離婚は本来、夫婦二人の意思と話し合いによって進めるべき問題です。
ところが実際は、配偶者の親が口を出したり、時には当事者以上に強く意見を主張してきたりすることも少なくありません。「夫婦の問題のはずなのに、なぜ親が介入してくるのか」と戸惑いや怒りを覚える方も多いのではないでしょうか。
親の介入は、夫婦間の対話を妨げるだけでなく、感情的な対立を激化させ、離婚協議を泥沼化させる原因にもなります。また、親族を含めた争いに発展し、周囲の人間関係にまで悪影響を及ぼすなど、デメリットは大きいと言わざるを得ません。
今回は、相手の親が離婚問題に介入してきた場合にどう対処すべきか、弁護士が解説します。感情に流されず冷静に、自身を守るポイントを理解しておきましょう。
- 離婚問題に介入してくる親には、感情的に対立せず、冷静に距離を取る
- 親の意見は受け止めつつ、「離婚は夫婦の問題」と線引きする
- 親の介入が過度な場合には、弁護士に相談し、法的手段も視野に入れる
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離婚問題に親が介入するケース

はじめに、親が介入する具体的なパターンやその背景、リスクを解説します。
実際のところ、「離婚は夫婦二人の問題」と言いながら、どちらか一方(もしくは双方)の親が口出しし、介入してくるケースは珍しくありません。
よくある親の介入パターン
離婚を巡るトラブルの中でも、「相手の親が出てくる」「親がうるさい」といった相談は非常に多く寄せられます。更に、「夫(妻)が親の意見ばかり聞く」というケースもあります。
夫婦の離婚問題について、親が強く介入してくる典型的なパターンは、次の通りです。
- 直接電話やLINEで連絡が来る。
- 自宅に無断で訪問をしてくる。
- 離婚協議への同席を要求される。
- 孫に接触して味方に付けようとする。
- 離婚条件について親の意見を伝えてくる。
- 親が一方的な主張をSNSで発信してしまう。
- 近隣住民や親族にも干渉してくる。
介入の形は様々ですが、放置しておくと事態が悪化するおそれがあります。
夫婦間では合意が成立し、決着したはずの離婚条件も、親が横から口出ししてくると、話し合いがまとまりません。最悪は、孫に「どっちが悪いのか」など吹き込んで精神的な負担を与えたり、SNSで発信したり、地域コミュニティや親族に「夫(妻)が悪い」などと広めて社会的評価に影響してしまったりといったケースもあります。
親が夫婦の問題に介入する背景
ではなぜ、そもそも親はそこまで関与しようとするのでしょうか。
夫婦の離婚問題に、親が介入する理由や背景はいくつかありますが、多くの場合、悪意や害意があるわけではなく、親なりの「正義感」や「責任感」が根底にあります。
- 「子の離婚は親にも責任がある」と思い込んでいる。
- 過保護で、子供の結婚生活に口出しする。
- 幼少期から支配的な関係である。
- 自分も離婚経験者なのでお節介を焼きたい。
- 「家の名に傷がつく」という観点で反対してくる。
- 配偶者に強い嫌悪感や不信感を抱いている。
複数の要因が絡み合うと、問題は更に複雑です。
特に、年配の親は、離婚について「家の恥」と捉え、阻止しようとする傾向があります。長年「子は親の言うことを聞いて当然」という価値観が続いていたり、親もまた離婚を経験していたりすると、「あの時こうしておけばよかった」という自分の後悔を押し付ける人もいます。
同居していたり仕送りを受け取っていたりと、親から経済的支援を受けていると、親も「口出す権利がある」と考え、子も断りづらいケースもあります。
親の介入が引き起こすリスク
親の介入には、一定のメリットもあります。
- 第三者として冷静かつ客観的な意見をくれる。
- 自分が離婚したいとき味方になってくれる。
- 経済面・精神面でサポートをしてくれる。
- 問題ある配偶者に、説得力のある立場から助言できる。
しかし、「メリット」を上回るリスクの方が、はるかに大きいのが実情です。多くの場合、親の介入によって、かえって協議が困難になり、調停や裁判に進んで泥沼化し、離婚問題が長期化、複雑化してしまいます。
親が介入することで感情論となり、建設的な協議は難しくなります。また、夫婦の子(親から見た「孫」)が、祖父母と親の対立を目にして、精神的に悪影響を受けることも懸念されます。親が、当事者に無断で秘密を漏らしたり、名誉棄損やプライバシー侵害に発展したりする例もあります。
したがって、どれほど近しい存在でも、親の介入が当事者の意思と冷静な判断を妨げるなら、害悪だといえるでしょう。
「離婚までの流れ」の解説

相手の親が介入してきた場合の具体的な対処法

次に、相手の親が介入してきた場合の、具体的な対処法について解説します。
親が夫婦の離婚問題に介入してきた場合、それが自分の親か、相手の親(義両親)かによっても取るべき対応は異なります。
相手の親との連絡は控える
基本的に、離婚の話し合いがまとまるまで、相手の親との連絡は避けましょう。
夫婦の離婚問題は、日頃どれほど良好な関係だとしても、相手の親に相談すべきことではありません。普段は温厚だったとしても、最終的に「親は子の味方」です。親が介入することで、感情的な対立が生まれたり、親の意見に左右されたりして、話がこじれてしまいます。
自分から直接のやり取りを避けるのは当然、電話やLINEが来たとしても、対応しないのが望ましいです。どうしてもやり取りせざるを得ない場合、LINEやメールなど、記録に残る方法で進めてください。感情的な応答はせず、怒りや反感から「売り言葉に買い言葉」にならないよう、冷静かつ丁寧な対応を心がけましょう。
夫婦で話し合う重要性を伝える
親の介入を防ぐには、夫婦間で話し合うことを重視すべきです。
配偶者が親の言いなりになっている場合は、「夫婦で決めたい」というあなたの意向を丁寧に伝え、相手にも自立した判断を促すことが重要です。
法的にも、離婚は夫婦の合意で成立するもので、親や親族の同意は不要です。親の立場を尊重することも大切ですが、その意見に左右されることのないようにすべきです。親の言うことが全て正しいとは限りません。影響を受けすぎると、判断が曇り、後悔する結果になります。
夫婦としてどうしていきたいのか、自分達の気持ちを第一に考え、主導権を持って進めることが大切です。このことを、相手や相手の親にも伝え、理解を求めるようにしましょう。
「協議離婚の進め方」の解説

配偶者を通じて介入を控えるよう伝える
配偶者を通じて介入を控えるように伝えることも大切です。
相手の親が介入してくるとき、関係性が悪い人が伝えても、かえって反発されてしまいます。そこで、直接ではなく、配偶者を通じてやんわりと介入を控えてもらう方法が効果的です。親から見ても、自分の子からの依頼の方が聞き入れやすく、円満に収めることができます。
また、伝え方に工夫を凝らすことで、トラブルを避けるべきです。親を否定するような言い回しはせず、例えば、「今は夫婦で話し合いたい」「決まったら報告するから1ヶ月待ってほしい」「本人の考えを聞きたい」など、具体的な期限を示し、報告を約束する方法が効果的です。
相手の親が感情的になっていても、配偶者があなたの立場を理解して行動してくれれば、この方法で十分解決する可能性はあります。
弁護士を窓口とする
相手の親による介入が収まらない場合、弁護士を窓口にする手も検討してください。
弁護士を通じて親に警告文を送付し、注意喚起することで、事態を制御する方法です。特に、無断訪問、暴言、暴力、しつこすぎる連絡といった悪質なケースは、専門家の介入が必要です。
弁護士が「これ以上の干渉を止めてください」といった通知書を送ることは、一定の抑止力が期待できます。また、直接的な接触を遮断でき、精神的な負担を軽減できます。今後も介入が続くようであれば法的手段に移行することを伝えれば、トラブルのエスカレートを避けられるでしょう。
まずは初回無料相談を利用し、弁護士への依頼を検討してみるのも一つの手です。
「弁護士に相談する前の準備」の解説

法的な手続きを利用する
弁護士による対応でも改善しないなら、法的手続きの利用を検討すべき段階です。
念のため、弁護士名義の警告文で、「これ以上悪質な介入を続ければ、法的措置を講じる」という意思を明確に伝え、最後通告をしておきましょう。考えうる法的手段には、次のものがあります。
- 悪質な行為への法的措置
例えば、名誉毀損、業務妨害、プライバシー侵害などを繰り返しているなら、停止を求める仮処分や、損害賠償請求などの手段が可能です。 - 接近禁止命令
しつこい接触が止まない場合には、接近禁止命令が認められることもあります。 - 離婚調停の申立て
既に離婚の意思が固まっているなら、離婚調停を申し立てる選択肢もあります。親が介入してきて夫婦間での協議が困難な場合でも、調停手続は原則として本人が直接対応するもので、親の介入を排除することができます。
親の言動が「家庭の問題」にとどまらないなら、法的措置もやむを得ません。裁判手続きでは、証拠が重視されるので、相手の親の言動を示す証拠(録音・SNSの投稿・LINEの画面など)を集めておくことが不可欠です。
「離婚調停を弁護士に依頼するメリット」の解説

自分の親が介入してきそうな場合は?

離婚問題では、相手の親だけでなく、自分の親が介入するケースもあります。
相手の親の干渉が強いとき、「それなら自分の親も」「こちらも親を出さないと不公平だ」といって介入を始めるケースがありますが、ますます泥沼化し、解決が遠のく考え方と言わざるを得ません。離婚の話し合いは、単なる「人数合わせ」や「意地の張り合い」になってはならず、冷静に話し合わなければなりません。
自分の親の介入は控えてもらう
離婚トラブルに親が介入して混乱しそうなときほど、自分の親には「あくまで夫婦間の問題」「当事者同士で解決する」と説明しましょう。親の関心や心配を否定せず、うまく介入を控えてもらうために、次のことを気をつけてください。
- 親の気持ちは否定せず、心配してくれたことには感謝を示す。
- 自分達で話し合いたいという意思をはっきりと伝える。
- 「自分にとって最善の選択は、自分で考えたい」と伝える。
- 「介入すると相手の態度が硬化する」など、デメリットを説明する。
- 「弁護士に、親の介入は不適切だと言われた」と外部の意見を根拠にする
特に、感情的になりやすい親に対しては、冷静で丁寧な言葉を選びましょう。あくまで、「親が足を引っ張っている」と責めるのではなく、「協議をうまく進めるために行動を控えてほしい」という建設的なお願いをする姿勢を保ってください。
我が子のこととなると感情的になってしまうのは当然のことです。そのようなときこそ、自分自身が感情的にならず、自分の親に対して冷静に接する姿勢が大切です。
「第三者を同席させるメリットと注意点」の解説

離婚に介入する親とどう向き合うべきか
離婚問題に親が介入してきた場合、親の意見を無視するのではなく、一旦受け止める姿勢を示すことが大切です。
多くの場合、親も子のためを思って心配し、良かれと思って行動しています。だからといって離婚問題に介入してよいわけではなく、親の意見に全て従う必要はありません。大切なのは、親の話を聞きながらも「最終的に決めるのは自分自身」という線引きをしっかり示すことです。
話し合いが難しい場合や、親がどうしても納得しない場合は、無理に説得せず、第三者の専門家に相談するのがお勧めです。弁護士やカウンセラーなどの専門家に相談すれば、客観的な視点からアドバイスを受けることができ、自分たち夫婦にとっても親にとっても、より良い解決に近づけます(※ケースによっては、相談に親を同席させることも可能です)。
「離婚に強い弁護士とは?」の解説

やってはいけない対応

最後に、トラブルを招きやすい「避けるべき対応」を解説します。
親が離婚問題に介入してきたとき、感情的な反応や勢い任せの言動は、かえって事態を悪化させる原因となります。たとえ相手の親が理不尽なことを言ってきたとしても、こちらまで感情的になれば、話し合いの余地はなくなります。
感情的になって反論してはいけない
相手の親から一方的に責められたり、筋の通らないことを言われたりした場合、思わず言い返したくなる気持ちは当然です。しかし、親が介入してきた際に感情的になって反論するのは、新たな争点を生むリスクがあるので望ましくありません。
親とのやりとりで冷静さを失い、暴言や非難を返してしまうと、「やはりあなたが悪い」「うちの子は悪くない」などと言われかねません。最悪は、「モラハラ夫(モラハラ妻)」といったレッテルを貼られ、介入してきた親側の主張を裏付けてしまいます。
口論の流れで、名誉毀損や侮辱、脅迫に該当する発言をあなたがすれば、逆に訴えられるリスクもゼロではありませんし、録音されれば不利な証拠となります。親や祖父母が感情的にぶつかっている様子を見聞きした子供にも、大きなストレスや不安を与えます。
「モラハラと言われたとき」「お互いにモラハラを主張するとき」の解説


一方的に親を責めてはいけない
たとえ相手の親に問題があっても、一方的に非難すれば更にトラブルを招きます。
相手にとっては、どんな親でも「自分を育ててくれた存在」です。その親を強く否定されると、「自分自身を否定された」と感じ、防衛的になったり敵対的になったりして、態度が硬化します。明らかに不適切な干渉をする「毒親」でも、親である事実に変わりはありません。
不本意な介入、干渉だとしても、親の存在を全否定したり、相手に「あなたの親が全て悪い」などと伝えたりすれば、心を閉ざされるだけです。
このようなケースでは、無理に言い返すより、冷静に距離を取る方が賢明です。過干渉な親には、真正面からぶつかるのでなく、「一線を引いて対応する」ことが大切です。自分だけで対応できないなら、弁護士を間に入れることも検討してください。
「相手が弁護士に依頼したら直接交渉は禁止?」の解説

まとめ

今回は、離婚という夫婦の問題に親が介入してきたときの対処法を解説しました。
離婚はあくまで夫婦二人の間で決定すべき大切な人生の節目であり、第三者は、たとえ親だったとしても介入すべきではありません。しかし、現実には、様々な理由から親の関与を止められないケースも少なくありません。
相手の親からの過度な干渉に対しては、冷静に距離を取り、必要に応じて配偶者や弁護士を通じて連絡することが大切です。逆に、自分の親が介入してしまうこともありますが、「夫婦の問題である」としっかり伝える勇気を持ちましょう。親の介入をきっかけに感情的になると、事態が複雑化し、収拾がつかなくなってしまいます。
だからこそ、状況を客観的に捉え、法的手続きの利用も視野に入れながら、検討する必要があります。親の介入という難しい局面だからこそ、冷静に対応するために弁護士のサポートを受けるのが賢明です。
- 離婚問題に介入してくる親には、感情的に対立せず、冷静に距離を取る
- 親の意見は受け止めつつ、「離婚は夫婦の問題」と線引きする
- 親の介入が過度な場合には、弁護士に相談し、法的手段も視野に入れる
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協議離婚は、夫婦の話し合いで離婚条件に合意し、離婚届を提出することで成立します。この手続きは比較的簡単で迅速に進められる一方、難しい法律問題があっても自分達で乗り越えなければなりません。
合意内容が曖昧なままだと後にトラブルが生じるおそれがあるので、「協議離婚」の解説を参考にして進めてください。