離婚調停では、調停委員が中立的な立場で、夫婦の話し合いをサポートします。しかし、調停が進む中で、相手の味方をしているように思えて不満が募る場面もよくあります。
調停委員が相手の肩を持つ発言をした
調停委員は自分の主張を無視している
離婚調停はあくまで話し合いの手続きですが、調停委員の心証が結果を大きく左右します。調停委員は中立かつ公平な立場が原則で、一方に肩入れすることはないものの、人間ですから、共感したり好意を抱いたり、逆に嫌悪したりすることもあります。したがって、好印象を与えるに越したことはなく、できれば少しでも味方してもらえるよう、対策を講じるべきです。
今回は、離婚調停における調停委員の役割と、味方につけるためのポイント、そして、逆に相手の味方ばかりする調停委員の中立・公平を確保するための対処法を解説します。
- 離婚調停で調停委員を味方につけるには、冷静で丁寧に対応して信頼を得る
- 具体的な証拠を用いて簡潔に伝えることで、説得力を高めることができる
- 調停委員の中立を保ち、問題点を指摘するには弁護士のサポートが有効
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ /
離婚調停における調停委員の役割
調停委員は、離婚調停において裁判官と共に調停手続を進行します。離婚調停では、男女1名ずつの調停委員が担当し、話し合いによる円満解決を目指すために以下のサポートをします。
- 話し合いの進行をサポートする
調停委員が夫婦それぞれの主張を聞き、感情が高ぶりがちな離婚問題について、冷静に第三者の視点からアドバイスや提案をして、話し合いを促進する役割を果たします。 - 中立的な意見を提供する
調停委員は中立性を保つことが求められます。一方の立場に偏ることなく、夫婦双方を尊重しながら、中立的な意見を提供します。 - 公平な解決案を提案する
調停委員は、単なる話の聞き役ではなく、具体的な解決策を提案することもあります。このとき、裁判例や法律の観点を踏まえた公平な提案でなければなりません。
このように調停委員の役割は中立・公平であり、夫婦いずれにも偏らずに振る舞います。夫または妻のいずれの味方でもなく、男女2人の委員がいますが、男性の味方、女性の味方というわけでもありません。話し合いによる解決を目指す調停では、調停委員も「真実を明らかにする」という姿勢ではなく、関係の調整に徹します。
しかし、調停委員の中立・公平が疑われ、一方の味方をしているのではないかと疑わしいケースがあります。調停委員は、裁判官と一緒に調停手続きを進める重要な役割なので、その心証は、事実上、調停結果に大きな影響を与えます。
「離婚調停の流れと進め方」の解説
調停委員を味方につけるために重要なポイント
次に、離婚調停で、調停委員を味方につけるための重要なポイントを解説します。
離婚調停では、相手に直接意見を伝えたり説得したりすることはできず、全て調停委員を介して行います。離婚調停における調停委員の役割は、非常に重要であり、味方につける努力をすることが、結果的に有利な解決に繋がります。
冷静で丁寧な態度を保つ
離婚調停の場では、しばしば感情的になる方もいます。しかし、調停委員の信頼を勝ち取り、味方してもらうには、冷静で丁寧な態度が重要です。好印象を抱いてもらうため、常識的に礼儀をわきまえ、誠実に振る舞い、身だしなみやマナーを守るべきです。
感情的な発言や攻撃的な態度は、委員から「解決に向けた協力的な姿勢が見られない」と判断されてしまいます。調停委員は中立的な立場を保つ必要があるので、相手を一方的に非難し、現実的でない要求を突きつけると、かえって距離を置かれる原因となってしまいます。過剰な非難は「自己中心的」と受け取られ、悪いイメージを持たれかねません。
多様な価値観を柔軟に受け入れる
あなたの立場からは「調停委員が中立・公平を損なっている」という不満があったとしても、委員にも一定の考えがあることでしょう。離婚調停は話し合いの場であり、相手のあることなので、あなたの味方ばかりするわけにもいきません。
相手方当事者や調停委員の見解がどれほど一方的に見えたとしても、否定ばかりするのではなく「一つの意見として理解し、尊重する」といった態度が適切です。その上で「しかし、自分の考えは異なる」と冷静に伝え、柔軟性を見せておきましょう。全く譲歩のない姿勢だと、委員からも協力を得られなくなってしまいます。
調停委員に協力的な姿勢を示す
調停は双方の歩み寄りによって成り立つため、調停委員に協力的な姿勢を見せることも重要です。調停委員は、離婚調停における解決を支援する立場にあります。そのため、自分が解決に向けた努力を惜しんでいないことを伝えることが、信頼を勝ち取るポイントとなります。
主張をしっかり整理し、譲歩できる点、妥協できない点をはっきり説明するのが効果的です。調停委員の質問には正面から、明確に回答することも重要です。事実を曖昧にしたり、不利なことを隠そうとしたりする不誠実な態度では、調停委員を味方につけることはできません。
「離婚調停を申し立てられたら?」の解説
調停委員が相手の味方をしていると感じたときの対策
次に、調停委員が相手の味方をしていると感じたときの対処法を解説します。
離婚調停では、調停委員が中立・公平であるべきですが、話し合いが進む中で「相手の意見ばかり尊重されている」「中立・公平が損なわれている」と感じる場面もあります。このような場合こそ、特に冷静に対処しなければなりません。
感情的に調停委員と対立しない
調停委員が相手の意見を優先しているように感じても、感情的な反応は避けるべきです。面と向かって調停委員と対立するのはおすすめできません。
調停委員の中には、当事者の意見を頭ごなしに否定し、やる気のない態度を取ったり馬鹿にしたりする人も残念ながら存在します。それでもなお、感情的に非難すれば、「冷静でない」「解決の意思が薄い」と見られ、心証を悪化させます。調停委員があなたに嫌悪感を抱いたことが原因だとしても、喧嘩を売って対立を深めては、調停手続が円滑に進まず、かえって逆効果です。
対策としては、調停委員の意見や考えに納得できないときには、冷静に、拒絶の意思表示を示すのみで十分です。
中立的に判断するよう指摘する
中立・公平が疑わしいと感じるとき、率直に調停委員に伝え、改善を求めるのが有効です。感情的になって批判するのでなければ、委員の問題点を指摘するのも失礼ではありません。離婚問題は人生の一大事ですから、納得のいかない点はきちんと正しておきましょう。
調停委員に中立性を保つよう促す場合は、攻撃的な表現は避けて、問題点を具体的に指摘することが重要です。調停委員に対する人格批判や、態度や口調、言い方といった個人の性格への非難であると取られないよう、伝え方に注意してください。
一例として、次の伝え方を参考にしてみてください。
- 「お話の進め方について、少し偏りがあるように感じています」
- 「双方の主張をもう少し均等に聞いていただけると助かります」
家庭裁判所に相談する
離婚調停の場で指摘をしても、調停委員に対する不満が解消されない場合、家庭裁判所に調停の進め方について相談することも可能です。家庭裁判所は、調停が中立かつ公正に進むよう管理する責任を負っているので、問題点を具体的に伝えれば、手続きの見直しを求めることができます。
離婚調停を主導する調停委員会は、2名の調停委員と1名の裁判官で構成されます。そのため、どうしても調停委員の進め方に納得いかないときは、裁判官を呼び出し、相談する手も有効です。
弁護士を調停に同行させる
弁護士に離婚調停の対応を依頼し、調停期日に同席してもらうことで、調停委員を牽制し、中立・公平な立場を保つよう働きかけを行います。多くの離婚調停を経験した弁護士なら、調停委員の問題点を指摘し、改善を促すことができます。
残念ながら、相手に弁護士が付き、あなたの側は本人のみだと、委員の中には弁護士の言い分に強く影響される人もいます。弁護士が付いていないと防御ができず、中立的ではない調停委員の発言に苦慮することでしょう。一方のみに弁護士が付いた調停では「ゴネ得」「声の大きい方が勝つ」といった現状があることは否めません。
問題点が明らかになったときは、こちらも弁護士を付けることで、調停委員の態度が激変したと感じることができるでしょう。弁護士によるチェックを効かせることで、調停委員も自身の役割を認識し、中立・公平を保つようになります。
「離婚調停を弁護士に依頼するメリット」の解説
調停を打ち切る選択肢も検討する
公平に進まないと判断した場合、無理に調停を続ける必要はありません。離婚調停は話し合いの場ですから、納得がいかないのに合意する必要もありません。調停委員が「早く調停を成立させたい」と思うあまりに中立・公平を欠くとき、流されて不利な合意をしてはいけません。
問題のある委員に担当されてしまったとき、調停を申し立てた側なら、一旦取り下げて、時間をおいて再度申し立てる方法もあります。また、離婚を拒否すれば調停は不成立となり、終了します。その後は、離婚訴訟で争うかどうかを選択することとなりますが、離婚訴訟は裁判官が直接判断を下すので、中立性の高い審理を受けることができます。
「調停不成立とその後の流れ」の解説
相手の味方をする調停委員の発言の原因を理解する
次に、離婚調停における調停委員の言動が、相手の味方をしているように感じるとき、その真意を理解し、原因を探ることが重要です。非常に問題ある発言であるように思えても、実際には様々な意図があって行われていることもあります。
委員の役割は「強制」ではなく「調整」
調停は、話し合いや意見調整を目的とし、法的な判断を下す訴訟とは異なります。そのため、夫婦いずれも、解決を強制されることはありません。不合理な点や嘘、誤りがあっても、調停委員が正すこともありません。委員が当事者を否定してしまうと調停の進行が難しくなるので、あえて中立を保とうとするのです。
このような委員の態度が、相手の主張や見解を支持し、味方しているように見えることがありますが、あくまで調停委員の役割に基づくもので、一方に有利な対応をしたわけではありません。相手の主張に加担しているように感じた際は、「主張が正しいという意味ではないですよね?」「その意見は強制ではありませんね」と確認し、調停委員の中立性を保つことができます。
調停成立のために中立性を保つ努力
調停委員の主な役割は、互いの意見や主張を伝達することですが、ただ伝えるだけでなく、調停成立に向けた工夫を行います。例えば、双方に問題や不利な点を指摘し、譲歩を引き出しやすくする方法が典型です。この調整の過程で、あたかも相手の味方であるかのように振る舞うことがありますが、調整の一環として夫婦いずれにも働きかけている可能性が高いことを理解すべきです。
例えば、譲歩を引き出すため、離婚を拒否する側に「相手は離婚の意思が固い」とか、慰謝料を拒否する側に「裁判になれば一定の支払いは避けられない」と伝えることがありますが、いずれも調停成立を目的とした働きかけに過ぎず、正解とは限りません。調停委員の考えに納得できないときは、拒否の意思を明確に示すことが大切です。
法律論でなく倫理観や常識に基づく発言もある
調停委員は、必ずしも法律の専門家ではありません。離婚調停でも、法律のみに基づいて発言するのではなく、常識や経験に基づいて問題解決に導こうする委員もいます。しかし、倫理や道徳、価値観は人によって様々で、法的に正しい解決ではないこともあります。
調停委員の考えに納得できないときや、法律や裁判例に従って解決した方が有利であるときは、根拠を示して説得的に説明するのが有効です。法律や裁判例を示して調停委員を説得する方法は、離婚問題に精通した弁護士に依頼して代わりに行ってもらうと、より一層効果的です。
「離婚に強い弁護士とは」の解説
法的な相場が不利な場合の対応
調停委員が中立・公平でないと感じるとき、そもそも法的な相場があなたにとって不利である場合があります。つまり、委員は相手の肩を持っていたわけではなく、中立・公平な観点から発言しても、結果としてあなたの希望には沿わないだけであるということです。
例えば、婚姻費用や養育費に「養育費・婚姻費用算定表」に基づく一定の基準が存在すること、有責配偶者の離婚請求は難しいこと、というように、裁判実務で広く受け入れられたルールが存在する場合、これらに基づいた調停委員の発言が自分に不利だとしても、それは決して相手の味方だからではなく、中立性を欠いているわけでもありません。
重要なのは、正しい相場感を理解することです。調停委員の発言が必ずしも正しくない場合、「その解決には同意できない」と明確に主張し、裁判への移行も辞さない姿勢を示すのが効果的です。
「離婚までの流れと離婚の種類」の解説
離婚調停の調停委員に関するよくある質問
最後に、離婚調停の調停委員の役割について、よくある質問に回答します。
調停委員に不満があるときどうすべき?
調停委員は中立であり、相手の味方でない反面、あなたの味方でもありません。そのため、思い通りにならず不満や苛立ちを感じることも珍しくありません。しかし、感情をコントロールして冷静に対応しなければ、離婚調停で不利になってしまいます。
一方に肩入れしているかに見えても、調停成立を目指す努力の一環であることもあります。「どのような意図の発言ですか?」と確認し、誤解を防ぐことが大切です。
問題ある調停委員を訴えることは可能?
離婚調停における調停委員は、最高裁判所に任命されて職務を遂行します。そのため、問題あるように思える言動があっても、調停委員個人を訴えるのは困難です。調停委員の職務の範囲内の行為なら、たとえ不快に感じても、法的責任を問うことはできません。
調停委員が明らかに不適切な言動や嫌がらせをしたり、公平性を損なったりするときは、裁判所に報告して調査を求めることができます。
調停委員に苦情を言う方法は?
調停委員の対応に問題があるときは、調停委員会を構成する裁判官に申し出る方法が有効です。不適切と感じる点を、具体的に示して指摘してください。調停委員に抗議するときは、感情的な対立を避けるために、弁護士を通じて苦情を伝えるのがお勧めです。
結局、離婚調停に勝つにはどうすればよい?
離婚調停は勝敗を付ける場ではなく、双方の納得できる合意を目指すものです。良い解決を得るには、調停委員を味方につけるのも一つの方策ですが、それだけで解決するわけではありません。調停委員があなたの主張に理解を示し、共感したとしても、相手との妥協点を探れなければ調停を成立させることはできません。
結局は、必要な証拠や書類を揃え、説得的に主張を伝えることが大切で、そのためには弁護士に相談して法的なサポートを受けるのが有効です。
まとめ
今回は、離婚調停における調停委員の中立・公平について解説しました。
離婚調停において、調停委員が中立的な立場を維持すべきですが、時に「相手の味方をしているのではないか」と感じられることもあります。中立・公平を損ない、相手の肩を持っているように感じるとしても、その原因をよく理解し、適切に対処していくことが大切です。少なくとも、感情的になって調停委員と対立することは避け、冷静な対応を心がけてください。
調停成立のため、あえて不利な点を伝えることもありますが、役割として行うに過ぎず、相手の味方なわけではありません。ただ、残念ながら資質を疑わざるを得ない調停委員も存在し、その場合は、家庭裁判所や弁護士に相談するなどして、調停に影響しないよう対策を講じるべきです。
できるだけ調停委員を味方につけるためには、弁護士のサポートが役立ちます。離婚調停を依頼することで、調停に同行し、調停委員と対話をする手助けをすることができます。
- 離婚調停で調停委員を味方につけるには、冷静で丁寧に対応して信頼を得る
- 具体的な証拠を用いて簡潔に伝えることで、説得力を高めることができる
- 調停委員の中立を保ち、問題点を指摘するには弁護士のサポートが有効
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ /
離婚調停を有利に進めるには、財産分与や親権、養育費、不貞行為の慰謝料請求など、状況に応じた法律知識が必要です。お悩みの状況にあわせて、下記の解説もぜひ参考にしてください。
複数の解説を読むことで、幅広い視点から問題を整理し、適切な解決策を見つける一助となります。