夫婦で離婚についての話し合いをまとめることに自信がなかったり、不安が大きかったりするとき、両親・友人などの第三者に同席してもらおうとすることがあります。
離婚の多くは、話し合いで解決していますが、実際には、夫婦で協議をまとめるのは非常に難しいケースもよくあります。両親や友人に同席してもらい、後押ししてもらえば離婚できるように感じるのかもしれませんが、離婚の話し合いに、第三者を同席させることはお勧めできません。
今回は、離婚の話し合いに第三者を同席させるべきでない理由と、万が一同席させるときの注意点について解説します。
- 離婚の話し合いは、夫婦2人でするのが原則で、第三者は同席しない
- 特に互いの両親が同席すると、話し合いが進まず長期化するおそれがある
- 第三者を同席させるときは口出しさせず、客観的な意見のみの発言とさせる
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離婚の話し合いは夫婦2人でするのが原則

はじめに、離婚の話し合いを夫婦2人ですべき理由(第三者を同席させることのデメリット)と、同席させた方がよいケースについて解説していきます。
離婚の話し合いは、夫婦2人でするのが原則です。離婚問題は、夫婦で解決すべき問題だからです。「結婚は家同士の結びつきだから、離婚の話し合いは両家ですべき」と考える人もいるようですが、離婚の話し合いに両親や親族などを同席させるのはリスクがあります。
離婚は夫婦の問題
離婚は夫婦2人で決めるべき問題です。他人の意見は参考にはなっても、密接に関与させるべきではありません。離婚の話し合いに第三者を同席させるのは、たとえ両親や義両親、親友などであっても、次のように多くのデメリットがあります。
- 感情的にヒートアップして、離婚の話し合いがうまくまとまらなくなる
- 同席者がこちらの味方ばかりすると、相手が話し合いに応じてくれなくなる
- 夫婦のプライバシーが外に漏れるおそれがある
離婚協議は夫婦2人の問題であると共に、あくまでも話し合いなので、相手が応じてくれなくなれば、ストップしてしまいます。話し合いができなくなると、離婚するには調停の申立てに進むこととなりますが、ますます時間と手間がかかってしまいます。
「協議離婚の進め方」の解説

相談や意見は事前に聞いておく
百歩譲って両家にも話を通す義理があったとしても、それは夫婦の協議を始めるより前にやるべきことです。相談や意見は事前に聞くべきで、話し合いに同席させる必要はありません。
離婚問題について自分で考えることが難しく、意見やアドバイスが必要なときは、話し合いに同席してもらうのではなく、離婚を切り出すより前に聞いておきましょう。事前に聞いておくのであれば、両親や友人などではなく、「経験」を聞くなら離婚経験者に、「知識」を聞くなら法律の専門家である弁護士に相談するのが最善です。
「離婚までの流れ」の解説

離婚の話し合いに第三者を同席させるべきケース
原則は夫婦2人だけで行うべき離婚の話し合いですが、第三者に同席してもらった方がよいケースもあります。
- 夫婦で話し合うと、感情的になって話し合いがうまく進まない場合
- 中立的な第三者が同席し、話を聞くことで整理ができそうな場合
- 離婚の話し合い中に暴力を受けるおそれのある場合
- モラハラがあり、威圧的な態度をとられて話し合いができない場合
DVやモラハラがひどいと、夫婦間に主従関係が生まれ、まともな話し合いができません。被害者となった人も、自分がDVやモラハラの被害に遭っているとは気付いていないこともあります。
このようなとき、危険を回避し、離婚についてのまともな話し合いを実現するためにも、適切な第三者に同席してもらうことが有効です。なお、相当悪質なケースだと、もはや第三者に同席してもらってもかえって危険なこともあり、別居してから話し合うべき場合もあります。
「離婚前の別居の注意点」の解説

離婚の話し合いに同席を検討すべき第三者とは

「離婚の話し合いに同席させてもよいか」という相談がよくある人達について、当事者との関係性ごとに解説していきます。離婚の話し合いに同席をさせたり、離婚の事前相談をしたりすることを検討する第三者には、次のような人がいます。
双方の両親
離婚の話し合いで、両親に同席してもらおうと考える人は多くいます。
「両親に同席してもらいたい」という不安な気持ちは理解できますが、離婚の話し合いは夫婦の問題です。両親が同席すると、かえってこじれてうまく進まないおそれがあります。
親にとっては我が子が一番かわいくて、自分の子にどれほど重い責任があっても、どれほど非があっても庇おうとします。互いに自分の子を擁護することで、夫婦間の話し合いのはずが、いつの間にか両親同士の喧嘩に発展してエスカレートしていくと、もはや収集がつきません。
同様の理由で、親族の同席も止めておくべきです。離婚の話し合いに介入したがる両親もいますが、次のように対応してください。
自分の両親に伝えておくこと
自分の両親に、離婚に向けてかかる費用を出してもらったり、一時的に実家に住まわせてもらっていたりすると、同席を断るのは気が引けることもあるでしょう。それでもなお、自身の離婚を円滑に進めるために、親の同席は断りましょう。
- 「同席は必要ない」「夫婦の問題だから任せておいてほしい」と伝える
- 子供の味方ばかりすると、逆に相手から誠意がないとみられ、うまくいかないことを理解してもらう
- やむを得ず両親に同席してもらうときには、下手な口出しや感情的な反論を控えるよう、釘をさしておく
相手の両親に伝えておくこと
相手の両親(義両親)の同席を断ることは容易です。義理の両親のいる場で、夫婦で離婚の話をしないようにすれば足りるからです。特に、親族間の不和が離婚の理由となっているときは、距離を離す努力をしてください。
- 義両親が、離婚の話し合いへ同席することは、断固として拒否する
- やむを得ず義両親が同席した場合、義両親から不当なプレッシャーを受けるときは、その日の話し合いは打ち切るようにする
「義理の両親からの離婚強要・嫌がらせ」の解説

友人
友人に同席してもらうとき、夫婦の一方の友人であったり、一方ととても仲の良い人であったりすると、結局そちらの味方をしてしまうおそれがあります。そのため、両親や親族と同じ理由で、同席してもらうべきではありません。
これに対して、夫婦共通の友人であり、お互いにとって信頼できる友人や先輩、上司などがいるときは、同席してもらうことで双方の意見を聞いてもらい、気持ちが整理されてうまく話し合いが進むことがあります。ただし、人選を誤ると、職場や友人間に夫婦のプライバシーが広まってしまうリスクがあります。
仲人や紹介者
お見合い結婚など、仲人を立てて結婚したときは、離婚問題についても仲人や紹介者に相談しにいくことがあります。しかし、仲人や紹介者と夫婦の人間関係も様々で、結婚を取り持ったからといって、離婚の話し合いに同席させる人物としてふさわしいかどうかは慎重に判断すべきです。
あくまでも、離婚の話し合いは夫婦2人で行うのを原則とすべきであり、仲人や紹介者に同席してもらっても好転することはあまり期待できない場合が多いでしょう。
弁護士
離婚の話し合いに、弁護士が同席することがあります。
弁護士が同席した方がよいケースは、例えば、相手がモラハラ気質で、二人だけで話し合いをすると一方的にまくしたてられ、こちらの気持ちが十分に伝えられない場合です。相手に不貞や浮気、DVといった非があり、あなたの側に十分な証拠がある場合のように、相手に対する責任追及を伝えるときにも、弁護士に同席してもらうことが大きなプレッシャーとなります。
離婚問題に精通した弁護士を交えることで、相手にも一定の遠慮が生まれ、冷静に、話し合いが進むことが期待できます。弁護士に同席してもらえば、その場で分からない事が出てきたときにも、法律知識を確認することができます。
「離婚に強い弁護士とは?」「離婚の弁護士費用の相場」の解説


第三者に同席してもらうときの注意点

最後に、第三者に同席してもらうときに注意すべきポイントを解説します。
ここまで解説した通り、離婚の話し合いはまずは夫婦で行うようにし、第三者を同席してもらうことには慎重であるべきです。
口出しさせない
適切な第三者に、離婚の話し合いに同席してもらうとしても、中心は夫婦の話し合いとすべきであり、口出しはさせないようにしましょう。
自分側で同席をお願いした人には、できるだけ口出しをしないよう事前に伝えておくことが、離婚協議をうまく進めるためには大切です。
もし、相手方で同席した人が口出しばかりしてきて、あなたのことを感情的に否定したり、罵倒したり、理不尽に相手の味方ばかりするときは、その場でヒートアップしてやりあうのではなく、話し合いを打ち切ることがおすすめです。
客観的な意見にとどめる
離婚の話し合いに同席してもらう第三者に発言をさせるときは、客観的な意見にとどめるようにしてもらいます。あくまでも夫婦の問題である離婚の話し合いに同席するのなら、中立の立場を貫いてもらう必要があります。どちらかに味方したり、他方を強く否定したりするような人であれば、話し合いをスムーズに進めるためにも、同席を控えてもらうべきです。
客観的な意見について、夫婦の双方が求めたときに限って発言してもらうようにすることで、同席してもらうメリットを最大限に活かすことができます。
実家での話し合いは避ける
第三者として互いの両親に同席してもらおうとして、実家での話し合いを計画するケースがあります。「相手が実家に押しかけてきて、協議することを強要された」という相談例もあります。
実家であれば、離婚の話し合いの間は子供の面倒を見てもらえるメリットがありますが、あまりお勧めの方法ではありません。前章の通り、両親は自分の子の味方をするので、どちらの実家で行うかによって、離婚の有利不利に大きく影響してしまうからです。「自分の実家で話し合って有利に進めたい」という気持ちが適切でないのはもちろん、「相手の実家に乗り込んで、早急に話しをつけてやろう」という態度もまた、誠実とはいえません。
冷静な話し合いが難しそうなときは、ファミリーレストランやホテルのロビーラウンジなど、第三者の目のある公共の場所で話し合いを行うことがおすすめです。
離婚に両親・親族の協力が必要なことはよくある
離婚の話し合いに、両親や親族などが同席すると、話し合いがヒートアップしてうまく進みづらくなることを解説しました。
とはいえ、話し合いに同席すべきではないというだけで、実際には、離婚問題を解決するのに両親や親族の協力が必要となることはよくあります。重要なことは、話し合いに同席するなどの密接な関与ではなく、一定の距離を置いてもらうことにあります。
離婚問題の解決で、両親や親族の協力が必要となるのは、次のケースがあります。
- 離婚届の証人となるケース
離婚届には証人2名が必要となり、両親に依頼することが多いです。 - 離婚に伴う債務の連帯保証人となるケース
離婚の話し合いで、慰謝料、財産分与、養育費など金銭支払を取り決めるとき、夫婦が若年の場合など資力が十分でないときは、両親が連帯保証人となることがあります。 - 話し合い中に子供の面倒を見てもらうケース
離婚の話し合いは夫婦2人で行うべきであり、子供に聞かせることは健全な発育にとってよいことではありません。 - 離婚後の子どもの監護者になってもらうケース
夫婦の事情(病気、DV、薬物中毒など)により、夫婦のいずれも子どもを監護できないとき、両親に子どもの監護者になってもらうことがあります。
離婚の話し合いに同席しないとしても、離婚問題の解決に両親・親族の協力が必要となることはお多いため、話し合いへの同席を拒絶するときにも丁寧に理由を説明し、離婚について相談・報告を欠かさないことが大切です。
離婚理由によってケースバイケースの対応が必要
「離婚の話し合いに第三者を同席させるべきかどうか」という判断は、離婚を決断した理由によってもケースバイケースの検討が必要です。例えば、相手のDV・モラハラが理由のときは、危険を回避し、自分の気持ちをきちんと伝えるには、第三者に同席してもらうべきケースもあります。
これに対して、性格の不一致、価値観の相違、性生活の不満など、必ずしもどちらのせいとも言いづらい離婚理由のとき、第三者に同席してもらっても解決できません。むしろ、夫婦のプライバシーをさらけだし、相手にも嫌な思いをさせ、話し合いが進みづらくなってしまいます。
夫婦2人だけで話し合うことに不安が強く、話し合いを開始してしまうと不当なプレッシャー、ストレスを受けてしまうと予想されるとき、「そもそも、話し合いで解決が困難なのではないか」という点も検討しなければなりません。
相手が誠意をもって話し合いに応じないとき、もはや誰を同席させても話し合いで解決することは困難であり、離婚調停の申立てに進むべきケースであると考えられます。
「離婚調停を申し立てられたら?」「離婚調停を弁護士に依頼するメリット」の解説


まとめ

今回は、離婚の話し合いをするときに第三者を同席させてもよいかどうかと、第三者を同席させるときの注意点について解説しました。
離婚をするとき、その話し合いはストレスの非常に強いものであり、一人では不安だという気持ちはよくわかります。しかし、手助けは、事前や事後に得ておくことができますが、離婚協議をスムーズに進めたいのであれば話し合いに同席してもらうのはおすすめできません。特に、両親の同席は、トラブルのもとです。信頼できる友人など、適切な第三者に同席してもらえるときも、できるだけ口出しせず、客観的な意見だけを中立的に伝えてもらうようにしましょう。
離婚問題に弁護士が同席して話し合いを有利に導くことも可能です。ぜひお悩みの方は、離婚問題を得意とする弁護士に相談してください。
- 離婚の話し合いは、夫婦2人でするのが原則で、第三者は同席しない
- 特に互いの両親が同席すると、話し合いが進まず長期化するおそれがある
- 第三者を同席させるときは口出しさせず、客観的な意見のみの発言とさせる
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協議離婚は、夫婦の話し合いで離婚条件に合意し、離婚届を提出することで成立します。この手続きは比較的簡単で迅速に進められる一方、難しい法律問題があっても自分達で乗り越えなければなりません。
合意内容が曖昧なままだと後にトラブルが生じるおそれがあるので、「協議離婚」の解説を参考にして進めてください。