浮気・不倫が発覚したとき、誓約書を書かせ、その事実を証拠化し、再発を防止するのが大切です。
浮気・不倫の誓約書は、浮気・不倫をきっかけに別れたり、離婚したりしたいシーンではもちろん、「すぐには離婚したくない」とか、夫婦関係を円満につづけたいケースでもとても有効。
どちらの方針でも、浮気・不倫の「証拠」となる誓約書を作れば、慰謝料請求をはじめ、交渉で優位に立てます。
このとき、誓約書には、将来の離婚に備え「離婚条件はこちらの要望にしたがう」という内容を書きましょう。
今回の解説は、浮気・不倫されたとき書かせる誓約書について、書式や例文を踏まえ、男女問題に精通した弁護士がわかりやすく解説します。
当事務所では、浮気・不倫の誓約書作成を、弁護士に依頼できるサービスを提供しています。
詳しくは、下記をご覧ください。
なお、浮気・不倫されてもなお、さまざまな事情ですぐには離婚できない方もいます。
復縁を求める方は、次のまとめ解説もぜひご覧ください。
まとめ 復縁したい人が離婚請求に対応するとき理解しておきたい全知識
浮気・不倫されたら、誓約書を書かせるべき理由
夫(または妻)の浮気・不倫が発覚したとき「誓約書を書かせる」という対応は、実務でもよくある方法です。
まず、「なぜ、誓約書を書かせるべきなのか」という理由を理解してください。
誓約書を書かせる理由は、離婚・復縁のいずれの方針かによって、若干違います。
ただ、どちらの方針でも有効なのに変わりありません。
浮気・不倫の問題を解決するとき、「なぜ誓約書を書かせるのが効果的なのか」、つまり、誓約書を書かせる理由を知っておけば、より効果的な誓約書を準備できるようになります。
【理由1】重大だと理解させる
ワイドショーで芸能人の浮気・不倫が報道されるほど、浮気・不倫は日常的なもの。
そのため、軽い気持ちで浮気・不倫をした夫(または妻)は、それほど重大な問題だと理解していないおそれがあります。
浮気・不倫を「する側」にとっては一時の気持ちの浮つきでも、「される側」の被害者にとっては大問題。
ことの重大さを、浮気・不倫した配偶者に理解させることが、誓約書を作るべき大きな理由の1つです。
浮気・不倫の誓約書を作成しておけば、あなたが浮気・不倫によりどれほど傷ついたかを理解してもらえます。
そして、「今後は慰謝料請求など、重大なお金の問題に発展するおそれがあるのだ」と理解させる効果が期待できます。
【理由2】浮気・不倫の証拠をつくる
浮気・不倫は、隠れてされるため、証拠をとりづらい性質があります。
浮気・不倫の誓約書を作り、浮気・不倫していたと認めさせ、その事実を証拠化しておくことが、誓約書を作成する理由の2つ目です。
浮気・不倫の明らかな証拠があることは、離婚調停や離婚訴訟など、裁判所を利用した手続きで離婚するとき、「証拠がない」という理由で不利に判断されるのを避けることができます。
不倫・浮気の証拠があると、慰謝料をもらえるだけでなく、相手を「有責配偶者」(夫婦の破綻について責任ある配偶者)とすることができます。
有責配偶者からの離婚は、あなたの合意がないかぎり難しいため、その結果、交渉で優位に立ち、他の離婚条件(例えば、子どもの親権、財産分与など)も有利に進められます。
「有責配偶者」となった相手は、離婚するために少なくとも8〜10年以上の別居期間がかかるため、離婚を急ぐためにはあなたの要求を飲んでくれやすくなるからです。
【理由3】慰謝料を請求できる
浮気・不倫されてしまったとき、許せない思いは慰謝料請求で解決するのがおすすめ。
相手が浮気・不倫を認めて反省しているうちに誓約書を書かせ、慰謝料を確実に受けとれるよう準備しておくことが、誓約書を作成する理由の3つ目です。
誓約書により、浮気・不倫が証拠となっていれば、後から言い逃れ、言い訳はできません。
浮気・不倫の誓約書では、慰謝料の金額や支払方法を決め、相手にサインさせ、慰謝料の合意ができます。
相手が支払わなかったときに備えて、公正証書の形式にしておけば、誓約書違反があったときに、裁判することなく相手の財産を差し押さえられるという強力な効果が得られます。
【理由4】将来の離婚に備えられる
夫(または妻)の浮気・不倫を知っても、経済的な事情や子どもの理由などで、すぐには離婚を決断できない方もいます。
実際、浮気・不倫を許してしまう方も多くいます。
このようなケースでも、誓約書を作成させることで、不倫・浮気問題が風化するのをふせげます。
将来の離婚のときに納得いく離婚条件を勝ちとるため、誓約書は、とても重要な交渉のカード。
一旦は許しても、のちに夫婦の信頼関係が崩壊してしまうシーンも多いため、将来を見越して準備をしてください。
「もう許してもらったはずだ」、「離婚原因は別のことにある」と反論され、慰謝料を減額されたり、その他の離婚条件(親権、財産分与など)で不利なものを押しつけられてしまうことのないよう、厳しい内容の誓約書を作成しましょう。
【理由5】浮気・不倫をやめさせられる
浮気・不倫の誓約書は、いずれ離婚することを前提とした内容ばかりではありません。
「浮気・不倫はあったが、もう一度信頼関係を築きなおしたい」と考えるときこそ、不倫関係を解消してもらい、二度としないと約束してもらう必要があります。
一度の浮気・不倫なら「気の迷い」と許せても、二度、三度と続くと、許せないのは当然。
度重なる浮気・不倫が発覚したとき、厳しい誓約書を作り、重大な問題だと理解させ、「二度としない」、「必ず約束を守る」というプレッシャーを与えなければなりません。
このとき、誓約書に、再発したときの慰謝料を決めておくことで、違反して浮気・不倫をくり返したときに、より大きなペナルティを与えられます。
将来の浮気・不倫を防止するために、今回とは違う相手でも、慰謝料請求できると定めておくのが重要です。
また、同じ相手との浮気・不倫をやめさせ、離婚をあきらめさせるためには、あわせて、不倫相手に対する慰謝料請求、不倫相手に誓約書を書かせる方法も有効です。
浮気・不倫の誓約書の内容・書き方【無料テンプレート付】
浮気・不倫の誓約書を書かせるとき、盛り込むべき具体的な内容や書き方について、書式例を示して解説します。
夫(または妻)の浮気・不倫が発覚したタイミングは、交渉上あなたが一番有利なタイミング。
この有利なタイミングに、これまでの不満を清算し、将来の不安をとり除いておくのがベストです。
漏れや不足のないよう、自作するときは、弁護士作成の以下のテンプレートをしっかりチェックしてください。
当事務所では、不倫・浮気の誓約書作成を、弁護士に依頼できるサービスを提供しています。
自分で交渉しても流されてしまいそうなときや、誓約書の内容に自信がないとき、ぜひお気軽にご相談ください。
【第1条】浮気・不倫を認めること
乙は、20XX年X月ころから20XX年X月ころにかけて、YYYYとの間で、少なくともX回の性交渉を行うなどの不貞行為を行ったことを認める。
まず、「浮気・不倫があった」という事実について、夫(または妻)に認めてもらう条項が最重要。
浮気・不倫があった事実を誓約書に書くことで、「浮気・不倫をした」という証拠とし、言い逃れ、言い訳できないようにしておけます。
この条項のポイントは、すでにわかっている事実について、できるだけ具体的で詳細に書いておくことです。
「5W1H」を意識し、「いつ、どこで、誰と、どのような不倫・浮気をしたのか」という事実を書くようにしてください。
相手が浮気・不倫を認めているときは、詳細に事情をヒアリングし、すべての事実を書きとめます。
相手が認めないときには、浮気・不倫の事実について言い逃れのできない客観的な証拠をつきつけ、認めるように迫りましょう。
なお、夫婦の場合には、一方が、他の異性と肉体関係を持つことを、法律用語で「不貞行為」といいます。
夫婦の不貞行為は、まだ結婚していないカップルの浮気・不倫よりも、責任が重大です。
離婚調停、離婚訴訟などの手続きでは、この「不貞行為」にあたるかどうかがとても重要な争点となることが多いため、誓約書にも、「不貞行為」が存在した事実をしっかりと記載しておいてください。
【第2条】反省と謝罪
乙は、前条の事実を認め、反省し、甲に対して真摯に謝罪する。
浮気・不倫の事実をしっかりと確認したら、それが悪いことであると、夫(または妻)も認めていることを示すため、反省と謝罪について、誓約書に定めておきます。
夫(または妻)が、配偶者(パートナー)以外と性交渉したとしても、すでに夫婦関係が「破綻」しているときは慰謝料請求できないとするのが裁判所の実務です。
そのため、「性交渉があった」という事実だけでなく、「それが悪いことだ」と確認しておくことが重要なのです。
不倫・浮気の事実が、この先に定めるような慰謝料請求、不利な離婚をされてしまっても仕方ない、責任のあることだと明確にするため、謝罪文言を記載します。
【第3条】不倫相手との接触禁止
乙は、今後一切、YYYYとは接触せず、電話、メール、LINEその他のいかなる方法でも連絡をとらないことを誓約する。
不倫関係を解消し、今後二度としないと誓ってもらうため、不倫相手との接触を禁止する条項を定めておいてください。
誓約書で、相手の浮気・不倫を禁止するときには、「不貞行為」にあたる性交渉そのものだけでなく、2人で会うこと、電話・メール・LINEなどあらゆる手段による連絡など、すべてを禁止しておくのが大切です。
2人で会ったり、連絡をとりあったりすれば、気持ちが離れず、また浮気・不倫をくり返してしまうと予想されるからです。
なお、不倫相手が職場の上司など、まったく会わないというのがどうしても難しいときは、「業務上必要のある場合を除く」といった書き方をしておき、少なくともプライベートな接触は禁止する誓約書とするのがポイントです。
【第4条】浮気・不倫の再発防止策
- 乙は、今後、YYYYはもちろん、その他の異性とも一切の不貞行為を行わないことを誓約する。
- 乙は、YYYYの連絡先を、本日甲の目の前で削除した。
「浮気・不倫の再発を防止する」という誓約書の効果を最大限に活用するためにも、浮気・不倫の再発防止策について、しっかりと定めておいてください。
この度浮気・不倫の発覚した相手はもちろん、今後は、その他の異性関係についても、厳しい監督が必要です。
上記の例のように「連絡先を削除させる」方法のほか、次のような再発防止策を定めた例があります。
家庭の事情にあわせて、可能な再発防止策を盛り込むようにしてください。
- 出会い系、マッチングアプリをアンインストールする
- 異性がいる場にいるときには、事前に連絡し、許可をとる
- 会食にいくときには、メンバーを事前に報告する
- 門限を定める
- キャバクラ通い、風俗通いをやめる
- 妻(または夫)が求めるときには、いつでも携帯を見せることを約束する
- スマホやLINEにパスワードをかけない
【第5条】慰謝料の支払い
乙は甲に対し、不貞行為の慰謝料XX万円を、甲の指定する方法で速やかに支払う。
誓約書に書くことのなかで、最も重要なのが不貞慰謝料についての条項です。
慰謝料をきちんと定めておけば、浮気・不倫の証拠とし、将来の離婚に備えるという目的を最大限に発揮できるからです。
法的には「不貞」とは「配偶者のある者が、配偶者以外の者と性行為・肉体関係を結ぶこと」とされており、民法709条に定める不法行為にあたることから、これにより精神的苦痛を受けたら、慰謝料請求をすることができます。
慰謝料の条項では、慰謝料の金額、支払先(支払い方法)、支払い時期を定めておきましょう。
不貞慰謝料の相場については、裁判例ではおおよそ「100万円〜300万円」が目安とされます。
あまりに高額で現実的でない金額を定めると、後から無効とされるリスクがあるため注意が必要です。
【第6条】浮気・不倫をくり返したときの制裁
本誓約書の約束にもかかわらず、乙が再度不貞行為を行ったときには、乙は甲に対して、不貞行為の慰謝料XX万円を支払うものとする。なお、この場合の不貞行為とは、今回の不貞相手であるYYYYを相手とするものに限らない。
「不倫はしない」と誓約したにもかかわらず、浮気・不倫をくり返すときは、ペナルティが必要です。
浮気・不倫が発覚したものの、今後も離婚はしないというときは、将来再発したときに高額の慰謝料を支払うと約束させる例が多いです。
今回の相手とは違う人との不貞でも、慰謝料請求できるような定め方としておいてください。
ただし、さきほど解説したとおり、不貞慰謝料の金額について、裁判例の相場がおおよそ「100万円〜300万円」であることを考えると、「1億円の慰謝料を支払う」など、あまりに高額な慰謝料は、無効と判断されるおそれがあります。
なお、将来の慰謝料は、そのときの浮気・不倫の内容・回数・悪質性の程度などによっても増減するため、「精神的苦痛に相当する金額の慰謝料を支払う」といった曖昧な書き方にしておくこともできます。
【第7条】将来の離婚条件
本誓約書の約束にもかかわらず、乙が再度不貞行為を行ったときには、甲が離婚を求めるときには、乙は異議を述べず、かつ、その時の離婚条件については次のとおりとする。
- 子どもの親権は甲が取得するものとし、乙は甲に対して、養育費として月X万円を、子どもが20歳になるまで支払う。
- 甲乙が同居していた自宅は、財産分与により乙が取得する。
浮気・不倫が発覚してもすぐには離婚しないとき、将来に離婚せざるを得なくなったときに備えて、そのときの離婚条件を定めておく例があります。
このとき、過去に浮気・不倫されたことを踏まえ、有利な条件で離婚するためにも、求める条件が明確なときには、誓約書に具体的に書くのがおすすめです。
よく定められる内容には、次のようなものがあります。
【第8条】その他の誓約事項
その他に、乙は、次のことについて誓約する。
- 乙は今後一切キャバクラにいかず、門限は午後9時とする。
- 前項の門限に遅れる可能性があるときには、乙は甲に対して、そのことがわかったらすぐに連絡するようにする。
- 乙は、毎月の給与明細を甲に見せ、全額を夫婦の生活費用の口座に振り込む。
ここまであげた、浮気・不倫問題に特有の誓約事項だけでなく、夫婦間で決めておきたかったことについては、このタイミングで決めておくのがおすすめです。
浮気・不倫が発覚し、誓約書を書かせるタイミングは、あなたにとって交渉で最も有利なタイミング。
相手はあなたの要求を飲むしかありません。
その他の誓約事項については夫婦の事情によってさまざまなものがありますので、ケースバイケースで判断してください。
日頃の生活態度から夫婦の金銭のことにいたるまで、厳しい監督が必要となることでしょう。
誓約事項の例には、次のようなものがあります。
- 夫婦の性生活について
(例)キャバクラ通い、風俗通いをやめる、週1回は夫婦の性交渉を行うなど - 夫婦の金銭について
(例)毎月の給与明細を開示する、給与の管理を任せる、小遣い制とする、一定額の貯金をするなど - 浪費の禁止について
(例)パチンコ・競馬・ギャンブルはしない、趣味にXX円以上使うときは事前に承認を得るなど - DV・モラハラについて
(例)暴力をふるわない、暴言を吐かない、高圧的な態度をとらないなど - 円満な夫婦関係について
(例)週に1回は夫婦で外食する、年に1回は夫婦で旅行するなど
なお、あまりに一方的で相手の不利益が大きすぎるものや、違法なもの、非常識なものは、公序良俗違反(民法90条)となり、誓約書の記載が無効となるおそれがあります。
不倫相手にも誓約書を書かせる
できるなら、夫(または妻)とともに、浮気相手、不倫相手にも誓約書を作成させましょう。
浮気・不倫が発覚したとき、配偶者(パートナー)に誓約書を書かせるとともに、不倫相手にも書面を書かせ、サインをさせたほうがよいケースが多いです。
不倫相手にも一筆入れさせることで、浮気・不倫を二度とさせないようにし、夫(または妻)との接触を絶たせる効果があるからです。
誓約書と示談書の違い
不倫相手に書かせる書類には、誓約書のほかに、示談書があります。
誓約書と示談書の違いは、誓約書は、作成者の一方的な約束を意味するのに対し、示談書は作成する2名の合意を内容とする点です。
そのため、不倫相手との間で合意して、和解し、問題を最終解決するときは、示談書を作成します。
これに対し、まずは浮気・不倫をストップさせるのが重要で、決して許すわけではなく、後で慰謝料請求するかどうかも検討したいといったケースでは、誓約書を書かせるにとどめておきます。
この場合、誓約書を書かせた後も不倫相手と交渉したり、慰謝料請求したりできます。
示談書を書かせるべきケース
不倫相手がどうしてもゆるせないとき、不倫相手に慰謝料請求するのも効果的です。
特に、職場の上司や昔からの友人、元彼が不倫相手のケースでは、情が残り、浮気・不倫が再発する例も多く、厳しい対処が必要です。
このとき、示談金や慰謝料など、お金を払う合意をしたときは、示談書を作成し、あなたと不倫相手との双方の署名押印をするようにします。
示談書は、「合意書」、「和解書」といった題名で作られることもあります。
浮気・不倫されても離婚せず、円満な夫婦関係を継続したいとき、不倫相手だけに慰謝料請求できます。
詳しくは、下記解説をご覧ください。
ダブル不倫は配慮が必要となる
浮気・不倫の誓約書を書かせるとき、ダブル不倫のケースでは、特に慎重な配慮が必要です。
ダブル不倫とは、既婚者同士の不倫のこと、つまり、不倫相手にも配偶者がいるケースです。
ダブル不倫では、あなたが不倫相手に慰謝料請求できるのと同じく、不倫相手の配偶者(パートナー)も、あなたの夫(または妻)に慰謝料請求できます。
このとき、不倫相手に慰謝料請求したり、誓約書を書かせようとしたりして、連絡した結果、双方から慰謝料請求をしあって、泥沼化するおそれがあります。
相手の配偶者を含めた話し合いもできますが、四者間の話し合いでは冷静に進められないことも。
ダブル不倫で、かつ、あなたがまだ離婚を考えていないのであれば、誓約書については自身の配偶者(パートナー)に書かせるにとどめておくのがよいでしょう。
浮気・不倫で誓約書を書かせるときの注意点
次に、浮気・不倫が発覚し、誓約書を書かせるときに注意すべきポイントを解説します。
内容面が十分でも、作成時の注意点を守っていない誓約書は、将来、有効活用できないおそれもあります。
ぜひ理解しておいてください。
手書きの誓約書でも法的効力が生じる
誓約書は、手書きで作成しても、有効です。
しっかりと準備できるときには、あらかじめパソコンで作成、印刷し、交渉時に持参するのがおすすめですが、交渉は、思いがけず突然スタートすることもあります。
準備が十分でなかったとしても、夫(または妻)が浮気・不倫を認めて謝罪してきたときなどには、誓約書作成のベストタイミングを逃してはなりません。
口約束では、証拠に残らず、後から破られるおそれが強いですから、やむをえず手書きになるにせよ、きちんと誓約書の形式にしなければなりません。
このとき、書かせたい内容さえ頭に入っていれば、手近にある紙に、手書きで誓約書を書いてもらえます。
印鑑がないときには、押印のかわりに、指で拇印をしてもらうのでもかまいません。
誓約書の内容をよく理解させる
浮気・不倫した夫(または妻)に誓約書を書かせるとき、誓約書の内容をよく理解させるのが大切なポイント。
事前にしっかり話し合いをして、相手も納得した内容で、誓約書をつくらなければなりません。
誓約書にサインさせられたとしても、その内容をまったく理解していなければ、結局守ってもらえず、浮気・不倫が再発するおそれがあり、誓約書の意味が薄れてしまいます。
また、誓約書の理解が不足しているとき、将来に問題を残してしまうことがあります。
例えば、「どこからが不倫か」の基準が、夫婦間の共通理解になっていなければ、誓約書を作っても将来のトラブルは防げません。
このような法律の専門的な理解が必要となるとき、弁護士に同席してもらい、弁護士から詳しく内容を説明してもらう方法が有効です。
署名・押印を適切に行う
誓約書をつくるときには、夫(または妻)のサインをもらいます。
このとき、法的に有効な誓約書にするためにも、適切な署名・押印となるよう注意してください。
一般の方は、契約書に署名・押印をする機会はそれほど多くはないでしょう。
誓約書に署名・押印させるときには、少なくとも、次の注意を守りましょう。
- 読みやすい字で、正確に、氏名、住所を書かせる
- 氏名の末尾に、押印をする
- 押印する印鑑は、実印でなくても三文判でよいが、シャチハタは避ける
- 作成日を必ず記載する
- 本文を印刷して用意したとき、必ず署名は手書きでさせる
署名・押印した原本は、とても重要なため、なくさないように保管しておきましょう。
あわせて、相手にも内容をしっかり理解させるため、コピーをとって写しを渡すようにしてください。
公正証書にしておく
浮気・不倫の誓約書を、より効果的なものとするために、公正証書の形式にしておく方法がおすすめです。
公正証書は、公証役場で作成してもらう、公的な書面です。
誓約書を公正証書化しておくことには、次の2つのメリットがあります。
- 証拠として強力な文書にすることができる
- 公正証書に書かれた金銭請求について、裁判をしなくても強制執行(財産の差押え)できる
浮気・不倫の誓約書のなかで、慰謝料などの金銭の支払いを約束するならば、公正証書にするメリットが大いにあります。
違反して、慰謝料を払ってもらえなかったとき、公正証書にしておけばすぐに強制執行(財産の差押え)できるからです。
なお、将来の離婚条件、将来の慰謝料請求などだけを内容とする誓約書は、公正証書とするにはなじみませんが、「私署証書」として公証役場で認証を受けておく方法がおすすめです。
拒否されたら強制はできない
浮気・不倫したにもかかわらず、配偶者が、誓約書作成を拒否してきたとき、残念ながら、強制まではできません。
無理やり強要すれば強迫(民法96条1項)、だまして書かせれば詐欺(民法96条1項)、中身を理解せずに署名したときは錯誤(民法95条)により、不適切な方法で書かせた誓約書は無効になってしまいます。
無理強いすれば、強要罪(刑法223条)、脅迫罪(刑法222条)など犯罪になったり、逆に慰謝料請求されるリスクも。
「書きたくないのに無理やり書かされた」と反論されると、離婚でも不利になってしまいます。
特に、不当に高い慰謝料など、公序良俗(民法90条)に反する内容の強制は控えるべきでしょう。
弁護士に依頼して、誓約書の意味をきちんと説明してもらい、この後に慰謝料請求などの法的手段を行使するとプレッシャーをかけるすることで、嫌がる相手にも、浮気・不倫の誓約書を書かせやすくなります。
浮気・不倫で書かせた誓約書に違反があったときの対処法
浮気・不倫した相手に誓約書を書かせても、残念ながら守られないこともあります。
このとき、速やかに対処しなければ、甘く見られ、誓約書を作成した効果が薄れます。
誓約書を作ったことで、夫(または妻)の負うべき義務の内容は明らかになっており、証拠もしっかり準備できています。
ですから、厳しく対応することが可能な状況なのです。
誓約書に違反があったときは、次の手順で、スピーディに対応し、問題解決を図ってください。
直接交渉で違約金を請求する
まず、違反のペナルティとして違約金を誓約書に定めたときは、誓約書を相手に示し、違約金を払うよう請求します。
このような対応をとるためにも、あらかじめ、「本誓約書に違反した場合、金○○円を支払う」といった内容を盛り込むのがおすすめです。
今後も夫婦関係を継続する予定のときなどは、弁護士に依頼する前に、自分達で話し合えないか、試してみてください。
内容証明で慰謝料を請求する
話し合いでは解決できないとき、内容証明を送付し、誓約書に定めた違約金を支払うよう求めてください。
内容証明は、その送付日時、送付内容などを証拠に残す効果があり、法的手続きに移行することを示唆して、プレッシャーをかけることができます。
このとき、弁護士名義の通知書とすれば、さらにプレッシャーが強まり、支払いを強く促せます。
また、違約金の定めをしていなかったときにも、あらたな浮気・不倫が発覚したのであれば、それを理由に慰謝料を請求できます。
弁護士に依頼して訴訟を起こす
最後に、交渉では違約金、慰謝料などが払われないとき、弁護士に依頼し、訴訟を起こす方法がおすすめです。
1度目の浮気・不倫の際に誓約書を作成しておきながら、これに違反する2度目の浮気・不倫を放置しておいては、「片手落ち」といわざるをえませんから、徹底的に責任追及しなければ良い解決は目指せません。
浮気・不倫の誓約書を弁護士に依頼するメリット
最後に、浮気・不倫の誓約書作成を、弁護士に依頼するメリットについて説明します。
「離婚をするときになったら弁護士に相談しよう」という方は多いでしょうが、浮気・不倫の発覚直後から、将来に向けた準備をしておくことで、より有利な解決を目指せます。
法的に有利な誓約書を作成できる
浮気・不倫の誓約書を正しく作成するには、離婚問題についての十分な知識がなければなりません。
特に、「不貞慰謝料」、「親権・監護権」、「財産分与」といった離婚条件について、裁判例を踏まえた専門知識がなければ、誓約書の内容がどれほど有利な内容になっているか、正しく判断できません。
弁護士に作成してもらった誓約書は、離婚調停、離婚訴訟といった法的手続きでも、十分な証拠として役立ちます。
ケースに応じて柔軟に修正できる
浮気・不倫の誓約書に定めておきたい事項は、ケースに応じて多種多様。
そのため、インターネット上に存在する書式・ひな形を丸写しするだけでは、あなたの希望を叶えられないことも多いです。
しっかりと事情をヒアリングし、その経緯を反映してもらい、これに沿った誓約書を作成してもらうためには、弁護士に依頼するのが効果的です。
いざというとき、不十分な誓約書で逆にトラブルになってしまったり、不正確な法律知識で不利な内容になってしまっていたりしないよう、弁護士が責任をもって作成します。
相手にプレッシャーを与える
誓約書の作成を弁護士に任せることで、誓約書を書かせる相手に対して、重大なことと受けとってもらえる効果があります。
この効果を最大限に活かすためには、作成した誓約書を弁護士から送ってもらったり、法律事務所に一緒に出向いて誓約書を作ってもらったりする方法も有効です。
「弁護士に作ってもらった誓約書にサインした」というプレッシャーを与えることが、誓約書をきちんと守って慰謝料、養育費などの金銭を支払ってもらうためにとても有益です。
作成後のアフターフォローを受けられる
浮気・不倫の誓約書を書かせたにもかかわらず、これを守らず、浮気・不倫をくり返したり、決められた金銭を支払わなかったりしたとき、弁護士に依頼していれば、アフターフォローもあわせてお願いできます。
具体的には、金銭請求をおこなったり、訴訟をしたり、離婚の協議を代わりにしてもらえます。
代行して書面を作成してくれる職業に「行政書士」もありますが、行政書士は、法律問題について、あなたの代理人となって交渉することができないため、トラブルが拡大するおそれのあるときはおすすめできません。
法律問題の交渉を、あなたに代わって行えるのは弁護士だけですから、弁護士に誓約書の作成を依頼することで、十分なアフターフォローを受けられるのです。
まとめ
今回は、浮気・不倫が発覚したときに、書かせておくべき誓約書について、書式例をあげながら解説しました。
実際に、すぐに誓約書を書かせたいとき、今回ご紹介した内容を参考にして、相手に書かせるようにしてください。
当事務所のサポート
弁護士法人浅野総合法律事務所では、浮気・不倫の誓約書を、あなたに代わって作成するサポートをしています。
離婚問題にくわしい弁護士が、あなたの考えをしっかりお聞きし、法的に有効な誓約書をお作りします。
最大限有利な状況を勝ちとるためには、弁護士の作った誓約書がとても有効です。
弁護士が作ることで、法律のポイントをおさえ、将来、離婚調停や離婚訴訟などに発展したとき、有利な証拠として役立てることができるからです。
当事務所のサービス内容と、かかる弁護士費用は次のとおりです。
サービス | 内容 | 弁護士費用 |
---|---|---|
法律相談 | 法律相談(誓約書を作成するかどうか) | 1万円/1時間 |
作成 (対面) | 2時間の面談で事情をお聞きし、誓約書を作成 | 2万5000円 |
作成 (リモート) | アンケートにて事情聴取し、誓約書を作成(修正1回まで) | 2万5000円 |
その他 | 慰謝料請求、公正証書化、誓約書を書かせる交渉の代理など | 別途見積もり |
浮気・不倫の誓約書によくある質問
- 相手の浮気・不倫が発覚したとき、なぜ誓約書を書かせるべきなのでしょうか?
-
相手の浮気・不倫がわかったときには、誓約書を書かせることでその事実を証拠にしておき、離婚を求めるときでも夫婦関係を続けるときでも、有利な交渉を進められます。もっと詳しく知りたい方は「浮気・不倫されたら、誓約書を書かせるべき理由」をご覧ください。
- 浮気・不倫の誓約書には、どんな内容を書けばよいですか?
-
相手の浮気・不倫がわかったときに書かせる誓約書には、浮気・不倫行為の内容を具体的に書き、反省し謝罪すること、二度と行わないことなどを記載します。詳しく知りたい方は「浮気・不倫の誓約書の内容(無料テンプレート付)」をご覧ください。