離婚・男女問題

親との同居や介護を拒む相手と離婚することはできますか?

2021年8月22日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

介護離婚が、少子高齢化などにともなって増加しています。介護による心身の疲弊はとても大きく、介護離婚によって逃げてしまいたいことはやまやまですが、一方で、高齢になった親の介護は誰かが負担せざるをえません。

夫であるあなたが仕事中心の生活を送っているとき、介護との両立がなかなか困難で、妻に介護を助けてもらわざるを得ないことがあります。そのために、義理の両親との同居をお願いしなければならない例も少なくありません。

しかし、これらのことは妻側からすれば大きな負担です。妻が「両親との同居は嫌だ」と同居を拒否し、これをきっかけに夫婦仲が悪くなってしまうこともよくあります。

このようなとき、夫側の立場で、親の介護を行わざるを得なくなり、それでもなお妻が介護に協力してくれないときに、「親の介護に協力しないこと」を理由に離婚できるかどうかや、その責任がどちらにあるかが問題となります。

今回の解説では、夫側の立場で、

  • 義理の親との同居や介護を拒む妻と離婚できるのかどうか
  • 同居・介護を拒む妻と離婚する方法
  • 妻に親との同居・介護を受け入れてもらうための対策

といった法律知識について、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します(なお、妻側からみた「介護離婚」問題に関する解説も参照ください)。

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義理の親との同居や介護を強制することはできない

同居・介護する義務はない

まず、どれほど介護が必要な親を抱えていようとも、自分の両親の介護を、妻に対して強制することはできません。これは、扶養義務は直系血族と兄弟姉妹に生じることが原則(民法877条1項)であり、妻には及ばないためです(参考解説:「介護をする義務があるか」)。

同様に、義理の両親と同居するよう、妻に強要することもできません。

義理の両親に同居をしてもらえば、夫が仕事、妻が家事を行っている家庭では、妻が義理の両親の介護をせざるをえず、日常生活の面倒を見ることとなるでしょう。

しかし、同居をして妻に介護をすべて丸任せにしてしまえば、妻にとっては逃げ場がなく、自分の時間は完全に失われてしまい、夫婦関係が破綻してしまってもしかたありません。また、妻側にも両親がいて介護を必要としていたり、妻もまた仕事をしていたりするとき、介護ばかりしていられない理由は妻側にもあります。

夫婦の話し合いで決める

妻には夫の親と同居したり介護したりする義務がなく、強制することはできないわけです。したがって、介護を誰が行うかや、義理の両親と同居して面倒を見るかどうかといった問題は、夫婦間の話し合いで決めるべきであり、強要すべきではありません。

介護を強制するのではなく、少しでも妻の協力を取り付けられるよう話し合いを進めることが大切です。

親の介護の問題について、話し合いを円滑に進めるために、次のような努力を夫側でも行うようにしてください。

夫婦には相互に扶助する義務があることから、夫婦生活の問題は、夫婦の話し合いで解決していかなければなりません。親の介護を妻に強要することはできませんが、少しでも一緒に協力して乗り越えていけるよう、努力し、介護離婚を回避するようにしてください。

義理の親との同居や介護を拒否する相手と離婚できるか

少子高齢化が進み、介護を担う人手が不足するにつれ、両親との同居や介護がきっかけで夫婦が離婚する、いわゆる「介護離婚」は増加しています。

しかし、介護離婚をするためには、相手が離婚に同意しない場合にはなかなか難しい問題があります。というのも、前章で解説したとおり、義理の親との同居や介護は義務であるとはいえないからです。

原則:同居や介護の拒否を理由に離婚することはできない

原則として、義理の親との同居や介護を拒否したことを理由として離婚することはできません。法律上、同居や介護が妻の義務とはいえない以上、これを行わなかったからといって離婚することができないのは当然です。

例外:同居や介護の拒否を理由に離婚できるケース

一方で、介護が必要な親を放っておくこともできません。そのため、どうしても介護の負担と夫婦生活を両立していくことが難しいときには、これ以上の夫婦関係の維持が難しくなってしまい、介護離婚を検討することがあります。

離婚は、夫婦の話し合いで合意に達する場合には、どのような理由であっても離婚することができますが、協議で解決できないときには、離婚協議・離婚調停・離婚訴訟の流れで進んでいきます。

離婚裁判で、相手の同意なく一方的に離婚を認めてもらうためには、民法に定められた法定離婚原因(民法770条1項)が必要であり、介護離婚の場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」(同条5号)があると主張することになります。

民法770条1項

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

しかし、「婚姻を継続し難い重大な事由」といえるためには、相当の重大性が必要です。ただでさえ親との同居や介護が義務ではないことから、裁判所に離婚を認めてもらうためには、同居や介護を拒否するにあたって、妻側に大きな問題点が存在することが必要となります。

親との同居や介護を行わない妻の問題性を明らかにし、介護離婚を裁判所で認めてもらうためには、前章でも説明したとおり、夫が可能な限りの協力をし、妻の負担を減らすなどの配慮をしていることが重要となります。

夫婦の同居義務について

義理の親との同居や介護についてのいざこざが原因で、妻が実家へ帰ってしまい、戻ってこないときには、あなたとの同居義務違反という夫婦間の問題も生じます。

夫婦は同居する義務があり、相互に扶助する義務を負います(民法752条)。そして、この同居義務違反、扶助義務違反の程度が著しいときには、悪意の遺棄(民法770条1項2号)という離婚原因にもあたることがあります。夫の親と同居する義務まではありませんが、夫婦である以上同じ住居で共同生活し、助け合うことが当然とされているからです。

そのため、妻が実家へ帰ってしまって戻ってこないとすれば、妻側に同居義務違反があることとなります(ただし、あなたが困窮していたり健康上の問題があって生きていけないなどでない限り、直ちに悪意の遺棄とはなりません)。

しかし、同居しないことについて正当な理由があるときには、同居義務違反とはなりません。あなたが、親の介護を押し付けたり、親との同居を強要したりしたとき、これに嫌気がさして出ていってしまった妻の行為を責めることはできません。執拗に攻めたり、暴言を吐いたりすれば、DV・モラハラ気質な夫だという評価を受けるおそれもあります。

親との同居や介護の問題がきっかけで、妻が出ていってしまったときにこそ、冷静な対応をしなければなりません。

参考解説

妻に親との同居・介護を受け入れてもらうための対策

介護離婚

最後に、介護離婚しないために、妻に親との同居・介護を受け入れてもらうための対策について解説します。以下で説明する努力をすることにより、どうしても親との同居や介護が必要なとき、妻に承諾してもらいやすくするのにも役立ちます。

妻がどうしても義理の親との同居や介護を拒否しているとき、妻側にも問題点がある場合に介護離婚を検討するケースはあるでしょうが、夫婦が協力して、円満に乗り越える方法もあります。介護が必要な親のいる夫婦がみな離婚しているわけではありません。介護離婚してしまう前に、よく協議を重ね、離婚以外の選択肢がないのか今一度話し合っておいてください。

夫側も介護に協力する

夫が仕事をし、妻が専業主婦という家庭では、夫が仕事を言い訳にして自分の親の介護から逃げていると、介護離婚の原因となってしまいます。平日日中はしかたないとしても、夜間や土日など、夫側にもできる協力が多くあるはずです。

介護以外の家事や育児を夫が分担する

介護にも家庭で必要な家事、育児は多くあります。平日日中の介護が妻任せになってしまうとき、その他の家事や育児を夫が分担し、妻の負担を減らすという協力のしかたもあります。

感謝の言葉をかける

介護が必要な親を抱えた夫婦がみな離婚しているわけではなく、夫婦関係を良好に保っていれば、多少介護の負担が重くなったとしても協力して乗り越えることができます。

大切なことは、相手の協力を当たり前のものとは思わず、常に感謝の気持ちを忘れず、介護を頑張ってくれている相手に感謝の言葉をかけるなどの配慮をすることです。

兄弟姉妹など親族にも協力を求める

「長男の妻だから介護して当たり前」などという兄弟姉妹、親族がいると、妻の気持ちを傷つけることとなります。介護による心労に加え、夫の親族からの心無い発言にプレッシャーを受け続けると、介護から解放されたいという気持ちから介護離婚を決断することとなります。

兄弟姉妹などの親族にも、親の介護について協力を求めるとともに、心無い発言をする親族がいるときには、盾となって妻を守ることが夫の役目です。

介護施設への入所・介護サービスへの委託を検討する

介護施設に入所させたり、介護サービスを利用したりといった方法で、介護の負担を減らすことができます。一定の費用負担が必要となりますが、妻に無償の奉仕を強要して費用を節約しようとすれば、介護離婚につながりやすくなります。

通所介護や訪問介護、デイサービスなど、施設に入れるほどの状況ではなくても、利用できるサービスは多くあります。バリアフリー対策や二世帯住宅の建設などをすることも、義理の両親との同居や介護を妻に承諾してもらいやすくなります。

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今回は、親の介護をかかえている夫側の立場から、妻が介護に協力してくれないことを理由として離婚することができるかどうか、という問題について解説しました(なお、妻側からみた「介護離婚」問題に関する解説も参照ください)。

結論を申し上げると、夫の親の介護を妻がする義務がないことから、同居や介護を拒否したことだけを理由に離婚することは、相手が離婚に同意してくれない限りなかなか難しいといえます。ただし、同居や介護を拒否する妻側にも問題があるとき、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとして離婚をすることができます。

介護離婚は、互いに年齢を重ね、介護の必要となる親を持って起こる問題であるため、熟年離婚でよく起こります。長年連れ添っていても、ある日突然、親の介護を理由に不仲になってしまうことがあります。このころには、子どもも独立していて、離婚の支障とはなりません。

一方で、介護離婚を回避したり、妻に親との同居や介護を承諾したりしてもらうために、夫側でも尽くすべき努力が多くあります。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之
弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院終了。

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