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離婚裁判は自分でできる?本人訴訟の進め方、注意点とデメリット

離婚問題の争いは、まず離婚協議をして、合意が成立せず決裂してしまったとき、離婚調停、離婚裁判という順で進めます。離婚協議は「話し合い」であり、当事者だけでする人も多いです。離婚調停もまた、家庭裁判所で行われるとはいえ、話し合いを前提とした手続きなので、当事者だけで対応する人も少なくありません。

これに対して、離婚の裁判は、裁判所の強制的な判断をもらえる制度なので、厳格な手続きで運用されており、弁護士に対応を依頼するケースがほとんどです。訴訟段階まで進んでしまったということは、夫婦の対立もかなり深いと考えられるため、弁護士をつけたほうが有利な解決が望めます。

今回は、弁護士なしで離婚の裁判をするとき、つまり、「本人訴訟」で進めるときの注意点について、離婚問題にくわしい弁護士が解説します。

この解説でわかること
  • 離婚裁判は、本人訴訟で行うことができる
  • 離婚裁判を本人訴訟で進めることの最大のメリットは、弁護士費用がかからないこと
  • 離婚裁判が不利に進むと、経済的なデメリットがあるため、どちらが得か慎重に検討する

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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弁護士なしでも離婚の裁判はできる

OKを出す女性

本人訴訟とは、争いの当事者となった人が、弁護士をつけずに自分で訴訟を起こすことです。

はじめに結論を申し上げると、離婚裁判は、本人訴訟で起こせます。海外では、裁判にはかならず弁護士をつけなければならない国もありますが、日本では、離婚裁判をはじめとした民事訴訟は、本人だけでも進められるのが原則だからです。

本人訴訟で離婚裁判するとき、最大のメリットは「弁護士費用がかからないこと」です。

離婚訴訟は「本人訴訟」できる
離婚訴訟は「本人訴訟」できる

しかし、本人訴訟で離婚裁判を行うこととなると、裁判所とのやりとり、主張書面の作成、証拠の整理と提出といった手間のかかる作業を自分で行わなければなりません。更に、離婚裁判で問題となる慰謝料、財産分与、養育費といった点について不利な判断を下されてしまうと、弁護士費用を大きく超える損がでてしまうおそれもあります。

本人訴訟が可能ではあるものの、弁護士に依頼するほうがより有利な解決を獲得できる場合には、弁護士を依頼して離婚裁判を行ってもらうことがおすすめです。

刑事裁判は、「刑事被告人の権利保護」の観点から、弁護士がいなければ裁判ができません。

しかし、民事裁判もまた、刑事裁判と同じくらいに重要です。離婚裁判で、個人にとって一生を左右するとても重大な決定が下ることもあるからです。

離婚裁判を本人訴訟ですることができるとしても、実際に本人訴訟で行うのか弁護士を依頼するのかを検討する際には、メリット・デメリットを慎重に判断しなければなりません。

離婚裁判を本人訴訟で進めるときの手続きの流れ

次に、離婚裁判を本人で進めるときの手続きの流れについて解説します。

離婚裁判を本人訴訟で進めるかどうかは、弁護士費用がかからないというメリットと、有利な解決を得られないおそれがあるというデメリットのいずれのほうが大きいかを比較し、経済的合理性の観点から慎重に決めるべきです。

なお、本人訴訟すると決めたときにも、事前に法律相談をして、弁護士のアドバイスを得ておくのは役に立ちます。法律相談だけであれば、費用も少額で済みます。

STEP
離婚裁判の必要書類を準備する

離婚裁判を本人訴訟で起こすには、自分で訴状を作成し、夫婦の戸籍謄本とともに家庭裁判所に提出します。訴状の書式は、裁判所のホームページからダウンロードできます。

「調停前置主義」がとられており、離婚裁判の前にかならず離婚調停を申立て、不成立となっている必要があります。そのため、訴状とともに離婚調停不成立調書をあわせて提出しなければなりません。

離婚裁判を本人訴訟で起こすときにかかる費用は、収入印紙代(離婚のみの争いの場合、1万3000円、その他、財産分与、養育費、慰謝料などの金銭請求をするときは追加の印紙代がかかります)と郵便切手代です。

STEP
第1回口頭弁論期日

訴訟提起が終わると、裁判所から第1回口頭弁論期日の呼出状が届き、期日が指定されます。

第1回期日は、訴えの提起からおよそ1か月後にされ、訴状に書かれた主張を整理し、証拠の審理が行われます。相手方からも反論をされるとき、離婚訴訟を有利に進めるためには、離婚調停と比べてさらに、証拠が重要です。

期日は、主張整理と証拠の審理が終わるまでくり返され、およそ1か月に1回の頻度で開催されます。

STEP
判決もしくは和解による終了

離婚裁判の終了には、大きく分けて、判決と和解があります。

判決は、裁判所が離婚問題について下す最終判断です。原告の離婚請求を認める「認容判決」と、認めない「棄却判決」があります。判決に不服があるときは、送達から2週間以内に控訴できます。

和解は、当事者間で離婚条件などを合意して終了する方法です。ただし、離婚調停が不成立に終わって裁判になっているため、離婚裁判で和解を成立させるのはとても難しく、大きな譲歩を要求されるおそれもあります。

離婚裁判を本人訴訟で進める注意点

はてな

離婚裁判を弁護士に依頼すると、裁判所に提出する主張書面は弁護士が作成します。証拠も弁護士のアドバイスのもとに収集・整理するのが通常です。

裁判期日ごとに弁護士と打ち合わせし、期日での発言・行為にどんな意味があるか説明してもらったり、有利な解決に向けて方針確認を逐一行ったりできます。本人訴訟では弁護士費用がかからない代わりに、これらの弁護士のサポートを一切受けられません。

そこで、本人訴訟で離婚裁判を進めるにあたって、最低限知っておいてほしい注意点について解説していきます。

離婚裁判までの流れと調停前置主義

離婚裁判に至るということは、離婚についての夫婦間の争いごとが相当複雑であることを示しています。そのため、注意点の1つ目として、離婚裁判までの流れで重要な「調停前置主義」について知っておく必要があります。

こちらが離婚を求め、相手が離婚に反対しているときには、相手の意思に反してでも離婚を進めるためには、「先に離婚調停を申し立てる」という手続きを踏まなければなりません。これを法律用語で「調停前置主義」といいます。

離婚を請求する側が、離婚裁判に至るまでの流れは、次のようになっています。

  1. 離婚協議
    当事者間で、離婚の成否や離婚条件について話し合いを行う段階。
    書面の郵送、電話、LINE、メールなど、方法は問わない。
  2. 離婚調停
    裁判所に調停申立てを行い、調停委員と裁判官に立ち合いをお願いして話し合いを行う手続き。
  3. 離婚訴訟
    裁判所に訴訟提起をして、主張、証拠提出を尽くし、裁判官による法的な最終判断をもらう手続き。

本人訴訟では弁護士の助けを借りられないため、大まかな流れを覚えておいてください。重要なのは、離婚裁判を起こす前に、先に離婚調停を起こさなければならないという点です。

相手が離婚に対して強硬に反対するとき、すぐにでも離婚裁判を起こしたいと思うのはやまやまですが、「調停前置主義」があることから、離婚調停をせずに離婚裁判を起こすことは原則としてできません。

離婚裁判自体の流れを理解する

離婚裁判に至るまでの流れを理解していただいたところで、次に離婚裁判自体の流れについても知っておきましょう。

離婚裁判自体の流れをきちんと把握しておかなければ、裁判実務を知らない一般の方が自分で対応することによって、本来よりも時間が長くかかってしまったり、離婚について有利な解決が得られなくなってしまったりというリスクがあります。

そもそも、離婚裁判にまで至るケースでは、夫婦の意見や事実認識が決定的に異なることが多く、争いの火種も大きいため離婚裁判が長期化しがちです。

離婚裁判の流れは、裁判所への必要書類(訴状、証拠など)の提出から始まって、何回かの期日を経て、判決によって終了します。離婚裁判の期日は、だいたい1か月に1回程度の頻度で開催され、期日において主張と証拠の整理を行い、判決を出せる程度に議論が成熟するまで続けられます。

主張の整理が終わると、証人尋問期日が設定され、当事者が出廷して証人尋問を行うことがあります。

途中で、離婚条件などについて話し合いが成立し、和解して終了することもありますが、しかし、裁判まで発展した場合、和解による解決はなかなか困難です。

離婚裁判を本人訴訟で進めるデメリット

喧嘩する男女

次に、離婚裁判を本人訴訟で進めると決めたときは、リスクやデメリットも多いことを理解していただく必要があります。離婚裁判を本人訴訟で進めるデメリットには次のものがあります。

離婚がすぐに成立する簡単なケースでは、弁護士が不要なこともあります。しかし、そのような簡単な事案であれば、離婚裁判までこじれることはなく、離婚協議、離婚調停で解決できていたはずです。

離婚裁判の事務処理が多い

デメリットの1つ目は、離婚裁判の事務処理が多いことです。本人訴訟では、裁判所に提出する主張書面や、提出する証拠の用意は、すべて自分で行い、期日のたびに裁判所へ出頭しなければなりません。

離婚調停を自分でやろうと考える人のなかには、「離婚調停が自分でできたから」という理由の人がいます。しかし、調停は話し合いを前提とした手続きで、書面や証拠のやりとりをさほど行わないのが通常ですが、離婚裁判の審理は、書面が中心となります。そのため、離婚の裁判では、離婚調停とは比べものにならないほど書面による事務処理が発生します。

離婚調停と裁判の違い
離婚調停と裁判の違い

裁判では、裁判官による法的な判断が下されるため、間違いのないよう書面や証拠がとても重視されます。期日に出頭し、法廷で主張を伝えようとしても、「書面に書いて出してください」と指示されてしまいます。

そして、裁判所に出す書面をきちんと作るためには、法律の知識が大切です。法的な考え方に不備があると、せっかく正しいことをいっていても、その主張を裁判官に理解してもらえません。

離婚裁判には法律知識が必要となる

デメリットの2つ目は、法律知識が不足しがちで、離婚裁判が不利に進むおそれがあることです。特に、こちらが弁護士なしの本人訴訟で戦うのに、相手には弁護士がついているとき、不利に進んでしまう可能性が高まります。

相手は、弁護士による法的なサポートを十分に受けることができるとき、裁判に負けて、財産分与、養育費、慰謝料などが多額となったときには、「弁護士費用を払っておいたほうが、逆に損が少なかった」というおそれもあります。

「裁判所は正義の味方でないか」と思うかもしれません。しかし、裁判所に正義を理解してもらうためには、法律と過去の裁判例に基づいた主張をしなければなりません。裁判は法律にしたがって裁かれるので、法律にくわしいかどうかは判決を大きく左右します。

裁判が長期化しやすい

デメリットの3つ目は、弁護士を依頼したときに比べて離婚裁判が長期化する傾向にあることです。

自分の主張をまとめるのに時間がかかると、裁判は無駄に長引くおそれがあります。弁護士を依頼した場合には、期日における裁判官の発言や指示などから、裁判官の求めるものを予測し、適切に対応して、時間を短縮できます。

本人訴訟で、裁判官の求めるものを1回で用意できないと、「次回期日に持ち越し」となります。口頭弁論は1カ月に1回程度ですので、「次回期日に持ち越し」となってしまうと、単純に決着までの期間が1カ月延びてしまいます。

証人尋問が不十分となる

デメリットの4つ目は、証人尋問が不十分となってしまうおそれがあることです。

離婚裁判では、まずは書面で主張を整理し、争いのある部分について証拠の審理をします。このとき、書証などの客観的証拠が重視されますが、夫婦間の過去の事実についてすべて書面があるほうが珍しいです。そのため、夫婦間で起こった過去の事実関係を証明するためには、「人証」、すなわち、証人尋問での証言が重要な証拠となります。

証人尋問は、証人に対して、自分側と相手側の両方から質問をして、真実を確かめるという手続きです。しかし、弁護士がついていない本人訴訟だと、本人尋問となってしまうため、自分側の証人尋問が不十分となってしまいます。また、相手に対する反対尋問も、訓練を積んだ弁護士ではないため、単に自説を押しつけるだけになってしまい、裁判官にうまくつたわらないおそれがあります。

当事者の尋問について
当事者の尋問について

裁判官が補充尋問をしてくれるといった救済策はあるものの、裁判官はあくまで自分の判断のために必要なことを聞くだけで、かならずしもあなたにとって有利な内容となるかはわかりません。弁護士がしっかりと尋問案を考え、有利な解決に向けた尋問を行ってくれる場合に比べて不十分となるのは否めません。

本人訴訟のストレスが大きい

デメリットの5つ目は、本人訴訟はストレスがとても大きいことです。

離婚裁判で主張することは、誰にも知られたくない恥ずかしいことかもしれません。有利な判決を勝ち取るためには、ついこないだまで夫婦として一緒に暮らしていたパートナーの欠点を列挙しなければなりません。裁判は平日の昼間にしか行われないため、仕事をしている方が自分で出廷して本人訴訟を行おうとすると、仕事を休まなければなりません。

しかし一方で、裁判のストレスを避けるために、納得がいっていない和解に逃げてしまうと、後悔することになります。

まとめ

「離婚裁判を本人だけで進めることができますか?」というよくある相談について、弁護士が解説しました。

当事者だけで進める裁判のことを「本人訴訟」といい、制度上は、離婚裁判も本人訴訟で進められます。しかし、離婚問題についての十分な法律知識がないと損をしてしまうといったデメリット、リスクもあります。

離婚問題が裁判に発展したとき、弁護士をつけるべきケースか、本人訴訟でもよいか、慎重に検討するようにしてください。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚問題を得意としており、すみやかな離婚問題の解決に向け、手厚くサポートさせていただけます。

離婚問題が裁判になってしまったとき、夫婦間の主張には大きな開きがあると予想され、争いの解決には年単位の期間がかかるおそれがあります。長期間の紛争は、仕事やプライベートにも大きな支障となります。

離婚裁判を弁護士にまかせることで、次のメリットがあります。

  • 裁判所や相手の弁護士とのやり取りを任せられる
  • 法的な主張をしっかりして、弁護士費用以上の有利な解決を実現できる
  • 裁判をできるだけ短期間で終わらせられる

離婚裁判のよくある質問

離婚の裁判を、本人訴訟で進めることはできますか?

離婚の裁判は、本人訴訟で進めることができます。つまり、弁護士をつけなくても裁判することができます。ただし、本人訴訟で進めることのメリット・デメリットを比較して、どちらが大きいか慎重に判断するようにしてください。もっと詳しく知りたい方は「弁護士なしでも離婚の裁判はできる」をご覧ください。

離婚裁判を本人訴訟で進めるときにデメリットはありますか?

離婚裁判で、夫婦間の対立が大きいほど、本人訴訟で進めるデメリットが大きくなります。あなたにとって有利な法的主張を知らないことで、十分に裁判官を説得できないおそれがあります。また、主張書面を作ったり証拠を集めたり、法廷に出頭しなければならなかったりと協議や調停に比べても多くの手間がかかります。詳しくは「離婚裁判を本人訴訟で進めるデメリット」をご覧ください。

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