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財産分与で子供の貯金はどうなる?子供名義の預貯金も離婚時の分与の対象?

離婚時の財産分与は、夫婦間だけでなく、子供にも関係します。特に、子供名義の預貯金について、親の協力によって築いた財産とどのように区別するかが、よく争点となります。

相談者

子供の貯金は、妻に取られてしまう?

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便宜上、子供名義にしていた財産は?

「子供の預貯金」にも種類があり、純粋な「子供の貯金」といえるものだけでなく、小遣いやお年玉の貯蓄、夫婦のお金を子供の将来に残すためのもの、税金などの便宜から名義を子供に移したものなど、多種多様です。学資保険のように「学費のため」という用途が明らかなものもあります。

重要なのは、「名義が子供である」という形式ではなく、夫婦の協力や寄与の有無、原資や利用目的といった実態に応じて、財産分与で誰に帰属させるかを決めるべきである点です。

今回は、財産分与で子供の貯金はどうなるか、離婚時に分与の対象となるケースとならないケース、具体的な対策などについて弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 子供名義の預貯金も、夫婦の共有財産であれば財産分与の対象となる
  • 名義ではなく実質で判断して、子供に帰属させるべき財産は分与されない
  • 両親共に子供に愛情があるときは、話し合って親権者が財産を取得すべき

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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子供の貯金と財産分与の関係

財産分与は、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を公平に分配する制度です。

婚姻期間中に形成された「共有財産」を対象に、夫婦の貢献度に応じて2分の1ずつの割合で分けるのが原則です。共同生活において形成された財産が対象とされ、結婚前に取得した財産や相続・贈与で得た資産は「特有財産」として除かれますが、名義が子供のものとされた財産が対象になるかどうかが、しばしば争いになります。

子供名義で貯金するケースには、例えば次の目的があります。

  1. 子供の将来の教育資金の準備
  2. 独立や結婚資金の準備
  3. 相続対策としての生前贈与
  4. 子供に金銭感覚を教育するため

子供名義の預貯金は、形式的には子供個人のものです。離婚時の財産分与は、夫婦の財産を対象とするので、子供名義で明確に区別されている預貯金なら、分与の対象外です。

しかし実際は、未成年など収入のないうちから子供名義の口座を開設して資金を貯めている家庭もあり、多くの場合、子供の将来の教育や生活のため、親の収入から預け入れられ、親が管理運用しています。この場合、本来は夫婦のものとして管理すべき資産が、たまたま子供の名義だったからといって分与されないのは不公平なケースもあります。

したがって、名目上は子供の貯金でも、実質は家庭全体の貯金と言えるときは、その実質は「共有財産」であり、離婚の財産分与の対象となります。

離婚時の財産分与」の解説

子供名義の預貯金は財産分与の対象になる?

子供名義の預貯金は、財産分与の対象になるケースと、ならないケースがあります。

財産分与の対象となる「共有財産」は、夫婦の協力によって築いた財産と言えるかどうかを実質的に判断します。そのため、夫や妻個人の名義となっている場合や、子供名義とされている場合も、その実質が夫婦の共有財産といえる場合は分与の対象となります。

分与対象となるケース、ならないケースは次のように考えられます。

  • 対象にならないケース
    子供名義で明確に管理され、親の共有財産と区別されている場合、離婚時の財産分与の対象とはなりません。純粋な子供の貯金には、お小遣いやお年玉などの貯蓄があります。また、子供の将来の教育資金に充当するなど、明確な目的をもって積み立てられた預貯金は、子供の保護のためにも分与されるべきではありません。
  • 対象になり得るケース
    子供名義の預貯金が、親の共有財産と混ざり合って管理されていたり、明確な区別がなされず一体化していたりする場合、分与対象とされる可能性があります。特に、子供が未成年で収入がないといった場合、子供名義で相当額の貯金があるのは不自然です。

子供名義の預貯金が財産分与の対象となるかを正確に判断するには、資金の出所が重要です。どのような資金を貯めているかが不明確だと、親の財産と混在し、子供の将来のために貯めた資産が損なわれてしまう危険があります。

子供のために貯めているのなら、「学費用」など、専用の口座で管理すべきです。また、そのことを明らかにするため、貯金の目的について記録を残しておいてください。親の口座との間で頻繁に入出金を繰り返したり、お金に困ったからといって家計の生活費に流用したりすると、純粋な子供の貯金とはみなされなくなってしまいます。

財産分与の割合」の解説

財産分与でよく争いになる子供名義の預貯金

計算

次に、財産分与でよく争いになる子供名義の預貯金について解説します。

名義が子供でも、実質が夫婦の共有財産なら財産分与の対象となりますが、民法762条により「特有財産である(分与の対象とならない)」と主張する側に立証する責任があります。つまり、「子供の財産であり、親の財産とは区別すべき」と説明したいのであれば、その記録を残し、証拠を保存しておかなければなりません。

なお、離婚後に子供を監護する親が、子供名義で隠し財産を作っていることもあるので、徹底した調査が欠かせません。

子供が自分で稼いだ預貯金

子供名義の預貯金の中に、子供自身が稼いだお金が含まれる場合、それは子供固有の財産とされ、財産分与の対象にはなりません。例えば、子供がアルバイトで稼いだお金が該当します。

自由な処分を許して贈与した預貯金(小遣い・お年玉など)

子供に自由な処分を許して贈与されたお金もまた、子供自身の財産です。例えば、お年玉やお小遣いなどが貯められた預貯金は子供の財産であり、財産分与の対象とはなりません。このことは、その贈与されたお金の原資が夫婦の収入や資産であっても同じことです。

例えば、自由な処分を許して贈与されるものは、次の通りです。

  • お年玉
  • お小遣い
  • 入学祝い・進級祝いなどの祝い金
  • 誕生日プレゼントなど

とはいえ、子供が幼いうちにお年玉や入学祝いなどで多額の贈与がされると、現実的には両親が管理、運用する家庭も多いでしょう。親戚からの祝い金などは、子供への贈与というより、今後の育児や教育に充てるために夫婦に贈与されたと評価すべき場合もあります。

したがって、贈与の金額や時期、子供の年齢、実際の用途などの事情を総合考慮して「実質的に夫婦の共有財産か」が判断されるので、資金移動や贈与時のやり取りについての記録を残しておくことが重要です。

相手の財産を調べる方法」の解説

子供のために使うことを夫婦で合意した預貯金

夫婦が共に、子供のために使うことを合意した預貯金は、あまり争いにはなりません。

この場合、その実質が夫婦の共有財産であるかどうかを争うまでもなく、離婚時の財産分与では、離婚後に子を監護する親に帰属させることが多いです。両親が離婚しても親子関係はなくならないので、親権者とならない親も子供への愛情があるなら、円満に解決できます。

ただし、金額が大きくなると、「背に腹は代えられない」として、自分のものだと主張する夫や妻もいます。この場合、親権者の側で、「子供のために使うと合意していた」と主張して分与を請求したいなら、婚姻中にそのように約束した証拠を残しておくのがよいでしょう(例:メールやLINEで資金の使途を約束していた証拠など)。

「学資保険」は特に、子供の教育費用に充当するという目的が明確です。

学資保険の財産分与」の解説

出産祝い金

出産祝いが誰のものか、法律に定めはなく、ケースごとに判断する必要があります。

出産祝いは、子供名義で贈与されることが多いですが、実際は、生まれたばかりの子供が使うことはできないので、育児に充てる資金として夫婦に贈与されたと評価できます。そのため、出産祝いを子供名義の口座に貯めていた場合、夫婦の共有財産として財産分与の対象とするのが原則です。

なお、出産・育児には相当なお金がかかるため、子供が幼いうちに離婚してしまったケースでは、夫婦の合意のもと、出産祝い金は子供の固有の財産として、離婚後の親権者が管理するという解決とするケースは少なくありません。

公的な給付(出産一時金・児童手当・補助金など)

出産一時金、児童手当その他の補助金といった公的な給付が、子供名義の口座に貯金されていることがあります。これらもまた、子供の養育や教育のための費用と考えられるので、夫婦の共有財産として分与の対象とすべきケースが多いです。

なお、離婚後に受領できる児童手当などの公的な給付は、受取人変更手続きを行い、実際に子を監護・養育する親が受け取れるようにしましょう。

子供がいる夫婦の離婚」の解説

子供名義の預貯金を財産分与する際の注意点

はてな

次に、子供名義の預貯金について、財産分与で注意すべきポイントを解説します。子供の将来のための預貯金を守ることができるよう、しっかりと準備しておいてください。

夫婦の財産と分けて管理する

まず、子供の貯金を、夫婦の財産と分けて管理・運用することが大切です。

長年貯めてきた預貯金口座だと、内訳が不明確になり、どのような資金かを説明できなくなってしまう人もいます。しかし、これでは「子供の貯金である」と説明できません。子供名義で開設した口座は、親の財産とは切り離し、子供の教育資金など、限定された目的のために用いるお金だけを貯めるようにしてください。

開設時の書類や夫婦間のやり取り、その後の入出金履歴などの証拠を保存しておけば、口座に貯まったお金が子供のためのものであると証明する助けになります。金融機関によりますが、取引履歴の保存期間は10年程度なので、手元の通帳もなくさず保管しておいてください。

入出金の時期に注意する

預貯金口座の実態を明らかにするには、入出金の時期にも注意してください。

例えば、「年始にまとまった入金がある」という事情は、その中身がお年玉であることを基礎づける根拠となります。逆に、子供が幼いのに毎月一定額の入金があったり、配偶者の賞与時にまとまった入金があったり、生活費用の口座への出金があったりすると、家庭のお金と同視され、財産分与の対象となる可能性があります。

子供名義の預貯金に関する裁判例

最後に、子供名義の預貯金の財産分与について判断した裁判例を解説します。

裁判例にも、子供の財産とした例(財産分与の対象外とした事例)と、夫婦の共有財産とした例(財産分与の対象とした事例)のいずれも存在します。裁判例で重視された事情を知ることは、あなたのケースでどのように判断されるかを知る参考になります。

子供の財産とした裁判例

子供名義の預貯金が、子供の財産であり、財産分与の対象とはならないと判断した裁判例には、次のケースがあります。

東京地裁平成16年3月18日判決

子供名義の預貯金について、一時的に不動産の返済資金に使用するなど、両親が管理していたことがあるが、主に原告が管理していたことなどから、分与の対象にはしないのが相当であると判断した裁判例。

なお、預貯金の額が大きいものの、子供がダウン症であることを考慮して、親権者となる親が取得するのが相当であると判断されました。

高松高裁平成9年3月27日判決

子供名義の預貯金(長女名義の預金243万3546円、三女名義の預金137万3991円)について、子供に対する贈与の趣旨で預金されたものであるとされ、財産分与の対象とはならないと判断された裁判例。

なお、財産分与の中で婚姻費用が清算される場合はあるものの、夫婦が円満であったときに負担した分については清算すべきでないと判断しました。

夫婦の共有財産とした裁判例

形式的には子供名義の預貯金でも、子供の財産ではなく夫婦の共有財産であると評価され、財産分与の対象とした裁判例を紹介します。

東京地裁平成16年1月28日判決

子供名義の預貯金について、子供が財産を管理できる年齢ではなく、その用途も限定されていなかったことなどを理由に、夫婦の共有財産として財産分与における清算の対象となると判断した裁判例。

原告らの最年長の長女も現在10歳であり、上記の預金を自ら管理できる状態にないことは明らかである。このような年齢の子供の名義の預金については、用途を限定して他人から譲り受けたような金銭であればともかく、お年玉等の蓄積や、原告X2及び被告夫婦が将来のため子供名義で預金をしたとした場合には、実質的に夫婦の共有の財産とみるのが相当である。したがって、…(略)…預貯金全部が清算の対象となる。

東京地裁平成16年1月28日判決

離婚に強い弁護士とは?」の解説

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、子供の貯金が財産分与でどのように扱われるかについて解説しました。

財産分与を検討する際、夫婦それぞれの名義以外に、子供名義の財産が存在する家庭は少なくありません。離婚手続きにおける子供の貯金の扱いは、子供の将来を守るために非常に重要です。財産の名義が子供でも、実質は家庭の余剰金を貯蓄していたに過ぎないケースでは、その名義にかかわらず実質で判断され、財産分与の対象となる可能性があります。

公正な分与を実現するには、子供名義の預貯金について財産分与の対象外であると主張したければ、両親の資金とは区別し、その用途を明確にした上で、証拠を残す努力をしなければなりません。特に、離婚後に親権者となる側では、子供の財産として、相手に分与せずに取得したいならば、離婚前にしっかりと準備しておく必要があります。

この解説のポイント
  • 子供名義の預貯金も、夫婦の共有財産であれば財産分与の対象となる
  • 名義ではなく実質で判断して、子供に帰属させるべき財産は分与されない
  • 両親共に子供に愛情があるときは、話し合って親権者が財産を取得すべき

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参考解説

財産分与は、結婚期間中に形成された資産を整理し、公平に分割するための重要な手続きです。財産の評価方法や分割の割合などが争われると、法律知識に基づいた解決が必要となります。

トラブルを未然に防ぐために、以下の「財産分与」に関する詳しい解説を参考に対応してください。

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