夫婦生活では「夜の営み」がとても大切。セックスレスは離婚につながる大きな原因になります。
一見は円満な夫婦も、「異性として見れなくなった」、「子どもが生まれたら所帯じみてしまった」などの理由でセックスレスになり、急速に離婚へ進むこともあります。
セックスレスなど、性生活の不一致があると「魅力を感じてもらえないのでは」と自信を失わせるきっかけにも。
セックスレスが長期化すると、子作りについて意見が衝突したり、性欲を発散するために浮気・不倫に走ったりなど、別の夫婦間トラブルに発展し、より重大な離婚理由になってしまいます。
セックスレスの法律問題では、①離婚理由になるか、②慰謝料を請求できるか、という2点が重要。
このとき、セックスレスの内容や程度、原因などによっても、最適な解決策は異なります。
今回は、セックスレスを理由とする離婚、慰謝料請求のポイントを、離婚問題に詳しい弁護士が解説します。
- セックスレスが重大な離婚理由となることがある(特に出産適齢期の女性)。
- セックスレスの程度が強度で、悪質なときは、相手が拒否しても離婚できる
- セックスレスで慰謝料を請求するとき、違法性を証明するため、証拠が大切
相手が拒否しても裁判で離婚できる「法定離婚原因」は、次のまとめ解説をご覧ください。
セックスレスとは
セックスレスとは、夫婦であるのに、性交渉のない状態が続くことです。
「Sexレス」、もしくは、単に「レス」ともいいます。
夫婦には「貞操義務」があり、他の異性との性交渉は禁止です。
貞操義務に反して、他の異性と肉体関係をもつことは違法な「不貞行為」、離婚原因となるのはもちろんのこと慰謝料の対象になります。
そのため、夫婦の夜の営みは、家族生活をスムーズに続けるためにとても重要。
一生連れ添っていくのに性の不一致があったら、離婚理由になってしまうのもうなづけます。
セックスレスの理由は夫婦によってさまざまですが、以下の例があります。
- 嫁が異性ではなく家族としか見られなくなった
- 30代になって、加齢により異性としての魅力が薄れた
- 10年連れ添ったら家族に思えて、性の対象にならない
- 出産したら体型が崩れ、魅力がなくなった
- 子どもが幼く、育児が大変で性交渉する意欲がわかない
性生活の不一致の原因のなかには、「性癖が受け入れられない」、「生理的に受け付けない」など、結婚当初から性交渉が苦痛となっていた例もあります。
妻側がセックスを拒否するケースも、夫側が拒否するケースも、いずれもご相談例があります。
夫婦双方が「性交渉しないこと」に心から同意していれば、セックスレスによる離婚は起こりません。
しかし、実は片方が我慢していたり、隠れて浮気・不倫したり、風俗に通ったり、「子作りしたいのに協力してくれない」と悩んでいたりといった事情があると、セックスレスが理由で離婚に近づいてしまいます。
このとき、セックスレスにからむ、次の2つの法律問題について、順に解説します。
セックスレスを理由に離婚できるか
はじめに「セックスレスを理由に離婚できるかどうか」を解説します。
夫婦なのに性交渉を拒否されれば、離婚を思い立つきっかけとしては十分。
「浮気・不倫したからセックスしたくないのでは」、「愛情が冷めてしまったのでは」など、疑念は日々大きくなり、円満な夫婦関係を侵食します。
ただ、夫(または妻)が離婚を求めると、離婚までの流れは「離婚協議→離婚調停→離婚訴訟」の順に進みますが、セックスレスしか理由がないと、他方が反対しているときには離婚できないおそれがあります。
相手が同意すれば、セックスレスを理由に離婚できる
セックスレスを理由に離婚を思い立ったときは、まずは夫婦間で話し合います。
夫婦が離婚に同意すれば、理由がセックスレスしかなくても離婚できます。
このように、夫婦の同意で離婚することを「協議離婚」と呼びます。
夫婦が互いに性交渉へのこだわりがないケースなど、性生活について夫婦の考え方に大きな差がないときは、離婚に向けた話し合いが円滑に進み、合意に達することのできる例もあります。
協議離婚が成立したら、将来もめごとを残さないよう、離婚協議書を作り、合意内容を書面に残すのが重要。
離婚理由となったセックスレスについて夫(または妻)が責任を認め、一定の慰謝料を払うと約束するときは、将来支払いがなされない事態に備えて、離婚協議書を公正証書にする方法を検討してください。
離婚協議書に、慰謝料に関する条項のほか、どんな内容を記載するかは次の解説をご覧ください。
相手がセックスレスによる離婚に同意しないときの対応
離婚条件に夫婦が合意できないときや、そもそも一方が離婚を拒み、復縁を望むときもあります。
このとき、セックスレスを理由とした協議離婚はできず、離婚調停を経て、離婚訴訟へ進んでいきます。
「セックスしてくれないほど愛情がないのだから離婚に同意してくれるはず」とは限らないもの。
婚姻期間が長くなるほど、離婚時には「離婚とお金」の問題、「離婚と子ども」の問題について多くの争点を整理しなければならず、単なる愛情の問題だけでは片付けられません。
離婚訴訟では法定離婚原因(民法770条1項)が存在しないと離婚できません。
そのため、離婚理由となったセックスレスが、次の法定離婚原因にあたるかを検討する必要があります。
民法770条1項
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
民法(e-Gov法令検索)
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
セックスレスは明文上、民法770条1項1号〜4号にはあたらないため、5号「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかを検討することとなります(なお、セックスレスの原因が、不貞や悪意の遺棄、精神病にあるとき、5号以外の法定離婚原因によって離婚が可能です)。
「婚姻を継続し難い重大な事由」は、他の各号と同じくらいの重大性があり、夫婦生活が破綻し、回復困難なほどに達している必要があります。
そのため、一言で「セックスレス」といっても、
- セックスレスの続いた期間
- セックスレスになった理由と、改善の努力をしたか
- セックスレスの程度
- セックスの誘いを拒否された回数
- セックスの誘いを拒否された理由
- セックスレスに至った経緯
- 夫婦それぞれの責任の度合い、努力の有無
といった事情により、「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められるかどうかの判断は分かれます。
離婚協議がうまく進まず、離婚調停を進めるときの流れや進め方は、次の解説をご覧ください。
セックスレスを理由に離婚できる場合
あなたがセックスレスに悩むとき、それを理由に離婚できるケースなのかを具体的に理解しやすくするため、次に、セックスレスを理由に離婚できた事例について、3つのケースに分けてご紹介します。
セックスの拒否に正当な理由がない
夫婦間に、性交渉の支障となる事情があるときは、セックスを拒否してもただちに離婚理由とはなりません。
例えば、年齢や病気などが正当な事由となり得ます(後述「セックスできない正当な理由がある」)。
しかし、まったく支障がないのに夫(または妻)が性交渉を拒むとき、正当な理由はありません。
正当な理由のないセックスレス状態が続けば、「婚姻を継続し難い事由」にあたり、裁判で離婚を認めてもらえます。
子作りしないと高齢出産になってしまう
結婚する大きな理由に、「子どもを作りたい」という思いがある家庭は多いでしょう。
女性にとっては、結婚が遅れ、妊娠が遅れると、高齢出産となるリスクもあります。
一方で、男性のなかには子作りをさほど焦っていなかったり、むしろ子どもを強く欲していなかったりして、ごく軽い気持ちで夜の営みを拒んでしまっていた方もいます。
そのため、「妻が子どもを望むのに、夫が性交渉しない」といった子作り計画のからむセックスレスでは、夫婦のミゾが深刻であり、離婚が認められるケースが多いです。
妻側が、次の相手との妊娠・出産を望んで、早期の離婚に向けて進む可能性も高いです。
結婚当初から「子どもをつくらない」と合意していないかぎり、妊娠を望んでいる女性の性交渉を断わり続けてセックスレスとなると、離婚が認められやすくなります。
セックスレスの一方、浮気・不倫がある
セックスレスの原因について相手の責任を追及できる場合は、セックスレスそのものではなく、その原因を理由にして離婚できるケースもあります。
特に男性は、性欲を発散させる必要にかられ、セックスレスになると浮気・不倫や風俗通いする人もいます。
相手が浮気・不倫にのめり込んだ結果、夫婦の性交渉をおろそかにしていたケースでは、「不貞行為」(民法770条1項1号)を理由にして離婚を認めてもらえます。
なお、このとき、不貞相手にも慰謝料を請求できますが、セックスレスが続き、あなたの側に夫婦関係を円満にするような努力がないと、「既に夫婦関係が破綻していた」として慰謝料を認めてもらえないおそれもあります。
裁判例でも、セックスレスでも「破綻」まではしていないとして200万円の慰謝料を認めた裁判例(東京地裁平成29年10月18日判決、東京地裁平成18年9月15日判決)もある一方、「破綻」を認め、慰謝料請求を棄却した裁判例(東京地裁平成17年4月19日判決)もあります。
セックスレスを理由には離婚ができない場合
離婚につながる深刻な事情はあるものの、残念なことにセックスレスでも離婚できないというケースも。
セックスレスでも離婚できないならば、夫婦間の問題を解決するには、法律ではない別の方法(医師やカウンセラーへの診療など)を試さなければなりません。
セックスレスの悩みを、法律問題として解決できるか知っていただくためにも、離婚ができないケースについても詳しく理解する必要があります。
セックスレスの原因が自分にある
セックスレスを理由には離婚できない典型例は、その原因が自分側にあるケースです。
原因を作り出した側から離婚を切り出すのは難しく、家庭裁判所も認めてくれない可能性が高いからです。
例えば、自分の浮気・不倫によって妻に性的魅力を感じなくなり、セックスレスになってしまったとき、その原因はあなたですから、セックスレスを理由にしても離婚はできません。
そして、不倫すると有責配偶者(夫婦の破綻について責任ある配偶者)となり、裁判でも、原則として離婚請求は認められません。
このとき、離婚が認められるためには8年〜10年の別居期間を要するとするのが実務です(参考:「離婚に必要となる別居期間」)。
お互いにセックスを望んでいない
お互いにセックスを望んでいないときや、夫婦生活を重ねるなかで自然と性交渉がなくなったときも、セックスレスは離婚の理由とはなりません。
このとき、セックスしないことが、夫婦のなかでも大きな問題とはなっていないため、セックスレス自体も離婚するほどの重大なこととはいえません。
あなたも性交渉を強く望んでいなかったなら、それを離婚理由にするのはこじつけ。離婚できないのも当然です。
セックスできない正当な理由がある
性交渉しなくなったことに正当な理由がある場合にも、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるほどの重大性がないため、セックスレスで離婚はできません。
正当な理由は、例えば次のものです。
- 夫婦のどちらもが、性交渉しないことに同意している
- 高齢のため、性交渉をしなくても夫婦が円満である
- 仕事が忙しく、頻繁にセックスする余裕がない
- 出張や単身赴任、遠距離恋愛など、物理的にセックスができない
- EDや精神疾患など、病気が原因で性交渉できない
なお、上記のような理由があれば、セックスレスだけで離婚が認められるとは限らないものの、まずは夫婦間で話し合い、解決できないか模索すべきです。
コミュニケーションがなく、改善の努力もなくセックスレスが続けば、裁判で離婚が認められたケースもあります(後述「セックスレスで離婚・慰謝料を認めた裁判例」)。
セックスレスで慰謝料を請求できるか
次に、「セックスレスで慰謝料を請求できるか」を解説します。
セックスレスになると、異性としての魅力を否定された気持ちにさせられるなど、精神的なダメージがあるため、慰謝料請求できるケースもあります。
セックスレスが違法なら、慰謝料請求できる
不法行為(民法709条)による精神的苦痛があれば、不法行為者に慰謝料を請求できます(民法710条)。
離婚してしまうほどのセックスレスだったとき、その責任が相手にあるなら慰謝料をもらえます。
前章で解説した「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたる悪質、重大で違法性の強いセックスレスであれば、離婚を求めるのとあわせて慰謝料請求も検討してください。
例えば、正当な理由なく性交渉を拒み続けたことを理由に離婚してしまったケース、浮気・不倫が原因で性交渉がなくなり離婚せざるを得なくないケースなどでは、慰謝料を払ってもらえます。
なお、セックスレスでも離婚までは至らないとき、不法行為(民法709条)と認められるほどの違法性はないと考えられ、慰謝料の請求は難しい場合が多いです。
また、話し合いにより協議離婚したケースでは、きっかけがセックスレスでも慰謝料までは求めない方もいます。
セックスレスによる慰謝料の相場
セックスレスで離婚に至ったときの慰謝料は10万円ほどの低額な事例から、300万円など高額な事例までさまざま。
相場は明確には定まっておらず、個別事情に応じて、適切な慰謝料額を判断しなければなりません。
これは、単に「セックスレス」というだけで慰謝料を決めているのではなく、セックスレスを含む、離婚に至った夫婦間に起こる多くの事情を総合して慰謝料額を決めているからです。
むしろ、セックスレスしか離婚理由がなければ、それほど高額な慰謝料を得るのは難しいといえるでしょう。
セックスレスの慰謝料が高額になる要因
一言で「セックスレス」といってもその内容はさまざまです。
少しでも慰謝料を増額したいときには、その違法性・悪質性が高いと主張しなければなりません。
慰謝料額の算定で考慮される事情には、次のものがあります。
- セックスレスに至る経緯
性交渉に特に支障がないのにセックスレスになったとき、その違法性が高く評価される - セックスレスとなった理由・責任
相手にセックスレスの責任があるといえるほど、慰謝料が高額となる - セックスレスの期間
長期間セックスレスが続くほど、慰謝料が高額となる - 性交渉を求めたときの相手の態度
無視したり冷たい態度をとったりするほど、慰謝料が高額となる - セックスレスを解消するための努力
性交渉を試みる努力が足りないほど慰謝料が高額となる(病気が理由の場合は治療も必要) - 婚姻期間の長さ、子どもの有無
夫婦生活が終了するときのダメージが大きいほど、慰謝料が高額となる - 慰謝料を支払う側の収入・社会的地位
支払能力が高いほど、慰謝料が高額となる
セックスレスは、それ自体が慰謝料の理由になるばかりでなく、夫婦関係を冷え切らせ、浮気・不倫に走らせる原因となり、家族生活をますます悪化させます。むしろ、浮気・不倫こそがセックスレスの原因だったという例も。
セックスレスとともに相手の浮気・不倫が発覚したときは、これを離婚理由として離婚が可能なほか、慰謝料についても、単なるセックスレスの事案の相場よりも高額になるケースが多いです。
不貞慰謝料の相場は100万円〜300万円が目安で、セックスレスしか離婚の理由がないときに比べ、高額の慰謝料をもらうことができます。
セックスレスが続き、浮気・不倫を疑う事態となったときでも、すぐ問い詰めてしまうと証拠がとれない危険あり。
慰謝料を増額したければ、こっそり探偵・興信所に証拠集めをしてもらうことが、有利に進めるため大切です。
相手が有責なことを証明できれば、交渉で優位に立てます。
セックスレスで離婚・慰謝料を認めた裁判例
裁判例でも、実際に、セックスレスを理由にして離婚したり、慰謝料を認めたりした例があります。
まず、最高裁昭和62年9月2日判決の判例では、「婚姻の本質は、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもつて共同生活を営むこと」と示しており、セックスレスが、あるべき夫婦像とは反していることが明らかにされています。
裁判所もまた、セックスレスが、夫婦において大きな問題となりうると考えているわけです。
セックスレスの問題は、プライバシーにかかわる守秘性の高いため、判決にならず和解するケースが多いですが、いくつかの裁判例をご紹介します。
東京地裁平成29年8月18日判決では、協議離婚に至った元夫婦について、交際開始から同居、離婚に至るまで性交渉がまったくなく、キスやハグなど身体的接触もなかったというケースで、妻からの500万円の慰謝料を認めました。
この裁判例では、性交渉のなかったことに夫側の原因があるばかりでなく、妻が不安を感じて夫に伝えたのに、態度が変わらず、夫婦の精神的結合を深める努力を夫がしなかったことなどの事情が重視されて、不法行為(民法709条)だと判断されています。
横浜地裁昭和61年10月6日判決は、新婚の夫が初夜以来セックスレスなのに、何も理由を説明しなかった点も含めて、100万円の慰謝料を認容しました。
京都地裁昭和62年5月12日判決では、夫の性的不能がセックスレスの理由でありながら、それを説明しなかった点も含めて、200万円の慰謝料を認容しました。
いずれの裁判例も、単にセックスレスだというだけで離婚や慰謝料が認められたのではなく、夫婦関係を修復する努力をしなかったこともあわせて重視されているのがポイントです。
セックスレスによる離婚を有利に進めるポイント
最後に、セックスレスを理由とした離婚を有利に進めるため、注意したいポイントを解説します。
あなたがセックスレスを理由に離婚を求めたいときは、「婚姻を継続し難い事由」だと認めてもらい、かつ、その違法性が強いことを主張して慰謝料を求めるのが適切な方針です。
セックスレスによる離婚の切り出し方
セックスレスを理由に離婚できるケースは多いものの、切り出し方を間違えると問題がこじれ、離婚トラブルが複雑になるおそれもあります。
セックスレスで離婚を決意したときは、プロセスを踏んで進めてください。
「セックスレスになっている」と主張するために、あなた側も性交渉に積極的な必要があります。
「相手の努力が足りなかったから性交渉できなかった」と反論を受けないためです。
さらに、拒絶されたら理由を聞きます。
セックスレスがあなたの責任だと指摘されたら、少なくとも改善の努力をした上で、離婚を切り出しましょう。
以上のプロセスを踏んだ上で、セックスレスを理由に離婚を切り出すようにします。
離婚を切り出すときも、セックスレスが理由だと、恥ずかしくて面と向かってうまく話せない方もいます。
そのようなとき、まずは別居を先行させ、弁護士から離婚請求をしてもらう方法がおすすめです。
セックスレスの証拠を収集する
セックスレスと離婚の問題を有利に解決するには、証拠の収集が重要です。
用意しておきたい証拠は、1つには、セックスレスが「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるほどの重大だと証明するもの、2つ目には、セックスレスに慰謝料を請求できるほどの違法性があると証明するものがあります。
裁判所では証拠が重視されます。そのため、十分な証拠がないと、離婚が認められなかったり、慰謝料が低額になったりするおそれがあります。
夫婦生活というプライベートな場のことは証拠が残しづらいですが、次のものを活用できます。
- 日記
セックスしたかどうかを毎日の記録し、性交渉がなかったことを証明する。
性交渉を求めたが拒否されたときは、その反応、言動も詳細に記録すること。
日常の出来事もあわせて書けば、改ざんや記憶違いと疑われるのを防げ、証拠の価値が上がる。 - 当事者間のメール・LINEなどのやりとり
当事者間のやりとりが記録されていると、セックスレスの理由や経緯、責任の程度が、話の流れなどから証明できることがある。 - 会話の録音
当事者間の会話をボイスレコーダーやスマホで録音する。
会話の流れがわかるよう、一部を切り取るのではなく全体を録音することが大切。
早い段階で別居する
セックスレスだけでは離婚が難しいときは、セックスレスをあくまでも夫婦の破綻のきっかけととらえ、その後に長期間の別居をすることによって離婚を成功させるケースもあります。
このとき、別居期間が長いほど、夫婦関係は破綻しているといえ、離婚を認めてもらいやすくなります。
そのため、セックスレスを1つのきっかけにして離婚を決断したとき、セックスレスだけでは「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたるのか自信のない場合でも、早めに別居をスタートするのが離婚への近道です。
なお、セックスレスに関する証拠は、同居中しか入手できないものも多いため、別居に先立って証拠集めを十分にしておくのが大切です。
正しい別居方法によって、離婚を有利に進めるため、次のまとめ解説もご参照ください。
弁護士に相談する
セックスレスは、夫婦のプライベートな問題なので、親しい友人や親でも、第三者には相談しづらいもの。
そのため、一人で抱え込んで我慢してしまうと、限界に達したときには「離婚・慰謝料請求の準備がまったくできていなかった」ということもよくあります。
プライベートの難しい問題は、専門家に相談するのがおすすめ。
弁護士であれば、セックスレスと離婚の法的問題についても、的確にアドバイスできます。
弁護士は、法律上の守秘義務を負っており、外に秘密を漏らすこともなく、安心です。
離婚問題を弁護士に相談する方法と、事前準備や注意点は、次の解説をご覧ください。
なお、法律面は弁護士の専門分野ですが、セックスレスの心理的、身体的側面については、医師やカウンセラーなどのアドバイスが有益です。
まとめ
今回は、セックスレスと離婚の問題について、弁護士が解説しました。
性交渉について夫婦の考えに差があると、離婚せざるをえないことがあります。
セックスレスは「その他婚姻を継続し難い事由」(民法770条1項5号)として離婚理由となるほか、慰謝料請求の対象となる可能性がありますが、内容や程度、原因などによって、夫婦の状況に合わせたケースバイケースの対応を要します。
セックスレスで離婚や慰謝料を請求するとき、セックスレスの責任が相手にあることや、夫婦間で重大な問題であると証明するためには、証拠を準備しなければなりません。
当事務所のサポート
セックスレスをはじめ、性生活の不一致の問題には、不妊やEDなどプライバシー性の強い問題も含みます。
法律上の守秘義務を負う弁護士であれば、夫婦のセンシティブな問題であっても、法的観点から的確にアドバイスすることができます。
離婚問題にお悩みの方は、弁護士法人浅野総合法律事務所へ、ぜひご相談ください。
セックスレスと離婚の問題によくある質問
- セックスレスを理由に離婚できますか?
-
相手が離婚に同意すれば、セックスレスを理由に離婚できます。また、相手の同意がないときも、セックスレスの違法性・悪質性が高ければ「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたり、離婚できます。詳しくは「セックスレスを理由に離婚できるか」をご覧ください。
- セックスレスを理由に慰謝料請求できますか?
-
セックスレスの原因が相手の非にあるとき、その違法性が強いときは慰謝料を請求できます。セックスレスが原因で離婚せざるをえないケースや、相手の浮気・不倫にセックスレスの原因があるとき、慰謝料を請求するようにしてください。詳しくは「セックスレスで慰謝料を請求できるか」をご覧ください。