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不倫相手に慰謝料を請求する方法3つ|相場や条件・注意点も解説

不倫・浮気が発覚しても、子どものこと、将来の生活を考えると、すぐに離婚できない夫婦もいます。

不倫・浮気の責任追及は、慰謝料請求が一番。
しかし、離婚しないなら、配偶者から慰謝料をもらうメリットは小さいでしょう。
このとき重要なのが「離婚はせず、不倫相手から慰謝料をもらう」という方法です。

不倫の慰謝料トラブルは、離婚するかしないかにより、戦略が大きく変わります。
いずれにせよ、不倫相手には慰謝料請求できますから、確実に回収しなければなりません。

不倫した配偶者を許し、夫婦として継続するケースは多いもの。
それでも、「不倫・浮気にまったく責任追及しない」となると、被害者として納得いかないでしょう。
こんな不満は、不倫相手から慰謝料をとることで解決できます。

今回は、離婚しないときにも活用できる、不倫相手に慰謝料を請求する方法や注意点を解説します。

この解説のポイント
  • 不倫の慰謝料は、配偶者と不倫相手、どちらにも請求できる
  • 離婚しない方針なら、慰謝料を不倫相手にだけ請求することも可能
  • 不倫相手に請求できる慰謝料の相場が下がらないよう、夫婦関係の悪化を証明する

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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不倫の慰謝料を請求できる相手

喧嘩する男女

はじめに、「不倫の慰謝料を請求できる相手は誰なのか」について解説します。

配偶者が不倫をしていたと突き止めたら、あなたが慰謝料を請求できる相手は2人います。
つまり、1人は「あなたの配偶者(夫または妻)」、もう1人は「不倫相手」です。

  • 配偶者への慰謝料請求
    配偶者は、結婚していることにより、他の異性と性交渉してはならない「貞操義務」を負う。
    この義務に違反したら不法行為(民法709条)であり、慰謝料請求できる
  • 不倫相手への慰謝料請求
    配偶者の負う貞操義務を侵害した責任は、不倫相手にもある。
    配偶者と不倫相手とは、共同不法行為の関係にある。

ただ、不倫の慰謝料を請求すると決意したとき、必ず2人ともにせねばならないのではありません。
片方にだけ慰謝料を請求することも可能ですから、不倫相手だけからもらうこともできます。

配偶者と不倫相手への、慰謝料の請求関係

不倫が発覚したときに慰謝料を請求できる相手は、配偶者と不倫相手の2人。
両方に請求しても、片方だけに請求してもよいと解説しました。

しかし、配偶者と不倫相手の双方に請求しても、片方だけでも、得られる慰謝料額は同じが原則です。
両方に請求したからといって、もらえる慰謝料が2倍に増えるわけではありません。

この配偶者と不倫相手の関係を、法律用語で「共同不法行為」といいます。
つまり「2人で協力して不倫という不法行為をし、共同であなたに精神的損害を与えた」という関係です。

配偶者・不倫相手への請求関係
配偶者・不倫相手への請求関係

共同不法行為の関係にある2人は、法律用語で「不真正連帯債務」という特殊な状況です。
不真正連帯債務にある2人への慰謝料請求は、わかりやすくまとめると次の状況です。

  • 不真正連帯債務を負う複数の人へ、いずれにも全額の請求ができる
    不倫の被害者は、配偶者にも不倫相手にも全額請求できる
  • 慰謝料の総額をいずれか一方もしくは双方から得られたら、債務は消滅する
    配偶者でも不倫相手でも、適正な慰謝料が払われれば、それ以上の請求はできない
  • 不真正連帯債務を負う人が、自分の負担割合を超えて賠償したら、他方に求償請求できる
    配偶者または不倫相手が、適正な慰謝料以上の支払いをすれば、他方に求償を請求できる

例えば、請求すべき不倫の慰謝料の金額が200万円だったときを考えてください。
このとき、2人双方に200万円を請求できます。
ただし、片方から200万円の支払いを受けられたら、他方には請求できなくなります。

不倫相手に慰謝料を請求するなら、慰謝料の相場を踏まえるのが大切です。

相場からかけ離れた高い金額を請求すれば、相手も応じてくれない可能性があります。
さらに、仮に相場以上の額をとれても、自分の配偶者に、求償請求をされるリスクもあります。

特に、離婚せずに慰謝料を請求すると、「まだ離婚していない分だけ損害が小さい」と見られる危険も。
このとき、慰謝料の相場が低くなる傾向にあります。
請求された不倫相手の側でも、「結局離婚しなかったなら払いたくない」と思われてしまいます。

不倫相手に慰謝料を請求できる条件

不倫相手に慰謝料を請求するには、不倫相手の行為が、不法行為(民法709条)にあたるのが条件となります。
不倫を理由に、慰謝料を請求する条件は、次のとおりです。

不法行為は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害」する行為のこと。
これによって負った損害について賠償を請求できます。

不貞行為があった

まず、慰謝料を請求するためには、違法な不貞行為でなければなりません。

不貞行為とは、夫婦の貞操義務を侵害する行為のこと。
民法771条1項で、不貞行為は法定離婚原因の1つとも定められています。
つまり、慰謝料を請求できるだけでなく、裁判で離婚できる事情にもあたるのです。

不倫相手に故意・過失があった

不法行為となるためには、行為時点で、故意または過失が必要。
故意とは、違法な行為だと知りながらすること、過失とは、不注意で気づかずにすることです。

不倫相手が、相手が既婚者だと知りながら性交渉に及んだなら、故意があったといえます。
仮に知らなくても、結婚指輪をしていたなど、気付けて当然な事情があれば、過失ありといえます。

不貞行為の時点で夫婦関係が破綻していない

不法行為となるためには、権利の侵害がなければなりません。
そのため、慰謝料請求するには、不貞行為のあった時点で、婚姻関係があり、かつ、夫婦関係がまだ破綻するに至っていない必要があります。

不倫によって侵害される権利とは、つまり、夫婦の貞操です。
結婚した夫婦なら、他の異性と性交渉してはならない義務があります。
不倫によってその平穏な生活が害されれば、権利侵害が発生したといえます。

不倫相手に請求する慰謝料の相場

不倫の慰謝料の相場

不倫の慰謝料の相場は、一般に、100万円〜300万円程度といわれます。
ただ、これは、不倫の慰謝料すべての一般論の話。

不倫相手に慰謝料を請求するケースでは、ただちにあてはまらない場合もあります。
不倫相手への請求だと、不倫によって離婚せざるをえなくなったか、不倫があったけれども離婚せずに夫婦関係が続いているかによって、その損害には大きな違いがあるからです。

そのため、不倫が夫婦関係に及ぼした損害の程度により、次のように区別できます。

  • 不倫があっても夫婦関係が継続するときの慰謝料の相場
    数十万〜150万円
  • 不倫によって夫婦が離婚したときの慰謝料の相場
    100万円〜300万円

この例は、あくまでも、裁判で争って勝ちとれる可能性のある金額です。
実際の慰謝料請求のシーンでは、まずは交渉し、話し合いでの解決を目指します。
このとき、裁判で勝ちとれる相場を参考にはするものの、必ずしもそのとおりになるわけではありません。

社会的地位が高く、不倫発覚の影響が大きいなど、不倫相手の事情によっては、交渉で、相場以上の金額を勝ちとれるケースも少なくありません。

不倫相手に請求する慰謝料を増減する事情

不倫相手に請求できる慰謝料の相場は、あくまでも目安に過ぎません。
具体的なケースでは、事情に応じた、適正な慰謝料を検討しなければなりません。

次のさまざまな事情により、適正な慰謝料額は増減します。

  • 婚姻期間の長さ
    婚姻期間が長いほど、不倫によるダメージが大きく、慰謝料が高額になる
  • 不倫発覚時の夫婦の円満さ
    不倫発覚時に夫婦が円満なほど、壊されたものは大きく、慰謝料が高額になる
  • 夫婦間の子どもの有無
    特に、夫婦間に子どもがいると、子どもの苦痛も考慮せねばならない
  • 不倫の回数、頻度
    不倫の回数、頻度が多いほど、慰謝料が増額される
  • 不倫していた期間
    不倫していた期間が長いほど、慰謝料が増額される
  • 不倫行為の悪質性
    不倫によって妊娠、出産したなど、悪質性が高いほど慰謝料が高額になる
  • 不倫の責任が誰にあるか
    不倫を誘われてしたのでなく、自ら積極的に進めたなど責任があると、慰謝料が高額になる
  • 不倫発覚後の事後対応
    不倫発覚後に、反省し、謝罪したなどの誠意がないと、慰謝料が増額される

不倫相手に、より多くの慰謝料を請求するには、不倫の悪質さ、損害の大きさを主張すべきです。
不倫相手が主導して進めており、期間が長く性交渉の頻度も多いといったケースでは、不倫相手が主導的に誘っていた証拠(メールやLINEなど)、性交渉が頻繁にあった証拠(探偵による録音・録画など)を集めることで、慰謝料を増額できます。

不倫により、うつ病を発症したなど、損害の大きさも、慰謝料を増額する理由になります。
このとき、診断書など、自身の損害を証明する資料を入手しておいてください。

つらさは人それぞれ感じ方が違いますから、言葉では表現しづらいもの。
裁判では、「つらい人は病院にいく」という考えから、通院を継続しているほどに、精神的苦痛は大きいものと評価してもらえる傾向にあります。

不倫相手に慰謝料を請求する方法

次に、不倫相手に、実際に慰謝料を請求するときの方法について、解説します。

電話や対面で交渉する

最も簡単なのが電話や対面で交渉する方法です。
不倫相手が知り合いや同僚などなら、この方法でもよいでしょう。

慰謝料を請求したのが証拠に残るよう、必ず録音しながら進めてください。
そして、不倫相手が慰謝料を払うと約束したら、必ず示談書や合意書に証拠化しておきましょう。
約束どおり払わなかったとき、書面をもとに裁判で請求できるからです。

請求は自分ひとりで進めても、示談書、合意書の作成は弁護士に任せるのもおすすめ。
抜けや漏れがあると、慰謝料の回収が困難なおそれがあり、注意が必要です。

書面で慰謝料を請求する

次に、対面での交渉が難しいときには、書面で請求する方法がおすすめです。

大きな心理的プレッシャーをかけるには、内容証明で送るようにしてください。
内容証明は、郵便局が配達日や書面の内容を証拠化してくれる特殊な郵便形式で、慰謝料請求に最適です。
弁護士名義なら、無視したり拒否したりすれば裁判になるというプレッシャーを与えられます。

内容証明のメリット
内容証明のメリット

裁判で慰謝料を請求する

最後に、不倫相手が交渉では慰謝料を払ってこないとき、最終手段が裁判です。
裁判に勝てば、相手に誠意がなくても、強制的に慰謝料を回収することができます。

裁判で、不倫相手に慰謝料を請求するには、裁判所に訴状を提出し、訴訟提起しなければなりません。
裁判を有利に進めるには、法律や裁判例の知識が必要なので、弁護士にまかせるのがおすすめです。

不倫相手だけに慰謝料請求する時の注意点

最後に、不倫相手に慰謝料請求するとき、注意すべき点を解説します。

不倫が発覚しても離婚しないときは特に、慰謝料請求でデメリット、リスクを感じることもあります。
このとき、慰謝料をもらいそこねたり、低くなってしまったりと損しないために、慎重な対応を要します。

夫婦関係の悪化を証明する

注意点の1つ目は、夫婦関係が悪化していると証明することです。

不倫相手に慰謝料を請求するとき、離婚はしないケースがあります。
このとき、「不倫が発覚したが、夫婦関係は維持された」ということが、「離婚するほど重大な問題でなかった」というイメージを生み、裁判所から「精神的損害は小さかっただろう」と評価されるおそれがあるためです。

しかし、結果として離婚しなかったとしても、決して許したわけではありません。
子どもの生活や収入面など、離婚できないやむをえない事情のある方は多くいます。

離婚しないままに不倫相手に慰謝料を請求するときこそ、離婚後に慰謝料請求するケースにも増して「不倫によって夫婦関係が悪化した」としっかり証明しなければなりません。
現時点ですぐに離婚する選択でなかったにしても、すでに修復できないほど悪化している例も多いもの。

このとき、「それでもなお離婚しないのはなぜか」という理由を、合理的に説明するのが大切です。

誓約書を作成する

注意点の2つ目は、不倫に関する誓約書を作成することです。

離婚せずに、不倫相手に慰謝料を請求するとき、その後も夫婦関係が継続します。
そのため、配偶者には「今後は不倫・浮気をくり返さない」と誓約させるのが大切です。
不倫の誓約書を作成して、証拠化しておきましょう。

具体的に、不倫の誓約書に書いておきたい内容は、次のとおりです。

  • 不倫関係をすぐに解消すること
  • 今後二度と不倫を再発しないこと
  • 連絡を取り合ったり、会ったりさせないこと
  • (仕事上などやむを得ない場合)連絡は仕事に関するものに限定すること
  • 連絡先を消去させること

将来、残念ながら不倫が再発したとき、有利な条件で離婚したいでしょう。
このとき、さらなる慰謝料請求といった責任追及も欠かせません。
いずれの場合にも、誓約書を書面に残しておけば、相手が悪質だったことの証拠を残せます。

浮気・不倫の誓約書の書き方は、次の解説をご覧ください。

求償権を放棄させる

注意点の3つ目は、不倫相手に求償権を放棄させることです。

不倫の責任は、配偶者と不倫相手の双方にあります。
不倫相手から慰謝料をもらうと、不倫相手が配偶者に対して、「不倫の責任はあなたにもあるから、慰謝料を負担してほしい」というように、慰謝料の分担を求めることができます。
この請求を、法律用語で「求償請求」といいます。

あなたが、せっかく不倫相手だけに慰謝料請求しようという方針でも、求償請求をされてしまえば、結局その一部は自分の配偶者に請求されてしまい、負担せざるをえなくなるのです。
不倫が発覚しても離婚しないなら、求償請求はストップしたいところ。

こんな事態を避けるために、不倫相手と慰謝料の交渉をするとき、求償権を放棄させましょう。
配偶者への求償権を放棄するよう約束させ、示談書に書いておく方法が有効です。

まとめ

今回は、不倫相手に、不倫・浮気の慰謝料を請求する方法、注意点について解説しました。
離婚せず(夫婦関係を継続し)に慰謝料請求するケースには、特有の注意点があります。

子どもや家族の将来を考え、不倫・浮気が発覚してもすぐ離婚しない決断をするケースは珍しくありません。
しかし、「不倫を完全に許した」という人は少ないでしょう。

できるだけ多くの慰謝料を不倫相手からもらい、不倫トラブルを解決するために、ぜひ参考にしてください。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所は、離婚問題に精通し、豊富な経験があります。
不倫の慰謝料請求についても、多数の獲得実績があります。

そのなかには、必ずしも離婚するケースばかりではありません。
離婚せず不倫相手にだけ慰謝料を請求したい事例、むしろ、不倫相手との接触を断ち、復縁の可能性をあげるための慰謝料請求といった事例も多くあります。

お困りの際には、ぜひ一度ご相談ください。

不貞慰謝料のよくある質問

不倫相手にだけ慰謝料請求することができますか?

不倫・浮気が発覚したとき、不貞慰謝料を請求できます。不貞慰謝料は、配偶者と不倫相手に請求できますが、両方に請求するケースだけでなく、そのどちらかだけに請求することも可能です。もっと詳しく知りたい方は「不倫の慰謝料を請求できる相手」をご覧ください。

不倫相手にだけ慰謝料請求するときの相場はどのくらいですか?

不倫の慰謝料の相場は、100万円〜300万円程度が目安となりますが、不倫相手にだけ請求するとき、「結局離婚はしなかった」という点で損害が軽くみられ、金額が下がってしまうことがあります。詳しくは「不倫相手に請求する慰謝料の相場」をご覧ください。

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