★ ご相談予約をお待ちしております。

彼氏が既婚者だった場合の慰謝料の相場は?事例や注意点も紹介

既婚者なのに女性の気持ち弄び、性的関係を持つ不届きな男性がいます。

「結婚しようとした彼氏が、実は既婚者だった」という女性からの法律相談は多く寄せられています。真剣交際を裏切られたら、さぞ辛いことでしょう。マッチングアプリや出会い系だけでなく、結婚相談所ですら、軽い気持ちで女性が騙される被害は少なくありません。

彼氏に騙されたと発覚したら、慰謝料の請求を検討しましょう。彼氏が既婚者にもかかわらず、わざと隠して肉体関係(性交渉)を持つ行為は、女性の性的自由を侵害しており、不法行為(民法709条)に該当して慰謝料を請求できます。

しかし、注意して対応しなければ、彼氏に騙されたにもかかわらず、逆に、彼氏の奥さんから「不貞行為だ」といって慰謝料を請求されるおそれがあります。

今回は、「彼氏が既婚者だった」と発覚して心の傷を負った女性に向け、慰謝料の相場や請求方法などについて弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 彼氏が既婚者だったら、騙されて性的関係を持った点の慰謝料を請求できる
  • 彼氏が既婚者だと判明したら、すぐに交際をストップする
  • 逆に彼氏の奥さんから慰謝料請求されないよう、弁護士に依頼して請求する

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

目次(クリックで移動)
解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

豊富な知識・経験に基づき、戦略的なリーガルサービスを提供するため、専門分野の異なる弁護士がチームを組んで対応できるのが当事務所の強みです。

\相談ご予約受付中です/

法律トラブルの相談は、弁護士が詳しくお聞きします。

ご相談の予約は、お気軽にお問い合わせください。

彼氏に既婚者の疑いがある場合の対処法

彼氏に既婚者の疑いがある場合の対処法

まず、彼氏に慰謝料請求できるかどうかを知るために、前提として「彼氏が既婚者かどうか」を確認する必要があります。「彼氏が既婚者ではないか?」と不安に思うケースで、次の事情があるなら疑いは濃厚かもしれません。

付き合っている人が既婚者の可能性を感じるとき、次の点をチェックしてください。

  • 左手薬指に指輪をしていた(結婚指輪)
  • 子供の写真を待ち受けにしていた
  • SNSに妻子が写っていた
  • 携帯やLINEをロックして全く見せてくれない
  • 交際期間が長いのに、宿泊デートが一度もない
  • 本名や住所、職場などの個人情報を教えてくれない
  • 年齢を偽っていた(若く鯖読みしていた)
  • 家を教えてくれない
  • 夜になると連絡が付かなくなる
  • 突然の電話を拒否する

彼氏が既婚者なのでは、という疑惑があるとき、正面きって問い質したい気持ちはよく理解できます。これまで仲良く円満であるほど、できれば別れたくないでしょう。しかし、既婚者なのを隠して性的関係を持つような男が彼氏だと、どれほど問い詰めても、「実は結婚している」などと真っ正直に白状してくれるわけもありません。

弁護士であれば、本名と住所から、職務上請求という方法で住民票や戸籍を取り寄せることができます。そのため、結婚しているかどうか、公的書類で確認できます。本名や住所が不明なときも、弁護士会照会を利用すれば携帯番号から突き止めることも可能です。

ただし、弁護士の特別な権限で調査できるのは、あくまで慰謝料請求をすることが前提であり、「知りたい」「確かめたい」というだけの依頼を受けることはできません。

交際相手が既婚者の疑いがあるとき、「慰謝料を請求したいけど確かな証拠がない」というケースでは、まずは弁護士に相談し、調査が可能かどうか、相談するのがお勧めです。

彼氏が既婚者だったとき、慰謝料請求できる要件

真剣交際だと思っていた彼氏が、実は既婚者だったことが明らかになったとき、大きな精神的ダメージを負うでしょう。あなたの重要な権利が侵害され、精神的な損害を受けたときは、不法行為(民法709条)を理由として慰謝料を請求できます。

不法行為には、①故意または過失、②権利又は法律上保護される利益の侵害、③損害の発生、④因果関係という4つの要件があり、全て満たす場合に慰謝料請求が認められます。

以下では、彼氏に騙されて交際していたケースに沿って、不法行為の要件について解説します。

故意又は過失

不法行為の慰謝料請求は、加害者が、故意や過失で違法行為をしたことが必要です。わかりやすく言うと、「故意」はわざと違法行為をすること、「過失」は不注意に違法行為をすることです。

日本では、2人以上の異性と結婚することは「重婚」として禁止されます(民法732条刑法184条)。そのため、既婚者なのに、あなたに「結婚しよう」と告げて性的関係を持つ行為は、「故意」があるのが明らかです。既婚者にもかかわらず婚活アプリ、婚活パーティ、お見合いなど、「結婚を前提とする交際の場」で知り合い、交際をスタートすることは、違法なだと知りながら騙す悪質な行為といえるからです。

明確に「結婚していない」と否定したケースだけでなく、普段はしている結婚指輪をわざわざ外したり、「今日も一人きりで寂しい」と誘惑したりなど、独身だと誤解させる言動もまた、騙す故意があると評価されます。

権利又は法律上保護される利益の侵害

不法行為による慰謝料請求をするには、あなたの権利が、彼氏によって侵害されていることが必要です。人は皆、誰と性的関係を持つか(もしくは、持たないか)を自由に決める権利があります(「貞操権」と呼びます)。つまり、貞操権によって「誰と性的関係を結ぶか、もしくは、結ばないかを決定する性的自由」が保障されているのです。

彼氏が独身だと信じ、「結婚前提のお付き合いだから」と肉体関係(性交渉)を許したケースで、実は既婚者だったと発覚したとき、「既婚者だと知っていれば肉体関係(性交渉)は持たなかったのに…」と後悔するなら、自由な選択権が侵害されたことを意味します。

既婚者の彼氏にだまされ、真実を知っていればしなかった性的関係を進めてしまった点が、重要な貞操権の侵害を意味し、不法行為となるわけです。

貞操権侵害」の解説

損害の発生

不法行為の慰謝料を請求するには、損害が生じていることが必要です。

性的関係を持った後で「彼氏が既婚者だった」という真実を知ったとき、精神的苦痛を受けるのは必然であり、損害が生じるのは明らかです。民法710条は、財産的損害でなくても賠償する責任が生じることを定めており、その典型例が精神的損害に対する慰謝料です。

慰謝料請求では、精神的損害を立証しなければなりません。心の傷は目に見えないので、損害の大きさを主張するためには、精神科や心療内科への通院歴や、精神疾患の診断書といった証拠を準備しておくのが重要なポイントです。また、交際中にDV・モラハラを受けたり、妊娠し、中絶していたりすると、損害は更に拡大します。

その他、結婚を前提とした出費をしていたなど、財産的な損害がある場合には合わせて請求することができます。

因果関係

そして、生じた損害は「違法行為によるもの」である必要があります。つまり、違法行為と損害の間に、因果関係がなければなりません。彼氏が、あなたを騙して性交渉をしたとき、その行為とあなたの負った精神的苦痛という損害の間の因果関係は明らかです。

彼氏が既婚者だった場合、すぐにすべきこと

はてな

次に、彼氏が既婚者だったと発覚したとき、即座にすべきことを解説します。

残念ながら彼氏が既婚者だと判明してしまったとき、すぐに交際を中止し、証拠収集の準備をしてください。適切な対応をせず、惰性で交際を続けてしまうと、慰謝料を請求できないか、もしくは、請求できる慰謝料額が低くなるおそれがあります。

すぐに彼氏との交際を中止する

調査の結果、彼氏が既婚者だと判明したときには、すぐに交際を中止する必要があります。既婚者だと知ってからも交際を継続していると、次の2つのデメリットが生じます。

  • 既婚者だと知って交際したあなたにも非があるとして、慰謝料請求が認められない(もしくは、減額される)
  • 不貞行為として、彼氏の妻から慰謝料請求を受けてしまう

既婚者だと知ってすぐに交際をストップすれば、「既婚だと知っていれば交際したり性交渉したりしなかったのに」と、胸を張って主張できます。一方で、真実を知った後も交際を続けてしまっては、「仮にだまされていなくても交際していたのだろう」と反論されかねません。

これまで真剣交際と思っていたのですから、辛いでしょうし、別れたくない気持ちはよく理解できます。しかし、代償を払ってまで続けたい関係かどうか、よく自問してください。不倫の関係になってしまったことについて被害者にも非があると評価されると、慰謝料額を相場より低くしてしまうことにもつながります。

騙されたという証拠を収集する

騙されたことが判明したとき、慰謝料を請求するためには証拠収集が重要です。

相手は、騙して付き合うような彼氏ですから、話し合いでは解決困難なこともあります。交渉での解決が不可能なときは訴訟に進みますが、裁判所の審理では証拠が重要視されます。そして、請求に必要な事実については、慰謝料を請求するあなたの側で証明しなければなりません。

証拠が十分に手元にないときや、そもそも相手の居所がわからないとき、探偵や調査会社を利用し、調査した費用もまた、請求すべき損害に加算します。

慰謝料請求するときに集めておくべき重要な証拠は、次のものです。

交際相手が既婚者だったことの証拠

住民票、戸籍、妻とのLINEなど。自分では入手できないときは、弁護士に依頼し、職務上請求、弁護士会照会などの方法を検討してください。

嘘をついてだましたことの証拠

独身だと嘘をつき、騙していた証拠。LINE・メールで独身であることや将来の結婚をにおわせるようなやりとり、マッチングアプリで「未婚」と掲載していたこと、お見合いや結婚相談所など結婚を前提とした出会いであったことなど。

損害の大きさを証明する証拠

精神的な損害が大きいことを示す証拠として、医学的な証拠が有用。精神疾患の診断書、治療歴、カルテ。その他、騙されて交際したことで妊娠・中絶したなどの損害があるときは、堕胎手術をしたことを示す証拠など。

彼氏が既婚者だった場合に慰謝料を請求する方法

彼氏が既婚者だった場合に慰謝料を請求する方法

既婚男性に騙された女性が、慰謝料を請求する方法と、その後の流れを解説します。

騙した彼氏への慰謝料の請求は、まずは協議の方法で進めます。しかし、話し合いで解決できないときは、訴訟への移行を考えてください。

家庭のある既婚者男性は、妻への発覚を恐れているケースが多いです。強いプレッシャーをかければ、交渉で解決できるケースもあります。しかし、既婚であることを隠して女遊びする男の中には、事態を軽く見て、満足のいく慰謝料を払わない者もいます。

交渉による慰謝料請求をする

まず、内容証明で、交際相手である彼氏に通知書を送り、交渉による慰謝料請求をします。内容証明であれば、送付日や送付した文書の内容を、郵便局で証拠化できます。弁護士名義で通知書を送ってもらえば、「払わなければ訴訟に移行する」という強いプレッシャーを与えられます。

彼氏への慰謝料請求について、弁護士に依頼すれば、法律知識、交渉テクニックにより、できるだけ高額の慰謝料を獲得できるようサポートを受けられます。

交渉の結果、慰謝料について合意が成立したときは、合意書(示談書・和解書)を作成します。将来支払われないおそれがあるときは、合意書を公正証書化しておけば、払われなかったときに強制執行(財産の差押え)をできるようにし、支払いを確実なものにできます。

慰謝料請求訴訟を起こす

交渉による解決が難しいときは、慰謝料請求訴訟を起こすこととなります。彼氏にだまされたとき、慰謝料請求こそ、法的に許される最大の「仕返し」です。

まだ相手の妻には知られていないとき、直接出向いたり通知書を送ったりして相手の妻にもバレて、逆効果となるおそれもあります。彼氏の妻に発覚した後は、彼氏が開き直って支払いを拒否してきたり、彼氏が妻と結託して、不倫を主張して慰謝料請求してきたりするリスクもあります。

相手が慰謝料支払いを拒否して訴訟になると、裁判は公開の法廷で行われ、訴状は住所に送達されます。そのため、相手の家庭にも慰謝料請求の事実が知られることとなる可能性が高まり、強いプレッシャーになります。

彼氏が既婚者だった場合の慰謝料の相場

既婚者の彼氏に、「独身だ」と騙されて性的関係を持ったとき、慰謝料の相場は50万円〜200万円程度が目安です。

ただし、慰謝料の相場はあくまで「目安」であり、悪質性の程度、精神的苦痛の大きさなどの事情によってケースバイケースです。相場よりも増額されたり減額されたりすることもあるので、慰謝料を請求する際には必ず相場を知り、できるだけ多くの慰謝料を受け取る努力をしましょう。

彼氏が既婚者だったときの慰謝料を増額する事情

できるだけ相場以上の慰謝料を勝ち取りたい方は、慰謝料を増額する事情を知っておいてください。増額できる事情について、6つの点から説明します(なお、増額する事情は、証拠によって証明する準備をすべきです)。

被害者となった女性の年齢

騙された女性の年齢が若く判断能力が低いこと、結婚適齢期だったことといった事情は、損害を拡大する事情として考慮され、相場よりも慰謝料を増額することができます。

加害者となった男性の年齢

加害者となった男性が成熟しており、違法行為を行うべきでないなどの事情は、慰謝料を増額する要素となります。

一方、加害者となった男性側がある程度の年齢に達しており、「一般的には結婚していると気付くべきだった」というケースのように、女性にも一定の非が認められる場合、慰謝料が減額される理由にもなります。

交際期間が長いか、真剣交際であったかどうか

交際期間が長く、結婚を前提とした真剣交際であるほど、騙されたことの損害が大きく、慰謝料が増額される傾向にあります。

騙す行為の悪質性

既婚かどうか確認されたのにあえて否定したなど、騙す行為の悪質性が高いほど、慰謝料が増額される流れにあります。

交際終了時の対応

騙した男性側が、交際終了時に反省・謝罪するなど誠意を見せたとき、慰謝料を減額する事情として考慮されます。

一方、女性側で、彼氏が既婚者だと判明した後も付き合いを続けたなどの非があるとき、慰謝料が減額されます。

女性側に落ち度がなかったか

長期間付き合ったのに家に行くことを拒否されるなど疑わしい事情があるのに確認しなかったなど、女性側の落ち度が大きいときは、慰謝料が減額されます。

既婚者である彼氏への慰謝料請求を認めた裁判例

既婚者の彼氏への慰謝料について、相場は50万円〜200万円と解説しましたが、損せず獲得するためには、慰謝料請求に成功した裁判例の事例を、よく理解しておくことが大切です。

弁護士に依頼して慰謝料請求するときも、過去の裁判例で取り上げられた事情を参考に、慰謝料増額の根拠となった事実関係に参考となるものがないかどうかを調査します。

慰謝料30万円を認めた裁判例(東京地裁令和3年8月30日判決)

本裁判例では、最初に性交渉をもったときは妻があることを知らず、その後、妻があると知って性交渉をした際にも、離婚が決まっているなどと嘘をついて騙したという事案で、30万円の慰謝料支払いを命じました。

騙された女性は男性経験が少なく、まだ若かったこと(当初は未成年)、妻が妊娠中なのに、既に離婚が決まっているなどと嘘をついて騙したことといった事情から、慰謝料を認めました。あわせて、騙された女性が、彼氏の妻に支払った慰謝料についても、85%を彼氏の負担とし、114万円強の支払いもあわせて認めました。

慰謝料100万円を含む442万円の支払いを命じた裁判例(東京地裁令和2年6月25日判決)

本裁判例は、銀座のホステスである女性が、性交渉を伴う交渉を続け、求婚をされるなど将来は結婚できると信じて高額な贈り物をしたなどの後、実は結婚していたことを知ってしまったケースです。

騙されて貞操権を侵害された点や、男性側の悪質性などから、100万円の慰謝料を認め、あわせて、贈り物として贈与された時計代の約400万円については、真実を知っていれば贈らなかっただろうと認められ、支払いが命じられました。

慰謝料100万円を認めた裁判例(東京地裁令和元年12月23日判決)

本裁判例では、一貫して彼氏が独身であると信じて、約4年半も交際した後で、実は結婚していたことを知ったという事案で、慰謝料100万円を認めました。

交際期間中の女性の年齢は、39際から43歳であり、妊娠出産の適齢期という貴重な時期を棒に振ったこと、既婚者であることが発覚した後も、彼氏がその場しのぎの弁解をしたり、女性が金目当てだったかのような理不尽な反論をしたりといった悪質性が、慰謝料を高額化させる事情として認定されています。

既婚者である彼氏の妻から慰謝料請求されたときの対応

既婚者である彼氏の妻から慰謝料請求されたときの対応

騙されて交際したときも、既婚者である彼氏と肉体関係(性交渉)を持てば、逆に仕返しとして、その配偶者(つまり「彼氏の妻」)から慰謝料請求を受けるリスクもあります。

結婚している夫婦は、他の異性と性的関係を持ってはならないという「貞操義務」を負っており、この義務に反する浮気・不倫は「不貞行為」として慰謝料請求の対象となります。そして、このときの慰謝料は、不貞した夫(つまり、あなたにとっての「彼氏」)だけでなく、不貞相手(つまり、あなた自身)にも請求されてしまいます。

ただし、既婚者である彼氏が「自分は独身だ」と騙して性的関係に及んだときには、被害者であるあなたに責任はなく、慰謝料を払う必要はありません。このとき、単に「(彼氏が既婚者だとは)知らなかった」というだけでなく、「過失なく知らなかった」と反論しなければなりません。

そのためにも、次のポイントを検討してください。

  • 結婚する予定があるなど真剣交際であったことを示す証拠があるか
  • 疑わしい事情はなかったか
  • 既婚者であるかどうかを確認し、相手が否定した証拠があるどうか

わかりやすくいうと、「なぜ独身だと信じて交際してしまったのか」という原因を検討し、「過失なく信じた」といえる事情があるならば、あなたは彼氏の奥さんに慰謝料を払う必要はなく、十分な反論が可能だということになるのです。

既婚者に騙されて不倫してしまったら」の解説

彼氏が既婚者だったと判明し、慰謝料を請求する際の注意点

ポイント

最後に、既婚者と判明した彼氏に、騙したことについての慰謝料を請求するにあたり、注意すべきポイントを解説します。より高額な慰謝料を勝ちとるには、個別の事情に応じて、相手からの反論や感情も踏まえて、うまく交渉を進める必要があります。

脅迫にあたらないよう注意する

既婚者である彼氏に騙された女性の中には、怒りのあまり、しつこく電話したりLINEで暴言・罵倒したりして、「恐喝」「脅迫」だと言われてしまう方もいます。

真剣な思いを弄ばれ、許せない気持ちは理解できます。しかし、非常識で過大な請求をすれば、連絡をブロックされて交渉がうまくいかないなど、逆に不利になるリスクもあります。

特に、まだ相手の妻に浮気・不倫がバレていないときは、慎重な対応を要します。不倫の事実を相手の家庭にバラす方法は、慰謝料支払いを促進する強いプレッシャーになる反面、あなたが逆に不貞の慰謝料請求を受けたり、家庭にバレることでますます慰謝料を支払いづらくなってしまうデメリットもあります。

既婚とは知らず、騙されて交際していたとしても、「よく注意すれば気づけた」と言えるケースや「既婚と知った後も関係を続けた」というケースでは、彼氏の奥さんからの慰謝料請求が認められるおそれも十分あります。被害者だからといって、仕返しや報復を目的に過激な行動に出るのは、リスクのある行為でありお勧めできません。

「正攻法」である慰謝料請求訴訟で、確実な被害回復を目指してください。

示談書を作成する

男女問題がトラブルに発展した結果、慰謝料をはじめとした金銭の授受が発生するときは、必ず書面を作成した上で行うべきです。例えば、示談書、合意書、覚書といった書面です。

書面化し、金銭の支払いの事実や、なぜ支払ったのかという理由を証拠に残しておかなければ、問題を終局的に解決できなくなってしまいます。証拠がないと、後になって「脅してお金をとられた」などと責任追及を受けたり、不貞の慰謝料請求をされたとき「騙されていた」と反論できなくなったりするリスクもあります。

示談書や合意書には、「彼氏が、既婚者なのを隠して、騙して交際していた」ということを認めて謝罪する文言を記載すると共に、慰謝料の支払いを定め、かつ、お互いに将来的な債権債務はなしにするという「清算条項」をつけるようにしてください。

彼氏・彼女の互いの状況によっては、第三者に口外しないという「守秘義務条項」も有効です。

婚活パーティやマッチングアプリの出会いは、慰謝料請求の根拠になる

真剣な婚活パーティは、独身女性を騙す既婚者がまぎれないよう「独身男女限定」を謳います。運営母体がきちんとしたパーティは、「独身証明書」など公的証明を要求し、参加者が独身であると確認します。まして、結婚相談所でするお見合いは「結婚に向けた交際」が当然の前提で、独身女性を騙す既婚男性の責任は更に重いものです。

結婚前提なのが当然とされる場所に、既婚者でありながら参加し、女性と交際を求めるのなぜでしょう。既婚者なのにマッチングアプリなどをやっているのは、やはり「体目的」など不純な動機と考えざるを得ません。それだけでも騙したことは明らかで、慰謝料請求する根拠になります。

したがって、婚活パーティやお見合いで知り合った男性と交際・性交渉した後、「実は既婚者であった」「結婚する気は全くなかった」というケースでは、慰謝料請求を検討してください。

「もうすぐ離婚する」と騙された場合も慰謝料を請求できる

男性の年齢が高いとき、「常識的に考えれば既婚者なのでは」という女性の不安を解消するため、「独身」と偽るのではなく、「バツイチだ」といって騙したり、「結婚しているが妻とうまくいっていない」「別居状態でもうすぐ離婚する」などと偽る手口もあります。

このような言い訳をされても、結局「離婚したら君と結婚したい」と嘘を付き、実際には離婚することもなく、交際関係を維持し、肉体関係を持ち続けたとき、騙されたあなたの側が精神的なダメージを負うのは当然です。

交際を解消するときには、後の慰謝料請求をするときスムーズに進むよう、相手方男性の連絡先(電話番号、住所、本名)を特定しておくようにしてください。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、彼氏が既婚者だったときの慰謝料請求の方法と注意点を解説しました。

「将来は結婚したい」と信じていた彼氏が既婚者だと知れば、大きな精神的苦痛を受けるでしょう。既婚者の男性に「独身だ」と騙され、彼氏・彼女の関係で真剣交際してしまい、性的関係を持ってからはじめて嘘に気づいた女性は、慰謝料を請求して、少しでも被害回復を図るべきです。

悪質な行為を野放しにし、泣き寝入りしないよう、慰謝料は必ず請求してください。結婚の準備をする女性にとって適齢期は長くはありません。「独身だ」と嘘をつき、大切な時間を台無しにした既婚者である彼氏には、償ってもらう必要があります。

交際している彼氏の嘘に気づき、慰謝料の請求を検討している方は、法律知識に基づいて進めるために、ぜひ一度弁護士に相談してください。

この解説のポイント
  • 彼氏が既婚者だったら、騙されて性的関係を持った点の慰謝料を請求できる
  • 彼氏が既婚者だと判明したら、すぐに交際をストップする
  • 逆に彼氏の奥さんから慰謝料請求されないよう、弁護士に依頼して請求する

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

参考解説

不貞慰謝料は、配偶者の不貞(不倫や浮気)による精神的苦痛に対して請求すべき賠償金です。離婚する場合はもちろん、離婚を回避する場合も、配偶者や不倫相手に対して請求することができます。

請求方法や法的な注意点、相場などを適切に理解するため、「不貞慰謝料」に関する解説を参考にしてください。

目次(クリックで移動)