貞操権とは、「貞操」を守る権利です。わかりやすく説明すると、性交渉をはじめとする性的関係を結ぶ(もしくは結ばない)自由を守る権利のことです。
人は誰しも、「誰と性的関係を結ぶか」を自由に決められますから、貞操権は、結婚している夫婦でなくても当然に有しています。そのため、意に反する性的関係を結ばざるを得ないこととなってしまったとき、貞操権の侵害にあたります。例えば、既婚男性が「未婚」といつわって女性と肉体関係(性交渉)をもつケースで、嘘をついて性交渉することで、被害者となった女性の自由な判断を奪うことになるため、貞操権侵害になります。
貞操権を侵害されたとき、被害者は加害者に対して慰謝料を請求できます。貞操権侵害の慰謝料の相場は、50万円〜200万円程度が目安です。より高額の慰謝料を請求するためには、貞操権侵害となる行為の悪質性を主張立証することが重要です。
今回の解説では、貞操権侵害となりうるケースと慰謝料の相場、増額方法などを解説します。
- 貞操権侵害とは、性的な自己決定権を侵害されること
- 貞操権侵害されたとき、慰謝料請求でき、相場は50万円〜200万円が目安
- 貞操権侵害の慰謝料を増額するためには、悪質性を証明する証拠を集めることが大切
なお、婚約と不倫・浮気について深く知りたい方は、次のまとめ解説をご覧ください。
貞操権侵害とは
貞操権とは、性的な自己決定をする自由のことです。
わかりやすくいうと、「誰と性的な関係をもつか(もしくは、もたないか)」を、完全に自由な意思で決められる権利が、貞操権です。人は誰しも、誰とどのような性的関係を持つか、誰からも強要されずに決める権利があります。
暴力的に、無理やり、性的関係を強要されたとき、不同意わいせつ罪(刑法176条)、不同意性交等罪(刑法177条)などの犯罪にあたりますが、このような場合だけでなく、だまされて、気づかないうちに、性的な自己決定が奪われてしまっていることがあります。無理やりに性的関係を強要されたのでなくても、性的自由という重要な権利について、だまざれて正しい判断をできなかったことが、権利侵害となるわけです。
つまり、貞操権侵害といえるためには、
- 「だまされて自由な判断ができなかったこと」
- 「肉体関係をもったこと」
という2つの要件が必要となります。そして、貞操権を侵害されたときは、被害者は加害者に対して、その権利侵害によって負った精神的苦痛について慰謝料請求することができます(民法709条、民法710条)。
貞操権侵害となる典型的なケースには、次のような法律相談があります。
なお、理論的には、男女どちらも貞操権侵害の被害者となりますが、多くのケースでは、女性側が被害者となります。
【ケース1】既婚者なのを隠した
マッチングアプリで知り合い、「独身だ」と言われたから真剣交際をしていました。もちろん、真剣交際だから性交渉をしました。
しかし、後から実は既婚者だったことがわかりました。独身だと思ったからこそ肉体関係をもったのであり、既婚者だと知っていれば性的関係をゆるすことはありませんでした。だまされて、貞操権を侵害されてしまいました。
貞操権侵害の典型例の1つ目は、交際相手が既婚者なのを隠していたケースです。
結婚前提の真剣交際を望む女性は、「性的関係を結ぶか」を決断するにあたって「結婚していないこと」をとても重要な判断材料としています。そのため、悪質な男性のなかには、将来の結婚を約束して、性的関係を結ぶと者もいます。
「結婚しているかどうか」という点に嘘をつき、性的関係を持つことは、女性側の自由な意思決定を阻害することを意味するため、貞操権侵害にあたります。
「独身者だ」という嘘をついたケースだけでなく、「既婚者なのをあえて言わないでいた」というケースもあります。しかし「隠していた」に過ぎないケースでも、次のように誤解を生む行為があったときは、貞操権の侵害があったといえます。
- 結婚指輪をあえて外してデートしていた
- セカンドハウスを借りて、一人暮らしの独身者を装っていた
- 独身者限定のお見合いパーティに参加していた
- 結婚していないことを表示してマッチングアプリで出会っていた
【ケース2】離婚予定だと嘘をついた
結婚相談所が主催しているパーティで知り合いましたが、交際を開始したあとで実は奥さんがいると知りました。
問い詰めたところ「妻とは離婚予定だ」、「君と結婚したい」と説得され、肉体関係を持つこととなりましたが、離婚の話はまったく進まず、私のほうが待ちきれずに別れてしまいました。
貞操権侵害の典型例の2つ目は、既婚者なのは明かしているが、交際相手が「妻と離婚予定だ」と嘘をついていたケースです。
1つ目のケースとは違って、交際相手が既婚者だとは知っていたわけですから、被害者にも一定の非があります。また、既婚者と肉体関係(性交渉)を持ったことについて不貞行為にあたるリスクもあり、既婚者の配偶者から逆に慰謝料請求されてしまうおそれがあります。
とはいえ、「妻とはうまくいっていないし離婚予定だと聞いていたから体を許したのに」という事情があるとき、「離婚予定だ」と嘘をついて、自由な判断をできなくさせてしまったことについて、貞操権侵害となります。
貞操権侵害の慰謝料の相場と、増額するための事情
貞操権侵害をされてしまったときの慰謝料の相場と、増額するために主張立証しておきたい事情について解説します。
精神的苦痛は目に見えないものなので、慰謝料には明確な基準があるわけではありません。相場はあくまでも目安に過ぎず、実際には、個別の事情を総合的に考慮して、慰謝料額が判断されます。
貞操権侵害の慰謝料の相場は「50万円〜200万円」
貞操権の侵害について慰謝料請求するとき、その慰謝料の相場は50万円〜200万円が目安となります。
ただし、後ほど紹介する裁判例でもわかるとおり、事案によっては、この相場よりも高額な慰謝料請求が認められているケースもあります。そのため、次に、慰謝料額をより増額するための事情について理解しておいてください。
被害者と加害者の年齢が離れている
被害者と加害者の年齢が離れていればいるほど、貞操権侵害の慰謝料額が高額になる傾向にあります。
貞操権侵害は、加害者が被害者をだまして性的関係を結ぶところ、被害者がより低年齢で、経験が未熟であるほどだましやすく、悪質性が高いと考えられるからです。
同じく、加害者側のほうが年齢が上であったり、社会的に地位が高かったりといった事情もまた、貞操権侵害の悪質性を上げ、慰謝料を増額する重要な事由となります。
だまされて交際した期間が長い
だまされて交際していた期間が長いほど、貞操権侵害についてより高額な慰謝料請求をすることが可能です。だまされていた期間が長いほど、嘘が発覚したときの精神的苦痛が大きいからです。
性交渉の回数・頻度が多い
貞操権侵害により、その期間中に行った性交渉の回数、頻度が多ければ多いほど、高額な慰謝料を請求することができます。
その性交渉が、強要されてしたものであったり、暴力や強迫をともなうものであったようなとき、より悪質性が増します。
交際中に婚約していた
結婚を前提とした真剣交際だったはずがだまされたという事情は、貞操権侵害の悪質性を増し、高額な慰謝料請求をすることができる事情となります。結婚前提のとき、少なくとも相手が既婚者だと知っていれば、性交渉に応じることはありえませんから、だまして貞操権を侵害したことが明らかです。
結婚を前提とした真剣交際の最たる例が、婚約まで成立しているケースです。結婚の約束までしていたときには、慰謝料請求はより高額化します。
妊娠していた
貞操権を侵害され、だまされて結婚を前提に交際しているとき、交際中に妊娠してしまっていることがあります。
将来の結婚を約束し、妊娠・出産してしまっていたり、中絶してしまっていたりするとき、精神的苦痛が増大し、慰謝料を増額する事情となります。
結婚前提の場所で出会った
結婚を前提とした出会いの場所で知り合い、交際を開始したという事情は、貞操権侵害についてより高額な慰謝料請求を可能とする事情の1つです。
例えば、結婚相談所、婚活サイト、婚活アプリ、婚活パーティ、お見合いなどです。
これらの場での出会いはいずれも、結婚を前提とした人しかいないことを前提とし、そこで出会って交際を開始したのであれば、少なくとも既婚者ではないことを意味しています。
結婚相談所や婚活パーティの中には、「独身者限定」とするために、行政機関の発行する独身証明書の提出を義務付け、既婚者がまぎれ込まないよう配慮をしている団体もあります。
独身証明書を偽造するなどの手口で、婚活を装って交際を開始したときは、さらに悪質性が増すこととなり、慰謝料を増額する重要な事情となります。
既婚者だと知ってすぐ別れた
「既婚者だと知ってからはすぐ別れた」という事情があるほど、貞操権侵害についてより高額な慰謝料を請求できます。
「既婚者なのに、だまして性的関係を持った」といって貞操権侵害の責任追及をしたいのであれば、既婚者だと明らかになったらすぐ別れるのが自然です。このように主張しながら、既婚者だとわかった後も交際を続けていると、「そもそもだまされていないのではないか」、「既婚者だと知っていても性的関係を持ったのではないか」と考えられ、慰謝料が低額になったり、認められなくなるおそれがあります。
貞操権侵害を理由に慰謝料請求するときは、だまされたことを知ったらただちに交際終了を通知し、その後は直接の連絡をとらず、弁護士に依頼して慰謝料請求するのがよいでしょう。
別れ際が不誠実だった
貞操権を侵害した加害者が、交際終了のタイミングで不誠実な対応をした事実もまた、貞操権侵害の慰謝料をより高額にする事情の1つとなります。
だまして貞操権を侵害したにもかかわらず、反省や謝罪がないことは不誠実な態度といえます。
例えば、交際の終了時に、加害者から心ない一言があったときや、罵詈雑言、誹謗中傷、リベンジポルノなどの行為があると、より高額の慰謝料を請求することができます。結婚する気もないのに婚約をして肉体関係を持ち、突然音信不通になるといった対応も不誠実極まりなく、慰謝料請求の対象となります。
被害者の責任はない
貞操権を侵害された被害者側にも落ち度があると、慰謝料が減額されてしまうおそれがあります。
加害者の嘘をつく行為が巧妙であればあるほど、また、お酒を利用した、薬を利用したなどの悪質な点があるほど、被害者に責任はないといえ、慰謝料は高額になります。これに対して、結婚指輪をしていた、妻へのプレゼントを一緒に選んだなど、注意していれば既婚者だと気づけたはずだという場合には、被害者にも一定の落ち度があります。
当然気付いてもおかしくない事情があったとか、実は薄々気づいていたというとき、貞操権侵害の慰謝料請求ができないことはもちろん、相手の配偶者から慰謝料請求を受けてしまうおそれもあります。
貞操権侵害で慰謝料請求が認められた裁判例
貞操権侵害の慰謝料の相場について、おおよそ50万円〜200万円程度が目安だと解説しましたが、実際には、具体的な事情に応じて、ケースバイケースの検討が必要です。個別の事情に応じて検討するにあたっては、裁判例でどのような事情をもとに、どの程度の慰謝料が認められているかを知ることが参考になります。
そこで次に、貞操権侵害による慰謝料請求が認められた裁判例について解説していきます。
慰謝料500万円を認めた裁判例
事案 | 被告が、既婚者なのを隠して性的な関係をともなう交際を長期間継続していた事案 |
判断 | 風俗店で知り合って交際を開始し、誕生日を刻印した指輪をプレゼントしたり、妊娠中絶を経験したりした後、さらに妊娠し、出産したこと、その後に連絡が途絶えたことから戸籍を取り寄せたところ、妻子がいると知ったことなどの事実を認定し、550万円の支払いを命じた。 |
この裁判例(東京地裁平成19年8月29日判決)では、原告が既婚者なのを告げずに、将来の結婚を約束した交際を続け、2度の妊娠中絶、1人の子の出産し、認知請求訴訟を起こされてはじめて認知したこと、20代後半から30代にかけての女性として貴重な時間を被告のためにささげたことといった事情を考慮して、500万円という相場よりも高額な慰謝料を認めました。
慰謝料100万円を認めた裁判例
事案 | 妻と別居中に、既婚者なのを告げずに職場の未婚女性に交際を申し込み、妻との夫婦関係が修復した後もそれを隠して性的関係を続けた事案 |
判断 | 既婚者だと告げずに交際を続け、独身であると誤信するような不誠実な態度をとりつづけたことなどを認定し、慰謝料100万円の支払いを命じた。 |
この裁判例(東京地裁平成27年1月7日判決)では、被害者が別れ話をしていたにもかかわらず、あたかも将来の生活を考えているかのようなメールを送って心を引き留め、妻からのメールを妹からのものであると嘘をつくなど、交際関係を継続させるために不誠実な態度をとったことなどが考慮され、精神的苦痛に対する慰謝料として100万円が認められました。
慰謝料70万円を認めた裁判例
事案 | インターネットの婚活サイトで独身(未婚)として会員登録して知り合い、多数回の性交をともなう交際をしていたところ、クラミジアをうつされた上に交際終了後に既婚者であることが判明した事案 |
判断 | 原告が330万円の貞操権侵害による慰謝料請求を行ったもののうち、77万円の支払いを命じた。 |
この裁判例(東京地裁平成28年6月29日判決)では、独身だという嘘をついてだましていたという事情があるものの、アプリを利用するにあたっては注意をすべき相応の責任があるということを理由として、慰謝料70万円(そのうち、性病をうつしたことの責任が30万円)という低額が認められるにとどまりました。
貞操権侵害の慰謝料を請求する方法
次に、貞操権侵害の慰謝料を請求する方法について、弁護士が解説します。
貞操権を侵害されてしまったとき、慰謝料請求をする方法には、任意交渉による方法と、訴訟による方法とがあります。いずれの場合にも、有利に進めていくためには証拠を集めておくなどの準備が不可欠です。
証拠の収集
貞操権侵害の慰謝料請求で、より高額の慰謝料を支払ってもらうためには、訴訟においても慰謝料が認められる程度の証拠をあらかじめ収集しておかなければなりません。
貞操権侵害の慰謝料請求をするためには、「だまされて自由な判断ができなかったこと」、「肉体関係をもったこと」という2つの要件について、次の証拠が必要となります。
相手が独身だ(もしくは、離婚予定だ)と嘘をついた証拠
- 出会いのきっかけが、結婚前提であったことを示す証拠
(例)婚活パーティの案内文、婚活アプリのプロフィールの記載、結婚相談所の釣り書き - 真剣交際をにおわせるやりとりの証拠
(例)LINEやメールで「独身である」、「既婚者ではない」、「妻とは離婚予定」などと発言した履歴 - 当時のやり取りや気持ちを記録した日記
- 貞操権を侵害した者との会話の録音データ
結婚前提の真剣交際だったことを示す証拠
- 結婚を前提とした場所での出会いであることを示す証拠
(例)婚活パーティへの参加証、婚活アプリでのやりとり、結婚相談所の登録情報 - 結婚を前提とした証拠、婚約が成立している証拠
(例)結婚を前提とした高価なプレゼント、結婚指輪、結納、両親への挨拶、両家顔合わせ、結婚相手として友人への紹介 - 結婚を前提とした出費をしている証拠
(例)結婚式場、ハネムーンの予約、新居の準備(賃貸借契約書、敷金・礼金などの初期費用の支払い)
肉体関係があったことを示す証拠
- 貞操権侵害の被害者自身の証言、当時の日記
- 2人で宿泊したことを示す証拠
(例)旅行の記録、ホテルの予約履歴、旅行先での写真など - 妊娠したことを示す証拠
(例)エコー写真、診断書、通院履歴、カルテ
精神的苦痛の大きさを示す証拠
- 精神的苦痛によりうつ病、適応障害、パニック障害などの精神疾患(メンタルヘルス)にり患してしまったことを示す診断書
交渉で慰謝料請求する方法
貞操権侵害の慰謝料請求をするときは、まずは、加害者と交渉をすることで行います。交渉は、内容証明を送ることでスタートします。
配達証明付き内容証明郵便は、請求書の送付日、書面の内容を、郵便局が記録化してくれる郵便形式です。加えて、弁護士名義で送付することにより、大きなプレッシャーを与えることができます。
婚活パーティやマッチングアプリなどで出会った人が加害者のとき、氏名や住所、仕事などについても嘘をつかれているおそれがあります。
慰謝料請求するための内容証明を確実に送付するために、弁護士に依頼することにより、職務上請求によって住民票や戸籍を入手したり、弁護士会照会の方法によって携帯電話番号などから個人情報を入手したりできます。
訴訟で慰謝料請求する方法
貞操権侵害の慰謝料請求について交渉によっては解決できないとき、訴訟に移行することとなります。
交渉は、あくまでも話し合いですから、加害者側が任意に払ってくれない限り慰謝料をもらうことはできません。これに対して、訴訟で勝訴すれば、法的な強制力があり、相手が慰謝料を払ってくれないときには強制執行(財産の差押え)ができます。
判決が下されてもなお慰謝料を支払ってこない相手に対しては、強制執行をすることで、預貯金や不動産、給与などの差押えができます。貞操権侵害をするような人にとって、給与を差押えられて職場に知られてしまうことはどうしても避けたいはずで、大きなプレッシャーとなります。
訴訟を行うには、十分な証拠収集が必要であり、かつ、法律知識や裁判所実務を熟知する必要があります。あわせて、長い期間や多くの手間がかかることとなります。そのため、訴訟は最終手段とし、どのタイミングで交渉から訴訟に移行するかは、慎重に判断する必要があります。
貞操権侵害の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
最後に、貞操権侵害の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリットについてまとめておきます。
貞操権侵害の程度が悪質であり、違法性が強度な場合、より高額な慰謝料を請求するためにも弁護士の法的サポートが有益です。特に、相手方が違法性を否定する可能性があり、争いが激化するおそれの強い場合、お早めにご相談ください。
【メリット1】相手との直接のやりとりを回避できる
弁護士に依頼するメリットの1つ目は、相手との直接のやりとりを回避できる点です。
真剣交際をしていたはずが、実は既婚者だったと知ったとき、その悲しみは計り知れません。そして、そのようなだましてきた相手とは、もう連絡をとりたくないと思うのは当然です。
貞操権侵害の慰謝料請求をするにあたって、相手との交渉が必要となりますし、事実の認識が違っていたり、慰謝料額に争いがあったりするとき、交渉の長期化が予想されます。加害者とやりとりをすることをやめ、これ以上の精神的苦痛を回避するためにも、交渉窓口を弁護士としてもらい、面倒で不快なやりとりを避けることができます。
【メリット2】法律知識に基づくサポート
弁護士に依頼するメリットの2つ目は、法律知識に基づくサポートを受けられる点です。
貞操権侵害は、法的には不法行為(民法709条)にあたりますが、慰謝料を請求するためには、ある程度の違法性を有していなければなりません。
貞操権侵害をしてしまった側にとっても言い分や反論があることがあり、当事者間で話をしても、話し合いでは解決できないことも少なくありません。嘘をついて性交渉するような人の言い分は信用ならないことをありますし、いかにも屁理屈にしか聞こえないことも多いのではないでしょうか。
弁護士に相談し、交渉を代理してもらうことにより、このような相手方の一方的な理屈にだまされつづけることなく、法律知識に基づいた適切な解決となるようサポートを受けられます。
【メリット3】交際相手の配偶者からの不倫慰謝料請求に対応できる
弁護士に依頼するメリットの3つ目は、交際相手の配偶者からの不倫慰謝料請求に対応できる点です。
交際相手が既婚者であることは知っていたが「妻とは離婚予定だ」と嘘をつかれていたケースでは、既婚者であることを知っていて肉体関係を持ってしまったあなたにも責められるべき点があります。
交際相手の夫婦関係を十分に調査した上でなければ、「不貞」にあたるおそれがあります。「不貞」は、夫婦間の貞操権を侵害しています。法的には「不貞」の責任は、夫婦関係が「破綻」していれば負うことはありませんが、法律用語にいう「破綻」はハードルがかなり高く、少なくとも同居をしているなどの一定の夫婦生活が存在する場合には、裁判所でもなかなな認めてもらえません。
交際相手が嘘をついていたとはいえ、既婚者なのを知って関係を持ったケースでは、その配偶者から不倫を理由とする慰謝料請求を受けるおそれがあります。ただ、この場合は、自身がだまされたことを主張し、慰謝料の減額交渉をすべきです。貞操権侵害の慰謝料請求を弁護士に依頼することで、万が一、不倫慰謝料請求を受けてしまった場合にも、迅速な対応が可能となります。
まとめ
今回は、意に反する肉体関係(性交渉)をしてしまい、貞操権を侵害されてしまったとき知っておきたい、慰謝料の相場、慰謝料請求の方法、より高額の慰謝料を受けとるためのポイントなどについて、弁護士が解説しました。
「結婚を前提に真剣交際していると信じていたのに、嘘が発覚した」、「だまされて性交渉してしまった」というとき、とても苦しい気持ちになることでしょう。精神的苦痛をなかったことにはできませんが、慰謝料請求で少しでも被害回復を図ることができます。
当事務所のサポート
貞操権侵害の慰謝料請求をはじめ、男女問題にお悩みのとき、ぜひ弁護士法人浅野総合法律事務所へご相談ください。
交際相手の不審な言動から、「実は既婚者ではないか」、「だまされているのでは」と疑問を抱いたとき、早めに弁護士に相談することで、本当の氏名や住所を調査してもらうなど証拠収集のサポートを受けられ、万が一のとき慰謝料請求を確実にすることができます。
貞操権侵害のよくある質問
- 貞操権侵害で請求できる慰謝料の相場はいくらですか?
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貞操権侵害で請求できる慰謝料の相場は、50万円〜200万円程度が目安です。ただ、貞操権侵害にあたる行為の悪質性によっては、これを超える金額となることもあります。もっと詳しく知りたい方は「貞操権侵害の慰謝料の相場と、増額するための事情」をご覧ください。
- 貞操権侵害で慰謝料を請求するときの流れは?
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貞操権侵害をされてしまったことがわかったとき、まずは内容証明を送って交渉し、相手が払ってくれないときは訴訟に移行します。交渉も訴訟も、証拠が重視されるため、事前に証拠を集めておくことが大切です。詳しくは「貞操権侵害の慰謝料を請求する方法」をご覧ください。