなど、交渉が激化する可能性があります。

業務委託社員の退職代行

業務委託契約を締結して働いている人は、厳密にいうと労働基準法にいう「労働者」ではなく、雇用契約を締結しているわけではありません。

業務委託契約は、当事者の片方から、いつでも解約できます。そのため「やめたいのにやめられない」という事態になってしまったとき、発注側の引きとめを目的とした脅しは、違法となる可能性が高いです。

業務委託契約は、任意の時期に解約できますが、正当な解約理由が存在しなければ、これによって会社側が被った損害を賠償する責任を負うことになります。「辞めて迷惑をかけるなら、損失を補填すべき」と言われやすい状態です。そのため、争いを避けるためには、契約の打ち切り問題について弁護士に依頼するのがおすすめです。

業務委託といいながら、実質は雇用された労働者に等しい働き方をしている場合には、労働者と同様の退職代行サービスを利用することが可能です。業務委託契約でありながら、時間的拘束・場所的拘束を受けたり、逐一業務についての指示を受けているような場合、それは「雇用」と同様と評価されます。

管理職の退職代行

管理職であっても平社員であっても、退職の自由があるという点では変わりありません。

ただし、管理職のほうが、「店長」や「役員」などの高い地位にあり、責任が重い分、退職の意思表示をしたときに会社から違法な引き留め、在職強要を受ける危険が高く、退職代行サービスを利用するメリットが大きいといえます。

責任感の強い人ほど、退職代行サービスの利用に抵抗を示す傾向にありますが、管理職といえども、退職を妨害されたり、嫌がらせを受けたりするいわれはありません。

【ケース別】退職代行を使うべきケースの実態は?

悩む男性

近年の「働き方改革」からもわかるように、人の働き方は多様化しています。一言で「正社員」といっても同じ働き方の人ばかりではありません。時間、場所、職種、業種を特定された「限定正社員」の活用も進んでいます。

このような現状では、退職代行といえども、その人の状況によって、注意しなければならない点は変わってきます。

多様化した働き方のなかで、退職代行サービスを利用すべきケースと、その場合に気を付けておくべき特徴的な事項について、弁護士が紹介します。

大企業の退職代行

大企業の場合には、一般的にいって、中小企業、小規模企業、ベンチャー企業よりも、退職代行によって退職するのが容易なケースが多いです。大企業のほうが退職しやすい理由は、次の点にあります。

  • 大企業だと、社会的評判が重要なため、違法な引きとめをしない
  • 大企業だと、新規採用が比較的容易なため、代替の人材が見つかりやすい
  • 大企業だと、顧問弁護士がついているなど、労働法の知識を十分に有している

ただし、あくまでも一般論であって、残念ながら、違法な引きとめやパワハラ、嫌がらせを受けてしまうなど、大企業であっても、退職代行サービスを利用しなければ労働者自身だけで円満に辞めるのが困難な会社もあります。

新入社員(新卒)の退職代行

新入社員(新卒)であっても、退職代行サービスを利用して退職することができます。

特に、社会的問題となっている「求人詐欺」のように、人手不足を解消する目的から、実際とは異なる労働条件を示されてブラック企業に入社してしまったケースでは、ただちに辞めたいのに辞めさせてもらえない、という事態が生じやすいです。

入社した会社がブラック企業だと明らかになったが、言い出せない、報復を受ける可能性がある、という場合、退職代行サービスの利用がおすすめです。

女性社員・未成年者の退職代行

女性社員や未成年者であっても、退職代行サービスによって退職の意思表示を代わりに行ってもらうことができます。

働き方の多様化により、女性、高齢者、外国人、未成年者といった、これまで活用されてこなかった労働力を活用することが、人手不足、採用難を解消する重要な手となっています。

しかし、これらの稀少な労働力の活用に着手しない会社では、女性社員、未成年者などは働きづらさを感じるかもしれません。退職代行サービスに、ぜひ一度法律相談ください。

退職代行を会社が拒否したらどうする?

はてな

退職代行を会社が拒否した場合、退職できないのでしょうか?

結論から申し上げますと、労働者には「退職の自由」があるため、会社が「退職代行は認めない」と反論したとしても、弁護士による適切な退職代行サービスを利用していれば、退職自体は可能です。会社が、退職代行の連絡を無視していたり、放置していたりしても、「退職できない」ということはないので安心です。

しかし、労働者が自分ひとりで、会社に退職を申し出ても、強い引きとめにあったり、嫌がらせや損害賠償請求などの脅しを受けてなかなか退職できないことがあります。なかには、訴訟をちらつかせて退職しないよう強要する会社もあります。

退職代行を拒否されづらくするためには、退職代行を使ったときに起こり得る会社の反応・対応を知り、これに対する労働者側の反論方法を理解しておかなければなりません。

退職代行を実際に利用する人は、なぜ退職代行サービスを利用したのでしょうか。退職代行を使う理由について考えてみてください。

退職代行を使いたいと思っても、「会社に悪い」「後ろめたい」「同僚に迷惑をかけてしまう」「甘えているようで恥ずかしい」といった気持ちから、退職代行を思うように使えないと悩む方も多くいます。実際に利用した人以上の数が、退職トラブルを潜在的に抱えているのです。

会社が、退職代行を行っても、これを拒否してきた場合には、最終的には、労働者の正当な権利を守るために、労働審判、訴訟といった法的手続に移行する場合があります。ただし、当事務所で担当したケースの中で、今のところ、最終的に会社が退職を拒否し続けてきた例はありません。

退職代行のデメリット・リスクと対策

リスク

ブラックすぎる会社に勤務していると、「退職代行は無駄なのではないか」、「うちの社長には無意味ではないか」など、デメリットやリスクのほうが気になってしまう方も多いことでしょう。

しかし、退職代行を利用する際のデメリット・リスクはとても少ないということができます。

このことをご理解いただくために、退職代行を利用するかどうかお迷いの方が、よく抱く不安、疑問について、リスクを軽減する対策を弁護士が解説します。

退職代行を使うと賠償請求される?

退職代行を利用したことを理由に、「会社から嫌がらせで訴えられるのではないか」という不安が多く寄せられており、退職代行の利用を迷われる方もいます。実際、ブラック企業のなかには、「勝手にバックれたら訴える」と社員を脅している会社も少なくありません。

退職するにあたり、労働者側に、雇用契約上の義務に違反する行為があれば、会社から損害賠償請求を受ける可能性はゼロとはいえません。ただ、この場合には、退職代行を利用してもしなくても、損害賠償請求を受ける確率は変わりません。

また、退職代行を担当する場合に、たとえ弁護士であっても、最初から喧嘩腰で臨むわけではありません。できるだけ円満退職となるよう、弁護士は誠意をもって交渉し、会社からの損害賠償請求や怒りを避ける努力をします。

逆に、未払いの残業代や退職金、慰謝料などの請求が可能な場合、会社から請求される可能性のある損害賠償金と相殺することもできます。根拠もなく損害賠償請求をしたり、これを脅しに使ったりする会社には、反対に、労働者側から会社に対して、損害賠償請求をすることで対処することも検討します。

退職代行は転職先にバレる?

「退職代行をつかうと、転職に影響するのではないか」、「転職先にバレると、再就職できないのではないか」といった相談をお受けすることもあります。

法律上は、退職することは労働者の権利であり、退職代行を利用したことが、転職、再就職に不利になることはありません。むしろ、退職代行を利用するメリットがあるほどのブラックな会社にこそ問題があるのです。

1つ検討すべき点があるとすれば、「すぐに会社を辞めたい」とか、生命に危機を感じるほどのブラック企業ですぐに逃げる必要があるといった場合を除いて、退職代行を利用したことにより、転職活動を行う準備期間が不足してしまうことがある点です。

この点は、退職代行を行う際に、最終出社日から退職日までにある程度の期間を設定するよう交渉してもらうことである程度解決できます。退職日の交渉を行うことができるのは、退職代行を行う運営主体の中でも、弁護士だけです。一部の退職代行サービスを提供する会社では、人材会社などが運営主体となり、転職支援サービスを追加で受けられる代わりに退職代行にかかる費用を割引しているサービスもあります。

退職代行でも退職できない?

退職代行サービスの利用者、相談者から、「退職できないことはありますか?」という質問を受けることがあります。

結論としては、退職できないということは絶対にありません。退職すること自体が、労働者の権利であり、これを侵害する会社は問題があるためです。「辞めさせない」という会社の主張は、法的に違法であり、無効です。

ただし、「退職日がいつか」「最終出社日がいつか」という点は、検討の必要があります。つまり、「退職できる」とはいっても、希望の退職日に退職できなければ、ご希望を満足に叶えることができないからです。できるだけ早く退職日を設定し、すみやかに会社を辞めるためには、退職の意思を代わりに伝えてもらうとともに、弁護士に依頼して退職日を早めてもらえるよう交渉するのが有効です。

退職代行を使うと懲戒解雇される?

「懲戒解雇」は、会社が労働者に対して行う処分の中で、最も重い処分です。退職時に労使間でトラブルが大きくなったとき、「懲戒解雇をしてやる」と脅してくる会社もあります。

しかし、懲戒解雇が、労働者にとってダメージの大きい、とても重大な処分であるため、お手軽に行える処分ではないことを理解しておかなければなりません。「退職代行を使うと、懲戒解雇されてしまうのではないか?」という労働者の不安に回答するとすれば、退職代行を使っただけでは、懲戒解雇をすることはできません。

仮に、会社が、退職代行を利用した社員に対して「懲戒解雇だ!」と脅したとしても、その懲戒解雇は、違法な「不当解雇」であり、無効です。

退職代行を相談する方法と手順

ステップ

次に、実際に退職代行を相談する方法と、手順について、弁護士が解説します。

退職代行を相談するにあたっては、相談先をインターネットで検索して探す方が多いのではないでしょうか。

退職代行の広告などを見て電話相談、メール相談を進める前に、相談したらどのような流れで進むのかについて、具体的にイメージしておいたほうが、不安なく退職代行を進めることができます。

退職代行の電話相談

退職代行の相談は、電話でも行うことができます。「電話相談可」をうたっている退職代行サービスを利用すれば、全国対応をしてもらえる可能性が高いでしょう。退職代行のサービスのうちの大部分は、内容証明の郵送、電話、郵便物の授受など、遠隔地でも対応できる内容がほとんどだからです。

退職代行サービスを利用するかどうか、迷っている段階の方に対する電話相談は、無料相談であることがほとんどです。多くの退職代行サービスがあるため、信頼のできる専門家を、電話相談で選択すべきです。

退職代行の無料相談

退職代行について弁護士に相談するとき、着手金を支払ってサービスを開始する前であれば、無料相談であることがほとんどです。

無料相談では、退職代行サービスを利用して円満に退職することができるかどうか、実際に退職代行サービスを利用したときの流れを質問できるので、退職代行を利用するにあたって抱く不安を、無料相談で解消しておきましょう。退職代行の無料相談は、電話ではもちろん、法律事務所に訪問して、対面で行うこともできます。

退職代行の相談は土日も対応!

「退職代行の相談は、土日でも可能なのでしょうか?」というご相談を多くいただきます。結論から申しますと、退職代行の相談は、土日でも対応しています。

むしろ土日こそ、「退職代行を利用したい」という需要が多いのが現状であり、この需要にこたえるため、土日でも即座に対応可能な退職代行サービスこそ、役に立つサービスです。

というのも、土日で会社が休みになってしっかりと検討した結果「うちの会社はブラック企業なのではないか」「会社を辞めたい」と思うに至った場合には、週明け1日たりとも出社せずに退職するのが一番だからです。

退職代行に必要な準備

退職代行を弁護士に相談する際に、手元に用意しておいたほうがよい資料は、次の通りです。

  • 雇用契約書・労働条件通知書
  • 給与明細
  • 会社、社長とのやり取りを示すメール、LINEなど
  • 就業規則・賃金規程などの会社規程

しかし、労働者の立場で、会社の規程類などを全て手に入れることが難しい場合があります。また、退職を妨害するようなブラック企業ほど、会社が準備しておくべき重要な書類を、整備していない場合があります。

そのため、退職代行を弁護士に相談する際に、上記のような資料がすべてそろっているに越したことはないのですが、もしお手元にないとしても、退職代行を相談する支障にはなりません。

実際の退職代行の流れ

ジャンプ

退職代行を依頼する際に、実際に依頼したあと、弁護士がどのように活動して、どのように退職を実現してくれるのかについて、具体的にイメージしておいたほうが、不安、疑問が少なくて済みます。

そこで次に、退職代行サービスを、実際に弁護士に依頼した後の手続の流れについて、弁護士が説明します。

委任契約書・委任状を作成する

電話相談、対面相談、メール相談などの結果、退職代行を弁護士に依頼する決断をした場合には、まず、退職代行を担当する弁護士との間で、「委任契約書」を作成します。

委任契約書には、弁護士が、どのような退職代行サービスを実行してくれるか、また、その際の費用や、中途解約時の手続などが記載されています。弁護士から、委任契約書の説明を受け、内容をきちんと理解した上で、納得して署名押印してください。

会社によっては、交渉時に、委任状の提示を要求してくる場合もあるため、あわせて、退職代行を弁護士に委任していることを対外的に明らかにするために、委任状を作成する場合があります。

退職代行の内容証明を送付する

委任契約の締結が終了したら、早速、退職代行サービスが開始されます。

弁護士による、退職代行の意思表示は、内容証明郵便を送付する方法によって行われることが一般的です。「配達証明付き内容証明郵便」という郵便の形式は、意思表示を行った事実と、その日時を、郵便局に写しを保管してもらうことによって証拠に残す制度です。

内容証明とは
内容証明とは

「配達証明付き内容証明郵便」の方法で、退職の意思表示を行うことで、万が一将来に裁判などになったときにも、「退職の意思表示を、いつ行ったか」を、証拠によって客観的に証明することができるようになります。

退職代行のTEL・FAX・郵便を送付する

退職代行を希望する労働者の中には、「即日退職したい」、「もう1日も会社に行きたくない」という深刻なお悩みを抱えていらっしゃる方も多くいます。

内容証明郵便による方法は、確実に意思表示を証拠化することができますが、会社に退職の意思表示が到着するまでに一定の期間を要します。

そのため、急ぎの退職代行の場合には、内容証明郵便とあわせて、会社担当者への電話、ファックス、普通郵便などの方法を併用することによって、少しでも早く、会社に対して退職の意思表示をお伝えします。

退職代行を代理人に交渉してもらう

退職の意思表示が会社に届いた後は、弁護士を代理人として退職の交渉を行います。労働者自身に、会社からこれ以上嫌な連絡が続くことはありません。嫌がらせの連絡が続くときは、弁護士から警告を送ることもできます。

会社側の交渉窓口は、大企業であれば人事部、総務部などの担当部であることもありますが、中小企業の場合には社長が直接の窓口となることもあります。

弁護士名義で作成した「通知書」、「要望書」などを会社に送付することで、退職に付随した労働者のさまざまな希望を代わりに伝えてもらうこともできます。

退職の合意をする

弁護士による退職交渉が成功し、退職にともなう条件が労使間で合意できたら、退職の合意が成立します。

労使間の合意内容は、後々「言った言わない」の争いにならないよう、合意書の形にして、会社、労働者がそれぞれ、署名押印をします。万が一、退職条件が遵守されない場合には、合意書にしたがって、裁判で請求することができます。

退職にあたって、未払い賃金、残業代、賞与、退職金など、会社から支払ってもらわなければならない金銭があるときには、必ず、合意書に記載しておかなければ、「清算条項(この合意で紛争の最終解決とする旨の合意)」によって後からは請求できなくなってしまいます。

金銭を支払う旨の合意が、破られるおそれがあるときは、退職の合意書を「公正証書」にして、強制執行できるようにしておく手も検討可能です。

公正証書とは
公正証書とは

退職代行にかかる期間

以上のとおりに進む退職代行の交渉の流れについて、「どの程度の期間がかかるのか。」は、労働者にとってとても重要な関心事なのではないでしょうか。というのも、転職、再就職などを検討した場合に、いつ退職代行の交渉が終了するかは大きな影響を与えるからです。

退職代行にかかる期間は、早くて即日、遅くとも、1か月程度の期間を見ておくのがおすすめです。ただし、退職代行の交渉を続けている最中であっても、転職、再就職の妨げとはならない場合もあります。

退職代行中、「いつから転職活動を始めてよいのか?」、「いつから再就職してよいのか?」は、実際に退職代行の交渉を担当してもらう弁護士に相談してください。

退職代行でも退職届は必要?

ペン

退職代行を弁護士に依頼する場合でも、退職届は必要なのでしょうか。もし、退職届が必要だとすれば、退職届の作成については、弁護士が代わりに行うのではなく、労働者自身が対応すべきなのでしょうか。

退職代行サービスを利用するときにも、退職届が必要な場合や、退職届を書いておいたほうが労働者にとって有利なケースがあります。この場合の対応について、弁護士が解説します。

退職届を書くべきケース

本来、退職の意思表示は、「口頭」ですることができます。そのため、退職届は必須ではありません。弁護士が代理して退職の意思表示をすれば、退職届がなくても、手続としては十分です。

しかし、退職代行を弁護士に任せた場合でも、退職届を書いておいたほうがよいケースがあります。それは、会社が退職届の提出を求めてきて、退職届さえ書けば円満に退職できそうなケースです。退職届さえ書けば、スムーズに退職することができるのであれば、退職届の作成を拒否する理由はありません。

この場合でも、退職代行サービスをお任せいただいている場合には、退職届のひな形、書式例をご提供しますので、その通りに記載すればよく、それほど手間はかかりません。

会社が退職届を求めてくるケースと、その理由

では、なぜ、会社は退職届の作成、提出を労働者に求めてくるのでしょうか。退職代行サービスを利用しても、退職届が必要となる理由は、どのようなものなのでしょうか。

会社にとっても、退職に際して弁護士が介入した場合に心配なことは、これ以上紛争が拡大して、労働者から更に権利を主張されたり、さらに金銭を要求されたりすることです。

この点、退職届を作成してもらっておけば、「解雇」などの問題になりやすい辞め方ではなく、「退職(自主退職)」であることを明らかにすることができ、会社側としても事後のトラブルを回避できるのです。

退職届に記載する退職理由は?

会社の求めに応じて、退職届を記載するにあたって、「退職理由」についてどのように記載すればよいのでしょうか。

退職理由について、「自己都合退職(自主退職など)」であれば、失業保険をもらうのが遅くなったり、退職金の金額が少なくなったりすることがあります。これに対して、「会社都合退職(解雇、業績不振など)」であれば、失業保険はすぐにもらうことができ、退職金の金額も自己都合の場合よりも多額になることがあります。

そのケースに応じて、事実に即した適切な退職理由は、実際に退職代行を担当してもらう弁護士にご相談ください。

退職届に記載する退職日は?

退職届には、退職理由とあわせて、退職日を記載します。

さきほど解説したとおり、退職日には、法律上のルールがあることから、原則として、2週間以降後の日を退職日として指定するのがよいでしょう。ただし、会社との話し合いの結果、それより直近の日を退職日とする合意ができている場合には、合意している退職日を記載します。

これに対して、退職届の作成日時は、実際に退職届を作成し、提出する年月日を記載するようにしてください。

退職代行を行った後の手続は?

握手

次に、退職代行を行った後に残された手続きについて、弁護士が解説します。

退職代行サービスを利用し、退職の意思表示を行ってもらった後も、退職が実現するまで、気を抜くことはできません。

弁護士以外の退職代行サービスには、退職の意思表示のみで終了するものもありますが、弁護士の提供する退職代行サービスであれば、退職前後の手続まで、全てを一括してお任せいただけます。その分、他の専門家が提供するサービスより、少し相場が高めに設定される傾向にあります。

退職代行後の引き継ぎ

退職代行を利用して会社を辞める場合でも、できるだけ円満に辞めるためには、可能な限り、業務の引き継ぎを行っておくのがおすすめです。

ただし、パワハラなど、労働環境の劣悪さが原因となって、自分では退職の意思を伝えられなかったとき、業務の引き継ぎのためとはいえ、これ以上会社に出社したり、社長や上司と顔をあわせたりはできないケースもあります。

最低限、会社に迷惑をかけないようにするためには、退職代行を担当してもらっている弁護士を通じて、引継書を提出する方法がおすすめです。

退職代行後の清算

退職代行によって退職する際には、後に禍根を残さないよう、全ての労働問題を一度に清算しておく必要があります。

そのため、労使間で、在職中に支払っておくべき金銭が支払われていない場合には、退職する前に支払ってもらう必要があります。例えば、次のような未払金の清算が必要かどうか、調査してください。

  • 未払給与、最終給与の振込
  • 未払残業代の調査、請求
  • 退職金の支払
  • ボーナス(賞与)
  • 定期代、立替実費

特に、退職直前は、有給休暇を消化したり、給与の締日が退職日の前後いずれであるチェックしたりなど、未払給与がいくらになるかは、正確に計算しなければなりません。

退職代行後の返却物

金銭関係の清算と同じく、退職代行では、貸与物を返却しておく必要があります。退職時の物品の授受には、労働者から会社に返却すべきもの、会社から労働者に渡すべきものがそれぞれあります。

会社から労働者に渡すもので、最重要なのが「離職票」です。退職した後、次の就職までの間の生活費などとして雇用保険からもらえる失業手当を当てにする方が多いかと思いますが、離職票がなければ、失業手当の申請ができません。また、源泉徴収票の交付を受ける必要があります。年金手帳などを会社に預けているときは、退職前に早めに返還してもらいましょう。

逆に、労働者から会社に対して、会社から貸与を受けていた備品を返還しておく必要があります。返還する備品には、名刺、貸与PC、スマホ、ロッカーキー、制服などがあります。

退職時の私物返還の方法

退職時に、会社に置いてあった私物を撤去しなければなりません。

既に、退職代行サービスを利用し、最終出社日を過ぎていた場合には、会社に残っている私物を取りに行く日を会社と相談をして決めるか、量が少ない場合には、会社からゆうパックなどで返送してもらう手がよいです。

弁護士による退職代行サービスには、私物返還の授受も、そのサービス内容に含まれていますので、私物返還先を法律事務所宛としてもらうことができます。

寮・社宅の明渡

寮や社宅に住んでいた場合には、退職にともなって、明渡をしなければなりません。とはいえ、生活をしている寮や社宅を、すぐには退去することが難しい場合も多いのではないでしょうか。

この場合、弁護士による退職代行サービスを利用する場合には、寮や社宅の明渡日時の交渉についても、弁護士に代理してお任せいただくことができます。

退職代行を弁護士に依頼する費用(弁護士費用)は?

お金

次に、退職代行を依頼するときにかかる弁護士費用について説明します。

退職代行について、残業代請求など、その他の労働問題と同時に依頼する場合には、着手金の後払いや、報酬の分割払いに応じてくれることもあります。

弁護士による退職代行サービスの場合、一般企業の行う退職代行サービスに比べて、料金内で行えるサービスが広範なため、他よりも相場が少し高い可能性がありますが、その分、専門家による丁寧なサービスを受けられます。

退職代行にかかる料金(弁護士費用)

退職代行を弁護士に依頼するとき、不安に思うのが「費用」に関する問題ではないでしょうか。言い換えると、「退職代行の値段はどのくらいなの?」というご不安です。

退職代行を依頼できる会社の中には、格安な価格設定をする退職代行業者も増えており、価格競争が進んでいます。しかし、弁護士に安心して退職代行を任せるためには、値段の安さだけでお任せする法律事務所を選ぶのはおすすめではありません。

退職代行サービスを行う際に、かかる弁護士費用は、5万円~8万円です。正社員であるか、アルバイト社員であるか、退職代行の困難度に応じて、料金が変わる場合が多いです。

退職代行の費用は安い?

退職代行にかかる5万円~8万円の弁護士費用は、その他の労働問題を解決する際にかかる弁護士費用に比べれば少額ですが、決して安い金額ではありません。

しかし、退職を速やかに、かつ、スムーズに行えれば、会社からの無駄な請求を回避したり、会社との争いに金銭、時間を割かず、精神的なストレスなく退職できます。総じていえば、これらの無駄な手間や労力、本来であれば避けられた争いを回避するために、退職代行の費用を支払うことが安いと考えるのであれば、退職代行を利用するのがおすすめです。

退職代行費用の相場は?

弁護士による退職代行費用の相場は、5万円~8万円です。正社員の場合、退職代行に一定の手間がかかると考えられることから8万円程度、アルバイト社員の場合、正社員に比べて容易と考えられることから5万円程度に設定されていることが多いです。

弁護士以外による退職代行サービスの中には、一律2万円など、とても安い料金に設定されているサービスもありますが、その費用の範囲内でどこまでのサービスを受けることができるのか、事前の確認が必要となります。

その他にかかる費用として、内容証明郵便の送付にかかる郵便代や、私物返還を代行して行ってもらう際にかかる配送料などの実費があります。

退職代行は弁護士法違反?「非弁行為」とは?

ブラック

退職代行は、サービスの内容によっては、労働者自身に代わって、会社と交渉する必要があります。

本人に代わって交渉し、その効果を本人に帰属させることを、法律の専門用語で「代理」といいます。そのため、弁護士が運営するサービスの中には「退職代行」ではなく「退職代理」と呼称するサービスもあります。

そして、弁護士法72条は、弁護士でない者が、報酬を得る目的で、業として、法律事件・法律事務を行うことを禁止しています。つまり、法的なトラブル、争いに発展する場合には、その交渉を本人に代わって担当できるのは、弁護士の資格を有する人だけだということです。

弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

弁護士法(e-Gov法令検索)

弁護士でない無資格者が、法律事件・法律事務について報酬を得る目的で代理行為をすることを「非弁行為」といい、違法とされます。弁護士や司法書士など専門家の「監修」を受けていたり、「顧問弁護士」がついていたりしても、違法行為であることに変わりありません。

つまり、弁護士以外に退職代行を依頼することが、サービスの範囲によっては弁護士法違反の違法行為となる可能性があるということです。「退職代行業」にグレーなイメージがあるのは、一部の詐欺的な業者が理由であって、きちんと運営する分には、まったく合法です。

退職代行を依頼するおすすめの弁護士の選び方

弁護士浅野英之
弁護士浅野英之

退職代行サービスの範囲が広いと、弁護士以外の運営元が行う退職代行サービスは「非弁行為」として違法となる可能性が高いことから、退職代行は弁護士に依頼するのがおすすめです。

しかし、最近では、退職代行を専門に取り扱う弁護士も増加しています。「どの弁護士に退職代行を依頼すればよいのだろうか」とお迷いの方に向けて、退職代行を依頼する弁護士の選び方について、ご紹介します。

口コミ・体験談・評判で退職代行の弁護士を選ぶ

身の回りで、退職代行を利用した経験者がいれば、実際どのように退職代行をしてもらったのか、率直な感想を聞くのがよいでしょう。実際に利用した方の退職談を聞けば、良いサービスを提供してくれる弁護士かどうか、判断できます。

友人や知人であれば、派手な宣伝や広告にだまされることなく、退職代行の実態や率直な本音を聞くことができます。

実体験ではない、インターネット上の口コミ、体験談、評判は、あくまでも一般論であり、実際に依頼した場合にそのように進むとばかりは限りません。特に、弁護士には守秘義務があり、担当した事件の詳細について、インターネット上に具体的に紹介することはありません。

専門性で退職代行の弁護士を選ぶ

「退職代行 弁護士 東京」といったキーワードでGoogle検索をしていただくと、「退職代行」という専門性を持った、お近くの弁護士を探すことができます。

退職代行サービスは、最近登場した新しいサービスであり、「退職代行専門の弁護士」という事務所は存在しません。

現在、退職代行サービスと呼称されているサービスと同様のことは、労働問題を多く取り扱ってきた弁護士であれば、過去に経験した実績があることが多いのではないでしょうか。そのため、専門性で退職代行を任せる弁護士を選ぶのであれば、「労働問題に強い弁護士」、「労働問題を専門分野・得意分野とする弁護士」が適任です。

価格の安さで退職代行の弁護士を選ぶ

退職代行サービスを提供する法律事務所や企業の中には、1万円台の報酬体系を提供するものがあります。一方で、5万円~8万円程度のサービスも多く見受けられます。

交渉する内容がほとんどなく、単に「退職の意思表示を代わりに行ってほしい」というだけであれば、格安のサービスがお勧めです。しかし、退職にあたって交渉する事項が多くあったり、未払残業代の回収など請求すべき金銭があったりと、業務量の多くなりがちなケースでは、格安のサービスの範囲内では、対応できないおそれもあります。

したがって、単に価格の安さだけで退職代行の依頼先を選定するのではなく、そのサービス内容の範囲が、自分のケースに即して十分な内容であるかどうかの確認が必要です。

対応地域で退職代行の弁護士を選ぶ

退職代行の依頼先を、インターネットで検索するとき、「退職代行 弁護士 東京」のように、地域名を入れて検索し、近所の弁護士に依頼することがあります。

特に、対面で相談することで、「誰にお任せしているか」「誰が責任者か」を明らかにして、不安を払拭できる点で、会いに行くことのできる地域の弁護士に、退職代行を依頼することはお勧めです。

しかし、近くの弁護士が、退職代行サービスに対応していない場合、必ずしも会いに行ける法律事務所に依頼しなければならないわけではありません。全国対応の弁護士に退職代行を依頼することで解決できる問題も多いため、対応地域を確認しましょう。

退職代行Q&A

相談

ここまで、退職代行を利用する人の疑問、不安を解決するため、基礎知識を解決してきました。

「終身雇用」が崩壊し、1つの会社に一生勤務する人が減っているとはいえ、退職代行サービスを何度も頻繁に利用する、という人は少ないことでしょう。人生の中で、とても重要なタイミングとなる退職時に、適切なサービスを利用するため、十分な知識を身に着けていただけたら幸いです。

最後に、退職代行の利用を検討している方から、よく寄せられる質問について、Q&A形式で、弁護士が回答していきます。

退職代行中に副業したり、起業したりできる?

退職後にもらえる雇用保険から失業手当は、退職後、再就職までの生活資金などに充当するためのお金です。

しかし、退職代行サービスを利用する労働者のなかには、退職代行中から副業をしたり、退職後に起業したいと考えていたりする方もいます。

退職代行中でも、退職について合意するまでは、たとえ出社をしていなくても社員でありつづけることになります。そのため、就業規則など会社の規程で「副業禁止(兼業禁止)」となっていれば、厳密には、退職代行中の副業、兼業、起業は、就業規則違反です。

ただ、弁護士に交渉を任せ、退職代行を遂行中の労働者に対して、就業規則違反を理由に懲戒解雇とすることは多くはありません。副業、起業を退職代行中に行ってしまった場合のリスクについては、実際のケースに応じて弁護士にご相談ください。

退職代行を利用したことが実家や親に知られる?

退職代行サービスを利用して退職することは、全く恥ずかしいことではありません。むしろ、退職することは労働者の権利であり、退職代行を弁護士に依頼しなければその権利が正当に行使できない状態こそ、救うべき状態です。

しかし、退職代行を利用したことを、実家や両親に知られたくない、という労働者は、多くいます。退職代行を利用したことや、会社を退職したことが、実家や両親に伝わる可能性は、決して高くありません。仕事とプライベートは別であって、会社が、仕事上のことについて労働者のプライベートに干渉することは、違法となるからです。

ただし、身元保証人として親などを指定していた場合に、会社から連絡がいく場合があります。とはいえ、その場合でも、会社から労働者やその身元保証人に対する損害賠償請求が奏功する可能性は限りなく低いです。

退職代行でも有給休暇をとれる?

退職代行サービスを利用した場合でも、未消化の有給休暇が残存している場合には、有給休暇を利用できます。

具体的には、最終出社日が経過した後、未消化分の有給休暇を消化した後の日で退職日を決めることとなります。

これに対して、有給休暇を利用することを会社に伝えたにもかかわらず、有給休暇分の給料の振込がない場合には、退職代行サービスの一環として、弁護士から未払賃金の請求をすることができます。

退職代行の成功率は?退職できない場合がある?

「退職代行の成功率100%」と唄う、退職代行サービスの広告を目にすることがあります。この場合、「成功」とは、どのような場合を指して言うのでしょうか。

「成功=退職」であれば、永遠に勤務し続けるということはなく、いずれは退職することとなりますから、成功率は100%以外にあり得ません。円満かつ迅速に退職できるかどうか、という問題になってくると、悪質なブラック企業の場合一定の手間と労力がかかるため、すぐに終了することを確約することはできません。

しかし、現在のところ、退職代行を行って、訴訟をされたり懲戒解雇をされたりといった失敗に終わったり、退職できずに会社に勤務し続けたりといった依頼者の方は存在しません。

親になりすまして連絡してもらう方法は有効?

退職代行サービスの中には、親に成りすまして連絡をすることで退職を実現する、という方法をとる会社もあります。もともと電話代行を業としていた会社や、探偵業の会社などに多い傾向です。

しかし、弁護士が対応する場合には、「弁護士である」ことを名乗って代理できますので、弁護士ではない無資格者が交渉をするための方便に過ぎません。

また、実効性の面でも、親に成りすまして連絡してもらう方法は、いい方向に働く場合もありますが、悪い方向に働く場合には揉め事が大きくなる場合もあり、ハイリスクな方法と言わざるを得ません。

退職代行は転職・再就職に影響する?

退職をした後の転職活動、再就職はとても重要ですが、退職代行を利用することによって、これらに悪い影響を与えるのではないか、という点も、よく質問を受けることがあります。

結論から申しますと、退職代行を利用するかどうかは、転職、再就職には影響しません。

むしろ、離職票、源泉徴収票などの必要書類の取得をすべて、弁護士に任せることによって、退職手続をスムーズに進めることができ、労働者の方は、これらの雑務から解放され、転職活動に集中することができます。

まとめ

今回は、退職代行サービスについて、弁護士に依頼すべき理由とともに、ご利用していただきやすいよう、退職代行に関わる基礎知識についてまとめて解説しました。

会社を退職することは、労働者の自由であり、権利です。しかし、相対的に弱い立場にある労働者は、なかなか退職を言い出せなかったり、退職にともなう正当な権利を行使できなかったりする場合があります。

嫌な気分にならず、双方円満に、かつ、スムーズに、退職を進める手助けをするのが、弁護士による退職代行サービスの重要な目的です。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所では、労働問題に精通しており、退職代行のサポートについても、豊富な経験と実績があります。

お悩みの方は、ぜひ一度、労働問題に強い弁護士に、退職代行についての法律相談をしてくださいませ。

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