労働問題

執拗な退職勧奨は違法!違法な退職強要への対処法は?【弁護士解説】

2020年8月4日

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退職勧奨退職強要違法対処法

退職勧奨とは、退職を勧奨するという文字どおり、会社が労働者に対して、退職をするよう勧める行為のことをいいます。

退職勧奨は、あくまでも、会社が労働者に対して、任意に退職をする意思がないかどうかを確認することを意味するため、労働基準法をはじめとした労働法には、退職勧奨についてのルールは定められていません。しかし、その反面で、退職勧奨は、辞めさせたい社員を追い出すためのブラック企業の一手法として活用されることがあります。

退職勧奨を受けた社員は、何らの拘束なく、自由な意思で退職するか、在職し続けるかを選ぶことができるのであり、行き過ぎた退職勧奨は「退職強要」となり、不法行為となります。この場合、会社に対して損害賠償請求をすることができます。

そこで今回は、執拗な退職勧奨を受けた際に、違法な退職強要に対して、労働者側がどのように対応したらよいのかについて、弁護士が解説します。

「労働問題」弁護士解説まとめ

退職勧奨とは

退職勧奨退職強要違法対処法

退職勧奨とは、その名のとおり、退職を勧めることをいいます。単に勧めるだけですから、退職勧奨された社員に、これに応じる義務はありません。

退職勧奨に対して、これに応じて退職するかどうかは、社員が自由な意思で決定することができます。退職勧奨に応じて退職すると、労使間の合意によって退職をする合意退職となります。社員が完全に自身の意思で退職する「自己都合退職」とも異なります。

退職勧奨は、解雇と異なり、特段の根拠や理由を必要としないため、いつでも、誰に対しても行うことができます。大きな理由なく、雇用契約の解約を提案することができるのは、労働者側としてもこれを断ることができてはじめて許されることです。

退職勧奨と解雇の違い

退職勧奨は、その対象となった社員に決定権があることから、会社が一方的に行う解雇とは異なります。

労働者側にとって自分に決定権があるという点で、会社が一方的な意思表示によって労働契約を解約する「解雇」とはまったく異なります。そのため、退職勧奨は、解雇に関する制限的なルールが適用されません。

解雇については、労働契約法16条により「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされています。そして、この判断がかなり厳しく、解雇が認められない場合が多いため、解雇ではなく退職勧奨を先行させる会社が多いのです。

退職勧奨と解雇には、次のような違いがあります。

退職勧奨 解雇
定義 会社が労働者に対して退職を勧める行為 会社の一方的な意思表示による雇用契約の解約
解雇予告 不要 30日前の解雇予告もしくは不足する日数分の解雇予告手当
社員の決定権 あり なし
解雇権濫用法理 適用されない 客観的に合理的な理由がなく、社会通念上不相当な場合、権限を濫用した「不当解雇」として違法、無効となる
就業規則の規定 不要 必要
雇用保険上の扱い 会社都合の退職 会社都合の退職

退職強要は違法!

退職勧奨は、本来、労働者に拒否をする自由が与えられているものですが、会社の中には、事実上、退職を強要するような退職勧奨を行うことがあります。そして、このような「退職強要」は違法です。

ブラック企業ほど退職強要を行ってしまうのは、解雇権濫用法理のルールにより、解雇が制限されているからです。解雇権濫用法理のルールにより、解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当といえる場合でなければ、権限を濫用した「不当解雇」として違法、無効となります。

「解雇」といってしまうと、このような厳しい制限にかかってしまうため、この制限を回避しようと、解雇ではなく退職勧奨の体裁をとって、不要と考える社員を会社から追い出そうとするのです。

そのため、違法な退職強要が行われるケースとは、会社が社員を解雇したいと考えているけれども、裁判例における解雇制限のルールからすると解雇が認められなさそうな場面においてです。例えば、次のような場合です。

  • 能力不足、勤怠不良、勤務態度の不良を理由に解雇したい問題社員がいるが、まだ注意指導、教育を十分に尽くしておらず、解雇をすると不当解雇となる可能性が高いケース
  • 業績の悪化により整理解雇に踏み切りたいが、まだ解雇回避のための経費削減、役員の報酬削減といった努力を尽くしておらず、社員を減らしての人件費抑制を先行させたいケース
  • 企業秩序違反の問題行為について懲戒解雇としたいが、問題の悪質性が懲戒解雇とするほどには高くないケース
  • 終身雇用、年功序列を前提としながら、定年より一定の低い年齢で会社を退職することが慣行とされているケース

このような場面で、解雇を避けるために退職強要を行うことは、違法となる疑いがとても強いといえます。そのため、違法の疑いのある退職強要の対象となってしまった労働者は、会社に対して慰謝料請求を行うことを検討してください。

社内の慣行により、年齢や地位、役職など一定の要件を満たす場合には退職するという慣行がある場合であっても、退職勧奨にしたがって退職するかどうかは労働者側の自由です。そもそも、定年制度は法律で、65歳までの継続雇用義務という一定の制限が課されたもので、それにしたがって社内ルールを作らなければならず、会社の慣行などに忖度せずに労働者としての正当な権利、利益を行使すべきです。

退職勧奨に違法性が認められるケース

退職勧奨退職強要違法対処法

適法な退職勧奨であれば、労働者がこれに合意しなければ、退職勧奨は不成立となり、労働者は引き続きその会社で働き続けることができます。

一方で、会社が退職勧奨をするとき、その社員には会社を出て行ってほしいと思っていることが通常であり、その思いはかなり強いと考えられます。仮に退職勧奨を拒否したとしても、その後も執拗に退職勧奨が続き、退職せざるを得ない状態に追い込まれるおそれがあります。

このように退職勧奨が行き過ぎた結果、労働者の自由な判断を奪う状態となる場合には、違法な退職強要となります。この違法性の判断は、次のような多くの要素の総合考慮で判断されます。

違法性の判断基準 違法と判断される退職勧奨の例
退職勧奨の中止 労働者が退職勧奨を拒否した後も、合意するまで退職勧奨を中止しない
退職勧奨の時間 退職勧奨を長期間に及んで継続する
退職勧奨の回数 多色干渉を拒否しているにもかかわらず、何度も執拗に退職勧奨を繰り返し行う
退職勧奨時の発言 退職勧奨時に、本人の人格を否定したり、威圧的な発言をしたり、大声で怒鳴ったり机を叩いたりして威圧する
虚偽の説明 退職勧奨時に、虚偽の説明をする
社会的に不相当な発言 退職勧奨時に、「寿退社」「女性は結婚したら家庭には入れ」「妊娠したら退職」といった女性蔑視な発言など、社会的に不相当な発言をする

これらの違法な退職勧奨は、退職強要となってしまうという違法性とともに、パワハラの責任を負うことにもなります。不当な要求に応じる必要はなく、冷静に拒絶を繰り返すという対応となります。

結果として、意に反する退職をしてしまった後で争うほうがハードルが高くなるため、拒絶の意思を明確にし、それでも会社が違法行為をやめない場合、弁護士にご相談ください。

退職勧奨を違法であると判断した裁判例

退職勧奨退職強要違法対処法

退職勧奨を違法であると判断した有名な裁判例に、下関商業高校事件(最高裁昭和55年7月10日判決)があります。

この裁判例では、次のような事情のある退職勧奨について、違法な退職強要であると評価して、使用者側(会社側)に対して損害賠償の支払を命じました。

下関商業高校事件(最高裁昭和55年7月10日判決)

退職勧奨は、任命権者がその人事権に基づき、雇用関係ある者に対し、自発的な退職意思の形成を慫慂するためになす説得等の行為であって、法律に根拠をもつ行政行為ではなく、単なる事実行為である。したがって、被鑑賞者は何らの拘束なしに自由にその意思を決定しうるこというまでもない。

違法性を基礎づけた事情

  • 例年年度内(3月31日)で打ち切られていた退職勧奨が、本件では年度を超えて引き続き行われていた
  • 退職するまで勧奨を続ける旨の発言を繰り返し述べ、退職勧奨が際限なく続くのではないかとの不安感を与え、心理的に圧迫した
  • 電算機の講習期間中も、労働者側の要請を無視して呼び出すなど、終始高圧的な態度をとり続けた
  • 組合が要求していた宿直廃止、欠員補充問題など退職勧奨と関係ない問題についても、退職しない限り要求には応じられないとの態度を示し、二者択一を迫った
  • 不必要なレポート、研究物の提出を命令した

違法な退職勧奨、退職強要を受けたときの対応方法

退職勧奨退職強要違法対処法

労働者側の立場で、違法な退職勧奨、退職強要を受けたときの対応方法について、弁護士が解説します。

退職を勧奨されるということはそうよくあることではなく、初めての体験だという人も多いことでしょう。突然退職勧奨の対象となってしまったとき、驚いて冷静さを失ってしまわないよう、事前に理解しておいてください。

拒否の意思を明示し、証拠化する

退職勧奨は、退職の「お勧め」行為という性質上、まずは対面で伝えられることが多いです。対面でのやり取りの中で、退職勧奨を受けたときには、退職する意思がないときには、即座に拒否の意思を明示してください。

対面でのやり取りは証拠に残りづらく、後日になって、退職勧奨、退職強要の場における労使間のやり取りが争点となることがあるため、録音する方法により証拠化することが有用です。会社側に複数の目撃者がいたり、会社側が議事録を作成していたりしても、会社が作成する証拠は、労働者側にとって不利な内容となっていることがあります。

会社が、労働者が拒否の意思を示したにもかかわらず、執拗に退職勧奨、退職強要を続けるときは、拒否の意思をより明確にするため、会社に書面を送付する方法によって拒否の意思を伝えます。このとき、書面送付の事実、内容、書面受領日を証拠化するため、配達証明付き内容証明郵便の形式を利用しましょう。

会社側では、退職勧奨に応じてもらったことを証拠化するため、退職届、退職の合意書などの書面を準備し、退職勧奨の場において署名を求めてくることが通常です。しかし、退職に応じる意思がないときには、間違ってもこれらの書面に署名をしてはなりません。

一旦締結した退職届、退職の合意書であっても、撤回することができないわけではありません。

法律上、退職届、退職の合意書を締結したときに騙された場合には「詐欺」、内容に誤解があった場合には「錯誤」、脅された場合には「強迫」といった理由により取り消すことが可能です。しかし、これらの取消理由が認められるハードルはそれなりに高いものとお考え下さい。

労働者側に、退職に応じる意思がないにもかかわらず書面に署名をしてしまうと、「退職の意思表示は無効である」という労働者側にとって不利な争点を更に増やし、労使紛争を拡大させてしまうことになります。

実質解雇でないかを検討する

退職勧奨と解雇とで、退職勧奨のほうが会社側にとってリスクが小さいことから、会社は何が何でも労働者本人の同意をとろうとしてきます。しかし、ここまで解説してきたとおり、労働者の自由な意思に反して合意をとるような退職勧奨は、退職強要となり違法です。

このような場合、その退職勧奨、退職強要は、実質的には解雇であると考えるべきです。退職勧奨と解雇を分けるポイントは次の3つです。

  • 会社の一方的な意思表示(解雇)ではないこと
  • 労使間の合意による退職を求めるもの(退職勧奨)であること
  • 退職するかどうかは労働者本人が決定するものであること

解雇となる場合には、30日前の解雇予告もしくは不足する日数分の平均賃金に相当する解雇予告手当が必要であるほか、客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性が必要となります。実質的に解雇となるような退職勧奨、退職強要を受けた場合には、その場で、その理由を書面で明示するよう求めましょう。

また、退職するかどうかの選択肢があるかどうかは、退職勧奨の方法や、その時の発言内容によっても変わってきます。そのため、退職勧奨時の会話を録音する方法によって証拠化しておくことが有用です。

中には、「退職勧奨だけど、事実上どういう意味かはわかりますよね」というように、労働者側の自由な意思を尊重するふりをして強要してくる会社もあります。会社の意図をくみ取り、忖度するのではなく、「それは解雇ということですか」「どのような意味でしょうか」「退職するかどうかは自由に決めてよいと理解してよいですか」と質問し、会社の意図を正確に確認してください。

自由な意思決定ができているか検討する

退職勧奨を受け、退職に応じる、もしくは、退職に応じないという場合には、最終的に意思表示をする前に、「自分が自由な意思決定ができているか」を検討してください。

特に、会社は、退職の同意をとるために様々な方法を使うことがあります。次のような検討を踏まえ、自由な意思決定ができているかどうか、よく考えましょう。

  • 退職勧奨において労働者側の非を理由として責め立てられているとき、その非は、会社を辞めなければならないほど重いものか
  • 退職勧奨において会社の業績を理由として人件費の抑制の必要性があると伝えられているとき、その真偽が判断できるほどの情報提供を受けているかどうか

本来、退職勧奨は合意退職を求めるものであり、その理由が労働者の非を責めることにあるわけではありません。最終的に合意を求める手続きであるにもかかわらず、会社から苛烈に攻め立てられているとき、その退職勧奨が違法性のあるものではないか、疑問を抱くべきです。

回答を保留する

退職勧奨に対して、今すぐその場で結論を出さなければならないわけではありません。退職勧奨に応じるか、拒否するかについて迷う場合には、回答を保留すべきです。

「2,3日考えさせてほしい」と伝えても、その日の退職勧奨が終了しない場合、自由な意思決定が阻まれていると考えることができます。「この場で決めるように」「明日までに決めないと懲戒解雇になる」などと強く伝えられる場合、違法な退職強要がなされているということです。

人間関係を破壊してしまうおそれがあり拒否をしづらいと考える場合には、「妻に聞いてみないと決められない」など、家族を言い訳にして、ひとまずその日の退職勧奨の場から立ち去ることがお勧めです。

脅しに屈して、納得のいかない退職勧奨に応じるより、一旦回答を保留し、持ち帰ってしっかり検討するようにしましょう。

納得のいく退職条件を合意する

最後に、退職勧奨に応じて退職をする場合には、納得のいく退職条件で合意をするようにしてください。ここまで解説したとおり、退職勧奨を承諾しなければならない義務はないわけで、自由意思で決定してよいわけですから、いざ退職をするとなったときの退職条件についても、きちんと話し合いをして決めるべきだからです。

退職をすることにだけ合意し、退職届を書いたものの、その後会社から退職金が支払われなかったとか、残業代が払われなかった、最終給与が支払われなかったなど、正当な権利を侵害するような不義理な行為が行われたとき、退職勧奨に応じたことに後悔するおそれがあります。

退職金の上積み、有給休暇の買取、一定の賃金補償など、何らかの交換条件のもとに退職勧奨に応じた場合には、それが最終的に守られなかったことによる労働者側の不利益は小さくありません。

退職勧奨に応じるときによく条件とされるのは、例えば次の事項です。

  • 退職金の割り増し
    :退職勧奨に応じての退職が、退職金規程において自己都合退職として扱われる場合であっても、会社都合として取り扱ったり、更に上積みした特別な退職金を支払ったりすることを条件にするケースがあります。
  • 年次有給休暇の買い上げ
    :年次有給休暇は、休暇を取得する権利であって、本来買い上げが必要なわけではありませんが、退職勧奨に応じて労働者の意に反した時期に退職することとなると余ってしまう年次有給休暇の買い上げを条件にするケースがあります。
  • 賃金の補償
    :労働者の意に反する時期に退職せざるを得ないこととなると、転職活動が十分にできないこともあり、生活の糧となる給与を突然失ってしまう労働者に向けて、一定の賃金の補償がなされるケースがあります。
  • 在籍の延長
    :労働者の意に反する時期に退職せざるを得ないことによる転職活動の弊害として、無職期間での転職活動となってしまうことを避けるため、一定の期間だけ在籍を延長してもらうケースがあります。

退職勧奨の際に、何らかの補償を与えることは義務ではありませんが、納得いく条件でなければ退職をお断りすればよいだけです。少なくとも、実質的には解雇に等しいような退職勧奨の場合、解雇予告手当相当分(平均賃金1か月分)程度は、交渉をしてみることがお勧めです。

退職勧奨に応じて退職をするときには、その退職条件について定めた合意書を作成し、署名押印して証拠化しておきましょう。

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退職勧奨退職強要違法対処法

今回は、違法な退職強要、退職勧奨の被害にあったとき、労働者側で行うべき適切な対処法について弁護士が解説しました。

本来、退職勧奨は、退職を勧める行為であり、これに応じるかどうかは労働者が自由に決めることができるものです。しかし、何ら理由なく退職勧奨を行うということは通常あまりなく、退職勧奨を行うからには、その対象となる労働者に対して会社を辞めてほしいと思っているはずです。

そのため、会社は、労働者に会社を辞めてほしいという目的を達成するために、様々な圧力をかけてくることが容易に想像できます。それらの圧力に屈して、意に反して退職してしまわないよう、対策をしっかりと頭にいれておいてください。

退職勧奨、退職強要を受けてお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所の法律相談をご依頼ください。

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