面会交流は、子どもと同居しない親が、子どもと会って交流を深めることです。離婚後はもちろん、離婚前であっても夫婦が別居しているときは、面会交流が問題になります。離婚せざるをえない事態になっても、親子関係はなくなりません。そのため、適切な面会交流は、子どもの心身の発育にとても大切です。
子どもと離れてしまった親としては「早く子どもに会いたい」という気持ちが強いでしょう。しかし「遠方の実家に別居した」など、夫婦が離ればなれになったとき、実際に会って面会交流するのは容易でないこともあります。このとき活用できるのが、オンラインで面会交流する方法です。
オンラインの面会交流は、子どもと同居している親がDV・モラハラなどを理由として面会を拒否してくるケースでも、相手の心理的なハードルを下げ、早期の面会交流を実現するために有効です。
今回は、面会交流をオンラインで実施する方法と、オンラインで面会交流するときの注意点について、離婚問題にくわしい弁護士が解説します。
- オンライン面会交流では、実際に会う場合にも増して、事前の準備や取りきめが大切
- オンライン面会交流に向いているケースかどうか、慎重に検討する
- 面会交流をオンラインで行う場合でも、実際に会うケースと同じく、子どもへの配慮が最重要
オンライン面会交流とは
面会交流は、子どもと離れて暮らす親が、定期的に子どもと会い、対話をしたり一緒に遊んだり、手紙を送りあったり物品をプレゼントしたりするなどして、交流をすることです。
オンライン面会交流とは、このような面会交流をオンラインで行う方法です。ZOOMやTeams、Google Meetといったビデオ会議アプリがよく利用されます。面会交流というと、これまでは対面で会う方法が主流でしたが、最近では、新型コロナの蔓延などもきっかけにして、オンライン面会交流が増えています。
面会交流は、子どもの心身の健全な発育のためにとても重要な役割を果たします。たとえ夫婦が離婚をしたとしても、両親に会えない期間が続いてしまうと、子どもの成長にとって悪影響となってしまいます。遠方であったりといったさまざまな理由で、実際に会うのがすぐには難しいときでも、だからといって面会交流を先延ばしにするのは、子どもにとって不利益です。
日常生活においてリモートワークやウェブ会議が普及するにつれ、面会交流の分野でも、オンライン面会交流が徐々に活用されはじめています。
オンライン面会交流の進め方と、弁護士によるサポート
次に、オンライン面会交流を最大限活用するために、オンライン面会交流の進め方と、その際に弁護士から受けられるサポートの内容について解説します。
オンラインでの面会交流は、実際に会って話すのとまったく同じというわけにはいきません。「実際に直接会って話せばすぐに解決できる問題なのに」ともどかしい思いをすることもあります。オンライン特有のポイントを理解して適切に進めることで、オンラインであることのデメリットを、少しでも取り除いておく必要があります。弁護士のサポートは、オンライン面会交流を少しでも快適に進める助けになります。
面会交流についての取り決め
はじめに、オンライン面会交流であっても、直接の面会交流と同じように、相手との間で面会交流についての取りきめを事前にしておく必要があります。面会交流について決めておくべきことは、次のような点です。
- 面会交流の回数・頻度
- 面会交流の方法
- 面会交流の日時、時間
- 面会交流の方法
- 第三者機関を利用するかどうか
- 面会交流時に行うこと、遊びの内容
- 面会交流時にやってはいけないこと、言ってはいけないこと
実際に会ってする面会交流では、どのように子どもを受け渡すか、相手方配偶者が同席するかどうか、といった点が問題となりますが、オンライン面会交流でも、次のようなオンライン特有の決めておかなければならない事項があります。
- オンライン面会交流で利用するアプリ
- ミーティングスケジュールの設定をどちらが行うか
- オンラインでの面会交流中、相手の配偶者が同じ会議に参加するかどうか
これらの面会交流で事前に決めておくべきことについて、まずは(元)夫婦間の話し合いをしますが、当事者の話し合いでは決められないときは、家庭裁判所に調停の申立てを行います(離婚前であれば、面会交流は離婚条件として離婚調停のなかで話し合います。離婚後でも面会交流を話し合いで決められないときは、面会交流調停を申し立て、家庭裁判所で決めるようにします)。
家庭裁判所では、面会交流に関する一切のことについて「子どもの福祉」の観点から判断をします。そのため、面会交流が子どものために行われるものであることを理解し、子どもの意思やスケジュールを尊重しなければならず、親の「会いたい」という気持ちを押し付けてはいけません。
面会交流が円滑に行われ、子どもが親に愛されているという気持ちを抱くことは、子どもの心身の健全な発育にとても重要な影響を及ぼします。
オンライン面会交流前の事前相談
オンラインで面会交流を行うことは手軽に見えますが、実際には、直接会って交流するほど便利なものではありません。後述する注意点を踏まえて対応しなければ、想定外の事態に直面するおそれがあります。
オンライン面会交流について、弁護士のサポートを受けながら行うときには、面会交流の取りきめが終了したら、実際に面会交流をするより前に、事前相談しておくのがおすすめです。
当事務所では、オンライン面会交流をサポートした経験を豊富に有する弁護士が、オンライン面会交流を進めるときの流れ、面会交流中の注意点などについて丁寧に説明し、サポートします。
オンライン面会交流前の連絡調整
オンライン面会交流中はもちろん、面会交流前の日程調整についても弁護士が窓口となって相手とやりとりをするケースがあります。このような対応により双方のストレスを減らし、オンライン面会交流にスムーズに進めていけるからです。
オンラインでの面会交流では、子どもの受け渡しなどは問題になりませんが、利用するアプリを決めたりアプリの設定をしたり、ミーティングに必要なURLを伝えたりといった煩雑なやりとりが必要になります。これを同居親、別居親の間で行うことは、離婚前後を問わず、夫婦仲が悪化した後ではなかなか難しいでしょう。
オンライン面会交流では、子どもの顔を見てしっかりと愛情を伝えることが子どもの健やかな成長に有意義なので、ビデオチャットの活用がおすすめです。面会交流は、将来にわたってずっと続いていきますから、常に弁護士を窓口にし続ける必要はありませんが、初回から数回の間、軌道に乗るまでは弁護士のサポートを受けるのが有効です。
オンライン面会交流の付き添い(同席)
当事務所でサポートするオンライン面会交流の事例のなかには、面会交流中の付き添い(同席)を希望されるケースもあります。「相手とは顔を合わせたくはないが、相手と子どもを2人きりにしてしまうのは心配だ」というご不安があるとき、弁護士がオンライン面会交流中のチャットルームに同席して立ち会うことで、安心かつ適切な面会交流をサポートできます。
弁護士が同席するオンライン面会交流の場合、次のような手順で進めます。
弁護士が、ZOOMなどのチャットツールを利用して、面会交流の「場」となるチャットルームを作成します。
オンラインツールの使い方から丁寧にサポートしますので、ZOOMなどのチャットツールを利用したことのない方や、オンラインの知識に疎い年配の親御さんにも安心です(インターネット回線、接続するPCなどはご自身で用意していただく必要があります)。
まずは、同居親と子どもがチャットルームに入室します。このとき、別居親のいない状態で、弁護士に対してご不安ごとを伝えたり、相手方への伝達事項を伝言したりしていただけます。
次に、別居親がチャットルームに入室します。この際、親同士は顔合わせをしたくない場合には、あらかじめ、同居親にはチャットルームから退室をしてもらいます。
ここまでの流れで、チャットルーム内の登場人物が出そろったら、面会交流を実施していきます。この際、面会交流中の弁護士の同席が不要な場合には、弁護士は映像・音声を切り、離席して待機します(この場合には、終了時刻になったら弁護士が再度映像・音声を入れ、面会交流の終了を告げます)。
決められた時間になったら、面会交流を終了します。終了時には、別居親にチャットルームから退室していただき、その後、同居親にチャットルームに戻っていただきます。
この際、弁護士に、今回の面会交流を終えての感想やご不満点、次回の面会交流に向けた要望などをお伝えいただけます。
オンライン面会交流の実施時の注意点
インターネットを利用して面会交流をオンラインで実施する方法は、最近徐々に広まった新しい方法です。新しい方法であるからこそまだ完璧ではなく、注意点をしっかりと理解しておかなければなりません。
オンラインな分、手軽に見えますが、パソコンやスマートフォン操作に習熟していない高齢のご夫婦のケースでは、相手が拒否反応を示すこともあります。「オンラインでは、親子の絆を保つことができない」という否定的な意見もあります。
少しでもデメリットなく、オンライン面会交流を正しく行うため、その注意点を解説します。
直接交流できないか慎重に検討する
社会生活においてオンラインの重要性が高まっています。オンライン面会交流は別居親にとっても同居親にとっても次のように多くのメリットがあります。
【別居親のメリット】
- 外出することなく子どもに会えるので便利
- 相手が自分と会うことを拒否しているケースでも面会交流を実現できる
【同居親のメリット】
- 子どもを連れだす手間がない
- 子どもの負担が少なく、スケジュールにも影響を与えない
- 相手と会いたくないとき、顔を見なくても面会交流できる
しかし、なんでもかんでもオンラインにすればよいわけではありません。直接交流にはオンラインにはない良さがあります。直接交流が十分可能なのに「手軽だ」という理由でオンライン面会交流を選んでしまうと、直接交流による子どもの発育への影響を無視してしまうことにもなりかねません。
別居先が遠距離である、DV・モラハラを主張しているなどのようにやむを得ない事情でオンライン面会交流とすることは、面会交流を一切しないよりはよいですが、直接交流を軽視しすぎないようにするのが大切なポイントです。このようなデメリットをなくすため、長期の休みには直接交流をすることを約束する、といった対策を検討してください。
居住場所の特定に注意する
オンライン面会交流を行う理由の1つに、別居親のDV・モラハラがあり、(元)夫婦同士が顔合わせすることが難しいという理由があります。
オンライン面会交流では、ウェブカメラで子どもをうつしながら交流を行いますが、背景に外の景色、家の間取りなどが映りこんでしまうことで、子どもと同居している居住場所が、別居親にバレてしまうおそれがあります。DV・モラハラ事例では特に注意しなければなりません。
このような場合、居住場所を特定されてしまうことにより、同居親や子どもの身に危険が及んだり、最悪の場合には子どもの連れ去り問題に発展するおそれもあります。
そのため、オンライン面会交流では、居住場所の特定につながる映像が映らないよう注意が必要です。別居親の側でも、せっかくオンライン面会交流に協力してくれた相手に感謝し、あえて居住場所を探らないようにしてあげる配慮が大切です。
オンライン面会交流を弁護士に依頼するメリット
最後に、オンライン面会交流を弁護士に依頼するメリットについてまとめておきます。
ビジネス用途でビデオチャットツールを利用している方は多いでしょうが、家庭内の問題の絡むセンシティブな問題では、離婚問題を多く取り扱う弁護士に依頼するのが有効です。
子どもに安心感を与える
さきほど解説したとおり、家庭裁判所は面会交流について「子どもの福祉」の観点から判断をしていることからもわかるとおり、面会交流は子どものためのものです。
そのため、子どもの精神状態が不安定だと、折角の面会交流がかえって悪影響になってしまいます。
弁護士に依頼して早期にオンライン面会交流を実施することが「オンラインでも親に会うことができる」という安心感を子どもに与えることにつながります。
適切な面会交流を進めることができる
面会交流を行う際に、(元)夫婦間において信頼関係が十分に構築されているのであれば、当事者間だけでも適切な面会交流が可能かもしれません。
しかし実際には、離婚協議でもめたり、不倫の慰謝料請求をしていたりなど、離婚に至るまでの間に夫婦には既に亀裂が入っていることもあります。このような場合、次のような不安を法律相談の現場でよく聞きます。
- 「別居親が、面会交流時に子どもに対して自分の悪口を言うのではないか」
- 「同居親が、日常的に別居親の悪口を子どもに吹き込んでいるのではないか」
- 「別居親が、親権・監護権を奪おうとして子どもの興味関心を引くために甘やかすのではないか」
そして、実際にこれらの不安が単なる疑心暗鬼で終わらず、残念ながら現実化してしまうこともあります。面会交流において弁護士が同じチャットルームに付き添い(同席)することで、相手の不適切な対応を防止し、このような不安を解消できます。
特に、オンライン面会交流では、一旦映像・音声をオフにして退出してしまうと、チャットルーム内での出来事について監視・干渉することが容易ではありません。そのため、弁護士に付き添い(同席)してもらうことが、適切な面会交流を進めるにあたってとても有益です。
夫婦間の法律問題を相談できる
別居をしている夫婦間では、面会交流以外にも多くの法律問題が発生します。
まだ離婚をしておらず、別居をしている夫婦の場合には、今後離婚をするかどうかや、その際の離婚条件について、協議が必要となります。離婚協議は、当事者間だけでも行うことができますが、感情的対立が激しかったり、双方の主張に大きな乖離があったりする場合には、弁護士を窓口として行うほうがスムーズなことも少なくありません。
すでに離婚済みの元夫婦でも、今後の面会交流や、子どもの養育費・学費の負担などの法律問題が発生します。
オンライン面会交流を弁護士に依頼して頂くことで、夫婦間の一切の法律問題について弁護士に相談できます。
まとめ
今回は、最近増加しつつあるオンラインで行う面会交流の方法と注意点について解説しました。
オンラインで面会交流を行うことは手軽であり、相手に与える心理的ハードルも低くすることができ、面会交流を拒絶してくる相手に対しても提案しやすい有効な手段です。
しかし、オンライン面会交流ならではの注意点を理解しておかなければ、相手に不快な感情を与えたり、子どもとの交流を十分に行えなかったりして、次回の面会交流への道を閉ざしてしまうおそれもあります。
当事務所のサポート
弁護士法人浅野総合法律事務所では、離婚問題に精通しており、子どもの問題がからむ複雑なケースについても豊富な解決実績があります。
面会交流をはじめ、ご家族の問題でお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。
面会交流のよくある質問
- オンライン面会交流とは、どんなものですか?
-
面会交流とは、子どもと別居する親が、子どもと交流することをいい、オンライン面会交流とは、子どもとの交流を対面ではなくオンラインでビデオ会議ツールなどを使って行うことです。リモートワークなどが進むなかで、面会交流の分野でもオンラインで行う例は増えています。もっと詳しく知りたい方は「オンライン面会交流とは」をご覧ください。
- オンライン面会交流の注意点はありますか?
-
オンライン面会交流は、子どもの福祉に配慮して行わなければならないという点で、直接会ってする面会交流と代わりません。そのため、親の気持ちの押し付けではなく、子どものために考える必要があります。DVなどを理由にやむをえずオンラインで行うとき、居住場所の特定に注意してください。また、直接の面会交流を軽視しすぎず、適度なバランスが必要となります。詳しくは「オンライン面会交流の実施時の注意点」をご覧ください。