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お互いにモラハラを主張するときの対応と離婚時の夫婦の責任

解説の執筆者

弁護士法人浅野総合法律事務所

代表弁護士

浅野英之

東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。

「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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夫婦が互いに相手のモラハラを主張する場合、どのように対処すべきでしょうか。

離婚時に相手のモラハラを主張したのに、相手からも「むしろあなたがモラハラだ」「妻の態度が悪いことで口論を招いている」などと反論されるケースがあります。

夫婦が憎しみあい、お互いにモラハラ被害を主張するケースでは、どちらが加害者で、どちらが被害者なのかが分かりにくいことがあります。モラハラはDVとは異なり、几帳面、神経質、独自の価値観といった、「性格」「相性」の問題と紙一重です。度が過ぎてモラハラになる場合でも、加害者には自覚がないことも少なくありません。

今回は、夫婦双方が「相手がモラハラしている」と主張する問題について、対応方法や証拠の重要性、そして、離婚時に夫婦が負う責任について弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • お互いにモラハラを主張するケースは、「モラハラ」の定義が広いことが原因
  • 相手のモラハラ気質が酷いほど、離婚の責任を議論すると泥沼化する
  • 相手のモラハラを指摘する場合でも、離婚や復縁などの目的を優先する

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目次(クリックで移動)

夫婦がお互いにモラハラを主張する理由

まず、なぜ夫婦がお互いにモラハラを主張するのか、その理由を解説します。

離婚時に、お互いに相手からのモラハラ被害を主張して争いとなるケースがよくあります。このような事態に陥るのは、「モラハラ」特有の性質が理由となっています。

モラハラの定義は非常に広い

モラハラはよく離婚の理由に挙げられますが、不貞行為やDVと異なり、「夫婦のどちらが悪い」とは必ずしも言い切れない性質があります。そのため、「モラハラ」と一言でいっても、相当強度で悪質でなければ、それだけで「法定離婚事由」となって裁判離婚が認められたり、慰謝料の支払いが命じられたりするとは限りません。

モラハラの定義が広く曖昧であるため、夫婦生活で起こった「嫌なこと」「不快なこと」「自分の思い通りにならないこと」が、全て「モラハラ」と一括りにして主張されがちです。そのため、実は加害者側なのに、自分に不都合なことが起こると「モラハラ被害を受けているのは自分の方ではないか」と誤解してしまうことがあるのです。

このような「モラハラの主張をし合う」という事態を回避するには、「モラハラ」という用語を正しく理解する必要があります。「モラハラかどうか」という議論は、夫婦双方の主張が食い違うことが多いため、具体的な事実に着目して交渉を進めるのがよいでしょう。

妻からモラハラと言われたときの対応」の解説

モラハラ被害者には自覚がない

モラハラ気質の人がいる一方で、よく被害を受ける人にも共通の特徴があります。

モラハラ被害者は、自分を責めたり、我慢したりする人が多いです。そして、被害者が文句を言わなければ加害者は増長し、モラハラをしているという自覚もなくエスカレートしていきます。しかし、加害者に都合の良い考えを受け入れていると、モラハラ気質を加速させてしまいます。その結果、互いにモラハラ被害を主張し合う事態を招くこととなります。

モラハラの証拠は入手しづらい

証拠が入手しづらいことも、お互いにモラハラ主張をし合うケースが起こる理由となります。

客観的な証拠を多く集められるほど、裁判所の事実認定を有利に進めることができます。しかし一方で、モラハラのように日常的、かつ、家庭内でこっそりと起こるトラブルでは、夫婦のいずれも手元の証拠が十分ではないことも多いでしょう。

その結果、証拠が手元になくても、離婚を有利に進めるために一方がモラハラを主張すると、他方もそれに反論する形でモラハラを主張するしかなくなり、泥沼化していきます。

モラハラの証拠」の解説

お互いにモラハラ被害を主張するとき、被害者側の対応方法

次に、被害者の立場で、お互いにモラハラを主張するケースの対処法を解説します。

モラハラ被害を訴えると、相手も逆にモラハラを主張するケースはよくあります。しかし、「モラハラを理由に離婚したいとき」「慰謝料請求したいとき」「モラハラがあっても復縁したいとき」といった方針ごとに対処法を検討する必要があります。

自分が正しいと信じるモラ夫・モラ妻は、「相手が悪い」と本気で決め付けてきます。自分の主張への反論は全て、「逆方向のモラハラだ」と受け取られてしまいます。そのため、お互いにモラハラを主張するケースでは、話し合いで責任を明らかにするのは難しいこともあります。

以下の通り、離婚や慰謝料請求などの場面で、モラハラの責任の所在を明らかにしたところで、結論に大きな影響がないことも多いことを理解すべきです。

モラハラを理由に離婚したいとき

夫婦のいずれも早期の離婚を希望しているケースがあります。

お互いにモラハラを離婚理由として主張していても、その責任を明らかにすることなく早期離婚を優先するのが正しい対応です。「相手のモラハラを理由に離婚したい」と双方が考えるなら、最終的な責任がどちらにあるかを明らかにすることに大きな意味はないからです。

モラハラに耐えかねて離婚を求めた結果、相手もモラハラ被害を受けていると考えているとき、既に夫婦関係は破綻していると評価できます。モラハラの責任追及よりも離婚を優先すべきケースでは、互いにモラハラの責任がどちらにあるかに固執する意味がありません。

「早期離婚」よりも「離婚時の慰謝料」を重視する場合、責任追及が重要です。

しかし、モラハラの慰謝料は、さほど高額になることは期待できないケースが多いです。また、財産分与、養育費、年金分割といったその他の金銭的な条件については、「モラハラがあったかどうか」によって大きな影響を受けないのが基本です。

したがって、軽度のモラハラでは、「離婚条件を良くしたいからモラハラを主張する」というのは、戦略的に見ても決して得策ではありません。

離婚までの流れ」の解説

モラハラを理由に慰謝料請求したいとき

一方で、モラハラを理由に慰謝料請求したいなら、責任を明らかにする必要があります。

ただし、夫婦がお互いにモラハラを主張するケースでは、まさに「お互い様」であって、慰謝料が認められるような「どちらかが一方的に悪い」とは言えないおそれがあります。夫や妻の一方のみが悪いと言い切れるモラハラでない限り、そもそも悪質性が低く、慰謝料が認められるほどの違法性はないと判断される可能性が高いです。

したがって、お互いにモラハラを指摘するケースは、調停や裁判に発展して争った場合にどれほどの慰謝料を得られるかを見極め、早期の離婚とどちらを優先するか慎重に判断してください。なお、暴力(DV)がある場合は、モラハラとは違って責任が明らかであり、慰謝料を請求すべきです。

モラハラやDVから逃げるための別居」の解説

離婚を拒否して復縁したいとき

逆に、モラハラがあると主張するものの復縁を希望する人もいます。

離婚を拒否したり復縁を目指したりするケースこそ、夫婦の責任をはっきりさせることに固執すべきではありません。離婚の決断に至らないなら、モラハラは軽度であると考えられます。夫婦間の問題は、まずは話し合いで解決すべきであり、婚姻関係を継続したいという気持ちがあるなら、相手を否定したり責任を追及したりしてはいけません。

とはいえ、お互いにモラハラを主張するケースでは、相手は加害者なのに「自分は被害者だ」と自己を正当化してきます。復縁に成功しても、さらにモラハラが悪化する可能性もあるため、次のような理不尽な要求をされるときは注意が必要です。

  • 「復縁したいなら、自分の誤りを認めて改善すべき」
  • 「モラハラであるという指摘について謝罪せよ」
  • 「今後、結婚生活を続けるなら自分の命令に従うように」

復縁を目指すのは相当なストレスがかかるもので、困難な道であるという覚悟が必要です。

復縁したい人が理解すべき全知識」の解説

お互いにモラハラを主張する時の注意点

最後に、お互いに相手のモラハラを主張するケースにおいて、対応の際に注意すべきポイントを解説しておきます。

モラハラの責任問題について議論しない

まず、モラハラの責任問題について加害者と議論をしないことが大切です。

お互いにモラハラ被害を主張しているとき、加害者側が、責任を明らかにするための「議論」をふっかけてくることがあります。しかし、応じるのは得策ではありません。加害者の目的は「問題解決」ではなく「議論」そのものであることが多いです。嫌な思いをさせ、ストレスを与えるのが目的であるとき、対応すれば精神的苦痛が増すばかりで、離婚に向けた前進はありません。

責任の所在を議論すれば、逆にモラハラ扱いしてくる相手に、「反省がない」「誠意がない」といった屁理屈をこねる材料を与え、モラハラがエスカレートしてしまいます。

離婚に強い弁護士とは?」の解説

モラハラと夫婦喧嘩は違うと理解する

モラハラと似た状況は、夫婦喧嘩でも起こります。

例えば、不満をぶつけ合い、相手の至らない点を部分を指摘したりといった言動です。しかし、モラハラと夫婦喧嘩は区別すべきです。むしろ、「夫婦喧嘩と同じだ」「お互い様ではないか」と責任を押し付けることこそ、モラハラ加害者によくある話のすり替えです。

夫婦喧嘩は、円満な家庭でも起こります。意見の相違を解決するために、感情的になることもあるでしょう。しかし、モラハラはそれとは違い、相手に責任のないことを非難し、揚げ足を取り、無用に人格を否定するなど、夫婦生活にとって全く不必要な行為です。

加害者にモラハラの自覚がなく、謝罪や反省の態度がない点も夫婦喧嘩との大きな違いです。夫婦喧嘩なら、言いたい放題だったとしても、最終的には自分の非も認め、お互いに改善することを約束して円満に戻ることも多いですが、モラハラ加害者が反省することはありません。

夫婦喧嘩で暴力があった際の対処法」の解説

【まとめ】お互いにモラハラを主張するときの対応

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、夫婦がお互いに相手のモラハラを主張するケースについて解説しました。

お互いにモラハラ被害を主張するケースは、「モラハラ」の定義が広いという用語の性質の問題と、我慢してしまいやすいという被害者にありがちな傾向が原因となっています。

暴力(DV)に発展せず、モラハラにとどまる限り、その責任を議論する意味は小さいでしょう。そのため、相手から「むしろあなたがモラハラだ」と言われたことに怒って議論をはじめると、「離婚」という目標からかえって遠のいてしまいます。

相手にモラハラがあるケースほど、当事者間の話し合いは困難なことも多いです。夫婦間での協議が難しいときは、調停や訴訟といった裁判手続きを見据えて証拠の準備を進めてください。モラハラをはじめとした離婚問題にお悩みの方は、早い段階で弁護士に相談するのが有益です。

この解説のポイント
  • お互いにモラハラを主張するケースは、「モラハラ」の定義が広いことが原因
  • 相手のモラハラ気質が酷いほど、離婚の責任を議論すると泥沼化する
  • 相手のモラハラを指摘する場合でも、離婚や復縁などの目的を優先する

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