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セックスレスだと浮気されても仕方ない?原因と対処法を解説

結婚生活において「セックスレス」は珍しいことではありません。

セックスレスが続くと、それを言い訳にして浮気に走る人がいます。しかし、セックスレスは浮気の免罪符にはならず、たとえ夫婦間の性交渉がなくても、不貞の慰謝料を請求されてしまいます。一方に原因があると考え、セックスレスそのものの責任を追及するケースもあります。

セックスレスと浮気が積み重なって離婚を検討する夫婦もいます。一方で、浮気が発覚しても、夫婦でセックスレスの問題に向き合い、関係を再構築するケースもあります。

今回は、セックスレスを理由とした浮気とその責任、夫婦関係への影響について、弁護士が詳しく解説します。

この解説のポイント
  • セックスレスは浮気の免罪符にはならず、慰謝料請求や離婚の原因になる
  • セックスレスの状態を相手が作ったなら、その責任を追及できる
  • 再構築のためには、正直な話し合いによる信頼関係の回復が不可欠となる

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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セックスレスと浮気について

セックスレスとは、一定期間にわたり、理由なく性交渉がない状態を指します。

夫婦間の性交渉が途絶えると、肉体的・精神的な繋がりを求め、不貞行為(婚姻している者が、配偶者以外の異性と性交渉すること)に走る人も少なくありません。

セックスレスに伴って不倫・浮気が起こったケースは、慰謝料の支払いを巡って責任を押し付け合う形になりがちです。「相手が性交渉に応じないから」「セックスレスだから」(仕方ない)といった理由を付けても、不貞の慰謝料を請求されるリスクがあります。逆に、一方的に性行為を拒まれてセックスレスに至った場合、その責任を追及して慰謝料を求める人もいます。

実際、セックスレスについての慰謝料を認めた裁判例もあります。

東京地裁平成29年8月18日判決

元妻が、元夫に対して慰謝料を請求した事案。

平成25年12月から交際を開始し、翌年8月から同居を始めたものの、離婚に至るまで夫婦の間には一度も性交渉、身体的接触がありませんでした。

裁判所は、元夫が元妻に性的関心を示さないことで、夫婦間の精神的統合に不和をきたし、婚姻関係が破綻に至ったものとして、不法行為の成立を認めました。

したがって、セックスレスを巡る慰謝料の問題は、「どちらの責任なのか」を判断するのが難しく、押し付け合ってトラブルになりやすい特徴があります。中には、配偶者との性交渉は全くないのに、夫婦それぞれが外に相手を作って不倫している家庭もあります。

不倫相手に慰謝料を請求する方法」の解説

セックスレスが浮気に発展する原因

セックスレスだからといって必ず浮気するわけではないものの、夫婦の根本的な問題となり、浮気に発展しやすい状態になるのは事実です。

以下では、セックスレスが浮気に発展する原因を解説します。

夫婦間のコミュニケーション不足

夫婦間のコミュニケーション不足は、セックスレスや浮気の原因になります。

性生活に関する話題は非常にデリケートで、長年連れ添ったパートナーでも「言いにくい」と感じるものです。不満や悩みを打ち明けられず、我慢すると更に蓄積し、やがて他の異性に安らぎや理解を求めて不倫に走ってしまいます。

共働き世帯だと、仕事・家事・育児に追われ、夫婦の会話は減りがちです。疲れやストレスが溜まるとセックスの優先度は下がり、心の距離も離れていきます。一般論として、男性はセックスを「性欲解消」と考えるのに対し、女性は「愛情表現」と捉えるという価値観の違いもあります。

家庭内別居」の解説

パートナーを異性として見られなくなる

パートナーを異性として見られなくなって浮気に走る人もいます。

結婚生活が長くなると、「異性」ではなく「家族」としての繋がりにシフトします。結婚当初は夫婦二人の生活だったのが、子供中心の生活となります。家族の絆は深まる一方で、性的な興味やときめきは薄れてしまいがちです。体型の変化、加齢による外見の変化なども一因となります。

性生活の問題は、身体的なものだけでなく、精神的な結びつきの弱まりにも深く関わります。会話が減少し、気持ちを共有しなくなると、徐々に信頼も失われ、「夫(妻)にはもう自分を理解してもらえない」と感じるようになります。

離婚で不利になる言葉」の解説

家庭外に癒しや承認を求めてしまう

家庭内が冷え切ると、外での出会いや刺激が魅力的に写ります。

配偶者から癒しや承認が得られなくなり、セックスレスで満たされなくなると、浮気相手との非日常の方が楽しくなります。家庭からの逃避としてだけでなく、「自分が必要とされている」という自己肯定感を得るために浮気・不倫に走る人もいます。

外の人間関係に安心感を求めると、その繋がりに依存する危険があります。最初は単なる相談相手でも、共感を重ねるうちに依存関係が生まれ、浮気に発展するケースも少なくありません。

不倫からの再構築」の解説

セックスレスだと浮気されても仕方ない?

「セックスレスなら浮気されても仕方ない」と自分を責める人も少なくありません。一方で、自分の浮気を正当化するために「セックスレスで寂しかった」と言い訳する人もいます。

確かにセックスレスは、夫婦関係における深刻な問題です。しかし、法的には、セックスレスだからといって浮気が許されるわけではありません。

たとえ夫婦関係がセックスレス状態でも、配偶者以外と肉体関係を持てば、不貞行為となります。不貞行為は、民法770条1項1号において裁判上の離婚事由とされており、同時に不法行為(民法709条)にも該当し、慰謝料請求の対象となります。

つまり、セックスレスという事情があったとしても、浮気(不貞行為)の違法性がなくなることはなく、法的責任を免れる理由にはなりません。

夫婦の性の不一致や断絶は、当事者にとって非常に辛い問題です。

男性側は「妻がセックスに応じないから、外で発散して当然」、女性側では「夫に求められず寂しかったから浮気に走った」といった声があるのも現実です。しかし、このような感情や気持ちは、法的な責任とは別物です。「セックスレスだから浮気しても仕方ない」という考えに共感する人はいるかもしれませんが、裁判では、慰謝料請求が認められるのが現実です。

不貞によって有責配偶者(婚姻関係の破綻について責任のある配偶者)となると、自ら離婚の要求をするのも困難になってしまいます。

例外的に、「セックスレスだからお互い恋愛は自由」といった明確な合意のもとで円満に続いている夫婦も存在します(いわゆる「オープンマリッジ」のケース)。

この場合、慰謝料などの法的責任を問う前提がなく、不貞のトラブルにはなりません。

ただし、この合意が法的に有効と認められるには、両者の自由意思に基づくものであって、書面などの証拠により証明できることが必要です。一方の勝手な都合で「浮気は許されている」「相手は黙認してくれる」と思い込んでいるケースもあるので注意してください。

法定離婚事由」「セックスレスで離婚できる場合」の解説

パートナーの浮気が発覚した際の対処法

次に、パートナーの浮気が発覚した際の対処法を解説します。

証拠を集めて慰謝料を請求する点は、全てのケースに共通した対処法です。

それに加え、セックスレスが原因で浮気に至ったケースでは、関係を再構築するなら、夫婦の性生活を見直す必要があります。これ以上の浮気を継続させないために、浮気相手との関係を解消させることも大切なポイントです。

STEP

浮気の事実を整理し、証拠を確保する

まず、浮気の事実を整理し、証拠を確保しましょう。

証拠なしに配偶者や浮気相手を問い詰めても、言い訳されて逃げられる危険があります。再構築にせよ離婚にせよ、証拠があった方が交渉は有利に進みます。

例えば、次のようなものが証拠となります。

  • 浮気相手との親密なやり取り(LINE、メールなど)
  • ラブホテルへの出入りを示す写真や動画
  • 探偵による調査報告書
  • SNSでのやり取り・位置情報の記録など

不倫の証拠写真」の解説

STEP

浮気相手との関係を清算させる

セックスレスを理由とする浮気だと、再構築を目指すケースも少なくありません。

夫婦関係を元に戻したいなら、浮気相手との関係を清算させるのは必須です。夫や妻本人から、または、代理人(弁護士)を通じて、交際中止を強く求めましょう。直接のやり取りはトラブルを招くので控えてください。

夫婦で関係修復を目指すなら、再発防止のための誓約書や合意書を作り、接触禁止や連絡先の削除、違反時の違約金などを定めるのが効果的です。

浮気・不倫の誓約書」の解説

STEP

慰謝料を請求する(配偶者・不貞相手)

セックスレスが理由の浮気でも、慰謝料は請求可能です。

不貞の慰謝料は、配偶者と浮気相手の両方に請求でき、その相場は、離婚する場合は200万円〜300万円、離婚しない場合は50万円〜100万円程度が目安です。慰謝料の請求は内容証明で行い、支払いに応じてもらえない場合には訴訟に移行します。

なお、浮気相手が(配偶者が)既婚者だと知らず、知らないことに過失もなかった場合、慰謝料を支払う義務を負いません。

  • 東京地裁平成23年4月26日判決
    お見合いパーティーに出席した男性が、既婚者であることを隠して交際を続けたケースで、浮気相手の故意・過失が否定された事案。
  • 東京地裁平成19年4月24日判決
    「自分には離婚歴がある」という男性の言葉を信じて交際し、その後に妻から慰謝料を請求されたケースで、単純に男性の言い分を信じたことに過失はあるものの、故意はないとして慰謝料が減額された事案。
STEP

セックスレスを解消して夫婦関係を再構築する

離婚ではなく、再構築を望むなら、セックスレスの解消は必須です。具体的には次のようなことが考えられますが、夫婦の状況によって方法は様々です。

  • 定期的に正直な気持ちや考えを話し合う場を設ける。
  • 夫婦間のコミュニケーションのルールを作る。
  • 夫婦カウンセリング・医療機関など第三者のサポートを受ける。
  • スキンシップ、共感など、性的な部分以外での親密さを重視する。
  • 体調を整え、生活習慣を見直す。

マンネリ化して、どうしてもセックスレスが改善できない場合、すぐに離婚に進むのでなく、しばらく別居して距離を置くのが有効なこともあります。夫婦で納得感をもって進めるには、具体的な期限を話し合っておくとよいでしょう。

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セックスレスと浮気のよくある質問

最後に、セックスレスと浮気について、よくある質問に回答しておきます。

セックスレスと浮気が原因の離婚で慰謝料は請求できる?

不貞は、民法770条1項1号において「法定離婚事由」と定められています。

そのため、セックスレスが原因でも、浮気をした配偶者に対し、慰謝料と共に離婚を求めることができます(慰謝料と離婚の両方、または、いずれか一方の要求も可)。セックスレスというだけで不貞の違法性が否定されないのと同じく、離婚やそれに伴う慰謝料の請求も可能であると考えられます。

ただ、次の状況があると、離婚時の慰謝料額に影響する可能性があります。

  • セックスレスが一方の配偶者の拒否によるものである。
  • 不貞に至った際に、既に夫婦関係が破綻していた。
  • セックスレス改善に非協力的だった。

特に、長期間の別居や明確な関係破綻の証拠がある場合、不貞行為の違法性は下がり、慰謝料額が減少したり、請求が認められなかったりする可能性があります。

離婚までの流れ」の解説

セックスレスや浮気は親権に影響する?

原則として、セックスレスも浮気の有無も、親権には直接影響しません。

離婚時の親権は、どちらが子供にとって利益となるか、適切な養育環境を提供できるかを基準に判断されます。セックスレスからの浮気に及んだ親でも、子供の利益や養育環境に影響がなければ、親権を得ることが可能です。

ただし、次の場合には、例外的に考慮される可能性があります。

  • 夫婦間の不和が激しく、子供に悪影響が出た。
  • セックスレスをめぐり家庭環境が荒れている。
  • 夫婦喧嘩が頻繁で子の生活が不安定になった。

つまり、セックスレスや浮気そのものでなく、家庭環境が子供の福祉に叶わない場合には、親権において不利な判断を下されるおそれがあるのです。

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まとめ

今回は、セックスレスと浮気の問題について、法的な観点から解説しました。

セックスレスは、夫婦関係における深刻な問題の一つです。長期間にわたって性的な関係が断たれることで、精神的な距離や不満が積み重なり、やがては浮気に繋がっていきます。しかし、どれほど関係が冷え込んでいても、セックスレスを理由とした浮気が「仕方ない」と正当化されることはなく、慰謝料請求の対象となります。

今後も夫婦として継続するなら、「なぜセックスレスになったのか」という原因を見つめ直し、話し合うことが大切です。むしろ、セックスレスの問題の改善が難しいなら、他の異性と浮気をする前に、離婚を進める手もあります。

夫婦の問題は、ケースによっては非常に深刻なトラブルに発展します。一人で抱え込まず、弁護士に相談して、適切な対応についてアドバイスを得ることがお勧めです。

この解説のポイント
  • セックスレスは浮気の免罪符にはならず、慰謝料請求や離婚の原因になる
  • セックスレスの状態を相手が作ったなら、その責任を追及できる
  • 再構築のためには、正直な話し合いによる信頼関係の回復が不可欠となる

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参考解説

不貞慰謝料は、配偶者の不貞(不倫や浮気)による精神的苦痛に対して請求すべき賠償金です。離婚する場合はもちろん、離婚を回避する場合も、配偶者や不倫相手に対して請求することができます。

請求方法や法的な注意点、相場などを適切に理解するため、「不貞慰謝料」に関する解説を参考にしてください。

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