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既婚者に騙されて不倫してしまったら慰謝料請求される?訴えられた際の対応

知らずに交際していた相手が既婚者だった……「独身だから」と騙されて既婚者と肉体関係を持ってしまうと、相手の配偶者から「慰謝料を請求する」と言われるおそれがあります。

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奥さんがいると知ってたら交際しなかった…

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騙されたのに慰謝料を払うのは納得いかない

残念ながら、性的関係を持つために独身だと嘘を付き、真剣交際を偽る既婚者は少なくありません。騙した側に責任があるのは当然ですが、知らずのうちに不倫してしまったとき、相手の配偶者との関係では、慰謝料請求を受けるリスクがあります。

相手の奥さんの気持ちは理解できなくはないものの、自分も騙されていたとき、慰謝料を払わなければならないのでしょうか。どのように対処すればよいか悩んでしまうでしょう。

今回は、既婚者に騙されて不倫してしまった場合の慰謝料請求のリスクや、万が一訴えられた際の具体的な対処法について弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 既婚者と知っていた場合や気付かなかったことに過失がある場合は責任あり
  • 悪質な既婚者に騙されて不倫してしまったなら慰謝料を払う必要はない
  • 「既婚者に騙された」と反論するなら、気付いたらすぐ別れることが大切

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

豊富な知識・経験に基づき、戦略的なリーガルサービスを提供するため、専門分野の異なる弁護士がチームを組んで対応できるのが当事務所の強みです。

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既婚者に騙されて不倫した場合の慰謝料請求

ハート

不倫や浮気は、法的に「不貞行為」と呼ばれ、不法行為(民法709条)に該当します。不法行為によって他人に損害を与えた場合は賠償責任が生じるため、不貞をして配偶者の貞操権を侵害した人は、精神的苦痛について慰謝料を請求されるリスクがあります。

不倫慰謝料請求の基本

不法行為は、①故意又は過失、②権利又は法律上保護される権利の侵害、③損害の発生、④因果関係という4つの要件を満たした場合に成立します。不倫や浮気は、不倫相手の配偶者の「貞操権」を侵害して精神的苦痛を与える点で、不法行為に該当します。

配偶者には夫婦間の貞操を守る義務があり、不倫をされると精神的苦痛が生じます。慰謝料は、この精神的苦痛を金銭的に補填する意味があります。不倫が原因で夫婦関係が破綻したり、深刻な精神的ダメージを負ったりすると、請求される慰謝料額は相当高額になるケースもあります。

不貞行為の場合、不倫相手と配偶者との「共同不法行為」となり、慰謝料の支払い義務は2人で連帯して負うこととなります(不真正連帯債務)。

貞操権侵害」の解説

既婚者に騙された場合でも慰謝料請求されるのか

既婚者に騙されていた場合でも、慰謝料を請求されるケースがあります。知らないうちに不倫してしまったとしても、不倫相手の配偶者からすれば許せないでしょう。慰謝料を請求されたら、反論して戦う必要があり、この際、騙された状況が裁判でどう評価されるかがポイントとなります。

不倫相手が既婚者だとは知らなかった場合でも、慰謝料請求の対象になるかどうかはケースバイケースで判断されます。裁判では、以下の点が重視されます(法的には、前章で解説した不法行為の要件のうち、「故意又は過失」の有無の問題です)。

既婚者とは全く知らなかった場合(故意・過失なし)

既婚者であるとは全く知らず、既婚者と分かる状況にもなかった場合は、故意も過失もないと判断されるので、責任を問われることはありません。したがって、既婚者側が巧妙に隠したり、悪意をもって独身を偽ったりしたときは、慰謝料の支払いは不要です。

既婚者だと知っていた場合(故意あり)

「故意」とは違法行為と知りながらあえて行うことで、不貞行為の場合、既婚者だと知りながら関係を続けたことを指します。この場合、裁判では、不法行為に基づく慰謝料請求が認められる可能性が非常に高いです。たとえ既婚者側が嘘を付いて騙していたとしても、あなたがそのことに気付いていれば、「故意があった」と評価されます。

不注意により独身者だと信じていた場合(過失あり)

「既婚者ではないか」と疑うべき状況にありながら確認を怠った場合、「過失」と評価されるおそれがあります。「注意すれば回避することができた」のに深く追及せず関係を続けたなら、その不注意は「過失」となります。

例えば、疑うべき不自然な状況には、次の例があります。

  • 左手の薬指に指輪をしていた(結婚指輪)
  • 交際期間が長いのに、宿泊を伴うデートが一度もない
  • 自宅に行くことを頑なに拒まれている、住所を教えてくれない
  • 車にチャイルドシートが付いていた
  • 携帯の待受け画面が子供や家族の写真である

過失のあるケースは、故意の場合に比べれば軽度ですが、一部の責任は認められてしまいます。したがって、一定の慰謝料の支払いには応じざるを得ません。

一方で、相手が「独身である」と偽り、それを信じるに足る証拠(LINEのやり取りや口約束、既婚者の悪質な言動など)があれば、自身の過失を軽減したり、否定したりできる可能性があります。

既婚者と知った後も交際を続けた場合

交際当初は、完全に騙され、既婚者とは知らなかったケースでも、真実を知った後も交際を続ければ、責任を負うこととなります。この場合、既婚者だと知った後の交際については「故意がある」と評価され、慰謝料請求の対象となるからです。

責任を問われるかどうかは個別の事情に応じて異なるため、一人で判断せず、弁護士のアドバイスを受けるのがお勧めです。

慰謝料請求された場合の対処法と反論の注意点

注意点

次に、既婚者に騙されて不倫してしまった人が、相手の配偶者から実際に訴えられたとき、どのように対処すべきかについて解説します。

既婚者だと知ったらすぐ別れる

まず、既婚者だと知ったらすぐ別れることです。

完全に騙されていて、既婚者と知らずに不倫してしまったとしても、既婚者だと知った後の交際や性的関係、不貞行為は、慰謝料請求の対象となります。たとえ「過失あり」と言えるケースでも、「騙されていた」と主張したいなら、既婚者だと発覚後も関係を続けるのは不自然です。

したがって、嘘が分かったらすぐ別れることで、「騙された」という反論に信憑性を持たせるべきです。たとえ真剣交際であり、将来の結婚を考えていたとしても、既婚者だと発覚したらその目標は実現しません。速やかに別れるべきは当然で、あきらめきれないにしても、少なくとも相手の夫婦の離婚が成立してから改めて考えるようにしてください。

謝罪して今後不倫しないと誓う

次に、謝罪して、今後は不倫しないことを誓いましょう。

気付いていたり不注意があったりしたケースはもちろん、全く気付かず過失もない場合でも、相手の配偶者に嫌な思いをさせたことに変わりはありません。慰謝料を支払うにせよ拒否するにせよ、結果的に不倫してしまったことは謝罪し、「今後は」行わないことを誓ってください。

開き直ったり不誠実な対応をしたりして、相手の怒りを買うのはお勧めしません。誠実な態度で交渉することで、早期に円満な解決を実現できるよう努力してください。慰謝料を請求する側の要求次第ですが、次のような解決策も検討してください。

  • 交際相手(既婚者)の連絡先を削除する
  • 今後は会わないことを約束し、誓約書を差し入れる
  • 謝罪文を作成する

浮気・不倫の誓約書」の解説

既婚者だと知らなかった証拠を集める

既婚者だと知らなかった証拠は、必ず集めておきましょう。

相手が既婚者であると知らなかった証拠とは、逆に言うと「既婚者が悪意をもって巧妙に騙していた証拠」です。交際がどのように始まったか、なぜ独身だと誤解してしまったのか、どの段階で既婚者だと知るに至ったのか、といった点を明確にすることで、入手すべき証拠がどのようなものかに気付くことができます。

例えば、次のような資料が証拠として役立ちます。

  • メールやLINEのメッセージの履歴
  • SNSでの記録
  • 相手の独身を示す発言の録音
  • 結婚を前提とした場所での出会いを証明するもの
  • 紹介した友人など第三者の証言

相手が意図的に独身を装っていたと示せる証拠があれば非常に有効です。慰謝料請求が訴訟に発展したとき、裁判所に言い分を認めてもらうには、証拠が重要視されます。

離婚裁判で証拠がないときの対処法」の解説

慰謝料の減額交渉を行う

一定の責任を認めるのであれば、裁判に進む前に、相手との話し合いで解決できる方が円満です。請求された慰謝料についての減額交渉を行い、妥当な解決策を模索しましょう。ケースに応じて、騙されていたことの証拠を示し、あなたの責任が小さいことを伝えて反論します。不注意があったとしても軽度ならば、相手の請求するほどの慰謝料額は認められないこともあります。

慰謝料の減額交渉で主張すべき事情は、例えば次の通りです。

  • 既婚者側に騙す意図があった
  • 既婚者であることが巧妙に隠されていた(または、独身であると偽っていた)
  • 性交渉の回数や頻度が少なく、交際していた期間も短い
  • 既婚者側から積極的に誘われていた
  • 気付いた後は速やかに別れ、反省と謝罪の意思を示した

相手が感情的になって過大な請求に固執するケースは、弁護士を通じた交渉が有効です。個別の事情や過去の裁判例をもとに、妥当な金額を弁護士から提案するようにします。

交渉で合意することができたら、合意内容は書面に残し、後日のトラブルを防ぐ必要があります。合意書には、慰謝料や示談金などの支払い額、支払い方法や期限と共に、分割払いをするときにはその条件なども記載してください。

裁判を起こされた場合の対応

交渉はあくまでも話し合いなので、決裂することもあります。特に、あなたに故意も過失もなく、慰謝料の支払いを完全に拒絶する場合、相手の合意は得られないでしょう。「既婚者とは知らなかった」と主張し続けても信じてもらえず、訴えられることもあります。過大な請求をされているケースも、交渉を継続することはできません。

以上の理由で慰謝料の支払いを拒否すれば、相手があきらめない場合、訴訟が提起され、裁判で争うこととなります。具体的には、裁判所から送付された訴状を確認して事実関係や請求金額を検討し、こちらからも答弁書や準備書面、証拠を提出して反論を行います。

裁判の結果、裁判官の判断として「判決」が下されます。状況によっては、訴訟途中で和解が成立するケースもあります。

騙した既婚者の責任を問うことができる

騙されて不倫したとき、残念ながら慰謝料請求されるにしても、最も悪いのは「騙してきた交際相手(既婚者)」です。既婚者であることを隠して肉体関係(性交渉)を持つ行為は、貞操権侵害の違法行為だからです。その責任を問うことで、請求された慰謝料の負担を軽減できると共に、場合によっては、相手の家庭の事情から、こちらも慰謝料請求を打ち返すことで三者間での解決について話し合えることもあります。

本解説の通り、相手が既婚であることを隠し、騙して関係を持った場合、相手の配偶者からの慰謝料請求を「故意・過失がない」として否定でき、合わせて交際相手(既婚者)に慰謝料を請求できます。慰謝料の相場は、およそ50万円〜200万円程度ですが、交際の経緯や性的関係を持つに至った理由、どちらが主体的に進めていたかといった事情によって増減します。いずれの紛争でも、相手が「独身である」「結婚していない」などと騙したことの証拠が重要です。

また、仮にあなたに一定の過失があっても、相手が既婚者であることを隠していたケースでは、責任を分担させることができます。不貞行為は、あなたと交際相手(既婚者)との「共同不法行為」なので、その責任の割合に応じて、双方に責任があるからです。更には、既婚者が主体的に関係を進めていたなど、既婚者側の責任が大きいと認められる場合もあります。

不倫相手の配偶者からの慰謝料請求が訴訟に発展した場合には、責任を分担させるべき交際相手(既婚者)も参加させ、一括解決を目指すために、「訴訟告知」の制度を活用できます。

相手が不倫発覚後も離婚しないケースでは、あなたから相手への慰謝料請求があると、三者間で解決することを提案してくることも期待できます。

彼氏が既婚者だった場合の慰謝料の相場」の解説

慰謝料請求されたら弁護士に相談する

最後に、弁護士への相談のポイントについて解説しておきます。

既婚者に騙されて不倫し、慰謝料請求に直面したとき、離婚や男女問題を得意とする弁護士に相談するのが、問題解決への重要な第一歩です。相談を先延ばしにして放置すると、状況が悪化して取り返しの付かない事態になりかねません。

慰謝料を請求された側が、弁護士に依頼すべき理由やメリットは、次の通りです。

  • 法的な責任を正確に判断できる
    騙されて不倫してしまったとき、故意も過失もなければ責任を負いません。相手の請求が妥当であるか、自分に過失がないことを証明できるか、法的な責任を正確に判断してもらうためには弁護士のアドバイスが有用です。
  • 証拠収集のサポートを受けられる
    既婚者とは知らなかったことの証拠(騙されたことの証拠)を効果的に収集するには、裁判手続きを熟知した弁護士の助言が重要です。
  • 感情的な対立を回避できる
    責任の有無にかかわらず、不倫相手の配偶者が怒るのは当然です。弁護士を窓口にすることで感情的なやり取りを避け、冷静に解決を図ることができます。

不倫をしてしまった交際相手の配偶者から慰謝料を請求されたとき、「騙されていた」証拠を的確に収集し、反論したり減額交渉したりするのに、弁護士のサポートは不可欠です。弁護士との相談を円滑に進めるには、事実関係を正確に説明し、必要な情報を提供することが大切です。

弁護士への相談は、できるだけ早期に行うべきで、「不倫相手の配偶者から慰謝料請求を受けたらすぐ」もしくは「既婚者だと発覚したらすぐ」のタイミングが適切です。単なる不倫のケースとは異なり、三者間の法的関係を意識しなければならないので、不倫問題の取り扱い経験が豊富な弁護士を選ぶようにしてください。

離婚に強い弁護士とは?」の解説

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、既婚者と知らずに不倫してしまったときの対処法を解説しました。

既婚者とは気付かず、または相手の悪意によって騙されていたとき、あなたは結婚を前提に真剣交際していると思っていることもあるでしょう。それでもなお、相手に奥さんがいれば慰謝料の請求を受けてしまいます。慰謝料請求が届いて初めて知った場合、冷静ではいられないでしょう。

突然の慰謝料請求にも冷静に、かつ、誠実に対応しなければなりません。既婚者に騙されていて、配偶者がいることに全く気付かなかったとき、過失がなければ、慰謝料を支払う必要はありません。そして、過失がないと主張するには、証拠を集めて反論すると共に、騙されていたことに気付いたら速やかに別れを告げるべきです。

慰謝料請求をしてくる相手にも「不倫された」という強い怒りがあるでしょう。適切に対応するには、弁護士に相談し、サポートを受けるのが賢明です。

この解説のポイント
  • 既婚者と知っていた場合や気付かなかったことに過失がある場合は責任あり
  • 悪質な既婚者に騙されて不倫してしまったなら慰謝料を払う必要はない
  • 「既婚者に騙された」と反論するなら、気付いたらすぐ別れることが大切

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参考解説

不貞慰謝料は、配偶者の不貞(不倫や浮気)による精神的苦痛に対して請求すべき賠償金です。離婚する場合はもちろん、離婚を回避する場合も、配偶者や不倫相手に対して請求することができます。

請求方法や法的な注意点、相場などを適切に理解するため、「不貞慰謝料」に関する解説を参考にしてください。

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