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再婚したら養育費はどうなる?減額される?払う側・受け取る側の注意点

再婚した場合に養育費がどうなるのか、多くの方が抱く疑問でしょう。

再婚した場合、新しい家庭への配慮が必要となるため、養育費を減額または免除とすることを希望する人も多いものです。あらかじめ取り決めた養育費が、どのような場合に見直されるのかを理解しておくことは、養育費を払う側・受け取る側の双方にとって重要です。

今回は、両親の一方が再婚して、養育費が変動する可能性について弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 一方が再婚しても、養育費の支払い義務は継続するのが原則
  • 扶養家族の増加や養子縁組があると、養育費が変わる可能性がある
  • 再婚しても自動的に減額されることはなく、相手の同意か法的手続きが必須

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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再婚と養育費の基本的な関係

はじめに、再婚と養育費の関係について解説します。

親の一方が再婚した場合、「養育費に変更があるのでは」と不安を抱く方も少なくありません。例えば「元妻が再婚し、その相手が高収入なので養育費を減額できないか」「再婚して扶養すべき家族が増えたため、支払い負担を減らしたい」といった相談は多く寄せられます。

再婚によって家計や生活状況が変わることは珍しくなく、それに伴って養育費の見直しを希望する人も多いです。しかし、再婚したからといって自動的に増減することはなく、養育費の変更には相手の同意、もしくは家庭裁判所での調停や審判といった手続きが必要です。

養育費の基本

まず、養育費の基本について解説します。

養育費は、離婚後に子と同居しない親が、子の生活や教育に要する費用を負担するための金銭で、親の扶養義務に基づくものです。金額は、両親の収入や子供の年齢・人数などを考慮し、「養育費・婚姻費用算定表」を参考に決めるのが通常です。

支払期間は、子供の成人(満18際)までが原則ですが、大学進学などの事情がある場合、当事者の合意や裁判所の判断で延長されることも少なくありません。毎月一定額の支払いとするのが基本ですが、一括払いするケースもあります。

後のトラブルを避けるため、養育費の取り決めは離婚協議書に明記し、公正証書にするのが望ましいです。公正証書があれば、未払いが生じても、裁判を起こすことなく強制執行によって財産を差し押さえることが可能です。

離婚協議書を公正証書にする方法」の解説

再婚したら養育費に影響するか

次に、再婚が養育費にどのような影響を及ぼすかについて解説します。

再婚しても支払い義務は続く

養育費の支払い義務は、一方の親が再婚して新たな家庭を築いたとしても消滅しません。

養育費は、法律上の親子関係に基づく扶養義務の一部であり、親子関係がなくならない以上、再婚しても払わなければなりません。一方、再婚相手は、法的に扶養義務者とは認められないので、養育費の義務を負いません。つまり、養育費の負担はあくまで「実の親」に限られ、再婚相手の収入や経済状況は直接的な影響を及ぼさないのです。

「再婚をしたのに前の配偶者との子を養うのは負担だ」という感情や、再婚相手からの「前の妻(または夫)の子を養わないでほしい」という不満もあるかもしれません。しかし、このような感情は、法的義務とは全く別の問題です。

減額や免除が認められる場合もある

一方で、再婚により新たな扶養家族が増えるなど、家庭環境が大きく変化した場合、従来通りの養育費を支払い続けるのが困難なケースもあります。

再婚による状況の変化から、養育費を見直すケースもあります。

ただし、養育費の変更は自動的に認められるわけではなく、受け取る側との合意や、家庭裁判所での調停や審判など、法律に基づく正式な手続きが必要です。

自己判断で支払いを停止したり減額したりすると、重大なトラブルの原因となるため、必ず適切な手順を踏むようにしてください。

「再婚で養育費が減額される可能性のあるケース」参照。

養育費の強制執行」の解説

再婚で養育費が減額される可能性のあるケース

再婚により生活環境が変化した場合、養育費の減額を検討する理由となります。

例えば、再婚をきっかけに新たな扶養義務が生じた場合(再婚相手との間に子供が生まれた、連れ子と養子縁組したなど)、支払う側の負担が増大します。これまで通りの養育費を支払い続けることが困難となると、家庭裁判所での減額が認められるケースもあります。

例えば、次の事情がある場合、養育費の減額が認められる可能性があります。

  • 再婚により扶養家族が増えた。
  • 再婚相手との間に子供が生まれた。
  • 再婚相手の連れ子と養子縁組をした。
  • 再婚を機に転居し、職を失った。
  • 再婚相手が裕福で養育費は不要。
  • 子供が経済的に自立した。
  • 子供が成長し、必要な養育費の水準が変化した。

減額交渉を円滑に進めるには、相手に納得してもらえるよう丁寧に説明する必要があります。また、裁判所に申し立てる場合には、経済状況の変化や生活実態を証明する資料を提出し、具体的に説明することが重要です。再婚による生活環境の変化が、養育費にどう影響するか、今後の見通しを知るには、早い段階で弁護士のアドバイスを受けるのが有益です。

なお、離婚後に相手が再婚したとしても、その事実を自動的に知る手段はありません。そのため、離婚時にあらかじめ「再婚したら通知・報告する」旨を離婚協議書に盛り込んでおくと、後々の対応がスムーズに進められます。

離婚に強い弁護士とは?」の解説

養育費を受け取る側(例えば「母親」)が再婚した場合

次に、具体例で解説します。養育費を受け取る側(例えば「母親」)の再婚のケースです。

この場合、母側は「再婚後も引き続き養育費を受け取れるのか」という不安を抱く一方、父側は「再婚したのだから養育費を払いたくない」と要望するでしょう。この際の養育費の扱いは、再婚相手と子が養子縁組したかどうかによって異なります。

再婚相手と子が養子縁組した場合

養子縁組とは、法律上の親子関係を新たに成立させる手続きです。

母親が再婚し、その再婚相手と子供が養子縁組をした場合、再婚相手は法律上の「父親」となり、子供に対する扶養義務を負うこととなります。このような事情があると、実父の養育費の支払い義務は軽減されたり、場合によっては消滅したりする可能性があります。つまり、再婚相手が新たに扶養義務を負うので、実の親の負担を見直すべきという考え方です。

ただし、養子縁組を理由に自動的に養育費が減額・免除されるわけではなく、支払い義務の変更を求める側が協議を申し入れるか、家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。家庭裁判所では、養子縁組の有無に加えて、子供の実際の生活状況や、養育を主に担うのは誰か、子供が困窮しないかといった事情を考慮し、総合的に判断されます。

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再婚相手と子が養子縁組しない場合

再婚したからといって、必ずしも再婚相手と連れ子が養子縁組するわけではありません。

養子縁組をしない場合、再婚相手は子供に対する法的な扶養義務を負わないため、実の親の養育費の支払い義務は原則として継続します。再婚相手に十分な収入があり、経済的にゆとりのある暮らしをしていたとしても、それだけで直ちに減額が認められるわけではありません。

家庭裁判所では、扶養義務を負う実親の収入状況や、子供に必要な生活費・教育費などを基準として判断されます。したがって、「母親が再婚したから」という事実だけでは、養育費の変更が認められる可能性は低いのが実情です。

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養育費を支払う側(例えば「父親」)が再婚した場合

次に、養育費を支払う側(例えば「父親」)が再婚したケースについて見ていきます。

再婚した父は「新たな家族ができたのに、前妻との子を養うのは重荷だ」と不満を抱きます。一方で母も「再婚したら養育費の支払いが止まるのでは」と不安を感じるでしょう。また、再婚相手から「元妻の子にお金を払ってほしくない」と求められることもあります。

再婚相手との間に子が生まれた場合

再婚相手との間に新たに子が生まれた場合、その子に対しても親としての扶養義務が生じます。親の責任は全ての子に平等に及ぶので、家庭の収入と支出のバランスを考慮し、養育費の見直しが必要になることがあります。

再婚相手との間に生まれた子供の生活費や教育費が新たに必要となることで、支払者の経済的な余裕が減少し、バランスが崩れてしまうケースがあるからです。このような事情は、家庭裁判所における養育費の減額調停において、考慮される可能性があります。

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再婚相手の連れ子と養子縁組した場合

再婚相手の連れ子と養子縁組をした場合、養子に対しても扶養義務が生じます。

養子縁組によって、支払い義務を負っている父親に新たな扶養対象が増えることになり、負担が大きくなる可能性があります。その結果、従来通りの養育費を支払いは難しくなることもあります。元の家庭にいる子供に対する養育費について、見直しを検討すべき状況といえるでしょう。

新たな扶養義務者が増えない場合

一方、再婚相手に連れ子がいても、養子縁組しなければ扶養義務は生じません。

再婚相手にも十分な収入があり、経済的に自立しているなら、再婚したとしても負担は増えないこともあるでしょう。この場合、支払う側が再婚しても、養育費には影響しません。

ただし、自主的に連れ子への経済的支援を行っていると、その支出が家計に影響するために、養育費の減額を求める根拠として主張してくることがあります。とはいえ、任意の支援は法的な扶養義務とは別なので、受け取る側は、養育費の支払いに影響を与えるものではないと強く反論すべきです。

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お互いに再婚した場合の養育費の扱いは?

両親がお互い再婚した場合、それぞれが新しい家庭を築くことになり、子供との関わり方や養育費の取り決めにも影響を及ぼすことがあります。

まず大前提として、再婚によっても養育費の支払い義務が自動的に変わることはなく、このことは双方が再婚するケースでも同じです。養育費は「実の親」としての扶養義務に基づくものであり、再婚の有無にかかわらず、その責任は継続するからです。ただし、再婚によって扶養する家族が増えたり、家計の収支が変動したりといった事情があって見直しを検討することはあります。

父母が共に再婚すると、新しい家庭で扶養すべき家族が互いに増えることもあり、各家庭の状況を踏まえ「養育費の支払いは互いに不要とする」と合意するケースもあります。ただ、このような合意をする場合、トラブルを未然に防ぐため、必ず文書により記録すべきです。

再婚後は、新しい配偶者の理解を得ることも大切です。特に、養育費を支払う側が再婚した場合、家計を共にする配偶者の協力が欠かせません。

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再婚して養育費の減額を求める手続き

次に、養育費の減額を求める手続きについて解説します。

養育費の減額や免除を希望する場合は、必ず話し合いや調停、審判といった手続きを踏み、合意や裁判所の判断を得てから実行することが重要なポイントです。

取り決めた養育費を勝手に打ち切ることは許されません。たとえ再婚で家庭の状況が変化しても、手続きを踏まずに支払いを止めると、法的措置(支払い請求訴訟や強制執行)を受けるリスクがあります。滞納分も遡って請求されるので、打ち切りは慎重に判断してください。

STEP

当事者間の話し合い

養育費の減額を希望する場合、最初に行うのが相手との話し合いです。

話し合いでは、お互いの現在の経済状況や生活環境の変化を正直に伝え、減額の必要性や具体的な金額について協議しましょう。円滑に進めるには、「なぜ減額が必要なのか」という理由を、できるだけ具体的に伝えることが重要です。

協議離婚の進め方」の解説

STEP

合意書の作成

協議の際は、感情的にならず冷静に進めてください。一方的な要求や感情的な言動は控え、相手の立場も尊重しながら合意を目指しましょう。

話し合いで合意に達したら、口約束で済ませるのではなく、必ず書面に残しておいてください(例:「養育費変更の合意書」。新たな養育費の金額や支払い方法、支払期間を明記し、双方が署名・押印する)。合意内容に強い効力を持たせるには、離婚協議書と同じく、公正証書化することも検討してください。

離婚協議書の書き方」の解説

STEP

養育費減額調停の申立て

話し合いが決裂したら、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てます。調停では、調停委員が、双方の事情を踏まえ、感情的な対立を和らげながら妥当な金額を調整します。

申立てにあたっては、現在の収入や支出、生活状況を証明する資料(給与明細、確定申告書、家計収支表など)を提出します。再婚による家族構成の変化、扶養家族の増加についても、住民票や戸籍謄本などで説明しましょう。

調停での判断は、子供の利益を最優先に、支払う側の支払い能力や生活状況、家庭環境の変化などを総合的に考慮されます。通常は、再度「養育費・婚姻費用算定表」を参考に減額の計算をするのが通例です。合意が得られない場合は、審判に移行します。

再婚と養育費のよくある質問

最後に、再婚と養育費について、よくある質問に回答しておきます。

再婚後に養育費が増額されることがある?

再婚しても、自動的に養育費が増額されることはありません。もっとも、一定の条件を満たす場合、再婚後に養育費を増額することが可能です。

例えば、再婚後に、支払う側の収入が大幅に増えた場合は、養育費の増額を求めることができます。再婚したこと自体が直接の増額理由ではありませんが、新しい家庭での収入状況や生活水準の向上もまた、増額をする根拠となることがあります。

子供の成長や教育費の増加、医療費や特別な支援の必要性も、養育費の増額が認められる理由となります。

増額を希望する場合も、まずは協議による解決を目指し、合意が難しい場合は家庭裁判所に養育費の増額調停を申し立てます。調停や審判では、収入の増減や子供の状況などを証拠によって判断し、養育費の適正額を決定します。

年収1000万円の養育費の相場」の解説

支払い済みの養育費は返還請求できる?

原則として、支払い済みの養育費の返還請求は認められません。

養育費は、子供の生活を支えるためのもので、性質上、既に過去の生活に充当された分について返還は難しいと考えられるからです。

ただし、例外的に返還請求が認められる場合もあります。例えば、過払いや二重払いなど、明らかなミスに基づくケースや、実の親に隠して再婚相手と養子縁組し、養育費を受け取り続けたような悪質なケースなどです。

返還請求を行うには、具体的な証拠と共に、相手方と話し合うか、必要に応じて裁判所に訴訟を提起することが必要です。

再婚による面会交流への影響は?

「相手が再婚したら子供に会えなくなるのでは」と不安に思う方もいます。

面会交流は、子供が両親の愛情を感じながら健やかに成長するのに不可欠であり、再婚を理由に打ち切るのは不適切です(なお、新しい配偶者や家庭環境に配慮して、その方法や頻度を見直すことはあります)。

養育費の支払いと面会交流とは無関係であり、「養育費を払わないなら面会交流を打ち切る」といった交換条件は不適切と考えられています。親権者の再婚によって連絡が取りづらくなる場合は、面会交流調停も検討してください。

離婚計画の立て方」の解説

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、両親の一方の再婚と、養育費との関係について解説しました。

再婚後の養育費について、養育費を払う側と受け取る側それぞれの立場で、注意すべきポイントが多くあります。再婚相手の収入や新たな家族構成が、必ずしも養育費に直接影響するわけではありませんが、状況の変化によっては養育費の見直しが必要なケースがあります。特に、扶養義務者が増えて養育費の支払いが苦しくなることは、減額や免除を検討する大きな要因となります。

養育費の変更を求めるとき、話し合いで解決できるのが理想ですが、「新しい家庭のために」といった理由だと、払う側と受け取る側の意見が割れることも多いです。決裂した場合は、調停を申し立てて、家庭裁判所で決めてもらう方法も検討してください。

再婚後の養育費に関するトラブルを避けるには、事前に、弁護士のアドバイスを受けておくのがお勧めです。

この解説のポイント
  • 一方が再婚しても、養育費の支払い義務は継続するのが原則
  • 扶養家族の増加や養子縁組があると、養育費が変わる可能性がある
  • 再婚しても自動的に減額されることはなく、相手の同意か法的手続きが必須

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参考解説

養育費や婚姻費用は、家族の生活を支えるための重要な金銭です。請求の手続きや適正額の計算方法を理解することが解決のポイントとなります。

別居中の生活費や子供の養育費について、どのように請求すべきかお悩みの場合、「養育費・婚姻費用」に関する解説を参考にしてください。

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