労働問題

パワハラで精神疾患を発症した被害者が、会社に慰謝料請求する方法

2020年7月17日

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パワハラ慰謝料請求

上司の部下に対するパワハラなど、業務上の行為によって被害者がうつ病、適応障害などの精神疾患(メンタルヘルス)にかかってしまったとき、業務起因性が認められる場合には会社への責任追及をすることとなります。

精神疾患にかかると、正確な事実認識や判断ができなくなり、ストレスが強い最悪のケースでは、自殺に至ってしまう危険もあります。パワハラの相談件数は右肩上がりで増えて社会問題化しており、他人事ではありません。

民事上の個別労働紛争|主な相談内容別の件数推移(厚生労働省「令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況」)

精神疾患を原因とする自殺は、自ら命を絶つ行為であるものの、その原因がパワハラ・長時間労働など業務上の強いストレスにある場合には、業務起因性が認められ、会社に慰謝料請求、損害賠償請求をはじめとする責任追及ができます。

今回は、パワハラ被害にお悩みの方に向けて、パワハラで精神疾患にり患した被害者が会社に慰謝料請求する方法を弁護士が解説します。

「労働問題」弁護士解説まとめ

パワハラとは

パワハラ慰謝料請求

パワハラとは「パワー・ハラスメント」の略であり、職場内における優越的な関係を利用した嫌がらせのことをいいます。職場いじめ、嫌がらせともいわれます。程度のひどいパワハラを受けると、過剰なストレスを受け、精神疾患(メンタルヘルス)にり患してしまったり、過労死、過労自殺の原因になってしまうおそれがあります。

パワハラの種類には、次のようなものがあります。

  • 身体的な攻撃
    :叩く、殴る、蹴るなどの暴行、物を投げつける、物でたたく
  • 精神的な攻撃
    :人格否定の言葉をかける、社員の前で叱責、馬鹿にする、誹謗中傷のメールを送る、長時間にわたり執拗に叱る
  • 人間関係からの切り離し
    :一人だけ別室で作業をさせる、会社に出社させない、重要な連絡網を回さない、部署行事に出席させない
  • 過大な要求
    :経験のない仕事で過剰なノルマを要求する、到底終わらない仕事量を指示する
  • 過小な要求
    :知識と経験に見合わない重要性の低い牛事を指示する、単純作業のみに従事させる
  • 個の侵害
    :プライベートについて執拗に質問する、家族の悪口をいう

パワハラが社会問題化していることから、2019年5月、企業、職場でのパワハラ防止を義務付ける「改正労働施策総合推進法」(いわゆる「パワハラ防止法」)が成立し、2020年6月1日(中小企業では2022年4月1日)より施行され、対応が義務付けられます。

同法では、パワハラを次のように定義しています。

パワハラの3つのポイント

  • 優越的な関係を背景とした言動であって
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
  • 労働者の就業環境が害されるもの

優越的な関係を背景とした言動

パワハラは、その名のとおり、パワーを利用した嫌がらせ(ハラスメント)です。パワーとは、職場における優越的な地位、優位性のことをいいます。

上司から強い口調で注意されたり、嫌なことを強要されたり、殴られたりしても、「逆らうと、何をされるかわからない」「会社内で不利益な処分を受けてしまうかもしれない」と感じて我慢せざるを得なくなってしまうとき、これらの行為は、職場内の優越的な地位を利用して圧力をかけていると評価できます。

職務上の地位が上位の人が、会に人に対して行う典型的なパワハラだけでなく、同僚や部下であっても、業務上必要な知識、豊富な経験を持っていたり、集団でよってたかっていじめたりといった行為は、これによって職場で抵抗することの難しい状況を生み出します。

業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

職場内の優越的な関係を利用した言動であっても、業務上必要で、かつ、相当な範囲内のものであれば、それはパワハラではなく、正当な業務命令、注意指導です。指導は業務上当然に必要なものであり、誤った行動をする部下に対して厳しく指導するのは当然です。

業務上必要であるかどうかは、その言動の目的が業務を目的としたものであるかどうか、そして、その目的に対して手段が不適切ではないかどうかという順序で判断をします。

仕事とは全く関係ないところで罵詈雑言を浴びせたり、誹謗中傷をしたり、仕事と関係があるとしても不必要なほどに人間性や人格を否定したりする行為は、パワハラにあたります。

労働者の就業環境が害されるもの

人格や尊厳を傷つける発言や、さらには暴力などに至れば、労働者の就業環境が害されることは明らかです。労働環境が悪化すると、過剰なストレスを受け、能力を十分に発揮できず、生産性が低下します。

パワハラを受けたという自覚のないまま、パワハラを我慢して働き続けてしまうと、心身共に酷使し、健康を害してしまう結果となります。更には、過労死、過労自殺といった最悪の結果につながるおそれもあります。

そして、職場の環境は、パワハラの加害者だけでなく、会社が守るものでもあります。この点で、会社が十分なパワハラ対策をせず、パワハラ被害者の心身の健康を害することとなると、安全配慮義務に違反した責任は会社にもあります。

パワハラを受けたときの初動対応

パワハラ慰謝料請求

次に、パワハラを受けたときの、パワハラ被害者となった労働者側の初動対応について弁護士が解説します。

パワハラにも、強度なものから軽度なものまで、程度があります。強度なものは、暴行罪、傷害罪、強要罪といった犯罪行為となり、刑事罰に処されるという刑事責任が科される反面、軽度なものは、民事事件としての慰謝料請求や、会社内での解決(人事処分・懲戒処分)に留まることとなります。

いずれの程度のパワハラであっても、パワハラが突発的に起こるものであることから、証拠収集の準備が重要となります。

「自分が我慢すれば、円満に収まるのではないか」「人間関係が悪くなるのが心配だ」という理由で被害者側が我慢をしてしまうと、ますますパワハラ行為がエスカレートし、その結果、心身にダメージを蓄積することとなるため、お勧めできません。

客観的な証拠を収集する

パワハラは、突発的に起こるものであることから、完璧な証拠が残っているということは、むしろ例外的です。

しかし、悪質なモンスター社員の中には、パワハラのこのような性質から、実際にはパワハラを受けていないのに嘘の報告をする、偽パワハラ被害を申告することがあります。そして、会社もまた、このような社員がいることを考慮して、パワハラ被害の申告に対して「虚偽なのではないか」などという疑惑を抱かれるおそれがあります。

特に、「叩いたかどうか」「怒鳴ったかどうか」が問題となるのではなく、その程度、つまり「親しみをこめて肩を叩いた程度なのか、それとも強く殴ったのか」、「少し大きな声できつく注意をしたのか、それとも大声で怒鳴り散らしたのか」の証拠を収集し、適切に証明をすることは非常に困難です。

パワハラ行為の被害にあったとき、収集しておきたい証拠は、例えば次のようなものです。

  • パワハラ行為自体の録音、録画
  • パワハラ行為となるメール、チャットの履歴
  • パワハラ行為を目的した目撃者の証言
  • パワハラ行為を相談窓口、上司、同僚に相談した履歴
  • パワハラ行為によって負った心身のダメージを証明する診断書

無自覚パワハラへの対応

パワハラの中には、意図的に行うパワハラだけでなく、自分はパワハラをしているとは考えておらず、注意指導、正当な命令であると思って行ってしまっているパワハラ加害者もいます。慰謝料請求をされても、「自分は悪くない」「指導をしただけだ」と言い訳する人たちです。

このような無自覚パワハラに対応するためには、まずは、パワハラであると理解することから始めなければなりません。つまり、その行為が、職場における優越的な関係を前提とした言動であることを加害者に理解してもらうことがスタートとなります。

そして、無自覚パワハラについて、パワハラであると理解させるためには、パワハラ予防研修、管理職研修を行うなどの会社による予防措置が重要になります。

弁護士に相談する

実績が高く、経営陣に認められている社員が、ローパフォーマーとされる社員に嫌がらせをする場合など、会社内の優越的地位を利用すればするほど、会社はパワハラ被害者に対して、「我慢しておくほうが将来のためだ」「犠牲になってほしい」といった不適切な対応をすることがあります。

パワハラの相談を会社にすることが、二次被害につながることがあるわけです。

社内での話し合いだけで解決できるのが一番であり、加害者には懲戒処分、人事処分などの社内の責任をとってもらいたいのは当然ですが、社内では解決が困難な場合、社外での解決を見すえて検討していかなければなりません。

そして、社外におけるパワハラ問題の最終手段が裁判における慰謝料請求であり、これを見すえて交渉を進めていくにあたり、法律と裁判例の知識を豊富に有する弁護士によるサポートが有益です。

パワハラによる精神疾患で、慰謝料請求する方法

パワハラ慰謝料請求

パワハラにあたるような、本来の業務範囲を超えて、就業環境を悪化させるような限度の被害を受けると、不安や恐怖を覚えるのは当然のことです。そのことを、加害者や会社に伝え、職場でのいじめや差別を根絶するためには、被害者側が行動しなければなりません。

そして、被害者側が行うパワハラに対する拒絶の意思表示として、最も有効なものが、慰謝料請求です。

慰謝料請求は、会社に対して、適切なパワハラの防止策、職場環境への配慮に関する事後対策をとるよう促す効果としても、とても有用です。

業務起因性があるか、検討する

職場のストレスが原因で、うつ病、適応障害などの精神疾患(メンタルヘルス)にり患したり、自殺をしてしまったりしたとき、労災認定が認められるかどうかは「業務起因性があるかどうか」によって判断されます。

特に、パワハラを原因とした精神疾患で自殺に至ったとき、パワハラにより正常な判断能力を阻害されていることが少なくないため、パワハラの程度が重度で心理的負荷が大きい場合には、業務起因性が認められ、労災認定を受けることができます。

そして、会社は、労働者に対して、その労務に服するにあたり生命、健康を害しないよう職場環境などについて配慮すべき注意義務(安全配慮義務、職場環境配慮義務)を負います。このことから、会社の管理体制が不十分であり人間関係のトラブルを解決することが困難であったような場合には、パワハラの直接の加害者に対してだけでなく、会社に対しても慰謝料請求をすることを検討します。

内容証明で、慰謝料請求する

パワハラの慰謝料請求をするときは、初めに、内容証明郵便の方法で会社に通知書、請求書を送付し、慰謝料の支払いを求めます。

発症前1か月におおむね100時間、または、発症前2か月から6か月の間に1か月あたり80時間を超えるほどの時間外労働が認められ、過重労働であることが明らかな場合や、既に刑事罰を受けているなど一見して明らかな強度のパワハラが存在する場合など、責任関係に争いのない場合、話し合い(交渉)によって会社の譲歩を引き出すことができる可能性があるからです。

会社と労働者との間で、パワハラに関する事実関係に争いがある場合であっても、内容証明郵便からはじまる交渉の過程において、会社から十分に事情の聴取を行い、後の労働審判、訴訟に役立てることができます。

労働審判で、慰謝料請求する

次に、パワハラの慰謝料請求を、会社に対して行う場合には、労働審判の手続を利用することができます。労働審判は、労働者保護のため、個別労使紛争を迅速かつ適切に解決することを目的として設置された制度で、訴訟よりも早期に解決へ至ることが期待できます。

労働審判では、必ずしも十分な証拠を用意することができなかったとしても、労働審判期日当日におけるパワハラ被害者、目撃者その他の関係者の発言を聴取し、事実認定に役立てることができます。

なお、労働審判は、労働者と使用者(会社)との間の個別労使紛争解決の手段であり、パワハラの直接の加害者を相手に慰謝料請求することはできません。

訴訟で、慰謝料請求する

最後に、パワハラの慰謝料請求について、終局的な解決を求める場合には、訴訟手続を利用することもできます。

労働審判と比べて、訴訟でパワハラの慰謝料請求をすることには、次のようなメリットがあります。

  • パワハラ被害者が自殺、死亡した例など、重大事件について終局的な解決を得ることができる
  • パワハラの直接の加害者と、会社に対して、同時に慰謝料請求をすることができる
  • パワハラ行為に関する証拠について、丁寧な証拠調べを受けることができる

その代わり、訴訟によってパワハラの慰謝料請求をする方法の場合には、一般的に、労働審判よりも長期間かかり、裁判費用、弁護士費用も労働審判よりも多くかかるのが通常です。

いずれの方法にも一長一短あるため、ケースに応じて、パワハラの被害の程度、収集できる証拠の程度、獲得できる慰謝料の目安などを考慮して、パワハラ慰謝料請求を行うための適切な手続きを選択する必要があります。

パワハラ慰謝料額の相場

パワハラ慰謝料請求

一言でパワハラといっても、その程度や回数、頻度、加害者と被害者の職場における力関係などによって多種多様です。そして、パワハラの悪質性の程度によって、パワハラ慰謝料の相場も大きく変わります。

パワハラの慰謝料額は、裁判例を参考とすれば、50万円~200万円程度が相場となります。ただし、強度かつ悪質なパワハラではこれ以上の慰謝料が認められる場合もあります。

そこで最後に、パワハラを理由とする慰謝料請求を認めた裁判例をご紹介し、パワハラ慰謝料額の相場について弁護士が解説します。

【5万円】のパワハラ慰謝料を認めた裁判例

東京高裁平成17年4月23日判決は、原告からの100万円の請求に対して、5万円のパワハラ慰謝料を認めた裁判例です。

被害者である従業員が所属する会社の某中央サービスセンター(「SC」)の所長が、同従業員に対して、「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるベきだと思います。当SCにとっても、会社にとっても損失そのものです。あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。……これ以上、当SCに迷惑をかけないで下さい」というメールの内容がパワハラとして、その慰謝料請求が認められるかが争われました。

裁判所は、このメール自体の表現方法が不適切であり被害者の名誉を棄損するものであっても、その目的においてパワーハラスメントの意図があったとまでは認められないと判示しており、低額な認容額となりました。

業務命令の一環としてなされたものであって、慰謝料請求を認めるとしても、その相当性を欠いた部分に問題があったにとどまることから、ごく低額の慰謝料しか認めなかったと考えられます。

【145万円】のパワハラ慰謝料を認めた裁判例

日本ファンド事件(東京地裁判平成22年7月27日判決)は、原告Aから336万円、Bから200万円、Cから200万円の請求に対して、Aに95万円(治療費、休業損害も含む)、Bに40万円、Cに10万円のパワハラ慰謝料を認めた裁判例です。

被害者は会社従業員A、B、Cで、加害者はその上司である部長でした。裁判所によって認定された部長によるパワハラの行為は、次の通りです。

  • 半年にわたって継続的に、扇風機を原告A、Bの近くに置き、風が直接両名に当たるよう向きを固定した上扇風機の風を当て続けたこと
  • Aに対して、事情聴取や弁明の機会を与えず叱責、始末書の提出を命じたこと
  • Bに対して、「馬鹿野郎」「給料泥棒」「責任を取れ」と叱責し、「給料をもらっていながら仕事をしていませんでした。」という文言の入った始末書を提出させたこと
  • Cの背中を殴打したこと、Cの膝を足の裏で蹴ったこと
  • Cに対して、「よくこんなやつと結婚したな、もの好きもいるもんだな。」という暴言

裁判所はいずれの行為に対しても、心理的、精神的負担を課す不法行為、違法な暴行として、不法行為に当たると判断しました。また、加害者によるパワハラ行為は、会社の部長として職務の執行中ないしその延長上における昼食時に行われたものであったため、会社に対する責任も認めました。

【600万円】のパワハラ慰謝料を認めた裁判例

松陰学園事件(東京高裁平成5年11月12日判決)は、原告からの1000万円の請求に対して、600万円(第一審の東京地裁では400万円)のパワハラ慰謝料を認めた裁判例です。

女性教諭が、高等学校によりなされた授業・担任等の仕事外し、職員室内での隔離、何らの仕事が与えられないままの4年6か月にわたる別室(物置部屋)への隔離、5年以上にわたる自宅研修、自宅研修中の一時金の不支給・賃金の据置など、校長からの命令がパワハラ行為(「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過小な要求」など)に当たるとして、損害賠償請求をした事案です。

校長からのこのような過酷な処遇を長期にわたって行われたことが、高額な慰謝料額が認容された要因となりました。

「労働問題」は浅野総合法律事務所にお任せください!

パワハラ慰謝料請求

今回は、パワハラ被害にあってしまった方の適切なディフェンス方法について弁護士が解説しました。職場の環境を整え、働きやすい環境をつくる義務は会社にありますが、実際にパワハラの被害にあってしまったとき、会社への相談、事前の予防策だけでは、既に起こってしまったパワハラ被害の回復には十分ではありません。

我慢し続け、心身の健康を崩し、精神疾患(メンタルヘルス)にり患してしまったり、過労死、過労自殺の原因となってしまうといった最悪のケースを想定し、できる限り早期に対応していくことが重要です。

会社組織は、上司と部下、社員同士のコミュニケーションによって成り立っています。業務遂行能力の成長、将来のキャリアのためにも人間関係は欠かせませんが、パワハラを我慢しなければならないわけではありません。

パワハラ被害にお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所へ法律相談をご依頼ください。

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