離婚裁判を検討する多くの人の心配は、「裁判にどれくらい費用がかかるのか」という点でしょう。離婚裁判に発展するほどこじれたケースでは、徹底して争いたいのは当然ですが、長期化すると、予想外の負担に悩まされてしまうこともあります。
離婚裁判にかかる費用の相場を知ることで、離婚問題についてどのように争うのが得策か、費用面から検討することができます。更に、不貞やDVなど、相手に非がある場合、「相手に請求したい」という相談もあるように、費用を誰が払うのかという疑問もあります。
今回は、離婚裁判の費用について、相場と負担に関するポイントを解説します。費用負担についての不安を解消できれば、離婚裁判を計画的に進めることができます。
- 離婚裁判にかかる主な費用は、裁判所に払う「訴訟費用」と「弁護士費用」
- 弁護士費用は、必ず契約前に説明してもらい、契約書を確認する
- 離婚裁判の費用を抑えるには、事前に主張を整理して準備することが重要
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/
\ 動画解説(約5分) /
離婚裁判にかかる主な費用とは
はじめに、離婚裁判を進める際にかかる費用について解説します。
離婚裁判の費用は、訴訟費用、弁護士費用、その他の費用といった種類があります。以下では、それぞれの内訳について詳しく解説します。いずれも裁判の進行に必須なので、事前に見積もりを取って把握することで、予期せぬ負担を避けられます。
訴訟費用
訴訟費用とは、裁判を起こす際に、裁判所に支払う費用のことです。離婚裁判を起こす際の訴訟費用は、次のような内訳で構成されています。
申立手数料(収入印紙代)
訴訟を起こす際は、裁判所に申立手数料を納付する必要があります。申立手数料は、収入印紙を訴状や申立書に貼付する方法で納めます。離婚裁判の申立手数料は、家庭裁判所の利用にかかる手数料を意味しており、請求する内容や金額によって異なります。
郵便切手代
裁判所からの通知や書類送付に使用される郵便切手代も、当事者の負担となるのが原則です。離婚裁判の郵便切手代は6,000円程度が相場ですが、裁判所ごとに種類や金額が異なるので、事前に確認する必要があります。
弁護士費用
弁護士費用とは、弁護士に依頼する際にかかる費用であり、着手金、報酬金、タイムチャージ、日当などの種類があります。離婚裁判は、弁護士に依頼しなくても自分で行えるため、その場合には弁護士費用はかからず、訴訟費用のみとなります。
着手金・報酬金
着手金とは、弁護士に依頼する際に、成果にかかわらず発生する初期費用、報酬金とは、依頼した事項の成功に応じて支払う費用のことです。離婚裁判では、着手金を固定額とし、報酬金については慰謝料や財産分与の請求によって得られた金額に応じた割合で決めるのが一般的です。
タイムチャージ
タイムチャージとは、弁護士が案件に費やした時間に応じて報酬を請求する方式です。離婚裁判で採用されることはあまりないものの、事前に確認しておく必要があります。
日当
日当は、弁護士が事務所外で活動する際に生じる費用であり、離婚裁判の場合には特に、裁判所に出廷する際に生じる「出廷日当」がかかります。
その他の費用
離婚裁判を遂行するには、関連してかかるその他の費用も忘れてはいけません。
資料の収集にかかる費用
裁判を提起するには必要書類を提出しなければならず、その収集に費用を要することがあります。離婚裁判では、夫婦関係を証明するために、戸籍謄本や住民票などを提出する必要があり、自治体から取り寄せるのに1通あたり数百円の費用がかかります。
弁護活動に伴う実費
弁護活動を遂行するにあたって生じる実費は、依頼者の負担となるのが通常です。例えば、弁護士が裁判所に出向くための交通費、資料のコピー代などを要する場合があるため、どこまでが依頼者負担なのか、事前に確認しておく必要があります。
離婚裁判にかかる訴訟費用の相場
離婚裁判にかかる訴訟費用の相場は、1万3,000円〜3万円程度が目安です。
詳しく説明すると、離婚裁判を起こすには、申立手数料(収入印紙代)が1万3,000円かかります。これに加え、慰謝料などの金銭請求をするときは、その手数料が1万3,000円を超えるときは請求額に応じた加算が必要となります(裁判所HP:「手数料額早見表」)。財産分与、養育費、親権などを請求するときにも、争点が増えるごとに費用が1,200円ずつ加算されます。
申立手数料(収入印紙代)の計算方法について、具体例で解説します。
離婚を求めると共に、財産分与、子供3人分の養育費を求めるケースで、財産分与、子の養育費のいずれも、手数料1万3,000円は超えない場合を想定します。
この場合、基本の手数料1万3,000円に加え、財産分与、養育費を子供3人分というように争点が4つ加算されます。したがって、申立手数料(収入印紙代)は1万7,800円(1万3,000円+1,200円×4)となります。
なお、離婚調停の申立手数料(収入印紙代)は1,200円であり、離婚調停が不成立で終了した後、2週間以内に離婚訴訟を起こせば、裁判の申立手数料から1,200円が控除されます。
離婚裁判にかかる弁護士費用の相場
離婚裁判を依頼する際にかかる弁護士費用には、一定の相場があります。
弁護士費用は、依頼する内容や裁判の争点によって異なりますが、相場を知っておけば、合理的な費用で依頼することができます。弁護士費用を払ってまで依頼するなら、費用以上の利益を得る必要があるため、相談時にしっかりと見通しを確認しておいてください。
離婚裁判を依頼する場合、着手金・報酬金の方式が採用されることが多いです。
離婚裁判の着手金の相場
着手金は、案件の結果にかかわらず弁護士に支払う初期費用です。
離婚裁判の着手金の相場は、30万円〜60万円程度が目安であり、平均すると50万円程度のことが多いです。単純な案件の場合は30万円程度、親権に争いがあったり、高額な財産分与を請求したりする複雑な案件では60万円を超えることもあります。離婚裁判に発展したケースは、夫婦間の要求に隔たりがあり、対立が相当大きいと予想されるので、自ずと弁護士費用も高額になりがちです。
離婚裁判の報酬金の相場
報酬金は、裁判によって得られた成果に応じて支払う費用であり、主に経済的利益に対する一定の割合として決めることが多いです。
離婚裁判の報酬金の相場は、離婚が成立したときの固定報酬が30万円〜60万円程度となり、これに加えて、変動報酬として経済的利益の10%が発生するのが目安となります。変動報酬は、慰謝料や財産分与を請求して、金銭を勝ち取ったときに発生します。弁護士によっては、「親権獲得」「離婚回避」「面会交流の実現(拒否)」といった目標を定め、達成するごとに固定報酬が増額する料金体系を採用する例もあります。
第一審で終了せず、控訴や上告をして争う場合、追加の費用が発生するのが通常です。
離婚裁判の弁護士費用を増減させる考慮要素
離婚裁判の弁護士費用は、事案の複雑さや争点の数によって変動します。離婚裁判で争点が増えれば、それに伴って弁護士費用も高くなる傾向にあります。以下の要素をもとに、弁護士費用が増減する可能性があるかどうかを検討してください。
【離婚裁判の弁護士費用が増額される事情】
- 複雑な争点が予想される場合
親権争いや高額の財産分与、慰謝料請求など。 - 経済的利益が相当高額な場合
高額の財産分与や慰謝料を勝ち取ると、報酬金が増額されます。 - 裁判の労力が大きい場合
期日回数が多く、長期にわたる裁判や、遠方の裁判所での対応を要する場合など。
【離婚裁判の弁護士費用が減額される事情】
- 争点がシンプルな場合
離婚のみを求める場合で、求める離婚条件に争いがない場合など。 - 短期間で迅速に解決できる場合
相談のみで解決できる、直接交渉で速やかに合意に達する場合など。 - 弁護士の経験が豊富な場合
弁護士に豊富な経験があると、定額制やパッケージ料金の提案が可能な場合があります。既に知識があるケースであれば、調査や検討に時間を要することもありません。
弁護士費用をできるだけ安く抑えるには、複数の事務所から見積もりを取って、自分のケースに適した弁護士を選ぶことが大切です。事案の進行によっては追加費用が生じる可能性もあるので、予想される状況に応じて、柔軟に提案してくれる弁護士が良いでしょう。
「離婚・男女問題の弁護士費用」の解説
離婚裁判の費用はどちらが払う?
次に、離婚裁判にかかる費用について、どちらが負担するのかを解説します。
裁判費用を誰が払うのかについては、原則は、各自で負担するのが基本です。ただ、相手の不貞やDVが原因で離婚せざるを得ないケースなど、「相手に負担させたい」という気持ちも理解できます。離婚裁判の費用について相手に請求できる条件と、その方法についても知っておきましょう。
離婚裁判の費用は各自負担が原則
日本では、裁判費用は、各自が自分の分を負担するのが原則とされます。この原則は、「個々の権利を守るための裁判は、それぞれ各自の負担で行うべき」という考えに基づいています。前述の通り、裁判費用は、訴訟費用と弁護士費用に分けられますが、それぞれ次のように考えられます。
離婚裁判の訴訟費用の負担は裁判所が決める
離婚裁判に生じる訴訟費用は、原則として裁判を起こす側(原告)が負担します。つまり、「離婚したい」側が負担するのが基本です。裁判を起こす時点では、離婚の責任はまだ判断されていないので、責任に応じて負担させることはできません。
判決が出たときは、裁判所が、訴訟費用の負担割合を決定します。民事訴訟法61条は「訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする」と定めているので、完全勝訴なら負担はありません。部分的な勝訴の場合、勝敗に応じて費用を配分します。
- 「訴訟費用は原告の負担とする」
- 「訴訟費用は被告の負担とする」
- 「訴訟費用を10等分し、その1を原告、残りの9を被告が負担する」
したがって、不貞やDVを明らかに証明できるなど、勝訴の可能性が高いときは、訴訟費用を相手に請求できる可能性があります。
和解で終了する場合、訴訟費用についても和解事項の中で決めますが、和解の場合には「各自の負担」と定めることが多いです。
離婚裁判の弁護士費用は各自負担
弁護士費用についても、依頼する弁護士に各自が払うのが原則です。
どの弁護士に、どのような条件で依頼するかは依頼者の自由であり、弁護士なしで自分で本人訴訟をすることも可能です。そのため、弁護士費用を相手方に請求することは、基本的に認められません。
弁護士を依頼すると、自身がリスクを負って有利な解決を目指すこととなるため、弁護士を依頼するメリットがあるケースかどうか、慎重に判断すべきです。
例外的に相手に請求できる場合
例外的に、離婚裁判の費用を、相手に負担させることができる場合があります。
敗訴した側に裁判費用を負担させる場合
前述の通り、訴訟費用については民事訴訟法61条に「訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする」と規定される通り、勝訴すれば相手に負担させることができます。ただし、これは裁判所に支払う費用のみが対象であり、弁護士費用は各自負担のままです。
損害賠償請求で勝訴して弁護士費用を請求できる場合
相手の不誠実な行為によって損害を被った場合にまで、かかった弁護士費用が全て自己負担なのは公平ではありません。
そのため、損害賠償請求で勝訴した場合、弁護士費用の一部を「損害」として相手に請求できるとするのが裁判実務です。具体的には「損害額の1割」を、弁護士費用として損害に加算するのが通例です。例えば、不貞の慰謝料請求などが典型例で、200万円の慰謝料が認められば場合には、弁護士費用として20万円を請求することができます。
ただし、実際にかかった弁護士費用がこれを上回る場合にも、支出額の全てを請求できるわけではありません。
離婚裁判の費用を抑える工夫と払えない場合の対策
次に、離婚裁判の費用を安く抑える工夫と、払えない場合の対策について解説します。
離婚裁判は費用がかさみやすく、費用を抑える工夫が重要です。勝訴すれば相手負担にできる訴訟費用も、訴訟提起時は一旦は負担しなければなりません。なお、費用を抑えることばかり優先すると、結果的に納得のいかない解決となるおそれもあるので注意してください。
離婚裁判の費用を抑える工夫
離婚裁判の費用を抑えるために、検討すべき工夫は次の通りです。
争点を限定してシンプルにする
争点を限定してシンプルにすることが、裁判費用を抑えるコツです。裁判費用のうち、裁判所に払う訴訟費用は、争点の数によって増額されます。弁護士費用についても、争いが複雑となって多くの業務量が予想されるほど、見積もりが高くなる傾向にあるからです。
話し合いによる早期解決を目指す
次に、話し合いによって早期解決を目指すことによっても、裁判費用を抑えることができます。離婚訴訟に至ることなく、離婚協議や離婚調停の段階で解決することができれば、追加の手続き費用も弁護士費用もかからないからです。
「離婚調停の流れと進め方」の解説
戦略を立てて勝訴を目指す
最後に、勝訴すれば、裁判所に払う訴訟費用は相手の負担となるので、戦略を立てて勝訴を目指すことは、結果としてかかる費用を抑えることに繋がります。相手に不貞やDVといった非が存在するなら、その証拠を事前に収集し、「勝てる戦い」をしましょう。
離婚裁判の費用を払えない場合の対策
離婚裁判の費用を払えない場合の対策を知らなければ、悪質なケースなのに、費用倒れが気になって泣き寝入りすることとなりかねません。離婚裁判で訴えようとしても、どうしても初期費用が用意できないとき、次の救済措置を検討してみてください。
訴訟救助
訴訟救助は、民事訴訟法の定める制度で、資力が十分でない人が訴訟するとき、訴訟費用が猶予される手続きです。お金がない場合でも裁判による救済を受ける機会を保障し、憲法上の「裁判を受ける権利」(憲法32条)を守ることが目的です。
訴訟救助を利用すると、訴訟終了後に清算することになります。ただし、制度を利用するには資力要件と、一定の勝訴の見込みが必要となります。
法テラス
法テラス(日本司法支援センター)は、民事法律扶助制度により、資力のない者に対して弁護士費用を立替払いする機関です。裁判を起こす際に費用がなくても、弁護士に依頼して法的サポートを受けることができます。
なお、立替払いされた費用は、後日償還する必要があります。また、資力要件があるほか、法テラスに対応する弁護士にしか依頼できません。
着手金の分割払い
離婚裁判を起こす時点では着手金が用意できないものの、勝訴の可能性が高い場合には、着手金の分割払いや後払いができないか、弁護士に確認しましょう。解決時に多くの慰謝料や財産分与を得られるケースでは、弁護士によっては、着手金の柔軟な支払いに応じてくれることもあります。
離婚裁判の費用で損しないための注意点
最後に、離婚裁判の費用で損しないための注意点について解説します。
本解説の通り、離婚裁判を通じてトラブルを解決するには相当な費用がかかるので、費用面で損をしないためにも、事前の確認や準備が重要となります。
弁護士から十分な説明を受ける
弁護士費用は平成16年以降、自由化され、各弁護士が自由に定めることができます。離婚裁判に注力する事務所では、離婚問題に悩む方の依頼に適した形になるよう、独自の料金体系を設ける例も多く、契約前に詳しい説明を受けることが重要です。
弁護士費用の検討は「見た目の安さだけで判断しないこと」が重要です。例えば、相談料や着手金が無料でも、報酬金が高いと、最終的な支払い総額が大きくなってしまいます。慰謝料や財産分与が高額となったり、事前に設定した条件が多く達成されたりした場合、予想を超える成功報酬が発生することもあります。
弁護士との契約では、必ず委任契約が結ぶので、契約書をよく読み、費用の内訳や業務の範囲、支払い条件に不明な点があれば、納得できるまで弁護士に質問しましょう。
費用以外の負担も考慮する
離婚裁判は、金銭的な負担だけでなく、時間的・精神的な負担も大きいものです。離婚裁判は、数か月以上にわたり、1年以上続く場合もあります。相手から様々な反論を受けることがストレスに感じられる場面も多いでしょう。裁判の費用が生活を圧迫するだけでなく、裁判によるストレスによって日常生活に支障をきたす人もいます。
これらの負担を軽減するには、信頼できる弁護士を選ぶことが欠かせません。費用が安い弁護士が、離婚問題に強いとは限りません。費用を意識するのは大切ですが、「お金」だけを基準に弁護士を選ぶと失敗しやすいので、慎重に判断してください。
事前準備を徹底する
離婚裁判をスムーズに進めるには、事前準備が欠かせません。準備不足だと、結果的に長期化し、かかる費用も増額されてしまう危険があります。
離婚裁判でかかる弁護士費用は、求める主張の内容によって増減します。離婚のみを求めるケースに比べ、親権や財産分与など、争点が増えるほど、弁護士費用は増額される傾向にあります。申立手数料(収入印紙代)も、離婚請求に加えて争点を増やすほど加算されます。
そのため、主張を整理し、どのような成功を勝ち取りたいのか、何を求めるのかを明確にしてから裁判を起こすことで、かかる費用を安く抑えることができます。このような主張の整理には法律や裁判例の知識が必要なので、弁護士に相談しながら行うのがおすすめです。
まとめ
今回は、離婚裁判にかかる費用について解説しました。
離婚裁判にかかる訴訟費用、弁護士費用は、いずれも各自の負担となるのが原則です。訴訟費用については、勝訴すれば相手に請求することができるものの、初期の負担となることに変わりはありません。弁護士費用は、事務所ごとに料金体系が異なり、特に離婚裁判に特化した事務所では依頼者の状況に応じた独自の設定をしている場合があります。
そのため、離婚裁判を起こす前に、かかる費用の内訳や金額について十分に説明を受け、納得した上で裁判に進むことが重要です。弁護士費用については、見た目の安さだけにとらわれず、成功報酬や総額をしっかりと確認することで、予想外の出費を避けなければなりません。
離婚裁判の費用をできるだけ抑え、かつ、有利な解決を勝ち取るためには、できるだけ早期の段階で弁護士に相談することが重要です。
- 離婚裁判にかかる主な費用は、裁判所に払う「訴訟費用」と「弁護士費用」
- 弁護士費用は、必ず契約前に説明してもらい、契約書を確認する
- 離婚裁判の費用を抑えるには、事前に主張を整理して準備することが重要
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/