面会交流は、離婚後の子供の健やかな発育にとって重要な役割を果たします。しかし、遠方に住んでいたり、新型コロナウイルスの感染拡大といった非常時の影響があったりして、直接対面での交流を実施することが難しいケースもあります。
このようなケースで、代替手段として注目されたのが「オンライン面会交流」です。オンライン面会交流は、どうしても会えない事情のある家庭だけでなく、同居する親が面会を拒否するケースでも、相手の心理的なハードルを下げて早期の交流を実現するのに有効です。ただし、オンライン面会交流にはデメリットもあるので、その特性を理解して慎重に進める必要があります。
今回は、面会交流をオンラインで実施する方法と、メリット・デメリット、オンライン面会時の注意点について、弁護士が解説します。
- オンライン面会交流は、対面で会う場合にも増して事前準備が重要
- オンライン面会交流に向くケースかどうか、メリット・デメリットを検討する
- オンラインでも、実際に会う場合と同じく、子供への配慮が必要となる
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/
オンライン面会交流とは

オンライン面会交流とは、子供と離れて暮らす親が、インターネット経由で顔を見ながら言葉を交わし、交流するやり方です。これまでの「面会交流」は、実際に対面して子供と会ったり、遊んだりする方法が主流したが、コロナ禍をきっかけにオンライン面会交流が増えています。
オンライン面会交流の定義と背景
面会交流では、別居する親子が精神的なつながりを維持するため、会って対話したり一緒に遊んだり、手紙を送り合ったりプレゼントをしたりといった交流を行います。オンライン面会交流は、このような交流をオンライン上で行います。具体的には、ZOOMやTeams、Google Meetといったウェブ会議ツールを用い、パソコンやスマホの画面越しに表情や声を伝え合います。
面会交流は、子供の心身の健全な発育のために重要な役割を果たします。たとえ夫婦が離婚しても、両親に会えない期間が続くことは子供の成長にとって悪影響です。遠方に住んでいるなど、様々な理由があって実際に会うのが難しくても、だからといって面会交流を先延ばしするのは、子供にとって不利益でしかありません。
日常生活においてリモートワークやウェブ会議が普及するにつれ、面会交流の分野でも、オンライン面会交流が活用されはじめています。
コロナ禍と収束、オンライン面会の実情
2020年に始まったコロナ禍は、子供にとって重要な面会交流を中止すべきではないとの判断から、オンライン面会交流が広まるきっかけとなりました。「コロナを理由に面会交流を拒否する」といった不誠実な対応を避けるにも、オンライン面会は非常に有効でした。
一方で、新型コロナウイルスの影響が少なくなった現在も、オンライン面会交流は多くのメリットがあり、適した事案では積極的に活用すべきです。ただ、「実際に会うのと比べると交流が不十分になる」という消極的な意見もあります。オンライン面会には、自宅の様子が相手に知られてしまうデメリットもあり、DV・モラハラ気質の相手だと細心の注意を要します。
したがって、コロナ禍における代替手段として生まれたオンライン面会交流は、今なお有用な手段の一つですが、デメリットも考慮した慎重な対応が必要となります。
オンライン面会交流の進め方

次に、オンライン面会交流の進め方について解説します。
オンラインの面会交流は、実際に会って話すのと「全く同じ」というわけにはいきません。「直接会って話せばすぐ解決する問題なのに」というもどかしい思いをすることもあります。オンライン面会交流を最大限に活用するには、特有の性質を理解して進めなければなりません。
オンライン面会の弊害を軽減し、有意義なものとするには、離婚問題に精通した弁護士のサポートを受けるのが有効です。
オンライン面会交流の取り決め
オンライン面会交流であっても、直接の面会の場合と同じく、離婚時にしっかりと取り決めをしておく必要があります。面会交流で定めておくべき事項には、次のものがあります。
- 面会交流の回数・頻度
- 面会交流の方法
- 面会交流の日時や時間
- 第三者機関を利用するかどうか
- 当日に行うこと、遊びの内容
- 交流時の禁止事項
実際に会う形での面会交流では、子供の受け渡しや相手方の同席などが争点となりますが、オンライン面会交流のときは、オンラインに特有の次の点について決めておく必要があります。なお、離婚時の取り決めについては、離婚協議書を作成し、公正証書化しておきましょう。
- オンライン面会交流で利用するアプリ
- ミーティングスケジュールの設定をどちらが行うか
- オンラインでの面会交流中、相手の配偶者が同じ会議に参加するかどうか
面会交流のルールについては、まずは両親の話し合いで決めますが、合意できないときは、家庭裁判所に調停の申立てを行います。離婚前なら、離婚する条件として調停の中で話し合うことが多いですが、離婚後であっても、面会交流調停を申し立てることができます。
家庭裁判所は、面会交流に関する一切のことについて「子の福祉」の観点から判断します。面会交流が子供のために行うものであることを理解し、子供の気持ちやスケジュールを優先すべきであり、親の「会いたい」気持ちを押し付けてはいけません。
面会交流が円滑に行われ、子供が親に愛されているという気持ちを抱くことは、心身の健全な発育にとても重要な影響を及ぼします。
「離婚協議書の書き方」の解説

オンライン面会前に弁護士に相談する
オンラインの面会交流は「手軽」に見えて、実際はそう簡単ではありません。最近になって普及した新しいやり方なので、実施してみると、予想外のトラブルが起こることもしばしばです。面会交流の重要性からしても、想定外の事態に直面して交流が中断したり、今後の交流が難しくなってしまったりするのは非常に残念なことです。
オンライン面会をするときは、面会の前に弁護士に相談しておくことがお勧めです。離婚や子供の問題について経験豊富な弁護士のサポートを受けることで、オンライン面会の際のよくあるトラブルを知り、事前に対策を講じておくことができます。
「離婚に強い弁護士とは?」の解説

オンライン面会交流前の連絡調整
オンライン面会交流の前に、連絡し、日程調整をする必要があります。
面会交流前の調整について、相手とのやり取りに負担を感じるときは、弁護士を窓口とする方法が有効です。弁護士を通じて調整することは、双方のストレスを減らし、オンライン面会交流をスムーズに進める助けとなります。
オンラインなら子供の受け渡しはありませんが、利用するアプリを設定したり、ミーティングに必要なURLを伝えたりといった煩雑なやり取りが生じます。両親の間で行うことは、離婚前後を問わず、関係が悪化した状態では難しいことも多いものです。面会交流は、将来にわたって続くので、常に弁護士を窓口にし続ける必要はありませんが、初回から数回、起動に乗るまではサポートを受けるのがよいでしょう。
オンライン面会交流の当日の流れ
オンライン面会交流の当日の流れについて、順番に解説します。
当事務所でサポートする事例の中には、オンライン面会交流中の付き添い(同席)を希望されるケースも少なくありません。「相手と顔を合わせたくはないが、子供と二人きりにするのは不安だ」というとき、弁護士がオンライン面会交流中のチャットルームに同席して立ち会うことで、安心かつ適切な交流をサポートできます。
以下は、弁護士が同席するオンライン面会交流の一例です。
弁護士がチャットルームを作成
弁護士が、ZOOMなどのチャットツールを利用して、面会交流の「場」となるチャットルームを作成します。ツールの使い方から丁寧にサポートするので、アプリを利用したことのない人や年配の方でも安心です。
同居親と子供がチャットルームに入室
まずは、同居親と子供がチャットルームに入室します。別居親のいない状態で、弁護士に不安や疑問を伝えたり、相手への連絡事項を伝えたりすることができます。
別居親がチャットルームに入室(同時に、同居親が退室)
次に、別居親がチャットルームに入室します。この際、親同士は顔合わせをしたくない場合は、あらかじめ同居親にはチャットルームから退室してもらいます。
オンライン面会交流の実施
チャットルーム内に親子が揃ったら、面会交流を実施します。この際、面会交流中の弁護士の同席が不要な場合は、映像や音声を切り、離席して待機します。
オンライン面会交流の終了
決められた時間になったら、面会交流を終了します。終了時には、別居親にチャットルームから退室してもらい、その後、同居親がチャットルームに戻ります。
この際、弁護士に、今回の面会交流を終えての感想や不満点、次回の面会交流に向けた要望などを伝えることができます。
オンライン面会のメリット・デメリット

次に、オンライン面会交流のメリット・デメリットを解説します。
インターネットを利用して面会交流をオンラインで実施する方法は、最近になって普及した新しい方法です。そのため、便利ではあるものの、メリットとデメリットを理解した上で、注意して利用しなければ不利益が生じるおそれもあります。
子供と同居する親(同居親)、別居する親(別居親)の観点からそれぞれ解説します。
オンライン面会交流のメリット
【別居親のメリット】
- 外出することなく子供に会えるので便利
- 遠方に住む親でも、インターネットを通じて子供とコミュニケーションが取れる
- 相手が自分と会うことを拒否するケースでも面会交流を実現できる
【同居親のメリット】
- 子供を連れ出す手間がかからない
- 子供の心理的な負担を軽減し、自宅でリラックスして実施できる
- 相手と会いたくないとき、顔を見ずに面会交流を進められる
オンライン面会交流のデメリット
【別居親のデメリット】
- 直接的な触れ合いがなく、温かみに欠ける
- 共同作業をすることができず、親密な関係を築きづらい
- 通信環境や機器のトラブルによって交流が中断することがある
- ウェブツールに習熟していない高齢な親だと、拒絶されるおそれがある
【同居親のデメリット】
- 離婚した相手に家の中の様子を知られてしまう
- 小さな子供だとデバイスを操作できず、親のサポートが必要
- 面会時間や頻度について過度な期待を抱かれ、不満が生じる
オンライン面会交流のデメリットを解消する方法と注意点

オンライン面会交流のデメリットを軽減するために、対策と注意点を理解してください。
事前準備とルール設定を徹底する
オンライン面会交流のデメリットを解消するには、開始時間、交流時間、頻度といった基本的なルールを明確に設定しておくことが大切です。親同士で事前に話し合い、合意を得ておくことで、予想外のトラブルをできるだけ少なくすることができます。
緊急事態や予定変更があったときの対応も取り決めておけると安心です。ルールが曖昧だと、すれ違いや対立を引き起こす原因となるので、できるだけ細部まで、具体的に決めましょう。
「協議離婚の進め方」の解説

直接交流できないか慎重に検討する
社会生活でもオンラインの重要性が高まっているように、その利便性を疑う余地はありません。
しかし、全てがオンラインで完結するわけではなく、直接会って話すことには、オンラインにない良さがあります。直接交流が十分に可能なのに、「手軽だ」といった安易な理由でオンライン面会を選ぶと、直接交流の利点を享受できなくなってしまいます。
別居先が遠距離である、DV・モラハラを主張しているなど、やむを得ない事情でオンラインで実施することは、面会交流を一切しないよりは良いですが、直接交流を軽視しないことが大切です。デメリットを解消するためには、オンライン面会交流を主とする場合にも、「長期休暇には直接交流する」などといった対策を検討してください。
居住場所の特定に注意する
オンライン面会交流を選択する理由の一つに、別居親のDV・モラハラによって両親が顔を合わせることが難しいというケースがあります。
オンライン面会交流では、ウェブカメラで子供を映しながら交流しますが、背景の外の景色や家の間取りが映り込んでしまい、居住場所が特定されるおそれがあります。DV・モラハラ事例では、居場所を特定されることで、同居親や子供の身に危険が及んだり、最悪は「子の連れ去り」問題に発展する危険もあるので注意しなければなりません。
このようなデメリットを理解し、オンライン面会交流では、居住場所が特定される映像が映らないよう細心の注意を払ってください。別居親の側でも、せっかくオンライン面会交流に協力してくれた相手に感謝し、あえて居住場所を探らないよう配慮することが大切です。
「連れ去り別居」の解説

オンライン面会交流を弁護士に依頼すべき理由

最後に、オンライン面会交流を弁護士に依頼すべき理由を解説します。
ビジネス用途でウェブ会議ツールを利用する方は増えていますが、家庭内の問題が絡むセンシティブな場面では、離婚問題を多く取り扱う弁護士に相談するのが賢明です。
相手や子供に安心感を与えられる
家庭裁判所が「子の福祉」を最優先に考えるように、面会交流は子供のためにあります。そのため、子供の精神状態が不安定だと、面会交流がかえって悪影響になってしまいます。
弁護士に依頼し、早期にオンライン面会交流を実施すれば、「オンラインでも親に会える」という安心感を子供に与えられます。専門家のバックアップがあることで相手を安心させ、オンラインでの面会交流に応じてもらいやすくなります。
「離婚相談する前の準備とメモ」の解説

適切な面会交流をサポートできる
離婚後でも、元夫婦の間で信頼関係が保たれるなら、当事者のみで面会交流を実施できるでしょう。しかし、多くの場合、離婚協議で揉めたり、不倫やDVがあったりして、両者の間には深い亀裂が入っています。このような状況下だと、面会交流には次の不安がつきまといます。
- 別居親が、子どもに同居親の悪口を言うのではないか。
- 同居親が、日常的に別居親を否定する発言をして、子供に吹き込んでいるのではないか。
- 親権を奪おうとして子供を甘やかしたり、騙したりするのではないか。
このような不安を現実化させないためにも、弁護士がオンラインの面会交流に同席するのが効果的です。特に、オンラインの方法だと、一度退出した後の状況を確認することが難しく、第三者の目も届かないため、弁護士による付き添い(同席)が、トラブル防止に役立ちます。
夫婦の法律問題を相談できる
別居をしている夫婦間では、面会交流以外にも様々な法律問題が発生します。
まだ離婚ができていない場合には、今後離婚するかどうか、その際の条件などについて、引き続き協議が必要です。離婚の協議は、当事者間でも行えますが、感情的な対立があるときは、弁護士を通じて行う方が話し合いがスムーズに進みます。既に離婚した後であっても、子供がいる場合は、今後の面会交流や子供の養育費、学費の負担など、継続的に法律問題が出てきます。
オンライン面会交流を弁護士に依頼することで、夫婦や家族に関する一切の法律問題を、総合的に同じ弁護士に相談することができます。
「子供がいる夫婦の離婚」の解説

まとめ

今回は、オンラインで面会交流をする方法と注意点について解説しました。
オンライン面会交流は、コロナ禍をきっかけに生まれた方法で、最近もしばしば行われます。オンラインで面会交流するのは手軽であり、相手や子供に与える心理的ハードルも低くすることができます。そのため、感染症以外でも、遠方であったり、直接会うことを拒絶してきたりする相手に対して有効な手段となっています。
しかし、オンライン面会交流ならではのデメリットに注意して進めないと、相手を不快にさせたり交流を十分に行えなかったり、最悪は、次回以降の面会交流の道を閉ざしてしまうリスクもあります。オンライン面会に特有の問題を知るには、子供の問題が絡む複雑なケースこそ、経験豊富な弁護士に相談しながら進めるのが最善です。
- オンライン面会交流は、対面で会う場合にも増して事前準備が重要
- オンライン面会交流に向くケースかどうか、メリット・デメリットを検討する
- オンラインでも、実際に会う場合と同じく、子供への配慮が必要となる
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/
面会交流は、離婚や別居後も親子の関係を維持し、子供の健全な成長を支える大切な制度です。そのため、具体的な実施方法や時間、頻度について、十分に注意して取り決める必要があります。
進め方や、実施時の注意点について、「面会交流」に関する解説を参考にして進めてください。