離婚調停の終了のしかたには、複数のケースがあります。最もよくあるのは「離婚が成立して終了」というパターンですが、それだけではありません。実際には、離婚調停のおよそ半分は、離婚成立ではない結論に至っています。
離婚調停を、離婚成立で終わらせることができたときや、逆に、不成立で終了してしまったとき、その他の終了原因によって終了してしまったときなど、終了後に確認しておくべきこと、今後の進め方などを知っておくのが重要なポイントです。
特に、離婚が成立しなかったときには、今後どのようにすれば離婚できるのか、それまでの生活はどのようにしたらよいのかなど、不安が付きないことでしょう。
今回は、離婚調停の終わり方の種類と、離婚成立・不成立で終了したときに確認しておくべきことについて、離婚問題にくわしい弁護士が解説します。
- 離婚調停の終わり方には、合意による終了と、合意によらない終了がある
- 離婚調停で離婚が成立しなかったとき、訴訟すべきかどうか、状況に応じた検討が必要
離婚調停の終わり方の種類
離婚調停の終わり方には、大きくわけて、次の6つの種類があります。
調停離婚
離婚調停のなかで、離婚条件について夫婦間で合意できれば、調停成立により終了します。このように、調停で成立する離婚のことを「調停離婚」といいます。
調停離婚が成立すると、「申立人と相手方は本日離婚する」という内容の調停調書が作成され、調停成立の時点で離婚することが決まります。調停離婚が成立したときは、離婚届と調停調書の写しを役所に届け出ると、戸籍に離婚したことが記録されます(離婚自体は、調停成立時になります)。
なお、離婚を成立させて終了する方法には、調停離婚する方法のほかに、調停の席上で離婚届を出すことに合意し、離婚届を出して離婚をする方法もあります。
この方法の場合は、離婚届を提出した時点で離婚が成立することとなります。そのため、不受理届が提出したり、約束に違反して離婚届をなかなか提出しなかったりといったときに備え、離婚が成立したことを確認してから、調停を取り下げるようにします。
離婚以外の合意(別居・同居など)
離婚調停では、離婚以外の方針で合意がなされて、調停を終了することもあります。
離婚条件について合意できないときに、「当分の間別居して、冷却期間をおく」と約束する例などがこれにあたります。そもそも離婚するかどうかについて当事者に争いがある場合や、離婚を求める側が有責配偶者で、長期の別居期間を経ないと離婚が認められないケースなどで、このような解決となることがあります。
同居を合意して離婚調停を終了するときには、次のような合意しておくことが多いです。
- 別居期間
冷却期間をおき、その後に見直しを行うときには、別居期間を具体的に定めることがあります。なお、別居期間についても合意ができないとき「当分の間」とすることが多いです。 - 別居中の子どものこと
どちらが監護するか、養育費・学費のこと、面会交流のことなどを合意しておきます。 - 別居中の生活費
(参考解説:「別居中の生活費を請求する方法と、婚姻費用の相場」)
一方で、再び同居することを合意して調停を終了させるケースもあります。一旦は離婚調停をしたものの、相手が離婚を拒否し、復縁を望んできたために思い直したというとき、同居を合意して解決する例があります。
離婚調停にまでなってしまったが、再び同居することを合意するケースでは、あわせて次のような点に注意して合意するようにしてください。
- 同居開始時期
離婚調停まで進んだとき、同居を開始するためにも準備が必要なことが多いです。同居開始時期を合意しておくようにしてください。 - 生活の問題点の改善
離婚調停にまで至ってしまった生活の問題点を、同居するのであれば改善することを誓う必要があります(ギャンブルをしない、酒を飲まない、不倫しない、DVをしないなど)。 - 同居中の生活費
離婚調停になるほどの問題点があるとき、同居したとしても生活費が支払われないおそれもあり、念のため合意しておくのがおすすめです。
(参考解説:「同居中でも相手に婚姻費用を請求する方法と注意点」)
いずれの場合でも、離婚成立とも調停不成立ともならずに、一定の合意をすることで調停を終了させるときには、今後も夫婦関係が続き、復縁に至るというケースが少なくありません。
調停不成立
離婚調停では、離婚を含めて一切の合意ができないというとき、離婚調停は不成立により終了します。
調停委員と裁判官は、調停成立の見込みがないときには、調停不成立とし、離婚調停を終了させることができます。つまり、調停不成立とするかどうかは、家庭裁判所の判断に任されており、たとえ夫婦が調停の継続を望んでいたとしても不成立とされるおそれは一定程度あります。
これ以上の調停での話し合いに意味がないと考えるときは、当事者の側から調停委員に対して、不成立にするよう希望を出すこともできます。
取下げ
離婚調停を申し立てた側が、離婚調停の申立を取り下げると、調停手続きは終了します。
離婚調停を申し立てた側(申立人)は、相手方の同意をとることなく、自分の判断で調停を取り下げることができます。調停を取り下げるためには、取下書を家庭裁判所に提出するだけで足ります。
調停を取り下げるケースには、次のような事情があります。
- 相手が調停手続きに参加してこないため、取下げて訴訟に移行するとき
- 復縁したいなど、離婚する気持ちがなくなったとき
- 調停外の話し合いで離婚がまとまったとき
- 離婚調停でこれ以上話し合いをしても、解決に至る可能性が全くないとき
ただし、取下げによって終了させるときには、離婚にともなう金銭請求の時効に注意が必要です。
なお、離婚を求める戦いでは、「調停前置主義」というルールがとられており、離婚調停を先に起こして置かなければ、離婚訴訟をすることはできません。
このルールとの関係で、調停申立をし、ある程度調停での話し合いをしておかなければ、取下げて訴訟に移行することを認めてもらえないことがあります。離婚訴訟を起こしたとききちんと説明できるよう、調停での話し合いの状況、取下げに至った理由などをきちんと記録しておくようにしてください。
調停せずに終了
裁判所が、これ以上離婚調停を続けていくことが不適切であると判断したときには、調停手続きを終了させることがあります(家事事件手続法271条)。
家事事件手続法271条
調停委員会は、事件が性質上調停を行うのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるときは、調停をしないものとして、家事調停事件を終了させることができる。
家事事件手続法(e-Gov法令検索)
このような手続きがとられることはごく例外的なケースですが、不当な目的で何度も、連続で離婚調停を起こされているときなど、調停を進めるのは適切でないと判断されるケースで、調停をしないで手続きを終了することができます。
当然終了
夫婦の一方が死亡してしまったとき、これ以上調停を続けていく意味がなくなってしまうため、離婚調停は終了します。
夫婦の一方が死亡すると、これにより夫婦関係が解消するため、離婚調停をする理由がなくなるからです。相手の死亡を知ったときには、戸籍などで確認をし、裁判所に伝えるようにしましょう。
離婚調停が終了した後の確認事項
次に、離婚調停が終了した後に確認しておくべきことについて、その終了のパターンごとに弁護士が解説します。
離婚成立により終了したとき
離婚成立によって終了するとき、調停調書を作成します。調停調書は、調停の最後に、夫婦そろって調停室に入り、裁判官が条項を読み上げて確認をします(DVがあったケースなど、危険があるときは同席せず、弁護士のみで行うなどの配慮がなされます)。
離婚調停でつくられる調停調書には、裁判の判決と同等の効果があります。そのため、調停調書に定められたことに違反するときには、強制執行(財産の差押え)ができます。
調停終了時に、調停調書の申請をし、手数料を支払います。あわせて、自分と相手方の双方に送達してもらえるよう申請しておくことが通常です。
調停調書を入手したら、調停終了から10日以内に離婚届の提出を行います。このときの離婚届には、調停調書を添付する必要がありますが、相手方や証人の署名押印は不要です。
離婚不成立で終了したとき
調停不成立によって終了したときには、しばらく時間をおいて検討するか、もしくは、離婚訴訟を起こすかの選択をすることとなります。
この選択では、離婚訴訟としたときに、裁判所が離婚を認めてくれるかどうか、という点が重要な判断基準となります。裁判所に離婚を認めてもらうためには、民法770条1項に定められた「法定離婚原因」が存在するかどうかを確認しておく必要があります。
民法770条1項
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
民法(e-Gov法令検索)
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
また、離婚訴訟では、多くの時間と費用がかかるほか、裁判内容が公開されるのが原則です。
なお、調停不成立により終了したときには、2週間以内に離婚訴訟を提起すれば、調停の申立時に支払った申立手数料1200円を、離婚訴訟の手数料にあてることができます。
婚姻費用分担請求調停があわせて申し立てられている場合
離婚調停のゆくえには複数のパターンがあり、戦略的に行動すべきだと解説しました。そして、離婚を成立させるか、それとも、調停不成立とすべきかは、離婚調停とあわせて申し立てられることの多い、婚姻費用分担請求調停のゆくえによっても異なります。婚姻費用分担請求調停は「婚費調停」ともいいます。
婚姻費用分担請求調停は、夫婦の生活費の分担について話し合う調停であり、収入の高いほう(例えば夫)は、収入の低いほう(例えば妻)に対して、養育費・婚姻費用算定表で算出された一定額を支払わなければなりません。このとき、組み合わせによりさまざまなケースを想定しなければなりませんが、調停の終了する代表的な例について、注意点を解説していきます。
離婚が成立して終了するケース
婚姻費用とは、婚姻期間中の夫婦の相互扶助義務から発生する生活費の分担のことです。そのため、離婚調停において、離婚成立となるとき、離婚後にはもはや支払い義務はなくなります。
したがって、実務では、婚費調停と離婚調停が同時に申し立てられたとき、まずは婚費調停から審理を進めていくのが通常です。先に婚費について合意できると、婚費調停は終了し、その後に離婚の審理に移ります。そうすると、離婚の審理の間、収入の高いほう(例えば夫)は、収入の低いほう(例えば妻)に婚費を支払わなければならず、調停を長引かせるのが不利益となるおそれがあります。
婚姻費用が合意できたときは、調停申立ての時点にさかのぼって支払われるのが実務です。
なお、婚姻費用についての調停が成立に至らなくても、一方の生活が困窮してしまうときなどには、一定の仮払いを合意しておくようにします。
調停不成立となり、婚費を決めて終了するケース
離婚調停がまとまらず、調停不成立で終了するときは、婚費についても重要な局面となります。
調停不成立のとき、今後は当分別居したり、もしくは、同居に戻ったりという結論になるわけですが、このとき「婚姻費用を支払うかどうか」、「支払うとしてどの程度の金額となるか」が今後離婚したい(もしくは復縁したい)と思えるかどうかに強く影響してくると考えられるからです。
ただし、離婚調停について不成立となってしまうとき、夫婦間の合意は形成しづらい状況と考えられます。婚姻費用分担請求調停についても不成立となるときには、婚姻費用分担審判に移行し、裁判所に婚費を決めてもらうことができます。
相手が有責配偶者(夫婦の破綻について責任のある配偶者)のケースなど、交渉上の有利な立場にあるとき、婚姻費用についても自分に有利な解決(もらう側であれば「増額」、払う側であれば「減額」)を主張しておくようにしてください。
取下げによって終了するケース
婚姻費用分担請求調停もまた、離婚調停と同じく、取下げによって終了することができます。
例えば、次のようなケースでは、婚費調停を取り下げるケースがあります。
- 離婚が先に成立したとき
- 調停外の合意により、婚姻費用が支払われるようになったとき
- 現在もらっている生活費よりも、調停・審判の相場が低いと考えられるとき
まとめ
意を決して離婚調停を申し立てても、その離婚調停でも解決ができず、終了してしまったとき、どう進めていけばよいか迷われる方が多いです。
離婚調停は、調停委員が加わって話し合いを促進してくれる点で、とても解決力の高い制度ですが、しかし、ご家庭の状況によっては、離婚調停だけでは解決できないこともあります。
離婚調停が終了となるケースこそ、自身の決断について、弁護士の法律面からの客観的アドバイスを受けることにより、道筋が定まることがあります。
当事務所のサポート
弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚調停、離婚訴訟のいずれについても、豊富な解決実績を有しており、相談者の立場に応じた戦略的なアドバイスをすることができます。
離婚問題にお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所へご相談ください。