労働問題

退職金から、損害賠償を一方的に相殺することは違法!【弁護士解説】

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退職金相殺違法

会社が、労働者の同意なく、退職金から相殺を行うことがあります。退職金は、会社を退職するときに受け取れる金銭であるため、在職時の労使トラブルについて、退職金から相殺して金銭的に解決しようとする会社が多いからです。

しかし、退職金は、在職期間中の貢献に対して支払われる重要な金銭であり、賃金の後払い的な性格をも有するものです。そのため、会社の一方的な都合によって退職金を減らすことはできません。

なお、労働者の同意があり、かつ、損害賠償請求権、不当利得返還請求権など、会社が労働者に対して一定の債務があるときには、退職金から相殺をすることも可能です。ただ、この場合にも、退職金の重要性を考慮して、労働者の同意が真意からなされたものでなければなりません。

そこで今回は、退職金から、損害賠償などの金銭を一方的に相殺されてしまうとき、労働者側の適切な対応について弁護士が解説します。

「労働問題」弁護士解説まとめ

賃金全額払いの原則

退職金相殺違法

労働基準法では、「賃金全額払いの原則」が定められています。これは、賃金の全額が、会社から労働者に直接払われなければならないことを定めるものです。

労働者の生活の糧である重要な賃金について、中抜きなく全額を労働者の手元に直接届けることを保証することで、労働者の生活の安定を守ることが、この原則の目的です。これは、労働基準法24条に定められた、次の「賃金5原則」のうちの1つです。

賃金5原則(労働基準法24条)

  • 通貨払いの原則
    :賃金は法定通貨で支払わなければならないという原則。賃金を現物払いすることは、この原則によって禁止されています。
  • 直接払いの原則
    :賃金は労働者に直接支払わなければならないという原則。たとえ家族、親族であっても代理受領は禁止されています。
  • 全額払いの原則
    :賃金はその全額を労働者に支払わなければならないとする原則。控除、相殺、中間搾取が原則として禁止されています。
  • 毎月1回以上払いの原則
    :賃金を毎月1回以上払わなければならないとする原則。労働者の生活の安定を目的とし、たとえ年俸制であっても総額を年に1回支払うなどの方法は禁止されています。
  • 一定期日払いの原則
    :賃金を一定の期日に支払わなければならないとする原則。月ごとに賃金の支払日が変動することが禁止されています。

ただし、賃金全額払いの原則は、あくまでも「原則」であり、原則には「例外」があります。

そのため、労働者の生活の安定を崩すことのない次のような場合には、例外的に賃金からの控除が認められています。

  • 法令に別段の定めのある場合
     ① 給与所得税の源泉徴収(所得税法)
     ② 社会保険料の控除(厚生年金保険法など)
     ③ 財形貯蓄金の控除(勤労者財産形成促進法)
  • 労働者の過半数代表(もしくは労働組合)との書面による協定がある場合

退職金からの損害賠償の相殺は違法!

退職金相殺違法

賃金全額払いの原則のもと、会社が一方的に、労働者の賃金からの控除、相殺を行うことは労働基準法24条により禁止される違法行為となります。そして、月額賃金はもちろんのこと、退職金も「賃金」に含まれる重要な支給です。

退職金からの相殺が許されないことは、次の最高裁判例でも明らかにされています。

最高裁判例では、最高裁昭和31年11月2日判決にて損害賠償請求権について、最高裁昭和36年5月31日にて不法行為債権について、いずれも賃金との相殺が禁止されると判断しています。

最高裁昭和31年11月2日判決

労働基準法二四条一項は、賃金は原則としてその全額を支払わなければならない旨を規定し、これによれば、賃金債権に対しては損害賠償債権をもつて相殺をすることも許されないと解するのが相当である。

最高裁昭和36年5月31日

労働者の賃金は、労働者の生活を支える重要な財源で、日常必要とするものであるから、これを労働者に確実に受領させ、その生活に不安のないようにすることは、労働政策の上から極めて必要なことであり、労働基準法二四条一項が、賃金は同項但書の場合を除きその全額を直接労働者に支払わねばならない旨を規定しているのも、右にのべた趣旨を、その法意とするものというべきである。しからば同条項は、労働者の賃金債権に対しては、使用者は、使用者が労働者に対して有する債権をもつて相殺することを許されないとの趣旨を包含するものと解するのが相当である。このことは、その債権が不法行為を原因としたものであつても変りはない。

退職金からの違法な相殺をされたときの対応

退職金相殺違法

一定の場合には賃金からの相殺が認められるものの、原則としては労働者の同意なく相殺は許されません。このことから、会社側から賃金の相殺を一方的に受けてしまった場合の、労働者側の適切な対応について弁護士が解説します。

差額賃金を請求する

退職金などの賃金から、損害賠償請求権などを一方的に相殺することが無効となることから、会社が相殺を主張し、相殺後の賃金しか支払ってこない場合には、労働者側としては差額賃金を請求するようにします。

この場合、まずは、内容証明郵便によって通知書を送付し、差額賃金の金額、支払期限を伝えます。あわせて、期限までに支払いがない場合に労働審判、訴訟などの法的手続きを辞さないこと、その場合には未払の日から発生する利息、遅延損害金などを合わせて請求することを記載します。

内容証明郵便の形式で送付することにより、差額賃金の請求を行ったこと、及び、その通知日を客観的に証明することができます。

万が一、通知書の到達から所定の期限を経ても差額賃金が支払われない場合には、労働審判、訴訟などの法的手続きによって賃金請求を行います。会社の経営状況が悪化しているなど、支払い能力に疑問のある場合には、労働審判、訴訟に先行して会社の財産を仮に差押えておく手続き(仮差押手続)を踏むことで、会社財産を保全することができます。

賃金からの相殺に同意しない

労働者保護のために定められた労働基準法(労基法)により禁止される賃金からの相殺ですが、労働者が自由な意思に基づいて同意するときには適法なものとされています。このことは最高裁判例(日新製鋼事件:最高裁平成2年11月26日判決)でも判示されています。

日新製鋼事件(最高裁平成2年11月26日判決)

労働基準法24条1項本文の定めるいわゆる賃金全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするものというべき…(中略)…労働者がその自由な意思に基づき右相殺に同意した場合においては、右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は右規程に違反するものとはいえないものと解するのが相当である。

つまり、賃金全額払いの原則は労働者保護が目的のため、労働者自身が同意をしている場合には、相殺が可能であるということです。そのため、会社から相殺の同意書などに署名を求められたとしても、これに応じてはいけません。

賃金債権との相殺に労働者が同意することは、すなわち、労働者が、賃金を放棄することに似ています。相殺の場合には、放棄と異なり、会社から労働者に対する損害賠償請求などの反対債権が消滅するという労働者側のメリットが存在するものの、そもそもその会社から労働者への損害賠償請求自体が認められるものであるのかどうか、大いに疑問です。

労使関係において、事業から生じる利益を受け取る使用者が、そのリスクも負担すべきであるという「報償責任の原則」があり、仮に労働者にミスがあったり、会社に損失を与えてしまったりしても、そのすべてを賠償しなければならないとは限りません。

賃金の重要性から、口頭での同意があったと会社が主張しても、書面などの客観的証拠のない限り、退職金などの賃金からの相殺は違法と評価される可能性が高いといえます。

自発的でない同意の無効を主張する

賃金全額払いの原則があっても、同意のある相殺は有効であると解説しました。そのため、会社側は労働者の同意をとろうと、相殺合意書に署名をさせようとしたり、その際に、署名をしない場合の不利益を伝えて来たりすることがあります。

「退職金からの損害賠償請求権の相殺に合意しないと、懲戒解雇とする」などの厳しい脅しを受けた結果、つい同意をしてしまったとしても、これは真意から行った同意と評価することはできません。

自由な意思に基づかずに同意をしてしまったときは、その同意の有効性について、会社と争う必要があります。自由な意思に基づく同意かどうかは、次のような基準で判断されます。

  • 相殺合意書など、賃金相殺に同意した旨の客観的な証拠が存在すること
  • 労働者が、相殺する反対債務の存在とその金額を認識していること
  • 労働者が、相殺に近接した時期に賃金相殺に同意していること
  • 反対債務を免れることが、労働者にとって利益になること

相殺の制限

最後に、合意による相殺が認められる場合であっても、賃金が労働者の生活の糧となる重要な金銭であることから、法律上の相殺制限が定められています。

具体的には、賃金および退職金は、4分の3相当額については相殺が禁じられています(月額支給額については、相殺の禁じられる額は4分の3もしくは33万円のいずれか低い金額とされます)。つまり、その4分の1までしか相殺することができません。

「労働問題」は浅野総合法律事務所にお任せください!

退職金相殺違法

今回は、退職金から、損害賠償請求権などを相殺するといわれたとき、労働者側の立場で理解しておくべき適切な対応を弁護士が解説しました。

退職金は、賃金の後払い的性格をも有する重要な賃金の一種です。高齢化社会が進み、必ずしも1つの会社に勤続し続けるわけではない人が多くなった昨今において、退職する際にどれだけの退職金がもらえるかは、ますます重大な関心事となっている人が多いです。

原則として退職金を始めとした賃金からの相殺が禁じられていること、また、会社が労働者に対して責任追及してくるミスを理由とした損害賠償について、認められない可能性が高いことを理解し、相殺によって減らされた退職金の請求を検討してください。

退職時の労働トラブルにお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所へ法律相談をご依頼ください。

「労働問題」弁護士解説まとめ

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