
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
法定離婚事由とは、裁判で離婚が認められるために必要な法律上の理由をいいます。
夫婦の一方が離婚に応じない場合でも、民法770条に定められた「法定離婚事由」があると認められれば、裁判所の判決によって離婚の効力が生じます。具体的には、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、婚姻を継続し難い重大な事由という4つの項目が定められています。
実務では「婚姻を継続し難い重大な事由」が争点となるケースが多く、婚姻関係が破綻し、回復の見込みがないかどうかが判断基準となります。一方、性格の不一致など、法定離婚事由に該当しない場合は強制的な離婚が難しく、話し合いによる解決を目指すこととなります。また、婚姻破綻の原因となった配偶者(有責配偶者)側からの請求は厳しい制限が課されています。
今回は、法定離婚事由の意味や、民法770条が定める4つの離婚原因について、具体例や裁判例を交えながら弁護士が解説します。
法定離婚事由とは、夫婦の一方が離婚を望むものの他方が応じない場合に、裁判所が離婚を認めるための根拠となる民法上の事由です。具体的には、民法770条1項に定められた次の4つです。
裁判離婚を求める場合、これら4つの事由のいずれかに該当することが必要です。
協議離婚と調停離婚は、双方が納得すれば理由は問いません。一方、裁判離婚は強制的に離婚を成立させる効果があるため、民法の定める4つの理由がある場合に限られます。1号から3号の事由がある場合も、裁判所が「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるとき」は離婚の請求を棄却できる旨が規定されていますが、実務で用いられる事例はほとんどないのが実情です。

したがって、法定離婚事由が存在すれば、夫婦の一方が離婚を拒否していても、裁判所の判決によって離婚が成立します。逆に、その事由が自分側にあるときは、婚姻関係を破綻させた「有責配偶者」として、信義則上、離婚請求は認められないのが原則となります。
なお、2026年4月施行の民法改正により、かつて第4号に規定されていた「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(強度の精神病)」は削除されました。しかし、精神疾患で治療の見込みがない場合は、「婚姻を継続し難い事由」に該当する可能性があります。
「離婚までの流れ」の解説


次に、法定離婚事由に該当する4つの事情がどのようなものかを解説します。なお、裁判離婚が認められるには、これらの事由に該当する事情があることを、証拠で証明する必要があります。
不貞行為とは、夫婦の一方が、配偶者以外の者と性的関係を持つことを指します。
「不貞」は一般的な不倫・浮気とは区別され、性行為及びそれに準じる性的関係に限定されるのが通常であり、デートや食事、手をつなぐといった行為は該当しません。一方で、継続的な交際でなく、一回の性交渉でも不貞になります。当事者の自由な意思に基づく必要があるため、強制的な性交渉(いわゆるレイプ)やセクハラなどは該当しません。
不貞行為が認められるためには証拠が重要であり、不貞相手とのメールやLINE、写真や動画、探偵の調査報告書などが役に立ちます。
不貞行為を理由に離婚する場合、被った精神的苦痛について配偶者と不貞相手に慰謝料を請求できます。慰謝料の相場は100万円〜300万円程度が目安ですが、不貞の期間や回数、悪質性、責任の度合い、夫婦関係の状況などにより増減します。なお、夫婦関係が破綻した後に行われた行為は不貞に当たらず、慰謝料請求はできません。
悪意の遺棄とは、夫婦の一方が、正当な理由なく同居や扶助の義務を果たさないことを指します。
夫婦は互いに同居して生活を支え合う義務を負うところ、同義務を果たさないことは離婚の理由となります。悪意の遺棄に該当する具体例としては、次のようなものがあります。
ただし、出張や転勤、留学による別居、夫婦の合意による別居、DVやモラハラを理由とした別居などは正当な理由があり、悪意の遺棄には該当しません。悪意の遺棄にならないためには、別居後の継続的な生活費の支払い(婚姻費用)が重要となります。
「離婚前の別居の注意点」の解説

配偶者の生死が3年以上不明な状態の場合、法定離婚事由となります。
ただし、行方不明や連絡が取りにくい状態というだけでは認められず、生死が確認できず、住居や戸籍を調査したり捜索願を出したりといった努力を尽くすことが必要となります。なお、失踪宣告を行えば、死亡したことを法律上確定させることができます(普通失踪では生死不明から7年経過により、特別失踪では危難が去った後1年経過により、死亡したものとみなされます)。
婚姻を継続し難い重大な事由とは、具体的離婚事由(1号〜3号)に該当しない場合でも、夫婦間の婚姻関係が破綻し、その修復が著しく困難である場合のことを指します。実務では、1号から3号までの具体的離婚事由は4号の例示であると解され、この事由に該当するには、客観的に見て婚姻関係が破綻しているといえるほどの重大性が必要となります。
婚姻を継続し難い重大な事由に該当する具体例には、次のようなものがあります。
暴力(DV)や重大な侮辱(強度のモラハラなど)がある場合、婚姻を継続し難い重大な事由となります。暴力は心身に危険を及ぼすため、速やかに離婚すべき緊急性が高いです。
子供に対する虐待も、婚姻を継続し難い重大な事由に該当します。虐待には、身体的虐待だけでなく、性的虐待や心理的虐待、育児放棄(ネグレクト)も含みます。
婚姻費用(生活費)の不払い、浪費や借金など、家計を支える義務を怠った場合、婚姻関係を継続し難い重大な事由となります。ただし、単なる「金銭感覚の違い」という程度を超え、家計を破綻させるほどの重大なものに限られます。
長期間の別居は、婚姻を継続し難い重大な事由と認められます。
別居を理由とする離婚は、通常は3〜5年程度、有責配偶者の場合は8〜10年程度の期間を要すると考えるのが裁判実務です。夫婦には同居義務があるものの、夫婦としての実態がなく、客観的に破綻した状態であれば修復不能であると考えられます。

裁判においては、別居期間の長さ、婚姻継続意思の有無、回復の見込みの有無などが総合的に考慮されます。
「離婚成立に必要な別居期間」の解説

性格の不一致は「離婚したい理由」として最も相談例が多い理由ですが、法定離婚事由に該当するかどうかは厳しく判断されます。
結婚した以上、多少の不一致は夫婦で譲り合うべきです。そのため、裁判離婚を認めてもらうには、単に「性格が合わない」といった不満ではなく、愛情が完全に喪失されているなどの重大性を示さなければなりません。
親族との不和も、婚姻を継続し難い重大な事由となることがあります。ただし、話し合いで解消できないほどの重大性が必要であり、配偶者が自身の親族の問題点を把握し、解消に努めているかどうかが重要なポイントとなります。
配偶者が宗教に没頭し、家庭を顧みないとき、婚姻を継続し難い重大な事由に該当することがあります。例えば、多額の寄付、宗教活動を理由とする家事・育児の放棄、子供への信仰の押し付けといった行為を伴う場合、離婚の理由となります。
セックスレスや異常性癖、性的な欠陥といった性的な不一致は、婚姻を継続し難い重大な事由となることがあります。夫婦は貞操義務を負い、配偶者以外の者との性交渉は禁じられるため、正当な理由なく性交渉を拒否することは離婚の理由となります。
「セックスレスを理由とする離婚」の解説

犯罪行為や服役も、婚姻を継続し難い重大な事由となります。ただし、配偶者の名誉を傷つけるなど、家庭生活に重大な影響を与えるものでなければなりません。
精神疾患やアルコール依存症、薬物中毒などで正常な判断が難しいとき、婚姻を継続し難い重大な事由となります(旧4号「強度の精神病」も、法改正後はここに含まれます)。ただし、治療や看護を尽くしても夫婦生活が困難な程度である必要があります。
「アルコール依存症による離婚」の解説

婚姻関係の破綻について、主として責任のある配偶者を「有責配偶者」といいます。
有責配偶者からの離婚請求は、原則として信義誠実の原則に反し、権利の濫用として認められないと考えるのが裁判実務の原則です。そのため、自身が法定離婚事由に該当する場合には、離婚請求は認められません(例:不倫をした側からの離婚請求など)。
しかし、最高裁昭和62年9月2日判決以降、次の3つの要件を満たす場合に、有責配偶者からの離婚請求であっても認められる可能性があると考えられています。
別居期間については、当事者の年齢や同居期間と比べて判断されますが、目安としては8〜10年程度が必要と考えられています。また、未成熟の子がいる場合でも、最高裁平成6年2月8日判決では、子の監護・教育・福祉の状況などを総合考慮し、請求が信義則に反しないといえるときには離婚を認容できるとされており、未成熟の子の不存在という条件は必須ではありません。

なお、法定離婚事由に該当する行為を行った側の配偶者は、有責配偶者となって離婚請求が制限されるだけでなく、慰謝料請求を受けたり、周囲の信用を失ったりといった不利益を被るおそれもあります。
法定離婚事由に該当しないケースとその対処法についても解説します。
離婚裁判では、法定離婚事由がなければ離婚することができません。この場合、相手が離婚を拒否すれば、当面の間は婚姻関係が継続することとなります。なお、協議離婚であれば離婚理由を問わないため、法定離婚事由がなくても離婚できる可能性があります。
夫婦生活を営む上では、不平不満をなくすことはできません。次のような理由で離婚を求める人もいるものの、裁判離婚を成立させるのは難しいと考えるべきです。
最後に、法定離婚事由がない場合でも離婚する方法について解説しておきます。
法定離婚事由がなければ裁判離婚はできないものの、協議離婚や調停離婚は可能です。この場合、相手の同意を得るための注意点を理解しておきましょう。当事務所の相談例でも、必ずしも法定離婚事由がなくても離婚を実現できたケースは数多く、あきらめてはいけません。
感情的に対立してしまうと、協議離婚は難しいです。法定離婚事由が存在せず、裁判で強制的に離婚することは難しいケースでは、相手の立場を理解し、一定の譲歩や妥協を示して話し合うことが、早期の離婚を実現する近道となります。
不貞やDVのような明らかな法定離婚事由がなくても、複数の事情を積み重ねれば、夫婦関係の破綻を説得的に示せることもあります。この場合、その事情を立証する証拠を集めなければなりません。日常の小さな不満も、小まめに記録することを心がけましょう。
相手の同意を得やすくするには、離婚後の生活に配慮することも大切です。協議の中で、財産分与や養育費、慰謝料といった金銭的な条件について一定の譲歩を示し、離婚後の生活を安定させる努力をすることは、協議離婚を成立させやすくします。
離婚を切り出す際、感情的に責め立てると、反発を招いて話し合いが難航します。法定離婚事由がない場合こそ、受け入れてもらいやすい伝え方を心がけるべきです。例えば、「あなたが悪い」と相手を主語にせず、「私はこう感じている」と自分を主語にして話すことで、不要な対立を避けるのがおすすめです。
未成年の子供にとって両親の離婚は非常に大きな出来事です。事情を説明する際は、両親の離婚は決して子供のせいでないことを明確に伝え、安心させることが大切です。
可能な限り、夫婦で協力して説明し、離れて暮らすことになっても愛情は変わらないことを伝えましょう。子供の前で配偶者の悪口を言ったり、どちらか一方が悪いという説明をしたりすることは避けるべきです。
最後に、協議離婚が成立し、財産分与や養育費、慰謝料などの金銭的な条件について合意できた場合は、その内容を離婚協議書にまとめ、公正証書として作成することが大切です。口約束だけでは、将来支払いが滞った際にトラブルになってしまいます。
「離婚に強い弁護士とは」の解説


今回は、法定離婚事由について、どのような事情が該当するかを解説しました。
相手が離婚を拒否する場合でも、法定離婚事由があれば、裁判で強制的に離婚の効果を生じさせることができます。その分、該当するかどうかは厳格に判断され、民法770条では、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、婚姻を継続し難い重大な事由が列挙されています。
特に「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが争いになることが多く、個別の事案ごとに、婚姻関係の実態や関係修復の可能性が検討されます。裁判所の審理では証拠が重視されるため、離婚を希望する側では「破綻」を証明する証拠を収集しておくべきです。
裁判にまで発展するような離婚問題は、感情的な対立が大きく、紛争が深刻化することも少なくありません。自分で進めるのが難しい場合は、弁護士のサポートを受けるのが有益です。