労働問題

歩合給制でも、できる限り高額の残業代を請求する方法

2020年9月15日

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歩合給制高額残業代請求

歩合給は、営業職やタクシードライバーなど、稼働した時間よりも、売上や利益に比例して評価を行うことに適した職種においてよく導入される給与体系です。

歩合給の場合には、稼働した時間よりも、売上や利益に比例して給与評価をされることから、長い時間頑張って働いたことは、それほど良い評価の対象とはならないかもしれません。しかし、個人事業主(フリーランス)として業務委託されているわけではなく、あくまでも雇用された労働者である以上、「1日8時間、1週40時間」という法定労働時間を超えて働いた場合には、残業代(割増賃金)が発生します。

また、残業代(割増賃金)を発生させることによって労働者の健康を害するほどの長時間労働を抑制しなければならないという目的は、歩合給の労働者であっても変わりはありません。

そこで今回は、歩合給の労働者であっても、できる限り高額の残業代を請求する方法について、弁護士が解説します。

浅野総合法律事務所のアドバイス

残業代請求は、労使双方にとって非常に重要な労働問題の1つです。労働審判や訴訟など、労働紛争の中でも、残業代請求がよく問題になります。

労働者側にとって、労働をした時間に対する対価である残業代(割増賃金)を請求することは、正当な権利であり、正確な計算により確実に請求しておくべきです。使用者側にとっても、平常時から残業代に関する基本的な知識を理解し、未払とならないよう労務管理を徹底しておかなければ、常に大きな紛争リスクを抱えることとなります。

「残業代請求」弁護士解説まとめ

歩合給とは

歩合給制高額残業代請求

歩合給とは、売上高や利益など、労働の成果として生じた金銭に対して、定められた一定の割合を乗じた金額を給与として支払うという給与体系のことです。

労働基準法上は、歩合給は、いわゆる「出来高払制」(労働基準法27条)の一種です。労働基準法では、出来高払制について次のように定められています。

労働基準法27条(出来高払制の保障給)

出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。

歩合給は、労働時間よりも労働の成果で労働者の価値評価を行うべきであると考える「成果主義」の考え方と親和的です。そのため、さまざまな業種、職種の中でも、営業マンやタクシードライバーのように、売上や利益に直結する仕事をしている従業員によく導入されます。

歩合給の制度は、労働基準法27条の「出来高払制の保障給」による制限を受けることから、すべての給与を売上や利益に連動させ、売上や利益がない場合には給与を支払わない、いわゆる「完全歩合」の制度は違法です。そのため、業績手当、精励手当といった名称で、給与の一部を歩合給としている例がよく見られます。

そして、今回の解説のとおり、歩合給を採用する場合であっても、使用者側(企業側)には残業代(割増賃金)の支払義務があります。

「歩合」というと、労働時間ではなく成果による評価で、長い時間働いた人より成果を出した人のほうが評価されるわけです。このことから「長時間労働しても残業代を請求することはできない」という勘違いが生じやすいですが、注意が必要です。

「売上×給与比率」「利益×給与比率」というのが、歩合給制の最もわかりやすい給与体系ですが、これ以外であっても、ある手当や賃金が歩合給に該当するのではないかが争点となることがあります。

例えば、タクシードライバーが、走行距離をもとに計算した金額から一定の経費を控除した賃金を支払われる場合、走行距離が長ければ長いほどタクシー料金が高額になるわけですから、結局売上や利益などの成果に比例した歩合給とみることができる場合があります。

同様に、運送会社のドライバーが、積み荷の数や走行距離に応じた賃金の支払を受ける給与体系についても、歩合給制であると評価できるケースがあります。

歩合給の残業代の計算方法

歩合給制高額残業代請求

歩合給であっても、残業代請求をすることができます。ただし、歩合給制の場合には、残業代を計算する際に、毎月一定額の固定給がもらえる月給制とは異なった注意が必要となります。

そこで次に、歩合給の残業代の計算方法について弁護士が順を追って解説します。

なお、基本的な部分は月給制における残業代の計算方法と共通する部分が多いです。すなわち、労働基準法37条に定められた、残業代請求の計算式(残業代=基礎単価×割増率×残業時間)は変わりありません。

残業代 = 基礎単価 × 割増率 × 残業時間

そのため、残業代の基本的な計算方法については、下記の解説もあわせて参考にしてください。

参 考
残業代(割増賃金)の正しい計算方法について、弁護士が解説!

残業代請求をするとき、残業代を正しい計算方法に基づいて正確に算出しなければ、本来支払ってもらうべき残業代を取り逃がしてしまうおそれがあります。残業代は、専門用語で「割増賃金」ともいいます。 そのため、 ...

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基礎賃金を総労働時間数で割る

残業代の計算方法は、時給に相当する「基礎単価」を算出し、これに割増率をかけ、残業時間数をかけることによって計算します。

そして、月給制の残業代の基礎単価は、基礎賃金(月額で支払われる賃金から、所定の除外賃金を除いたもの)を、月平均の所定労働時間数で割って計算をします。

これに対して、歩合給制の残業代の基礎単価は、歩合給制によって計算された賃金総額を、当該賃金算定期間における総労働時間数で割って算出する点が異なります。

この違いは、月給制の場合には、1か月の所定労働時間数に対して月給が支払われているのに対して、歩合給の場合には、労働者がその算定期間中に労働したすべての時間に対して歩合給が支払われていると考えることが理由です。

割増率(0.25)をかける

歩合給の場合には、先ほど解説したとおり、歩合給は、労働者が実際に労働した全ての時間に対する対価として支払われています。

そのため、月給制の場合には、残業をした時間に対して「1.25」倍をした金額を支払う必要がありますが、歩合給の場合には、「1」の部分はすでに歩合給として支払済みであると考えられるため、「0.25」倍した金額を支払うことで足りるものとされています。つまり、割増率が異なるということです。

このことは、裁判例(名鉄運輸事件判決:名古屋地裁平成3年9月6日判決」でも、次のとおり判示されています。

名鉄運輸事件判決(名古屋地裁平成3年9月6日判決)

日給制や月給制によって賃金が定められている場合には、通常の労働時間の賃金にかけるべき割増率は1.25であるのに対し、出来高払制その他の請負給制によって賃金が定められている場合には、時間外における労働に対しても通常の労働時間の賃金(右割増率の1に相当する部分)はすでに支払われているのであるから、割増部分に当たる金額、すなわち、時間当たりの賃金の2割5分以上を支給すれば足りる

完全歩合給制の残業代の計算方法

「1か月間の個人営業成績を合計して、その10%を給与とする」という完全歩合給制の労働者の例で、実際に残業代の計算について解説します。

この場合、その月の個人営業成績が800万円であったとすると、月額給与は80万円となります。そして、この月の総労働時間が220時間であったとすると、この80万円は、所定労働時間に対する対価ではなく総労働時間(220時間)の労働に対する対価として支払われたこととなります。

しかし「1日8時間、1週40時間」という法定労働時間の枠を超過して労働した時間が45時間存在する場合には、その45時間の残業時間に対して、割増率分(0.25)の残業代を請求することができます。したがって、請求すべき残業代は、「80万円÷220時間×割増率(0.25)×45時間」という計算式で算出し、4万0909円となります。

  1. 完全歩合給制の基礎単価
    80万円÷220時間×0.25=909円
  2. 残業代の算出
    909円×45時間=4万0909円

同様に、法定休日に労働をしていた場合には、割増率分(0.35)の残業代を請求することができます。

一部歩合給制の残業代の計算方法

一部歩合給制の場合、すなわち、月額給与のうち一部が歩合給であり、一部が固定給の場合には、歩合給部分と固定給部分とを区分けして、残業代を計算する必要があります。

具体的には、固定給部分について1時間あたりの基礎単価を算出して割増率(1.25)を乗じ、歩合給部分について1時間あたりの基礎単価を算出して割増率(0.25)を乗じ、それぞれを足し合わせた金額に、残業時間をかけることによって算出します。

例えば「1か月間の個人営業成績の5%を歩合給とし、固定給を30万円とする」という一部歩合給制の労働者の例で考えてみます。上記の例と同様、月の個人営業成績が800万円、月の所定労働時間が170時間、月の総労働時間が220時間、法定労働時間を超過する残業時間が45時間であった場合、残業代の計算は次のようになります。

  1. 固定給部分の基礎単価
    30万円÷170時間×1.25=2206円
  2. 歩合給部分の基礎単価
    (800万円×5%)÷220時間×0.25=455円
  3. 残業代の算出
    (2206円+455円)×45時間=11万9745円

固定残業代制のときの、歩合給の残業代請求について

歩合給制高額残業代請求

完全歩合給制、一部歩合給制のいずれであっても、残業代を抑制するために、「歩合給(の全部または一部)が残業代に充当される」と定め、固定残業代制を併用する会社があります。特に、運送会社、タクシー会社などに多く見られる規定です。

このとき、歩合給の支払によって、事前に固定残業代制として支払い済であると判断することができるかどうかは、裁判例でも度々争点となっています。

しかし、歩合給制は売上や利益などの成果に連動して決定される一方で、固定残業代制であるとすれば時間外労働時間数に連動して決定されなければなりません。そのため、支給される歩合給のうちのいくらが、何時間分の残業代に充当されるものとして支給されているのかが明らかにされていない限り、歩合給を固定残業代とする制度は無効と判断されることとなるでしょう。

つまり、固定残業代制の有効要件と同様に、通常の労働時間に対する賃金と残業代とが明確に区分され、かつ、実際にそれ以上の残業代が生じた場合には差額を支払う合意がなされていなければ、固定残業代としての効果を認められない可能性が高いです。

そうでなければ、結局、歩合給が固定残業代として支払われているにもかかわらず、売上や利益などの成果が同じであれば、残業時間の長短にかかわらず給与が同額となってしまうことを意味しており、不公平な制度となるおそれがあるからです。

「労働問題」は浅野総合法律事務所にお任せください!

歩合給制高額残業代請求

今回は、歩合給制の労働者の残業代請求について、弁護士が解説しました。「働き方改革」が進められ、年功序列型賃金から成果主義型賃金への移行が図られるにともない、歩合給制を導入する企業は増加しています。

そして、歩合給制では、売上や利益などの成果にどれだけ貢献したかによって賃金が決められることから、長時間労働をしたとしても成果があがらない労働者の努力は、ないがしろにされがちです。

しかし、残業代請求には、「努力に対する評価」という側面はもちろんのこと、長時間労働の抑止、安全配慮義務の遵守といった側面もあります。完全に成果のみで評価をすることは、業務委託の個人事業主であればともかく、雇用する労働者に対しては許されていません。

歩合給制の労働者が、できる限り高額の残業代を請求するためにも、歩合給制のもとでの正しい残業代の算出方法を理解する必要があります。残業代請求をお考えの方は、ぜひ一度当事務所へ法律相談をご依頼ください。

「残業代請求」弁護士解説まとめ

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