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婚約破棄しても慰謝料を払わなくてよい「正当な理由」とは?

婚約破棄すると、慰謝料を請求されてしまうことがあります。夫婦の離婚で慰謝料が生じることはよくありますが、結婚までいっていない婚約の段階でも、夫婦と同じく法的保護を受け、慰謝料請求の対象となることがあるからです。

しかし、婚約破棄したら常に慰謝料請求が認められるわけではなく、婚約破棄に正当な理由があるとき、慰謝料請求は認められません。

正当な理由があるかどうかの判断は、さまざまな事情を総合的に考慮して判断されるため、法律の専門知識が必要です。今回の解説では、婚約破棄して慰謝料を請求された方に向けて、慰謝料の生じない正当な理由の例と、慰謝料請求されたときの対応方法を、裁判例などを踏まえて解説します。

この解説でわかること
  • 婚約破棄に正当な理由があれば、慰謝料は払わなくてよい
  • 夫婦でも離婚ができるケースでは、婚約ならなおさら慰謝料は発生しない
  • 婚約破棄で慰謝料を請求されたとき、正当な理由があると反論する

なお、婚約と浮気についてもっと深く知りたい方は、次のまとめ解説をご覧ください。

まとめ 婚約者に浮気・不倫された時、知っておきたい全知識

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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そもそも「婚約」とは?

婚約とは、将来結婚して夫婦となることを約束することです。

一般的には、プロポーズ、結納、婚約指輪の交換などによって婚約が成立します。もっとも、個別事情によっては、口約束をしていても、まだ法的に保護されるほどの「婚約」が成立していない場合も数多く見受けられます。

婚約成立のポイント
婚約成立のポイント

法的に保護されるほどの「婚約」が成立していないときには、婚約破棄による慰謝料は発生しません。「婚約」が、法的保護に値し、慰謝料が発生する程度に至っているどうかかは、次のような事情により客観的に証明する必要があります。

  • 婚約指輪の交換をしたか
  • 結納品・結納金の授受を行ったか
  • 結婚式場、新婚旅行の予約がされているか
  • 新居の準備をしているか
  • 両親への挨拶をすませているか

これに対して、恋人からリップサービスで単に「結婚しよう」と口約束しただけのとき、法的に保護される「婚約」とは評価できない可能性があります。このとき、婚約はまだ成立していないわけですから、当然ながら、結果的に結婚をしなかったとしても慰謝料を請求されることはありません。

婚約破棄ができるケース、できないケース

喧嘩する男女

前章で解説した、法的な保護に値する「婚約」が成立した後、一方当事者の意思によって婚約を取りやめることを、婚約破棄といいます。

婚約が成立しているときには、男女は互いに誠実に交際する義務(誠実交際義務)があります。そのため、一方的に婚約を破棄することは、誠実交渉義務に違反する債務不履行となります。

もっとも、誠実に交際するかどうかは、最終的には男女の気持ちの問題であり、法律で強制することはできません。そのため「婚約破棄できるかどうか」は、最終的には当事者の自由な意思に委ねられているわけですが、一方的な婚約破棄によって損害を負ったときには、慰謝料請求によりその損害を回復しなければなりません。

婚約破棄できるケース・婚約破棄できないケース
婚約破棄できるケース・婚約破棄できないケース

そこで次に、婚約破棄できるケースと、婚約破棄できないケース(慰謝料が発生してしまうケース)を弁護士が解説します。

婚約破棄できるケース

婚約は、将来の結婚の約束ですが、たとえ結婚の約束をしたとしても、実際に結婚するかどうかは、当事者それぞれの気持ちに委ねられています。一旦婚約したとしても、その後の気持ちの変化により結婚をしたくなくなってしまったとき、結婚を強制することまではできません。

片方の当事者が、結婚をもはや求めていないとき、たとえ婚約が成立しているとしても、将来の人の感情をしばるのは難しい。婚約はあくまで当事者間の約束であり、法的な拘束力まではありません。

そのため、交渉、訴訟などあらゆる段階において、婚約破棄は広く認められています。

ただし、婚約を信じて交際してきた側にとって、婚約破棄をされてしまうと、精神的な損害を負うことになります。そのため、婚約破棄された側の被害を回復するため、慰謝料請求による解決が図られるのです。

婚約破棄で慰謝料が発生するケース

前章で解説したとおり、婚約破棄すること自体は許されるとしても、正当な理由がないときには、慰謝料を支払わなければなりません。

例えば、単に結婚をする気持ちがなくなったとか、相性や性格の不一致、家風が合わないといった理由によって婚約破棄をするとき、これらの理由は「正当な理由」とはいえず、慰謝料が発生する可能性が高いといえます。

一方的な理由によって婚約破棄をされてしまうと、婚約破棄された側に損害が発生します。婚約を保護し、その先にある夫婦関係を保護する法律の趣旨からして、慰謝料請求を認めることでこの被害を回復しなければなりません。

もっとも、「相性が悪い」、「結婚する気がなくなった」などの、一見すると正当な理由にあたらないような理由でも、詳細に掘り下げていくと、実は正当な理由があるケースもあります。

例えば、「結婚する気が無くなった」ことの真の理由が、詳細に事情を聴くと実は相手のモラハラにあったケースもあります。婚約破棄をするときには、結婚することが無理だと考えた理由を掘り下げ、「正当な理由」があるかどうかを検討することが必要です。

慰謝料額の相場

婚約を破棄した場合の慰謝料額の相場は、事案によって異なりますが、一方的な破棄のケースでは、おおむね50万円〜200万円程度が慰謝料の相場となります。

ただし、個別具体的なケースによって異なるため、次のような主な算定要素を総合的に考慮する必要があります。

  • 婚約までの交際期間・経緯
    交際期間が長ければ、その間別の人と恋愛や結婚する機会を奪われた精神的なダメージは大きいと評価される可能性があり、慰謝料が高額化する
  • 婚約成立後の期間・経緯
    婚約前の交際期間と同様、婚約成立後の期間が長ければ長いほど、破棄された時の精神的ダメージが大きいと評価され、高額の慰謝料となる
  • 婚約破棄の原因
    理由のない一方的な破棄や他に好きな人ができたなどの原因で破棄する場合には通常、精神的ダメージが大きくなるため、慰謝料の増額事由となる
  • 婚約破棄の時期
    結婚式直前の時期などの婚約破棄は、慰謝料の増額事由となる

慰謝料以外にも、婚姻破棄による財産的損害が生じている場合には、その損害の賠償請求をできることがあります。結婚に向けて支出した費用(結婚式場・新婚旅行のキャンセル料、新居の初期費用など)があれば二人で折半して負担することになります。

慰謝料と、慰謝料以外の損害賠償請求
慰謝料と、慰謝料以外の損害賠償請求

そのため、損害額は上記、慰謝料だけにとどまらず、相場よりも高額になるケースもあります。

婚約者の浮気についての慰謝料の相場は、次の解説もご覧ください。

婚約破棄でも慰謝料を払わなくてよい「正当な理由」とは?

案内する女性

婚約破棄をしたときでも、「正当な理由」があるときには慰謝料請求を否定するのが裁判例の実務です。

正当な理由があるかどうかの判断は、個別の事情を総合的に考慮しておこなわれるため、過去の裁判例で「正当な理由あり」と認められたケースの事情をよく理解しなければなりません。

正当な理由は、大きくわけて次の7つです。

そこで次に、婚約破棄をしても慰謝料が発生しない「正当な理由」にどのようなものがあるかを解説します。

民法上の離婚原因があるとき

婚約関係が法的に保護される理由は、結婚前ではあるものの、すでに夫婦と同じ程度に保護すべき状況だといえるからです。そのため、夫婦ですら離婚が認められる離婚原因があるとき、婚約を破棄することができ、慰謝料も発生しないのは当然です。

したがって、民法上、離婚訴訟でも離婚を認めてもらうことのできる法定離婚原因があるときは、婚約破棄しても正当な理由があるものと考えられ、慰謝料は発生しません。

民法に定められた法定離婚原因(民法770条1項)は次の5つです。

民法770条1項

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

民法(e-Gov法令検索)

これらの不貞(不倫・浮気)、悪意の遺棄といった法定離婚原因に類似する理由があるとき、婚約を問題なく破棄することができ、慰謝料請求も認められません。

なお、前章でも解説したとおり、民法上の法定離婚原因が存在しなくても、婚約破棄は広く認められています(ただし、「正当な理由」がないときには、婚約破棄が認められても、慰謝料による金銭的な調整が必要となります)。

この点は、結婚してより強い法的保護を受ける場合に、法定離婚原因がなければ離婚そのものが認められないことと比べて、婚約の法的保護が弱いことを意味しています。

結婚と婚約の違い
結婚と婚約の違い

相手の合意があるとき

婚約は、将来の結婚に向けた恋人間の約束ですから、両当事者の合意によって成立します。

そのため、パートナーの合意があるときには、婚約をなくすことができます。このように、両当事者の合意によって婚約関係を消滅させることを、婚約の解消といい、一方的におこなわれる婚約破棄とは区別されます。

婚約破棄と婚約解消の違い
婚約破棄と婚約解消の違い

両者の合意で婚約を解消するときは、結婚しないことに正当な理由があるため、慰謝料は発生しません。

浮気が発覚したとき

婚約したにもかかわらず、他の異性と肉体関係(性交渉)を持つと、さきほど解説した民法上の法定離婚原因(民法770条1項)のうちの「不貞行為」にあたります。つまり、婚約者による浮気を理由に婚約破棄するケースです。

相手の浮気を理由に婚約破棄せざるをえないときには、婚約を破棄した側には慰謝料は発生しません。夫婦であっても不貞によって離婚できるわけですから、婚約が問題なく破棄できるのは当然です。

むしろ逆に、浮気・不倫をした婚約者への慰謝料請求や、不倫相手への慰謝料請求ができます。

重要な事実についての虚偽が発覚したとき

婚約者が、重要な事実について嘘をついていたとき、これを理由に婚約を破棄しても、「正当な理由」があるものとして慰謝料は発生しません。

「正当な理由」にあたるような婚約者の嘘には、

  • 学歴
  • 職歴
  • 年齢
  • 勤務先
  • 年収・資産
  • 子どもの有無

といった「そのような嘘をつかれていなければ、婚約しなかったであろう」という重要性があるものが該当します。

なお、重要な事実について嘘だった必要があるので、その詐称の程度が、結婚の実現をさまたげるようなものである必要があり、些細な嘘であれば「正当な理由」のある婚約破棄とはいえません。

回復困難な病気にかかったとき

婚約者が回復困難な病気にかかってしまったことを理由に婚約破棄をするとき、「正当な理由」があるものとして慰謝料が発生しない場合があります。

ただし、病気の回復困難の程度や、症状の内容によって異なる判断が必要となります。

経済状態が極度に悪化したとき

婚約後に多額の借金が発覚した場合など、婚約者の経済状況が極度に悪化したときにも、婚約破棄に「正当な理由」が認められる可能性があります。

経済状態に大きな変化が生じたとき、そのまま予定どおり結婚し、夫婦生活をしていくことが困難となることが多いからです。

DV・モラハラを受けたとき

婚約者にDVの事実があったときは、婚約破棄に「正当な理由」が認められる可能性が高いです。

したがって、相手の暴力を理由に婚約破棄したとき、婚約破棄したことによる慰謝料は発生しません。むしろ逆に、DVを受けたことについて、慰謝料請求することができます。

モラハラについても、その期間や程度によっては、婚約破棄をしても慰謝料が発生しない場合があります。

婚約破棄に「正当な理由」があると認めた裁判例

弁護士浅野英之
弁護士浅野英之

婚約破棄に「正当な理由」があると認められ、慰謝料が発生しなくなる理由の例を挙げましたが、以下では、過去の裁判例にもとづいて、「正当な理由」を認めた裁判例を弁護士が紹介していきます。

「正当な理由」が認められるかどうかは個別の事情に応じて異なるため、実際に正当な理由について判断した裁判例を知ることによって、その判断基準を理解することができます。

著しく社会常識を欠く行為(福岡地裁小倉支部昭和48年2月26日判決)

事案新婦が新婚初夜、実家に逃げ帰って婚約を破棄した。
裁判所の判断「新郎として弁えるべき社会常識を相当程度に逸脱した原告の異様な言動を直接最大の原因とするものであり、その結果新郎に対する新婦のそれまでの印象を一変し、且つ今後結婚生活を共にする決意を全く失わせるに至った」として、婚約破棄には正当な理由があるものと判断した。

この裁判例(福岡地裁小倉支部昭和48年2月26日判決)は、新郎の披露宴での態度や花嫁の親戚に対する挨拶などの礼儀・マナーがなかったこと、非常識な態度があったことなどが、婚約破棄の「正当な理由」となると示されました。

この裁判例のように、婚約者に社会常識から逸脱した言動があり、それが婚約破棄の直接的な原因となっているときには、「正当な理由」があるとして慰謝料が発生しない可能性があります。

性交不能(高松高裁昭和46年9月22日判決)

事案男性側に、女性と正常な性交をすることができない肉体的欠陥があったため、女性側から婚約を破棄した。
裁判所の判断「女性と正常な性交をすることができない肉体的欠陥があったものというべきであるから、…(略)…本件婚約を解消するにつき正当な事由があった」と判示し、男性側からの慰謝料請求を認めなかった。

夫婦になると、他の異性と肉体関係(性交渉)を持つことは不貞行為にあたり許されないため、夫婦間での性生活が順調に進むことは、結婚する上でとても大切なことです。

性生活の不一致にも程度があるため、性交渉が不十分であるというだけでは足りないおそれがありますが、性交不能なときは、この裁判例(高松高裁昭和46年9月22日判決)は、婚約破棄に「正当な理由」があると認めました。

なお、裁判例(最高裁昭和37年2月6日)では、性交不能は夫婦の離婚原因としても認められています。

相手方家族の問題点(東京地裁平成5年3月31日判決)

事案婚約破棄をされた男性側が、女性に対し、婚約破棄の原因が女性の両親などにあるとして損害賠償を求めた。
裁判所の判断「被告が被告三男ら両親の不尽な反対意見に迎合し正当な理由なく原告と被告の婚約を解消したことを認めるに足りる証拠はない」として、むしろ婚約解消を決意した理由は別にあるとし、慰謝料請求を認めなかった。

この裁判例(東京地裁平成5年3月31日判決)では、証拠が足りていなかったことなどから、結論としては男性側の慰謝料請求を認めませんでした。

ただし、その判示の内容からすると、婚約破棄をした側が、両親など家族の反対意見に流されて婚約破棄をしてしまったケースでは、「正当な理由」がないとして慰謝料請求が認められる可能性があることを示唆しています。

「正当な理由」に当たらない婚約破棄理由とは?

悩む女性

婚約破棄をした理由が「正当な理由」にあたらないときには、婚約破棄をされてしまった側の精神的損害を回復するために、慰謝料が発生します。

そこで、正当な理由にはあたらない婚約破棄理由がどのようなものかについて、例をあげて解説していきます。

婚約破棄する側の浮気・不倫

法的に保護される「婚約」が成立した後は、交際相手との間で誠実交際義務を負い、他の異性との間で性的関係を持つことは禁止されています。

夫婦であれば、他の異性との肉体関係(性交渉)は「不貞行為」として許されませんが、夫婦になる前であっても、婚約をした後であれば同様に許されないということです。

そのため、婚約破棄する側が、自分が浮気・不倫をしたにもかかわらず、そのことを理由に婚約破棄することは身勝手であり、このような理由は「正当な理由」にはあたらないのは当然です。

両親の反対による婚約破棄

家族、親族との不和が、婚約破棄の理由となることがあります。確かに、結婚は本人間の問題だけでなく、家族間の問題が重要となることがあります。

しかし、単に両親が結婚に反対しているという理由だけで婚約破棄をすることは、「正当な理由」にはあたらず、慰謝料が発生する可能性が高いです。たとえ自分の両親が反対していたとしても、婚約したのであれば、婚約者のために両親を説得したり、盾になって守ったりする努力が必要となります。

明確な理由のない婚約破棄

婚約破棄に明確な理由がないとき、身勝手な婚約破棄と同様に「正当な理由」は存在しないと判断される可能性が高いです。

性格の不一致、価値観の相違など、抽象的でそれほど強いものとは思えない理由も同じく、「正当な理由」の存在しない婚約破棄として慰謝料が発生することがあります。

もっとも、上記の場合でも、細かい事情の違いによっては「正当な理由」が認められる可能性もありますので、個別具体的に検討する必要があります。

婚約破棄で、慰謝料を請求されたときの対応方法

弁護士浅野英之
弁護士浅野英之

最後に、婚約破棄をして、慰謝料を請求される側の立場で、慰謝料請求に対してどのように対応したらよいかについて、実際の対応方法を弁護士が解説します。

婚約破棄をして慰謝料請求をされ、「正当な理由があるのではないか」と考えている方は、お早めに弁護士にご相談ください。

「婚約が成立していない」と反論する

そもそも、法的な保護に値する「婚約」が成立していなければ、慰謝料は発生しません。そのため、「婚約が成立していない」と反論することができるか検討するのが第一です。

具体的には、相手がいつの時点のどのような行為をもって婚約が成立したと主張しているのかなどについて、証拠に照らし詳細に検討する必要があります。

婚約破棄に「正当な理由」があると反論する

次に、今回詳しく解説したとおり、仮に婚約が成立していたとしても、婚約破棄に「正当な理由」があるときは慰謝料請求は認められません。

そのため、民法上の法定離婚原因(民法770条1項)にあたらないかや、裁判例で「正当な理由」が認められた事例に似ていないかといった点から、反論を検討します。

このとき、「正当な理由」があるとして慰謝料請求を認めなかった過去の裁判例などに照らして、個別事情について主張立証する準備をしていきます。

「損害が生じていない(もしくは損害は小さい)」と反論する

慰謝料請求が認められないほどの婚約破棄の「正当な理由」までは認められなくても、その程度によっては、婚約破棄に一定の理由があるものとして、損害が生じていない(もしくは、請求額よりも少ない)という反論ができるケースがあります。

そのため、婚約破棄に至ってしまった経緯や理由を検討した上で、婚約破棄の違法性が小さいことを主張し、慰謝料の減額を求めます。

もっとも、正当な理由がある場合においても、財産的な負担(出費)の分担義務が認められる可能性はありますのでその点は注意が必要です。

逆に相手に慰謝料請求する

DV、モラハラ、不貞など、相手方の非が原因で、婚約破棄に至ってしまった場合には、婚約破棄に正当な理由があり慰謝料が発生しないことは当然、逆に相手に対して、慰謝料の請求が認められる場合があります。

男性が婚約相手の女性に性的関係を強要したり、侮辱的な態度をとっていた事案においては、女性側からの婚約破棄には正当な理由があると判断され、男性には婚約破棄を誘致した責任があるとして慰謝料50万円の支払が命じられました(東京高裁昭和48年4月26日判決)。

このように、婚約破棄をした側からの慰謝料請求が認められる可能性があるため、正当な理由の存在に関する事情だけではなく、慰謝料が認められる事情についても検討し、証拠を収集・保全しておくことが大切です。

まとめ

今回の解説では、婚約破棄をしても慰謝料が発生しない「正当な理由」にどのようなものがあるかについて解説しました。

「正当な理由」の有無は、さまざまな事情を総合的に考慮して判断するため、少しの事情の違いが結論に影響しかねません。そして、専門的な判断であるため、法律や過去の裁判例に基づく知識や経験が要求されます。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚・男女問題に精通しており、婚約破棄の問題について多くの実績を有しています。

婚約破棄をしたいと思われている方や実際に慰謝料を請求されている方は、是非一度、弁護士にご相談ください。

婚約破棄のよくある質問

婚約破棄でも慰謝料が発生しない場合はありますか?

婚約破棄は、常に慰謝料が発生するわけではありません。結果的に結婚しないとしても、正当な理由があるときには慰謝料は発生しません。もっと詳しく知りたい方は「婚約破棄ができるケース、できないケース」をご覧ください。

婚約破棄に正当な理由があるケースとはどのような場合ですか?

婚約破棄の正当な理由とは、離婚が許される理由(法定離婚原因)を参考にして判断するとわかりやすいです。不貞(不倫・浮気)やDVなどがこれにあたります。詳しく知りたい方は「婚約破棄でも慰謝料を払わなくてよい『正当な理由』とは?」をご覧ください。

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