離婚問題にお悩みでも、「弁護士への相談はハードルが高い」と感じる方も多いことでしょう。話し合いで円満に離婚できればよいですが、難航するときには、弁護士に相談すれば、法的見地から解決を早められるケースもあります。
弁護士への相談は、事前予約制が原則で、電話・メールなどで予約し、法律事務所に訪問するという流れで進めます。離婚問題について弁護士から的確なアドバイスを得て、解決へと導いてもらうためには、限られた相談時間を有効に使い、事情をしっかりと整理してわかりやすく弁護士につたえるのが大切です。
離婚問題は、1つとして同じケースはなく、相談者の事情に応じた解決策を考えなければなりません。そのため、あなたがどんな目的を持ち、何に悩み、どう主張・反論したいか、弁護士に理解してもらわなければなりません。十分な事前準備をすれば、法律相談を効果的に活用できます。また、心の準備ができ、心理的なハードルをいくぶんか解消できます。自分のなかで、法的な問題点について整理することにもつながります。
今回は、離婚問題を弁護士に相談するときの流れと、事前準備や注意点について、離婚問題にくわしい弁護士が解説します。
- 弁護士に離婚問題の相談をするとき、相談時間を有効活用するため事前準備が重要
- 弁護士への相談の事前準備では、求める方針、希望について率直な気持ちをまとめる
- 弁護士に相談内容をわかりやすく伝えるため、離婚に向けた経緯などを時系列でメモする
離婚問題を弁護士に相談する方法と流れ
離婚問題に強い弁護士の探し方
離婚問題を弁護士に相談するとき、弁護士の探し方には、次の方法があります。
- 友人・知人に弁護士を紹介してもらう
- 離婚問題を扱う弁護士をインターネットで探す
- 法テラス(日本司法支援センター)
- 市区町村役場の無料相談
信頼できる友人・知人が離婚経験者であるなど、離婚問題に強い弁護士を知っているときには、弁護士を紹介してもらう方法があります。ただし「夫婦で争っていることを知られたくない」など、プライバシーに関わる重大な問題を、身近な人には相談しづらいことも多いでしょう。
法テラスや役所の相談は、費用負担が少なく済むメリットがあります。法テラスでは相談料の援助を受けられ、同一の相談内容につき3回までの相談料が無料(1回30分)です。ただ、法テラスでは相談する弁護士を選べず、離婚問題を得意とする弁護士に相談できるとはかぎりません。また、収入の少ない人向けのため、収入と資産の要件を満たす必要があるほか、十分な弁護活動が得られないおそれがあります。
離婚問題についてのお悩みを抱えているとき、インターネットで検索して、離婚問題を多く取り扱う弁護士を探し、法律相談する方法がおすすめです。インターネットで探す方法であれば、離婚問題の経験が豊富かどうかをホームページで確認でき、知識経験、解決事例の豊富な弁護士に相談できます。
法律相談のタイミング
離婚問題にお悩みの方の中には、法律相談のタイミング、つまり「いつ弁護士に相談したらよいか」、お悩みの方も多いことでしょう。
- 「もう少し揉めたら相談しよう」
- 「弁護士費用をかけてまで解決する問題ではない」
- 「自分ひとりでうまくやれるのでは」
と先延ばししているうちに取り返しのつかない事態に陥ってしまう方もいます。しかし、法律相談が必要かどうか、素人判断で決めるのは危険です。
法律相談のタイミングは、できるだけ早期がおすすめです。離婚問題の得意な弁護士に任せても、離婚問題がこじれ複雑化した後では解決は容易ではありません。少しでも早い段階から弁護士にアドバイスをもらい、介入してもらうことで、より良い解決が目指せます。
離婚の法律相談のなかには、DV・モラハラや虐待など、後から金銭で解決するのが難しく、一刻を争うものもあります。そのため、今回の解説のとおり事前準備が重要であることは当然ですが、準備が整わなかったとしても、法律相談を先延ばししてしまうことは逆効果です。
法律相談までの流れ
相談する弁護士を決めたら、サイトを確認し、電話・メール・問い合わせフォームから相談日時の予約をとります。
離婚問題は、プライバシーに関わる重大な問題であり、法律相談は予約制が原則です。ふらっと立ち寄っても法律相談を受けることはできないため、あらかじめ予約をとり、日時を指定して訪問するようにしてください。相談予約した後は、相談日までの時間を利用して、今回の解説を参考に法律相談前に事前準備をしっかりと行ってください。
弁護士による法律相談は、1時間枠が一般的です。弁護士が詳しい事実関係を聴取し、的確なアドバイスを行うため、1時間程度のまとまった時間を確保してもらうようにしています。日中は仕事で来所が難しいときでも、夜間や土日祝日の法律相談が可能な弁護士に相談することができます。
法律相談の費用
法律相談の費用(相談料)は「30分5000円」、「1時間1万円」程度が目安です。離婚問題では「初回相談無料」としている法律事務所もあります。
無料相談の事務所もありますが、相談内容や相談時間に制限があったり、相談する弁護士を選べなかったりするため、お悩みの法律問題について無料で十分に相談できるか、電話で事前に確認しておくのがおすすめです。
追加で費用を払えば法律相談を延長してもらえますが、限られた時間と費用で少しでも有効なアドバイスをもらうためには、事前準備により相談したいポイントをわかりやすくまとめ、弁護士に端的に伝えるようにしてください。
離婚問題を弁護士に相談するための事前準備
離婚問題を弁護士に相談するにあたり、限られた相談時間を少しでも有意義なものとし、的確なアドバイスをもらうために、法律相談前に行うべき事前準備について解説します。
弁護士の相談には時間制限がある場合があり、他の相談者がいるときには終了時刻の延長ができないことがあります。また、延長すると相談料が余計にかかってしまうことから、事前準備をしっかり行うことが重要です。
【準備1】離婚したい理由を整理
法律相談の1つ目の事前準備は、離婚したい理由を整理しておくことです。つまり、「なぜ離婚したい」と決意したのかを、第三者である弁護士にも理解できるよう簡潔に説明する準備をしておくことです。
離婚を決断する理由は人それぞれです。不貞(不倫・浮気)、DVやモラハラなど明確な理由がある人もいれば、そうでない人もいます。性格の不一致、性生活の不一致、金銭感覚の違い、価値観の違いなど、言語化しづらい日常的な不平・不満の積み重ねが理由のとき、しっかり整理して説明しなければ、弁護士から有効なアドバイスを得られません。
さらに、「他に好きな人ができた」、「実は自分が不貞行為をしてしまった」などのケースでは、できれば隠したいと思うかもしれません。しかし、弁護士に真実を話さず、誇張したり隠し事したりすれば、正しいアドバイスが得られません。
離婚理由を整理するとき重要なことは、法定離婚原因(民法770条1項)にあてはまるかを検討することです。法定離婚原因があれば、相手が離婚を拒否していても離婚裁判で強制的に離婚できるからです。法定離婚原因が相手にあるとき、あわせて慰謝料請求も請求できます。
民法770条1項
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
「性格の不一致」を理由とする離婚相談をよく聞きますが、ただ性格や価値観が合わないといった理由で離婚を試みるとき、法定離婚原因がないため、相手が離婚に応じてくれないと離婚は難しいです。もちろん、離婚時の慰謝料請求もできません。
夫婦生活を続けるのであればコミュニケーションやフィーリングが大切であることは理解できますが、離婚問題について弁護士から、早期離婚に向けた良い解決策を授かりたいのであれば「なんとなく離婚したい」といった相談ではなく、離婚理由をしっかり整理するという事前準備をすることをおすすめします。
【準備2】事実関係を時系列で整理
法律相談の2つ目の事前準備は、事実関係を時系列で整理しておくことです。
結婚して夫婦になったにもかかわらず離婚を決意するに至るには、複雑な気持ちの動きがあることでしょう。しかし、気持ちにまかせて感情的に弁護士に吐き出しても、良い法的アドバイスは得られません。離婚を思い立った理由、離婚の決断、交渉の経緯などを時系列にまとめることで、弁護士にわかりやすく説明できます。
離婚の法律相談では、気持ちが先走って感情的になったり、憶測や予想に過ぎないことにこだわってしまったり、相手の非難や不満に終始してしまったりすることがあります。カウンセリングであればよいのですが、弁護士への法律相談の目的は「離婚問題の解決」にあるはずです。時系列でまとめることで、法律相談の時間をより有益にすることができます。
法律相談時の弁護士にうまく説明できるか心配な方は、時系列に整理したメモを作成し、持参するのがおすすめです。
【準備3】希望する解決方針を検討
法律相談の3つ目の事前準備は、希望する解決方針を検討しておくことです。
離婚問題では、法的に有利な解決を目指すことは当然ですが、なによりも、相談者のお気持ちに沿った最適な解決方針で進めていくことが重要だからです。はじめに検討すべき解決の希望には、大きく分けて次の3つがあります。
- 速やかに離婚したい
- 条件次第では離婚してもよい(有利な離婚条件を勝ち取りたい)
- 絶対に離婚したくない(離婚を拒否して復縁したい)
そして選択肢ごとに、更に検討すべき解決方針は複数あります。細かい解決方針のバリエーションは、次章以降で解説する「離婚とお金」の問題、「離婚と子ども」の問題のかけあわせで決めていきます。
解決方針を弁護士に伝えたら、求める方針や条件について、法的に実現可能かどうか、弁護士のアドバイスを聞くようにしてください。悩みが不明確なままだと、解決策を出さないまま、人生相談をして終了するようなことにもなりかねません。離婚のお悩みに向き合うことはとても辛いことですが、法律相談前にぜひ検討してみてください。
【準備4】「離婚とお金」の問題を検討
法律相談の4つ目の事前準備は、「離婚とお金」の問題を検討しておくことです。その前提として、夫婦の財産状況を明らかにしておくのも重要です。
特に、相手のほうが収入が高いときや、あなたが専業主婦(専業主夫)のとき、離婚後の生活に不安があるであろう一方、離婚時に請求できるお金がたくさんある可能性があります。
法律相談時に検討しておくべき「離婚とお金」の問題には、次のものがあります。
不動産や預貯金、美術品や金融資産など、夫婦でつくりあげた財産が高額であるほど、「離婚とお金」の問題が大きな争いの種となります。財産分与や慰謝料の支払いを拒否しようとして相手が財産隠しをしてしまうときは、財産の調査が必要です。
法律相談を受ける前に、夫婦双方の考えられる財産をすべて書き出し、一覧にして財産状況をわかりやすく整理しておくことがおすすめです。
【準備5】「離婚と子ども」の問題を検討
法律相談の5つ目の事前準備は、「離婚と子ども」の問題を検討することです。離婚する夫婦に未成年の子どもがいるときには、子どもに関する離婚条件が最優先の課題となります。
法律相談時に検討しておくべき「離婚と子ども」の問題には、次のものがあります。
親権については他のものでは代替しがたく、金銭解決することも難しいです。互いに譲歩することができないとき、大きな争いとなり、離婚協議が決裂して離婚調停に発展することが多くあります。
そのため、法律相談のとき、争いの大きさがどの程度かを弁護士に正しく把握してもらうためにも、離婚後の親権についての希望を弁護士に伝えるようにしてください。
離婚問題を弁護士に相談する時の持ち物
離婚問題を弁護士に相談するとき、持参しておきたい持ち物について解説します。
証拠となる資料
離婚について有利な解決を得たり、慰謝料請求を認めてもらったりするためには、証拠が必要です。法律相談にて、どのような解決が可能か弁護士に正しく判断してもらうために、手元にある証拠について、できるだけ持参してください。
資料を見ながら話すことで、弁護士に問題点を理解してもらいやすくなるメリットもあります。当事者には一見役立ちそうもないものの中から、弁護士の法的観点から見ると、思わぬ重要な証拠が発見されることもあります。
- 離婚相談で役立つ資料
:家族関係がわかる資料(戸籍謄本、住民票など) - 財産分与の相談に役立つ資料
:財産の一覧表、財産に関する証拠(預貯金通帳、証券口座の明細、不動産登記簿謄本、固定資産税通知書、不動産売買契約書、住宅ローンの返済計画書、生命保険証書など) - 不貞慰謝料の相談に役立つ資料
:不貞行為の証拠(探偵・興信所の報告書、写真・動画、メール・LINEのやりとり、宿泊先のレシートなど)、精神的苦痛の証拠(診断書、カルテ、通院履歴)、暴力の証拠(ケガの写真、診断書、110番通報記録など) - 養育費の相談に役立つ資料
:夫婦の収入の証拠(給与明細、源泉徴収票、課税証明書、確定申告書など) - 親権の相談に役立つ資料
:育児監護の実績を証明する資料(母子手帳、育児日記、写真など)
なお、どのようなものが証拠となるか、手元に存在するかがわからないとき、先に法律相談を受けることで、証拠収集についても弁護士からアドバイスがもらえます。
時系列メモ、相談内容のメモ
法律相談で言い忘れ、相談のし忘れなどがないよう、相談内容のメモを持参するのがおすすめです。あわせて、わかりやすく説明するため、事実関係について時系列でまとめたメモも持参しましょう。
時系列は、整理の1つの指針となり、あなたの頭の中の悩みをまとめるのに役立ち、自分の行動を客観的に見返すことができます。離婚をはじめとしたあなたの人生についてみつめなおすきっかけにもなります。相談内容が整理され、わかりやすく、かつ、簡潔に弁護士に伝えられるため、より的確なアドバイスを得ることができます。
離婚問題を弁護士に相談する時の注意点
最後に、離婚問題を弁護士に相談するとき、注意しておきたいポイントについて解説します。
【注意1】必ず本人が相談する
友人や家族が離婚問題に苦しんでると、心配になり「少しでも助けになるなら、代わりに法律相談を受けてこよう」という気持ちは理解できます。実際、親や友人から、「代わりに相談したい」という問い合わせを受ける例は少なくありません。
しかし、離婚問題を解決するにあたっては、個別の事情をよく聴取しなければ、正しい解決策は得られないため、必ず本人が相談するのが重要なポイントです。
解決方針の希望は人によって違うため、本人が求める解決とはかけはなれたものとなってしまっては、弁護士のアドバイスは無意味です。むしろ逆効果なことすらあります。夫婦間の離婚問題は、外部には相談しづらい問題のため、実は本人しか知らない特殊事情が多く存在すると、結論が変わってしまうこともあります。
なお、辛い思いをしている方を精神的に支えたいと思うときは、本人が承諾するのであれば、本人とともに来所し、法律相談に同席してあげることをおすすめします。
【注意2】自分に不利な情報も伝える
法律相談で正確なアドバイスを得るために、自分に不利な情報もすべて正直に伝えることが重要です。
自分に有利な情報だけを伝え、不利な情報を伝えない人がいますが、このような形で弁護士からアドバイスを受けてもうまくいきません。実際には不利な事情が存在するわけですから、アドバイスどおりの解決にならない可能性が高いです。これでは、弁護士に法律相談する意味がありません。
弁護士は守秘義務を負っていますから、あなたが伝えてほしくないと指示した情報について誰にも漏らすことはありません。また、不利な情報について的確に反論しておくことが、逆に良い解決につながることもあります。
【注意3】事案に応じた解決が必要
離婚についてネット上の法律知識や、離婚経験者から聞いたことを鵜呑みにすることは危険です。ネット上の情報には、情報の正確性、信用性が疑わしいものもありますし、離婚経験者といえども1つの解決事例に過ぎません。
実際の法律相談では、十分な時間をとって細かい事情を丁寧にお聴きし、あなたの状況に応じた最適な解決をオーダーメイドで提供します。そのため、ご自身で集めた情報とは必ずしも同じ結論とはならないことがあります。
このような事情聴取には十分な時間が必要なため、電話・メールのみでの軽い相談は、少なくとも離婚問題の解決にはあまり有益とはいえません。
まとめ
今回は、離婚問題を弁護士に法律相談するときに知っておきたい、相談の方法、事前準備と注意点を解説しました。
離婚の法律相談では「法律相談は初めて」、「一生に一度の経験だ」という方も多くいます。法律相談を有効活用し、お悩みの離婚問題を有利に解決するためには、正しい相談方法を知る必要があります。法律相談を最大限活用するため、事前準備は欠かせません。
「弁護士と世間話やパートナーの愚痴を言って時間が過ぎてしまった」ということのないよう、本解説を参考にしっかり準備してください。
当事務所のサポート
弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚問題を得意とし、これまで多くのご相談をお聞きしてきました。
ひとたび離婚問題の交渉がこじれると、スピーディな解決は困難で、長丁場となってしまうおそれがあります。このようなとき、できるかぎり早期の段階で弁護士による法的なアドバイスを得ることが有効です。
離婚問題のよくある質問
- 離婚問題を弁護士に相談する流れはどのようなものですか?
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離婚問題は、個人のプライバシーに関わる重要な相談のため、ご相談は予約制となります。完全個室にて、ほかの方と顔をあわせず、弁護士に相談できるよう配慮しているためです。お電話かお問い合わせフォームより予約いただき、約束の日時に直接事務所まで起こしください。詳しくは「離婚問題を弁護士に相談する方法と流れ」をご覧ください。
- 離婚問題を弁護士に相談するときの注意点はありますか?
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離婚問題を弁護士に相談するとき、相談をできるだけ有効活用していただくためには、本人が直接相談すること、相談前の事前準備として時系列メモを作成することといった点が大切です。ただし、スピーディにご相談いただくため、準備が十分にととのっていなくても、まずは弁護士に相談していただければ、専門家として責任をもって対応いたします。詳しくは「離婚問題を弁護士に相談する時の注意点」をご覧ください