別居を考え始めたものの「どう伝えたらよいかわからない」と悩む方は少なくありません。
感情的な衝突やトラブルが心配で、一歩を踏み出せずにいる人からの相談は数多くあります。相手の状況や受け止め方によっても、適切な伝え方は異なります。
実際、別居は夫婦関係における大きな転機であり、その伝え方一つで、その後の離婚の話し合いの進み方も変わります。特に、相手からのDVやモラハラがある事例では、伝え方を誤ると相手を刺激し、紛争が長期化してしまう危険があります。
今回は、別居したいと伝える際の考え方や、トラブルを避けるための具体的なメールや置き手紙の例文について、弁護士がわかりやすく解説します。
- 別居を伝える場合、万全に準備し、感情的な衝突を避けられる伝え方を選ぶ
- 冷静な話し合いができるなら直接、難しい場合はメールや置き手紙で伝える
- DVやモラハラがある場合に直接「別居したい」と伝えるのは危険
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適切な別居の伝え方とは

はじめに、適切な別居の伝え方について解説します。
別居の伝え方や切り出すタイミングは、今後の話し合いをスムーズに進め、不利な立場に立たされるリスクを減らすためにも非常に重要です。伝え方に一律の正解はなく、相手の性格や直近の関係性によっても、直接会って話すのがよいのか、メールや置き手紙がよいのかは変わります。
また、相手の仕事の状況や精神状態に配慮して、タイミングを見計らうことも、不必要に関係を悪化させないための重要なポイントとなります。
冷静に話し合える場合は直接伝える
まず、「別居したい」と対面で直接伝える方法です。
直接話すことで、声のトーンや表情から真剣さが伝わりやすく、誤解が生じにくいメリットがあります。相手の反応を見ながら、どのように伝えるかを調整できるので、感情に配慮しながら合意形成につなげやすい方法でもあります。相手が感情的にならず、冷静に対話が可能な関係であれば、直接会って別居の意思を伝えるのが最も誠実です。
直接伝える際は、相手を非難するような言葉遣いは避け、「今後のために少し距離を置きたい」というように前向きな提案として切り出すのがおすすめです。感情ではなく事実に即して整理し、最初は「別居=離婚」ではないといった伝え方が穏便です。
自宅だと感情的になりやすく危険なときは、第三者の目があるカフェやファミレスなどを選び、時間を十分に確保できる休日に行うのが望ましいです。わかりやすく伝わるよう、事前に要点をメモするなどの工夫をしておくと進めやすいです。
相手が感情的になる場合はメールやLINE、置き手紙で伝える
別居を切り出すと相手が感情的になりそうなときは、メールやLINE、置き手紙が有効です。
例えば、怒りっぽかったり、常日頃から高圧的な態度を取っていたりといったケースは、冷静な話し合いが期待できないおそれがあります。DVやモラハラがある家庭では、「別居したい」と伝えて逆上されるおそれもあるので、直接伝えるのは適していません。
文面で伝えれば、自分の考えを冷静に整理して伝えられるので、口論を避けることができます。また、証拠が残るので、言った・言わないの争いを防げるのもメリットです。
ただし、文面が一方的だと、相手の感情を逆撫でするおそれもあるので、言葉選びはくれぐれも慎重に行い、過度な刺激とならないよう注意してください。
関係を悪化させない適切なタイミング
別居したいと伝えるタイミングも、その後の話し合いを大きく左右します。
タイミングが悪いと、感情的な対立が起こりやすくなります。相手が仕事でストレスを抱えたタイミングや体調の悪化しているときなどは避けましょう。夫婦喧嘩のまま、その勢いで「だったら別居してやる」などと伝えるのも適切ではありません。
比較的適切なのは、お互いに心と時間に余裕がある休日や、子供が不在の時間帯などです。相手が話を聞く姿勢を整えられる状況で伝えた方が、「別居」という夫婦の重大な問題について、真摯に向き合ってもらえる可能性が高まります。
実際、当事務所においても、別居するタイミングを図るため、ご依頼から数日〜1週間程度の様子を見ながら方針を立てることも少なくありません。
「離婚前の別居の注意点」の解説

メールや置き手紙で別居を伝える際の書き方【例文付き】

次に、状況に応じた具体的な例文を交えて、別居の伝え方を解説します。
メールや置き手紙で別居を伝える際は、感情的な表現は避け、必要な情報を簡潔に記すことが大切です。文書は証拠に残るので、後の調停や訴訟で自分にとって不利にならないよう、言葉選びには細心の注意を払っておきましょう。
弁護士として多数の相談を受ける中で、共通して問題になりやすいのは、文面にすることで何度も読み返せるため、文面に問題があると悪影響も強く出るということです。
必ず伝えておくべき項目
メールでも置き手紙でも、最低限盛り込むべき要素があります。
- 「別居したい」という明確な意思表示
まず、別居を求めるのであれば明確な意思表示が必要です。相手に気を遣うあまり、曖昧な表現になると伝わりづらいので注意しましょう。 - 別居を選んだ理由
別居の理由については、感情的にならず、かつ、相手を一方的に責める内容にならないよう配慮してください。 - 別居時期
相手にDVがあるなど、置き手紙を置いて出る場合、別居の時期は「即日」とし、「本日より帰りません」といった記載となります。そうではなく、理性的な話し合いができそうなときは、メールなどで将来の別居時期を定めるケースもあります。 - 「別居=離婚」かどうかについての考え
別居をするのが「離婚を目指す」という意味なのか、それとも「しばらく冷却期間を置きたい」という意味なのか、既に考えが固まっていれば伝えてもよいでしょう。 - 当面の生活に関する連絡事項
別居するにあたり当面困らないよう、連絡手段、連絡先(弁護士に依頼している場合には弁護士の連絡先)、生活費や子供のことなどを記載します。
一方で、書かない方がよい内容もあります。例えば、相手を非難したり、過去の事実や責任について一方的に決めつけたり、感情的な言葉を吐いたりといった内容は、記載するとトラブルのもとなので、少なくとも文面に残すべきではありません。
【例文】相手との関係修復も考えている場合のメール
では次に、相手との関係修復も考えている場合のメールの例文を紹介します。
件名:大切なお話があります
本文:
◯◯さん、突然のメールで驚かせてしまったらごめんなさい。少し前から私たちの関係について考えていましたが、一度お互いに冷静になる時間が必要だと感じています。
そこで、しばらくの間、別々の場所で生活をしたいと思っています。これは、私達の将来を前向きに考えるための冷却期間にしたいという気持ちからです。急な提案で申し訳ありませんが、まずは距離を置くことで、お互いのことを見つめ直したいです。来週末には家を出ようと考えています。
今後の生活費のことなど、具体的な話はまた改めてメールで連絡させてください。まずは私の気持ちを知ってほしくて連絡しました。
上記の例文は、あくまで一般論のため、すぐには離婚に進まないケースでは特に、自分の気持ちや相手との距離感に応じて修正が必要となります。
【例文】DV・モラハラが理由で家を出る場合の置き手紙
DV・モラハラが理由で家を出る場合、置き手紙を残して別居するしかないケースも多いものです。このとき、相手を刺激しすぎないよう、一方で、必要な事実が正確に伝わるよう、細心の注意を払う必要があります。
◯◯さんへ
これまで、あなたの暴力的な言動に耐えてきましたが、心身ともに限界に達しました。これ以上あなたと一緒に生活することはできません。そのため、本日をもってこの家を出て別居します。
私の身の安全を確保するため、新しい住所や連絡先をお伝えすることはできません。今後、私や私の実家、友人などに連絡を取ることは絶対にやめてください。もし連絡が必要な場合は、私が依頼した下記の弁護士を通してお願いします。
弁護士事務所名:◯◯法律事務所
弁護士氏名:◯◯◯◯
連絡先:XXX-XXXX-XXXX
別居を伝えると相手と敵対的になることが予想されるケースでは、書面で記録に残すとともに、速やかに弁護士に相談してください。
「離婚調停・離婚協議中の手紙」の解説

DVやモラハラで別居したいと直接伝えられない場合の対処法

配偶者からのDVやモラハラが原因で別居したいと考えるとき、相手に直接伝えると、さらなる被害を引き起こすおそれがあり、非常に危険です。このような状況では、通常の別居以上に、自身の安全確保を最優先にして行動しなければなりません。
以下では、安全に別居の意思を伝える方法について解説します。
身の安全を優先して事前に伝えない
DVやモラハラ被害があると、直接伝えるのは危険なケースもあります。
別居したいと伝えることで相手が逆上し、暴力をエスカレートさせる危険もあります。そのため、自分の身を守ることを最優先に、事前に何も伝えないことを推奨しています。このようなケースは通常の別居と異なり、冷静な話し合いが成り立つことを前提に行動してはいけません。相手に気付かれないよう別居の準備を進め、弁護士、配偶者暴力相談支援センター、警察などと連携しながら進める必要があります。
緊急性が高いケースではシェルターの活用も検討してください。家を出るのも「十分な準備ができたら」ではなく、身分証明書や預金通帳、実印、子供に関する書類など、最低限のものだけを持ち出せるよう準備してください。
「モラハラやDVから逃げるための別居」の解説

悪意の遺棄にならないために置き手紙で伝えることの重要性
モラハラを受け続けると、「事前に伝えないのは怖い」というご相談を聞くこともあります。
何も言わずに家を出るのは、自分の安全を確保するためですが、正当な理由のない同居義務違反は悪意の遺棄(民法770条1項2号)と評価されるリスクも全くのゼロではありません。このリスクを回避するために、家を出る際には置き手紙を残すことが有効です。
手紙には、別居の理由や、相手からのDV・モラハラがあったことを明記しましょう。手紙の写真を撮っておくなど、証拠を確保することも忘れないでください。
「別居したのに連絡がしつこい時」の解説

別居したいと弁護士に代わりに伝えてもらう
DVやモラハラの加害者と直接関わることは大きなストレスとなります。
このような場合、弁護士に間に入ってもらうのが有効な手段です。弁護士は代理人として、別居したいという意思を伝えるのはもちろん、生活費(婚姻費用)の請求や今後の離婚協議まで、全てを窓口として任せることができます。
弁護士が窓口となれば、相手も冷静に対応せざるを得ず、法律知識に基づいた適切な解決を実現することができます。また、現実的な危険についても、弁護士を通じて接近禁止命令を申し立てるなど、法的な措置を講じることも可能です。
「離婚に強い弁護士とは?」の解説

別居について子供に伝える際のポイント

別居について子供に伝える際は、特に慎重な配慮を要します。
両親の別居は、子供の生活環境を大きく変える出来事なので、年齢や理解度に応じて言葉を選び、誠実な態度で向き合うことが何よりも重要です。親の都合で子供を不安にさせないために、「自分が見捨てられるのではないか」「一方の親を失うのではないか」という不安を払拭してください。
年齢や発達段階によっても反応は異なりますが、幼い子供ほど環境の変化に敏感で、不安が行動や体調に表れやすく、成長するにつれて状況を理解しようとする傾向が高まります。いずれの場合も重要なのは、子供が安心できる環境を整備することです。そして、父と母が離れて暮らすことになっても、「あなたへの愛情は変わらない」というメッセージを、両親双方から伝えることが大切です。
したがって、子供に伝える際は、夫婦喧嘩ではなく、両親が協力している姿勢を見せるのが理想です。どうしても別居せざるを得ないとしても、親子関係は変わらないことを明確に説明し、子供の前で他方の親を否定しないよう気をつけてください。
「子連れ別居の注意点」の解説

別居したいと伝える前に必ずすべき準備
別居したいと伝える前に、十分な準備をしておくことも重要です。
一度別居した後は、足りないものを取りに戻るのも大変でしょう。特に経済的な見通しを立てておくことは、安定した生活基盤を築く上で重要です。万全の準備を早期に整えれば、「別居したい」という意思の固さを相手に示すことができます。
適切な伝え方、切り出し方を選ぶには、心と時間の余裕が必要です。そのためにも、まずは自身の足場をしっかりと固めることを意識してください。
その場の感情で衝動的に別居を伝えると、話し合いがこじれるおそれがあります。スムーズに別居を進めるためには、冷静な状態で意思を伝えられるよう、事前の準備が不可欠です。
具体的な準備としては、別居後の生活費のシミュレーション、新しい住居の確保、持ち出す荷物の整理などが挙げられます。
「別居時の荷物の持ち出し」の解説

別居の伝え方に関するよくある質問
最後に、別居の伝え方に関するよくある質問に回答しておきます。
相手が別居に同意してくれない場合はどうすればよい?
夫婦には民法752条に基づき、同居し、互いに協力し扶助する義務があります。
しかし、相手が同意しない場合でも、状況によっては別居に踏み切るべきです。例えば、相手との冷静な話し合いが難しい場合や、DVやモラハラがあって速やかに距離を置くべき場合などは、相手の同意なく別居することに問題はなく、それだけで不利になることもありません。
ただし、正当な理由なく一方的に同居を拒否したり、別居することで配偶者や子の生活を困窮させたりすると、悪意の遺棄(民法770条1項2号)に該当するおそれがあります。
「勝手に別居すると不利?」の解説

別居を伝えた後、生活費(婚姻費用)は請求できる?
別居中でも法律上の夫婦である限り、収入の多い方は少ない方に対し、同程度の生活水準を保障するための生活費(婚姻費用)を支払う義務があります。請求しても相手が支払いに応じない場合は、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てることが可能です。
調停が成立しても、申立時までしか遡って支払われないのが実務なので、別居したらすぐに請求することが重要です。
「別居中の生活費の相場」の解説

別居したらすぐに住民票を移した方がよい?
住所が変わった場合、特別な事情がない限り、住民票を速やかに移すべきです。
住民票を移さないと、児童手当や就学援助などの行政サービスを新住所で円滑に享受できないおそれがあるなど、行政サービスに支障が出てしまいます。ただし、DV被害者の場合、新しい住所を知られるリスクを避けるため、離婚に至っていない段階では、当面の間は住民票を移さない方法も考えられます。
なお、住民票を移す場合も、支援措置によって閲覧制限を申し出ることで、新住所を知られるリスクを軽減することが可能です。
まとめ

今回は、別居したいときの適切な伝え方と切り出し方を解説しました。
別居を円満に進めるには、感情的に切り出すのではなく、事前に十分な準備をしておくことが不可欠です。生活費の計画や住居の確保といった準備に加え、相手の性格や状況をよく把握し、それに合った伝え方を選択するようにしてください。
冷静な話し合いが望めそうもない場合や、相手からのDVやモラハラがある場合には、メールや置き手紙の方法、弁護士を介して伝える方法などが安全です。また、未成年の子供のいる夫婦の場合、子供への配慮も欠かせません。
自身の状況を見極めて、できる限り紛争を拡大させないよう、別居を実行するよりも前に弁護士に相談しながら、慎重に進めるのがおすすめです。
- 別居を伝える場合、万全に準備し、感情的な衝突を避けられる伝え方を選ぶ
- 冷静な話し合いができるなら直接、難しい場合はメールや置き手紙で伝える
- DVやモラハラがある場合に直接「別居したい」と伝えるのは危険
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別居は、夫婦の関係に大きく影響するため、慎重に進めなければなりません。別居をする前に、法的な観点から将来の計画を立て、準備することが重要です。
別居を考えている方や、具体的な方法、手続きについて悩むときは、「別居」に関する解説を参考にしてください。

