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既婚者専用のマッチングアプリは違法?使用する際の注意点やリスク・危険性

既婚者専用のマッチングアプリ、婚外恋愛を目的とする出会いサービスが増えています。

既婚者専用であるがゆえに、匿名性や秘密厳守を強調するサービスが多い一方で、「法律的に問題はないのか?」「利用は違法ではないのか?」と不安を感じる人もいるでしょう。

結論としては、アプリの存在や利用そのものは違法ではありません。しかし、既婚者専用マッチングアプリを利用して不貞行為を行ったり、浮気・不倫の関係に発展したりした場合、配偶者に慰謝料を請求されたり、離婚の争いで不利に扱われたりといった重大なリスクを伴います。

今回は、既婚者向けのマッチングアプリの法的な位置づけと、利用時の注意点や具体的なリスクについて、弁護士の視点でわかりやすく解説します。

この解説のポイント
  • 既婚者専用マッチングアプリは違法ではないが、不貞行為は違法
  • アプリを通じて不貞行為をした場合、離婚や慰謝料請求の原因となる
  • 既婚者専用アプリの利用は勧めないが、利用するなら不貞との線引を守る

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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既婚者専用マッチングアプリとは

既婚者専用マッチングアプリとは、「結婚している人(既婚者)」を主な利用対象とした出会いサービスです。既婚者向けであるがゆえ、通常の恋活・婚活アプリにはない次の特徴があります。

  • アプリをインストールせずブラウザだけで使える。
  • サービスの利用にあたり本名や顔写真の公開は不要(匿名性)。
  • 秘密厳守を前面に出す宣伝(「家族や職場に絶対バレない」を強調)。

近年、このようなアプリの利用者が増加傾向にある理由は、SNSやマッチングアプリが普及し、オンラインで恋人、結婚相手を探すことの心理的ハードルが低下した点にあります。

結婚後も刺激や癒しを求めて、アプリで「心の拠り所」「非日常」を求める人も多く、既婚者マッチングアプリの利用は増えています。そして、婚外恋愛や不倫、気軽な出会いや癒し、同じ境遇の人との交流など、利用目的は人によって様々です。

サービス側が匿名性や秘密厳守を強調するので、「安心して利用できる」と錯覚しますが、利用する際のリスクは決して軽視できません。

既婚者専用マッチングアプリは違法?

次に、既婚者マッチングアプリの適法性について解説します。

既婚者マッチングアプリがどのようなサービスかを理解した上で、そもそもサービス自体が違法ではないのかを考えていきましょう。

アプリ提供者の法的責任

民法90条は、「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする」と定めます。そして、民法770条1項1号が「不貞な行為」を「法定離婚事由」と定めると共に、裁判例でも慰謝料請求を認めています。したがって、既婚者を対象に「不倫を推奨・助長するようなサービス」を提供する場合、公序良俗違反に該当する可能性があります。

既婚者アプリの運営企業がトラブルを起こした場合も、法的責任が生じます。

マッチングアプリには、利用者が安全に利用できるよう、出会い系サイト規制法や特定商取引法などの厳しい法規制が設けられているからです。

例えば過去には、マッチングアプリの運営会社による個人情報の流出事故や、公式SNSアカウントの乗っ取りトラブルなども発生しています。倫理的に問題あるサービスを提供しているとして、風評被害が起きる可能性も十分にあります。

もっとも、既婚者マッチングアプリそのものが即座に違法と判断されるわけではなく、提供形態やサービス内容の実態によっても結論は分かれます。

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アプリ登録・利用の法的責任

アプリの登録・利用は違法ではないが、異性と肉体関係を持てば「不貞行為」に該当します。

不貞行為は、配偶者の持つ結婚生活を平穏に送る権利を侵害するもので、民法770条1項1号に定める「法定離婚事由」に該当する上に、配偶者から慰謝料請求を受ける可能性があります。不貞行為に発展した場合、配偶者は不倫相手に対しても慰謝料請求が可能です。慰謝料の金額は、100万円〜300万円程度が相場であり、夫婦関係の状況によっても変動します。

アプリの利用履歴やチャットのスクリーンショット、クレジットカードの明細などがあると、既婚者マッチングアプリへの登録が発覚し、交渉で不利になるおそれがあります。離婚裁判や慰謝料請求の証拠として用いられると、既婚者マッチングアプリであるという性質上、「会っただけ」や「やり取りしただけ」でも、肉体関係を推認させるものと判断されるケースもあります。

また、不貞行為を直接示唆するものでなかったとしても、配偶者が嫌悪感を持つことは当然であって、「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条1項5号)と判断される危険もあります。

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既婚者専用マッチングアプリの利用で起こるリスクとトラブル事例

次に、既婚者専用マッチングアプリのリスクについて、トラブル事例と共に解説します。

配偶者にバレて離婚問題へ発展

アプリの利用履歴やスクリーンショット、クレジットカード明細は、既婚者マッチングアプリを使っていた重要な証拠になります。

既婚者専用マッチングアプリの利用が配偶者に発覚して、離婚問題に発展するケースは少なくありません。スマートフォンを頻繁にチェックしたり、浴室に持ち込んだりといった行動は不審に思われ、浮気・不倫を疑われるきっかけとなります。

離婚に応じなければ、調停を申し立てられたり訴訟に進んだりして、既婚者マッチングアプリを使っていた事実は必ず主張されます。更に、アプリで相手を見つけて不貞行為に及んでいた場合は、法定離婚事由に当たるので、最終的には離婚に応じざるを得ず、慰謝料も請求されるでしょう。

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高額な慰謝料を請求される

既婚者専用マッチングアプリで不貞行為をした場合、慰謝料を請求されるおそれがあります。

不貞行為とは、配偶者以外の異性と肉体関係を有することを指し、個々のケースで異なりますが、相場の目安は100万円〜300万円程度(離婚する場合は200万円~300万円、しない場合は100万円~200万円程度)です。

なお、以下の事情がある場合は悪質であると判断され、慰謝料が増額される傾向にあります。

  • 不倫を理由に別居や離婚に至った。
  • 婚姻期間が長い。
  • 夫婦の間に幼い子供がいる。
  • 不倫発覚までは夫婦関係が円満だった。
  • 不倫発覚を機に夫婦関係が破綻した。
  • 回数が多い(長期間にわたる)。
  • 配偶者が精神疾患を発症した。
  • 不倫発覚後も交際を続けた。
  • 回数や期間について嘘をついていた。

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詐欺や美人局などの犯罪被害

既婚者マッチングアプリを利用したことで、詐欺や美人局などの犯罪に巻き込まれるリスクもあります。既婚者マッチングアプリを悪用した詐欺について、代表的な手口をまとめました。

  • 投資詐欺
    既婚者マッチングアプリで知り合った相手と親密になり、株式や不動産などの投資話や仮想通貨詐欺を持ち掛ける。
  • 美人局
    肉体関係を持った後、家庭や職場にバラすなどと脅して金銭を奪い取る。
  • デート商法
    アプリで知り合った相手とデートを重ねた後、「特別に紹介したい商品(セミナー)がある」などと勧誘して高額な商品やサービスを購入させる。
  • ロマンス詐欺
    実際に会うことなくメッセージのやり取りを続け、親近感を抱かせて金銭をだまし取る。
  • ぼったくり
    アプリで知り合った相手を飲食店やバーにおびき出し、法外な料金を請求する。

どのような目的で登録しているか事前に見抜くのは難しく、自分が既婚者だと、配偶者にバレるのをおそれて泣き寝入りになることも多いです。

詐欺や恐喝・脅迫といった犯罪行為までは至らなくても、利用者間のトラブルも頻発しています。例えば、男女関係のもつれで逆上した相手がSNS上で誹謗中傷したり、リベンジポルノを行ったり、ストーカーになったりといった危険もあり、最悪は、社会的地位や命を脅かされてしまいます。

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個人情報が流出して社会的な信用を失う

アプリビジネスの抱えるリスクとして「個人情報の流出」が挙げられます。2021年4月には、大手マッチングアプリサービス「omiai」で、不正アクセスにより運転免許証や健康保険証、パスポートなど年齢確認書類の画像データ約170万件が流出するトラブルが起きました。

多くの会社はセキュリティ対策を講じているでしょうが、情報流出のトラブルをゼロにはできません。運営体制に問題のある会社だった場合、その確率は更に上がります。

そして、既婚者マッチングアプリであるという性質上、情報が漏洩すると、職場や家庭に浮気・不倫の事実が知られ、大きな損害を被るおそれがあります。更に、過去にトラブルを起こした相手がその事実を知った場合、リベンジポルノやネット掲示板・SNSでの晒し行為など、深刻なトラブルに発展する可能性も否定できません。

既婚者専用マッチングアプリ利用の注意点

最後に、既婚者専用マッチングアプリを利用する際の注意点を解説します。

ここまで説明したように、既婚者専用マッチングアプリは法的なリスクが高く、社会的な信用を失う可能性もあるので、弁護士としては決しておすすめしません。それでも利用するならば、細心の注意を払うべきです。

プライバシー管理を徹底する

まず、プライバシー管理は徹底しておきましょう。

配偶者などの第三者に利用している事実が発覚した場合、既婚者マッチングアプリであるということによるリスクは非常に大きいです。特に、以下の点にくれぐれも用心してください。

  • やり取りを見られない対策(ロック・通知非表示など)を講じる。
  • ブラウザやアプリの閲覧履歴を削除。
  • クレジットカードの利用明細を見られないようにする。
  • 不貞を疑われるような不自然な行動を取らない。

また、美人局や詐欺、恐喝といった他の犯罪に悪用されないよう、出会ったとしても個人情報の安易な共有は避けましょう。偽名や捨てアドを使うなどの対策もあります。

不貞などの違法行為との線引を徹底する

不貞行為との線引はしっかりと行ってください。

既婚者マッチングアプリを登録・利用するだけでは直ちに違法行為とはなりません。しかし、出会った相手との肉体関係に至れば、不貞行為として法的責任を負います。また、単にメッセージをやり取りするだけでは不貞の証拠になりませんが、肉体関係を示唆するものは証拠となります。

実際に性交渉をしていなくても、特定の相手と頻繁にデートを重ねたり、配偶者と離婚して結婚をする約束を取り交わしたりなど、夫や妻が嫌がるようなやり取りを続けることは、「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条1項5号)となる可能性があります。

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トラブルは早めに弁護士に相談する

既婚者マッチングアプリを使っていたことが原因で、自分の配偶者から離婚を迫られたり、慰謝料を請求されたりすることも考えられます。また、相手の配偶者から慰謝料を請求されるケースもあります。ここまでの状況になると、もはや自分一人で解決するのは困難でしょう。

弁護士に相談すれば、正しい法律知識に基づいて解決することができます。

弁護士なら、配偶者や相手との交渉を有利に進めるために、あなたの代わりに行動してくれます。仮に自分の夫や妻、相手の配偶者との間で裁判などの法的手続きに発展したとしても、弁護士に対応を一任することができます。

状況に合わせた最適な解決を目指すために、リスクが顕在化してしまったら、早めに相談しておくことをお勧めします。

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まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、既婚者専用マッチングアプリについて、法的に解説しました。

既婚者向けのマッチングアプリは、利用自体が直ちに違法となるわけではありません。しかし、不貞行為に発展すれば配偶者から慰謝料請求を受けたり、離婚裁判で不利な立場に立たされたりする重大なリスクがあります。「既婚者専用」であるがゆえに恋愛は浮気や不倫になるので、アプリの利用履歴やメッセージは、離婚や不貞のトラブルで証拠として扱われる可能性が高いです。

したがって、安易な利用は大きなトラブルを招くので、くれぐれも注意が必要です。

利用を検討する際は、「違法かどうか」だけでなく、配偶者との信頼関係をも十分に踏まえ、冷静に判断してください。万が一、トラブルに発展したら、速やかに弁護士に相談しましょう。

この解説のポイント
  • 既婚者専用マッチングアプリは違法ではないが、不貞行為は違法
  • アプリを通じて不貞行為をした場合、離婚や慰謝料請求の原因となる
  • 既婚者専用アプリの利用は勧めないが、利用するなら不貞との線引を守る

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参考解説

不貞慰謝料は、配偶者の不貞(不倫や浮気)による精神的苦痛に対して請求すべき賠償金です。離婚する場合はもちろん、離婚を回避する場合も、配偶者や不倫相手に対して請求することができます。

請求方法や法的な注意点、相場などを適切に理解するため、「不貞慰謝料」に関する解説を参考にしてください。

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