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貞操権侵害とは?慰謝料額の相場、慰謝料請求の方法、必要な証拠は?

貞操権とは、「貞操」を守る権利です。わかりやすく説明すると、性交渉をはじめとする性的関係を結ぶ(もしくは結ばない)自由を守る権利です。

「誰と性的関係を結ぶか」は自由に決められるので、結婚した夫婦でなくても当然に貞操権を有します。そのため、意に反する性的関係を結ばざるを得なかったときは、貞操権の侵害に該当します。例えば、既婚男性が「未婚」と偽って女性と肉体関係を持つケースは、嘘をついて性交渉することで、被害者である女性の自由な判断を奪うこととなるので、貞操権侵害になります。

貞操権を侵害されたとき、被害者は加害者に対して慰謝料を請求できます。貞操権侵害の慰謝料の相場は、50万円〜200万円程度が目安です。より高額の慰謝料を請求するには、貞操権侵害となる行為の悪質性を主張立証することが重要です。

今回の解説では、貞操権侵害となるケースと慰謝料の相場、増額方法などを解説します。

この解説のポイント
  • 貞操権侵害とは、性的な自己決定権を侵害されること
  • 貞操権侵害されたら慰謝料を請求でき、その相場は50万円〜200万円
  • 貞操権侵害の慰謝料を増額するには、悪質さを立証する証拠が重要

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

豊富な知識・経験に基づき、戦略的なリーガルサービスを提供するため、専門分野の異なる弁護士がチームを組んで対応できるのが当事務所の強みです。

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貞操権侵害とは

貞操権とは、性的な自己決定をする自由のことです。

わかりやすくいうと、「誰と性的な関係をもつか(もしくは、もたないか)」を、完全に自由な意思で決められる権利が、貞操権です。人は誰しも、誰とどのような性的関係を持つかについて、誰からも強要されずに決める権利があります。

暴力的に、無理やり性的関係を強要されれば、不同意わいせつ罪(刑法176条)、不同意性交等罪(刑法177条)などの犯罪になります。この場合だけでなく、騙されて、気付かないうちに性的な自己決定が奪われてしまうこともあります。無理やりではなくても、「性的自由」という重要な権利について正しい判断をできなかったこと自体が、権利侵害となるからです。

つまり、貞操権侵害と言えるのは、次の2つの要件を満たすケースです。

  • 「自由な判断ができなかったこと」
  • 「肉体関係をもったこと」

貞操権を侵害されたときは、被害者は加害者に対して、その権利侵害によって負った精神的苦痛について慰謝料を請求できます(民法709条、710条)。

貞操権侵害となる典型的なケースは、次の通りです(なお、理論的には、男女どちらも被害者となり得ますが、多くのケースは女性を被害者としています)。

交際相手が既婚者なのを隠していた

相談例1

婚活系のマッチングアプリで知り合い、「独身である」と言われたので真剣交際をし、体の関係を許していました。

しかし、後から、実は既婚者だったことが判明しました。独身だと思ったからこそ肉体関係をもったのであり、既婚者だと知っていれば性交渉することはありませんでした。騙されて貞操権を侵害されてしまいました。

貞操権侵害の典型例の1つ目は、交際相手が既婚者なのを隠していたケースです。

結婚前提での真剣交際を望む女性は、「性的関係を結ぶか」を決断するにあたり、「相手が結婚していないこと」を重要な判断材料とします。しかし、将来の結婚を約束したり、暗に匂わせたりして、性的関係を結ぼうとする悪質な男性もいます。結婚していることを嘘を付いて隠したまま性的関係を持つことは、女性の自由な意思決定を阻害しており、貞操権侵害にあたります。

「独身者だ」と明確に嘘を付くケースだけでなく、「既婚者なのをあえて言わなかった」というケースもあります。「隠していた」に過ぎないケースも、次のように誤解を生む行為があったなら、貞操権の侵害があったと言ってよいでしょう。

  • 結婚指輪をあえて外してデートしていた
  • セカンドハウスを借りて、一人暮らしの独身者を装っていた
  • 独身者限定のお見合いパーティに参加していた
  • 結婚していないことを表示してマッチングアプリで出会っていた

離婚予定だと嘘をついた

相談例2

結婚相談所が主催するパーティで知り合いましたが、交際を開始した後で、実は奥さんがいると知りました。

問い詰めたところ「妻とは離婚予定だ」「君と結婚したい」と説得されて肉体関係を持つに至りましたが、離婚の話は進まず、私の方が待ちきれず別れてしまいました。

貞操権侵害の典型例の2つ目は、既婚者なのは明かしているが、交際相手が「妻と離婚予定だ」と嘘を付くケースです。

1つ目のケースと異なり、交際相手が既婚者であることは知っていたわけですから、被害者にも一定の非があります。既婚者と肉体関係(性交渉)を持ったことについて不貞行為にあたるリスクもあり、相手の配偶者から逆に慰謝料請求されるおそれがあります。

とはいえ、「妻とはうまくいっていないし離婚予定だと聞いていたから体を許したのに」という事情があるとき、「離婚予定だ」と偽って自由な判断を阻んだことは、貞操権侵害となります。

離婚までの流れ」の解説

貞操権侵害の慰謝料の相場と、増額するための事情

次に、貞操権侵害をされたときの慰謝料の相場と、増額するために主張すべき事情を解説します。

精神的苦痛は目に見えないので、慰謝料には明確な基準がありません。相場はあくまで目安に過ぎず、実際は、個別の事情を総合的に考慮して慰謝料額が判断されます。

貞操権侵害の慰謝料の相場

貞操権侵害の慰謝料の相場は50万円〜200万円が目安です。

夫婦が他の異性と肉体関係を有する「不貞行為」の慰謝料は100万円〜300万円が相場ですが、貞操権侵害は、男女間の裏切りではあるものの、「婚姻」という強い保護に値する法的関係は存在しないため、これより低額になる傾向にあります。

ただし、「貞操権侵害で慰謝料請求が認められた裁判例」で後述の通り、事案によってはこれより高額な慰謝料が認められるケースもあります。

貞操権の慰謝料額に影響する事情

次に、貞操権の慰謝料額に影響する事情について解説します。以下の事情があると、貞操権の慰謝料の金額は、増額、減額のいずれにも変動します。

騙されて交際した期間が長い

騙されて交際していた期間が長いほど、貞操権侵害は悪質であり、高額な慰謝料請求が可能です。交際期間が長いほど、人生の時間を無駄にしており、嘘が発覚したときの精神的苦痛も大きくなると考えられるからです。

性交渉の回数や頻度が多い

貞操権侵害によって、その期間中に行った性交渉の回数や頻度が多いほど、高額な慰謝料を請求することができます。その性交渉が強要されたものであったり、暴力や強迫を伴っていたり、特殊な性癖を押し付けられたりしていると、より悪質性が増します。

被害者と加害者の年齢が離れている

被害者と加害者の年齢が離れているほどに悪質です。

貞操権侵害は、加害者が被害者に偽りの事実を告げて行われるところ、被害者の年齢が低く、未熟であるほど騙しやすいと考えられるからです。加害者の年齢が高かったり、道徳的な行動が求められる社会的な地位があったりといった事情もまた、貞操権侵害の悪質さを際立たせ、慰謝料を増額するための重要な事情となります。

交際中に婚約していた

「結婚を前提とした真剣交際だった」という事情の最たる例が、「婚約した」ケースです。したがって、交際中に婚約して貞操権を侵害された場合、高額な慰謝料を請求できる事情の一つとなります。そもそも婚約は、相手が既婚者だと目的を達成できないので、騙して性交渉をしたことが明らかです。

したがって、真剣交際で、結婚の約束までしていたケースでは、貞操権侵害の慰謝料は高額化する傾向にあります。

妊娠していた

同様に、交際中に妊娠しているとき、被害者の結婚への期待度は高く、かつ、騙されたときの精神的苦痛は非常に大きくなることが容易に予想できます。

したがって、妊娠・出産していたり、中絶したりするケースは、貞操権侵害の慰謝料を増額する事情となります。

結婚前提の場所で出会った

結婚を前提とした場所で出会い、交際を開始したという事情は、貞操権侵害の慰謝料を高額化させる理由の一つです。例えば、結婚相談所、婚活サイトや婚活アプリ、婚活パーティ、お見合いなどが該当します。

これらの場での出会いはいずれも、「結婚を前提とした人しかいないこと」を前提に、真剣交際を希望する人が集まります。そこで出会って交際を開始したのなら、少なくとも既婚者ではないことを意味しています。

信頼性の高い結婚相談所や婚活パーティは、行政機関の発行する「独身証明書」の提出を義務付け、既婚者がまぎれないよう配慮しています。

このとき、独身証明書を偽造するなどの手口で婚活を装っていると、更に悪質性が増し、慰謝料を増額する重要な事情となります。

既婚者だと知ってすぐ別れた

「既婚者だと知ってからはすぐ別れた」という事情は、貞操権侵害があったことを裏付けます。逆に、貞操権侵害の責任を追求しているのに、既婚者だと分かった後も交際を続けているのは不自然です。明らかになってすぐに別れないと「そもそも騙されていないのでは(気付いていたのでは)」「仮に最初から既婚者だと知っていても性的関係を持ったのでは」などと邪推され、慰謝料が低額になるおそれがあります。

貞操権侵害の責任を追及するなら、騙されたことを知ったら直ちに交際終了を通知して直接の連絡は取らず、弁護士に依頼して慰謝料請求するのが適切です。

別れ際が不誠実だった

貞操権を侵害した加害者が、交際終了のタイミングで不誠実な対応をした事実もまた、慰謝料をより高額にする事情となります。騙して貞操権を侵害したにもかかわらず、反省や謝罪がないことは不誠実な態度といえるからです。

例えば、交際の終了時に加害者から心ない一言や捨てゼリフがあったときや、罵詈雑言、誹謗中傷、リベンジポルノなどの悪質な行為があると、より高額の慰謝料を請求できます。結婚する気もないのに婚約をして肉体関係を持ち、突然音信不通になるといった対応も不誠実極まりなく、慰謝料請求の対象となります。

被害者の責任はない

貞操権を侵害された被害者に落ち度があると、慰謝料を減額されるおそれがあります。

加害者の嘘をつく行為が巧妙であったり、お酒や薬物を利用したりといった責任が強度なとき、被害者には全く責任はありません。これに対して、次のような事情があると、被害者といえど一定の責任が認められるおそれがあります。

  • 結婚指輪をしていた
  • スマートフォンの画面やLINEのアイコンが家族写真だった
  • 妻との関係について相談を受けていた
  • 配偶者へのプレゼントを一緒に選んだなど

上記の場合、注意すれば既婚者だと気付けたはずで、被害者にも落ち度があります。当然気付けた場合や、実は薄々気づいていたとき、貞操権侵害の慰謝料請求ができないだけでなく、相手の配偶者から慰謝料請求を受けるリスクもあります。

貞操権侵害で慰謝料請求が認められた裁判例

次に、貞操権侵害による慰謝料請求を認めた裁判例を紹介します。

前章で「貞操権侵害の慰謝料の相場」は50万円〜200万円が目安と解説しましたが、実際は、具体的な事情に応じたケースバイケースの検討が必要です。自身のケースで検討するにあたり、裁判例がどのような事情をもとにいくらの慰謝料を認めたかが参考になります。

慰謝料500万円を認めた裁判例

東京地裁平成19年8月29日判決

【事案】

被告が、既婚者なのを隠して性的な関係を伴う交際を長期間継続していた事案。

【裁判所の判断】

風俗店で知り合って交際を開始し、誕生日を刻印した指輪をプレゼントしたり、妊娠中絶を経験したりした後、更に妊娠して出産したこと、連絡が途絶えた後で戸籍を取り寄せたところ、妻子がいると知ったことなどの事実を認定し、550万円の支払いを命じました。

本裁判例(東京地裁平成19年8月29日判決)は、原告が既婚者なのを告げずに、将来の結婚を約束した交際を続け、2度の妊娠中絶、1人の子の出産し、認知請求訴訟を起こされて初めて認知したこと、20代後半から30代にかけての女性として貴重な時間を被告に捧げたことといった事情を考慮して、500万円という相場よりも高額な慰謝料を認めました。

慰謝料100万円を認めた裁判例

東京地裁平成27年1月7日判決

【事案】

妻と別居中に、既婚者なのを告げずに職場の未婚女性に交際を申し込み、妻との夫婦関係が修復した後もそれを隠して性的関係を続けた事案。

【裁判所の判断】

既婚者だと告げずに交際を続け、独身であると誤信するような不誠実な態度をとり続けたことなどを認定し、慰謝料100万円の支払いを命じました。

本裁判例(東京地裁平成27年1月7日判決)では、被害者が別れ話をしていたにもかかわらず、あたかも将来の生活を考えているかのようなメールを送って心を引き留め、妻のメールを妹からのものであると嘘をつくなど、交際関係を継続させるために不誠実な態度をとったことなどが考慮され、精神的苦痛に対する慰謝料として100万円が認められました。

慰謝料70万円を認めた裁判例

東京地裁平成28年6月29日判決

【事案】

インターネットの婚活サイトで独身(未婚)として会員登録して知り合い、多数回の性交を伴う交際をしていたところ、クラミジアをうつされた上に交際終了後に既婚者であることが判明した事案。

【裁判所の判断】

原告が330万円の貞操権侵害による慰謝料請求を行ったもののうち、77万円の支払いを命じるに留まりました。

本裁判例(東京地裁平成28年6月29日判決)は、独身という嘘をついて騙した事情はあるものの、アプリを利用するにあたっては注意をすべき相応の責任があることを理由に、慰謝料70万円(そのうち、性病をうつしたことの責任が30万円)という低額しか認められませんでした。

離婚裁判で証拠がないときの対処法」の解説

貞操権侵害の慰謝料を請求する方法

お金

次に、貞操権侵害の慰謝料を請求する方法について解説します。

貞操権を侵害されたとき、慰謝料を請求するには交渉による方法と訴訟による方法があります。いずれの場合も、有利に進めるには証拠を集めるなど、事前準備が欠かせません。

証拠の収集

貞操権侵害の慰謝料請求で、より高額の慰謝料を支払ってもらうためには、訴訟でも慰謝料が認められる程度の証拠をあらかじめ収集しておかなければなりません。貞操権侵害の慰謝料を請求には、「自由な判断ができなかったこと」「肉体関係をもったこと」という2つの要件についての証拠を入手しておきましょう。

証拠として役立つ資料は、例えば次の通りです。

相手が独身(もしくは離婚予定)と嘘を付いた証拠

  • 出会いのきっかけが結婚前提であることを示す証拠
    • 参加した婚活パーティの案内文
    • 婚活アプリのプロフィールの記載
    • 結婚相談所の釣り書き
  • 真剣交際を匂わせるやりとりの証拠
    • LINEやメールでの発言(「独身である」「既婚者ではない」「妻とは離婚予定」「将来は結婚しよう」などの発言)
  • 当時のやり取りや気持ちを記録した日記
  • 貞操権を侵害した者との会話の録音データ

結婚前提の真剣交際だったことを示す証拠

  • 結婚を前提とした場所での出会いの証拠
    • 婚活パーティへの参加証
    • 婚活アプリでのやり取り
    • 結婚相談所の登録情報
  • 結婚を前提とした証拠、婚約が成立している証拠
    • 結婚を前提とした高価なプレゼント
    • 結婚指輪
    • 結納や両親への挨拶、両家顔合わせ
    • 結婚相手として友人に紹介、職場での発表など
  • 結婚を前提とした出費の証拠
    • 結婚式場やハネムーンの予約
    • 新居の準備(賃貸借契約書、敷金・礼金などの初期費用の支払い)

肉体関係があったことを示す証拠

  • 貞操権侵害の被害者自身の証言、当時の日記
  • 2人で宿泊したことを示す証拠
    • 旅行の記録
    • ホテルの予約履歴
    • 旅行先での写真など
  • 妊娠したことを示す証拠
    • エコー写真、診断書、通院履歴、カルテなど

精神的苦痛の大きさを示す証拠

  • 診断書やカルテなど
    精神的苦痛によりうつ病、適応障害、パニック障害などの精神疾患(メンタルヘルス)にり患してしまったことを示す。

交渉で慰謝料請求する方法

貞操権侵害の慰謝料請求をするときは、まずは、加害者と交渉することで行います。交渉は、内容証明を送ることでスタートします。内容証明なら、請求書の送付日、書面の内容を、郵便局に記録化しておいてもらうことができます。加えて、弁護士名義で送付することにより、大きなプレッシャーを与えることができます。

婚活パーティやマッチングアプリなどで出会っていると、氏名や住所、仕事なども嘘を付かれているおそれがあります。

慰謝料請求の内容証明を確実に送付するために、弁護士に依頼することで職務上請求によって住民票や戸籍を入手したり、弁護士会照会の方法によって携帯電話番号などから個人情報を調査したりすることができます。

訴訟で慰謝料請求する方法

貞操権侵害の慰謝料請求について交渉では解決できないとき、訴訟に移行します。

交渉は、あくまでも話し合いですから、加害者側が任意に払ってくれない限り慰謝料をもらうことはできません。これに対して、訴訟で勝訴すれば、法的な強制力があり、相手が慰謝料を払ってくれないときには強制執行(財産の差押え)ができます。

判決が下されてもなお慰謝料を支払わない相手には、強制執行をすることで、預貯金や不動産、給与などを差し押えます。貞操権侵害という案件の性質上、給与を差押えられて職場に知られることは避けたいと考える人が多く、大きなプレッシャーとなります。

訴訟を行うには、十分な証拠収集が必要であり、かつ、法律知識や裁判所実務を熟知する必要があります。あわせて、長い期間や多くの手間がかかることとなります。そのため、訴訟は最終手段とし、どのタイミングで交渉から訴訟に移行するかは、慎重に判断する必要があります。

貞操権侵害の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

最後に、貞操権侵害の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリットを解説します。

貞操権侵害が悪質で、違法性が強度なほど、より高額な慰謝料を請求するには弁護士による法的サポートが有益です。特に、相手が違法性を否定する場合や、直接の交渉が精神的に辛い場合などは、争いが激化する前に、早めにご相談ください。

相手との直接のやり取りを回避できる

弁護士に依頼するメリットの1つ目は、相手との直接のやりとりを回避できる点です。

真剣交際をしていたはずが、実は既婚者だったと知ったとき、その悲しみは計り知れません。そして、騙してきた相手と、「もう連絡を取りたくない」と思うのも当然です。

一方で、貞操権侵害の慰謝料請求をするにあたり、相手との交渉は必須となります。事実の認識が違っていたり、慰謝料額に争いがあったりするとき、交渉は長期化することが予想され、やり取りも煩雑になります。加害者との交渉窓口を弁護士に任せ、不快なやり取りを避けることで、これ以上の精神的苦痛を回避することができます。

法律知識に基づくサポートを受けられる

弁護士に依頼するメリットの2つ目は、法律知識に基づくサポートを受けられる点です。

貞操権侵害は、法的には不法行為(民法709条)に該当しますが、十分な慰謝料を請求するには、相当程度の違法性を有していなければなりません。貞操権侵害の加害者にも言い分や反論があり、当事者間の話し合いでは解決できない例もありますが、嘘をついて性交渉するような人の言い分は信用ならないでしょうし、屁理屈や勝手な言い訳のこともあります。

弁護士に相談し、交渉を代理してもらうことで、このような相手方の一方的な理屈に流されることなく、法律知識に基づいた適切な解決となるようサポートを受けられます。

離婚に強い弁護士とは?」の解説

相手の配偶者からの慰謝料請求にも対応できる

弁護士に依頼するメリットの3つ目は、相手の配偶者からの慰謝料請求に対応できる点です。

「妻とは離婚予定だ」と嘘をつかれていたケースでは、既婚者であることを知っていて肉体関係を持ってしまったあなたにも責められるべき点があります。交際相手の夫婦関係を十分に調査していない場合、「不貞行為」に該当するおそれがあります。

「不貞行為」は、夫婦間の貞操権を侵害します。婚姻関係が既に破綻していれば責任を負うことはないものの、法的に「破綻」と評価されるハードルはかなり高く、少なくとも同居して夫婦生活が続いている場合は、裁判所もなかなか認めません。

交際相手に嘘を付かれていたとはいえ、既婚者であると知って関係を持ったケースでは、その配偶者から不倫を理由とする慰謝料請求を受けるおそれがあります。この場合は、自身が騙されたことを主張し、慰謝料の減額交渉をすべきです。貞操権侵害の慰謝料請求を弁護士に依頼することで、万が一自分も不倫慰謝料請求を受けてしまった場合に、迅速な対応が可能となります。

騙されて不倫してしまった場合」の解説

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、貞操権侵害に関する法律知識を解説しました。

意に反する肉体関係(性交渉)をして、貞操権を侵害されてしまったとき、慰謝料の相場や請求方法、より高額の慰謝料を受け取るためのポイントなどを理解してください。

「結婚を前提に真剣交際していると信じていたのに、嘘が発覚した」「だまされて性交渉してしまった」というとき、非常に苦しい思いをするでしょう。精神的苦痛をなかったことにはできませんが、慰謝料請求をすることで、少しでも被害回復を図るべきです。

交際相手の不審な言動から、「実は既婚者では」「騙されているのではないか」と疑問を抱くとき、早めに弁護士に相談して、本当の氏名や住所を調査してもらうなど、証拠収集の段階からサポートを受けることができます。限られた人生の時間を無駄にしないためにも、早めにご相談ください。

この解説のポイント
  • 貞操権侵害とは、性的な自己決定権を侵害されること
  • 貞操権侵害されたら慰謝料を請求でき、その相場は50万円〜200万円
  • 貞操権侵害の慰謝料を増額するには、悪質さを立証する証拠が重要

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参考解説

不貞慰謝料は、配偶者の不貞(不倫や浮気)による精神的苦痛に対して請求すべき賠償金です。離婚する場合はもちろん、離婚を回避する場合も、配偶者や不倫相手に対して請求することができます。

請求方法や法的な注意点、相場などを適切に理解するため、「不貞慰謝料」に関する解説を参考にしてください。

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