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セクハラの被害者が慰謝料請求する方法と、慰謝料の相場

セクハラ被害者慰謝料請求相場

セクハラの被害を受けてしまい、苦しい思いをしたときには、慰謝料請求することができます。

セクハラはセンシティブな問題であり、打ち明けづらいものです。「会社に居づらくなってしまうのではないか」、「我慢しておけば収まるのではないか」と一人で抱え込んでしまう方も多いことでしょう。しかし、意に反する性的行為の強要、性的言動は違法であり、泣き寝入りする必要はありません。

セクハラの慰謝料を請求することで、被害回復を図るとともに、これ以上のセクハラをストップさせることができます。このような慰謝料請求による責任追及は、セクハラの加害者にはもちろん、職場環境の配慮を怠った会社に対しても請求することができます。

今回の解説では、

  • セクハラの慰謝料の相場
  • セクハラの慰謝料を増額する事情
  • セクハラの慰謝料を請求する方法と流れ

といったセクハラの慰謝料請求に関する法律知識について、弁護士が解説します。

目次(クリックで移動)

解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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セクハラの慰謝料請求とは

セクハラとは

セクハラとは、セクシュアルハラスメントの略であり「性的嫌がらせ」と約されます。

男女雇用機会均等法11条1項では、セクハラは「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、または当該性的言動により当該労働者の就業環境が害されること」と定義されますが、この前段を「対価型セクハラ」、後段を「環境型セクハラ」と呼びます。

  • 対価型セクハラ
    職場での優位な立場を利用して、労働条件に関する利益・不利益と引換えに性的行為を要求すること

    (例)
    ・肉体関係を強要し、拒否した女性社員に対する解雇
    ・出張中の車内で隣席に座って身体を触り、嫌がる女性を配置転換をする行為
    ・飲み会中に下ネタをいい、抗議した女性社員を降格する行為

  • 環境型セクハラ
    性的言動を繰り返し行うことで職場環境を悪化させ、女性社員の就労をしづらくすること

    (例)
    ・オフィス内で女性社員の後ろを通るたび下半身を押し付ける行為
    ・取引先に対して女性社員の性生活について虚偽の情報を流布する行為
    ・卑わいな写真をデスクトップに設定し、抗議があっても止めない行為

なお、近年では、「男性上司の、女性部下に対するセクハラ」という典型的ケースに限らず、同僚間でのセクハラ、女性から男性へのセクハラや、LGBTに対する同性間のセクハラといった特殊な被害ケースも増加しています。

セクハラ加害者の不法行為責任

セクハラの被害にあったとき、民法の不法行為(民法709条)にあたるときには、これによって被った精神的苦痛について慰謝料請求することができます(民法710条)。

民法709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者」は損害賠償責任を負うことを定めているところ、セクハラ行為が、故意に被害者の性的自由を奪うという違法な行為であることが明らかです。

なお、セクハラ加害者は、会社内において解雇や懲戒処分、人事異動などの責任追及を受けることはもちろん、より違法性の強いセクハラ行為に対しては、強制性交等罪(旧強姦罪、刑法177条)、強制わいせつ罪(刑法176条)などの刑事責任も負うことがあります。

セクハラに関する会社の責任(使用者責任・安全配慮義務違反)

セクハラの責任追及というと、直接の加害者への恨みが強いでしょうが、慰謝料の回収可能性をあげたり、セクハラを効果的に予防したりといった観点からすれば、会社にも軽視できない責任があります。

業務中のセクハラについては、使用者責任について「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」(民法715条)と定められていることから、会社に慰謝料請求することができます。

また、会社は、労働者の生命、健康を害しないよう職場環境に配慮すべき注意義務(安全配慮義務ないし職場環境配慮義務)を負っており、この義務からして、職場内でセクハラが発生しないよう予防したり、いざセクハラが発生したときには是正したりする義務があります。そのため、これらの義務に違反したためにセクハラが起こってしまったときは、会社に安全配慮義務違反を理由として慰謝料請求することができます。

なお、男女雇用機会均等法には、会社には、セクハラに関する方針を社員に周知し、適切な体制を整備するなどのセクハラ防止措置を講じる義務があることが定められています。

セクハラの慰謝料の相場

セクハラ被害者慰謝料請求相場

セクハラの被害にあってしまったとき請求できる慰謝料の相場は、100万円〜300万円程度が目安となります。

ただし、セクハラの違法性が強度であると考えられるようなケースでは、個別の事情を考慮の上、慰謝料を増額できることがあります。また、男女平等や女性の社会進出に注目が集まる中、セクハラ訴訟で認められる慰謝料の金額は高額化する傾向にあります。

【慰謝料50万円】不法行為となるセクハラのケース

東京地裁平成8年4月15日判決は、不法行為にあたる程度のセクハラ行為について、50万円の慰謝料を認めた裁判例です。

本事案は、懇親会の帰り道に、校長が女性教師に対して、無理やり性器をこすりつけるなどのわいせつ行為をしたという事例です。なお、その他にも、肩をもみ、首筋に息を吹きかけたり、拒絶する態度をとったことを理由に人事上の不利益を課したりしたといった主張がされましたが、証拠不十分により、これらの主張は認められませんでした。

【慰謝料120万円】長期間・多数回のセクハラのケース

東京地裁平成30年1月16日判決は、転職コンサルタント会社に勤務する女性が、同社の男性社員から、長期間、多数回のわいせつ行為を受けたという事案で、120万円の慰謝料を認めた裁判例です。

本事案では、加害者は、強く拒絶する女性に対して6年以上の長期間、執拗に話しかけ、卑わいな発言を繰り返し、脇や臀部を指で突っつくといったセクハラ行為を常習的に行っていたことが認定されています。これら1つ1つのセクハラ行為を個別にみるではなく、まとめて判断すれば悪質性が高いと判断し、120万円の慰謝料を認めるに至りました。

【慰謝料330万円】刑事事件にあたるセクハラのケース

千葉地裁平成10年3月26日判決は、被害者女性が、勤務する会社の代表取締役から、勤務終了後の食事の後、車でモーテルに無理やり連れ込まれて性交渉を強要されたという事案について、330万円の慰謝料を認めました。

本事案では、社長と社員という関係性からして、セクハラを拒否するのが難しかったこと、勤務から連続した環境下で行われたこと、セクハラ行為の態様が強度であることといった点が考慮されて、330万円という高額の慰謝料が認められました。

【慰謝料1100万円】刑事事件で、かつ、事後対応が不誠実なケース

大阪地裁平成11年12月13日判決は、選挙運動員として参加していた大学生に対して、元大阪府知事が、選挙運動のために走行中の選挙用ワゴン車の中で、性交渉を求めたり、性器を指でもてあそんだりといった悪質かつ執拗なセクハラ行為があった事案で、1100万円の慰謝料を認めました。

本事案は、セクハラの行為の悪質さに加えて、被害者女性の告訴に対して、加害者が虚偽告訴を主張して反論したり、被害者女性に対して名誉毀損行為をしたりといった事後の不誠実な対応もあいまって、高額な慰謝料請求が認められることとなりました。

セクハラ慰謝料を増額する事情

セクハラ被害者慰謝料請求相場

セクハラの慰謝料は、上記で説明した100万円〜300万円程度を一定の目安としながら、様々な個別事情に応じて増減額されます。

厚生労働省の告示(平成18年厚生労働省告示615号)では「労働者の主観を重視しつつも、一定の客観性が必要とされるため、被害を受けた労働者が女性である場合には『平均的な女性労働者の感じ方』を基準とし、被害を受けた労働者が男性である場合には『平均的な男性労働者の感じ方』を基準とすることが適当」とされています。

セクハラ慰謝料額を増減する考慮要素には、次のものがあります。

セクハラの回数・頻度・期間

セクハラの回数が多いほど、また、頻度が頻繁であり、長期間にわたって執拗に繰り返されるほど、慰謝料は増額される傾向にあります。

また、この際に、被害者がセクハラ言動を拒絶する意思を明確にしていたり、回避しようとしていたりするにもかかわらず、これを突破して何度もセクハラを行うほど、その悪質さは大きいものと判断されます。

セクハラの態様・程度

セクハラとされる行為の中には、性差別的な発言をしたといったある程度軽度なものから、性行為を強要したといった強度なものまで、様々な行為態様があります。

軽度なものは、会社内で注意指導して防止するか、もしくは、民法に基づいて不法行為の慰謝料請求をすべきものであるのに対し、重度なものは、強制性交罪(刑法177条)や強制わいせつ罪(刑法176条)として告訴し、刑事責任を追及すべきです。

そして、セクハラ行為の程度によっても慰謝料額は増減額され、刑事事件化するようなセクハラのケースでは、高額な慰謝料が認められる傾向にあります。

セクハラ加害者の職務上の地位、被害者との関係性

クハラ加害者の職務上の地位が高いほど、セクハラはその地位を悪用して行われるため、悪質性が高いといえます。特に、社長によるセクハラは、社員が逆らうことは困難であり、高額な慰謝料が認められやすい傾向にあります。

同様に、加害者と被害者が、直接の上司・部下の関係にあるなど、指揮系統にあるほど拒否しづらく、セクハラの違法性が高いと評価されます。

なお、セクハラ加害者が既婚者のとき、妻から慰謝料請求されるおそれがあるなど、企業秩序を乱す程度が大きいため、より悪質なセクハラだと認められやすくなります。

退職を余儀なくされたかどうか

セクハラ被害者の被害が大きければ大きいほど、慰謝料が増額される傾向にあります。この点で、セクハラによって受けた精神的苦痛により、これ以上働くことが難しく、退職を余儀なくされたといった事情があるとき、高額な慰謝料を認めてもらうことができます。

特に、前章で解説したように社長によるセクハラがあると、その会社で働き続けることは事実上困難であり、将来の収入を失ってしまうことから、慰謝料を増額する事情となります。

精神疾患にかかったかどうか

セクハラによって負った精神的苦痛がとても大きく、うつ病や適応障害など精神疾患にかかってしまったことは、セクハラ被害者の損害が大きいことを意味し、慰謝料を増額する事情となります。

このような被害状況を主張立証するためには、セクハラ被害者側で、医師の診断書などの証拠で立証する準備をしておいてください。

セクハラが業務に関連して行われたかどうか

セクハラが業務に関連して行われるほど、職場の人間関係がこじれてしまわないかといった配慮をしてしまうことで拒絶するのが難しくなり、慰謝料が高額化する傾向にあります。また、業務との関連性が高いほど、会社に対する慰謝料請求が認められやすくなります。

このことに関連して、セクハラ行為の行われた場所も、慰謝料の額に影響することがあります。オフィス内で行われたセクハラが、業務に関連するものであることは当然ですが、業務後の飲み会の席上や、休日でも上司から呼び出されたなど、必ずしもオフィス内でセクハラが行われていなくても、業務上の関係性を利用して行われたセクハラであれば、業務に関連するとして重く評価される可能性があります。

会社のハラスメント窓口に相談するなど、会社がセクハラの存在を認識していたのに対応を怠ったとき、会社の責任はさらに大きくなります。

セクハラ加害者の謝罪・反省などの事後対応

セクハラ加害者の事後対応に誠意がないほど、慰謝料は高額化します。

セクハラが事実なのであれば、謝罪し、反省し、今後二度と同じことをしないよう誓うといった対応が適切です。また、会社側も、安全配慮義務を果たすため、セクハラ加害者に懲戒処分を下したり、異動させて接触を防いだりといった再発防止措置を講じることが必要であり、これらの必要な措置をしないときは、慰謝料が増額される傾向にあります。

セクハラの慰謝料を請求する方法と流れ

最後に、セクハラの慰謝料を請求する方法と、その際の具体的な流れについて解説します。

セクハラの被害にあってしまい、精神的苦痛やストレスが大きく自分で加害者に請求するのが難しいときや、会社が責任を否定していてあなた一人で立ち向かうのが苦しいときには、弁護士のサポートを受けることがおすすめです。

セクハラの慰謝料請求は、次の順序で進めてください。

セクハラを止めるよう要求する

まず、セクハラを止めるよう、拒絶の意思を明確に示すことが重要です。セクハラ加害者の中には、自分がセクハラをしているという認識なく、「嫌がっていない」、「むしろ喜んでいる」といった勘違いでセクハラを繰り返している人もいます。

セクハラを止めるよう要求することは、「拒絶してもなお続く悪質なセクハラだ」と主張するためだけでなく、セクハラによるストレスからあなたを守るためにも重要です。

直接言いづらいときや、報復として更にひどいセクハラを受けてしまいそうなときは、上司やハラスメント相談窓口に相談し、周囲から予防措置をとってもらう方法もあります。また、この時点から弁護士に法律相談しておくことがおすすめです。

証拠を収集する

セクハラで慰謝料を請求するためには、証拠が重要となります。加害者側がセクハラの事実を認めてくれないとき、労働審判や訴訟など法的手続きの審理では証拠が重要視されるからです。

セクハラ行為は通常、隠れてこっそり行われることが多く、証拠収集のためには、セクハラ被害者側が、被害を受けているときから準備を進めなければなりません。

セクハラの慰謝料請求で重要な証拠には、次のものがあります。

  • セクハラ発言の録音・録画データ
  • セクハラにあたるメールやチャット、LINEのやりとり
  • セクハラ行為を受けた当時につけていた日記やメモ
  • セクハラを目撃した社員の証言

セクハラを記録化するため、セクハラ行為を執拗に受け続けているときは、いつでも録音できるようボイスレコーダーやスマホでの録音の準備をしておきましょう。また、過去のセクハラについても、日記をつけたり、同僚の協力を得たりといった方法で証拠化できます。

現在手元に十分な証拠がないとしても、慰謝料請求をあきらめてはなりません。あなたの検討していなかった資料が証拠となる場合もありますから、まずは弁護士のアドバイスをお聞きいただくのが有益です。

内容証明で慰謝料請求する

セクハラの慰謝料を請求するとき、まずは内容証明で通知書、請求書を送付し、セクハラの違法性を説得的に説明して、慰謝料の支払いを求めます。

配達証明付き内容証明郵便の方法を使うことで、通知書を送付した日時とその内容を証拠化することができます。通知書、請求書を弁護士名義で出すことにより、強いプレッシャーをかけ慰謝料支払いを促進することができます。

労働審判で慰謝料請求する

労働審判は、労使間の紛争について、通常訴訟よりも簡易かつ迅速に解決するための裁判手続きです。3回以内の期日で、話し合いを中心とした柔軟な解決を目指すことができる、労働者にとってメリットの大きい制度です。

セクハラの責任を、会社に対して請求するとき、労働審判を利用することができます。なお、労働審判は労使の争いにしか使えないため、加害者に対して慰謝料請求するときに利用することはできず、加害者への請求は次に説明する訴訟で行うようにします。

訴訟で慰謝料請求する

セクハラの加害者に対して慰謝料請求するとき、内容証明を送っても慰謝料を任意に支払ってもらえないときは、訴訟を提起して争う方法を検討してください。

訴訟において、証拠や証言によってセクハラ行為を証明することができれば、判決によって慰謝料を強制的に支払ってもらうことができます。

労働問題は浅野総合法律事務所にお任せください!

セクハラ被害者慰謝料請求相場

今回は、職場でセクハラの被害にあってしまった方に向けて、セクハラの慰謝料の相場、慰謝料を増額する方法と、慰謝料請求の流れなどについて解説しました。

セクハラの慰謝料請求は、少しでも被害を回復することはもちろんですが、度重なるセクハラを止めるという意味でも効果的です。性行為の強要など強度なセクハラだけでなく、お酌やデュエットの強要、胸や尻をさわる、プライベートな恋愛や性生活について質問するといった言動もセクハラにあたります。

性的に不快な思いをしたときは、セクハラ加害者はもちろん、これを防止する義務を怠った会社に対する慰謝料請求もあわせて検討してください。

セクハラ被害をはじめ、労働問題にお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所へご相談ください。

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