刑事事件

路上痴漢で逮捕されたとき、早期釈放・不起訴を目指すための対応

2021年9月8日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

路上痴漢とは、路上で行われるわいせつな行為のことです。

痴漢というと、電車内で行われる痴漢を想像することが多いですが、路上でからだを触ったりわいせつな行為をしたりすることを「痴漢」と呼ぶことがあります。

自転車で追い抜くときに尻を触って逃げる、突然後ろから抱きつく、胸を揉むといった行為が、路上痴漢の典型例です。これらの行為は、電車内の痴漢と同様犯罪になり、行為の悪質性の程度に応じて、強制わいせつ罪(刑法176条)もしくは迷惑防止条例違反にあたります(参考解説:「痴漢で成立する犯罪の種類」)。

路上での痴漢は、被害者に気づかれないようにこっそり近づき、突然行われる態様がほとんどです。そのため、「下着の中に手を入れ、性器を触る」といったケースは多くはありませんが、突然行われる路上痴漢はそもそも抵抗が困難な上、被害者がケガをする危険も大きいため、強制わいせつ罪として厳しく罰せられるケースが少なくありません。

今回の解説では、

  • 路上痴漢で成立する犯罪
  • 路上痴漢で逮捕されるケースと、逮捕後の流れ
  • 路上痴漢で示談するときの注意点

といった路上痴漢に関する法律知識について、弁護士が解説します。

路上痴漢で成立する犯罪

路上痴漢では、その程度に応じて、強制わいせつ罪(刑法176条)か迷惑防止条例違反のいずれかが成立します。この点は、電車内で行われる痴漢と同様です。

路上痴漢には、例えば次のような行為があります。

  • 自転車ですれちがいざまに尻をさわって逃げる
  • 後ろから近づき、突然抱きつく
  • 並行して歩いているとき、突然胸をわしづかみにする
  • 後ろからスカートをめくる
  • 押し倒しておおいかぶさる

強制わいせつ罪と迷惑防止条例違反の違い

強制わいせつ罪は、13歳以上の被害者に対する暴行または脅迫を用いたわいせつな行為と、13歳未満の被害者に対するわいせつな行為を処罰の対象としています。これに対して、迷惑防止条例違反は公共の場所で衣服の上から触れる行為などを処罰の対象としています。

強制わいせつ罪にあたるときは「6月以上10年以下の懲役」、東京都迷惑防止条例違反にあたるときは「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科されます。

このことからもわかるとおり、強制わいせつ罪のほうが迷惑防止条例違反より重大な行為を処罰しており、刑事罰も重くなっています。

電車内の痴漢では「着衣の上から触れば迷惑防止条例違反、着衣に手を入れれば強制わいせつ」といわれますが、路上痴漢ではこのようなルールはなく、強制わいせつ罪となるような「暴行」、「脅迫」があったかどうかが判断のポイントとなります。

迷惑防止条例違反となる路上痴漢

すれ違いざまに尻や脚などに軽く触れたというような軽微な事案では、迷惑防止条例違反となることがあります。

特に、さわった場所が胸ではなく尻や脚など周辺部となるほど罪は軽く、さわってすぐ逃げたケースのようにさわっている時間が短ければ短いほど、罪としては軽いものと評価されます。

強制わいせつ罪となる路上痴漢

強制わいせつ罪となるのは、暴行、脅迫によって、被害者の意思に反してわいせつ行為が行われるケースです。

暴行、脅迫は、被害者の意思に反してわいせつ行為を行ったといえる程度であれば足りるとされています。わいせつ行為と暴行は同じでもよいとされているため、さわる行為それ自体が暴行となる場合でも強制わいせつ罪が成立します。

尻や脚にとどまらず、胸をさわった場合や、さらには胸を揉んだりつかんだりしたときにはそれ自体が暴行になる可能性が高く、強制わいせつ罪となる可能性が高まります。無理やりキスをしたケースも重く評価され、強制わいせつ罪となるのが基本です。

単にさわって逃げたというにとどまらず、押し倒して覆いかぶさった、抱きついたといったように力づくで行うほど、暴行になり、強制わいせつ罪になりやすくなります。

路上痴漢では、その性質上、強制わいせつとなるケースが多くあります。

というのも、路上痴漢ではわいせつな行為が突然に行われ、強く触ったり、叩いてしまったりすることがあるため、暴行、脅迫があったと評価されやすいためです。そして、不意打ちで行われたわいせつ行為が被害者である女性の意思に反することは明らかです。

被害者が13歳未満だと強制わいせつ罪になりやすい

強制わいせつ罪は、被害者が13歳以上のときには、暴行または脅迫をともなう必要がありますが、被害者が13歳未満のとき、単に「わいせつな行為」をしたというだけで犯罪が成立します。

そのため、尻や脚を短い時間さわるといった、被害者が13歳以上であれば迷惑防止条例違反となるような行為でも、強制わいせつ罪となるおそれがあります。

路上痴漢で逮捕されるケース

現行犯逮捕されるケース

路上痴漢を行ってすぐに、その場で逮捕されるとき、現行犯逮捕となります。例えば、痴漢行為をはたらかれた被害者から取り押さえられてしまったり、自転車ですれちがいざまに路上痴漢したが、倒れてしまい周囲の人に捕まってしまったりといったケースです。

痴漢行為中に捕まる場合だけでなく、犯人として追いかけられている最中であれば、現行犯逮捕が可能です。

ただし、路上痴漢の多くは、夜道で行われることが多く、被害者の虚を突いて突然行われ、その後すぐに走り去るケースが多いため、現行犯逮捕に至るケースは多くはありません。

後日逮捕されるケース

路上痴漢は、突然さわったり抱きついたりした後、その場から逃げ去る態様がほとんどのため、後日犯人として特定されれば、逮捕されることが多いです。犯行当日に現場から走り去っていることから、逮捕の要件である逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれを満たすと評価されるからです。

この点は、電車内で行われた痴漢であれば当日の対応をしっかり行えば現行犯逮捕される可能性を低めることができることとの大きな違いです。それだけ、急に触って逃げるという路上痴漢は卑劣な行為だとされているわけです。

都心部の路上には、いまや多くの防犯カメラが設置されています。そのため、逃げ切れたと思っても、防犯カメラ映像から顔が割り出され、犯人として特定される可能性があります。自分の生活圏内で行ったときには、目撃者や近所の人の証言などから見つかり、逮捕されてしまうケースもあります。

参考解説

路上痴漢で逮捕された後の流れ

路上痴漢で逮捕されると、逮捕後48時間は警察、その後検察に送致されて24時間は検察にて身柄拘束を受けます(合計72時間)。その後、勾留決定がなされるとさらに10日間、延長決定がなされるとさらに10日間を限度に延長され、最大で20日間の身柄拘束を受けます。

以上の最大23日間に検察が起訴か釈放かを決めることとなります。起訴されると、およそ1ヶ月後に公判が開かれ、裁判所の判決を受けることとなります。一方で、不起訴処分となれば釈放されます。

起訴のうち、罰金刑の場合には略式起訴が選択されることがあります。略式起訴をされると、被疑者の同意のもとに罰金刑となります(迷惑防止条例違反には罰金刑がありますが、強制わいせつ罪には罰金刑がありません)。

なお、逮捕・勾留は、逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれがあることが要件とされており、身柄拘束から解放されたからといって終わりではありません。在宅のまま取調べがなされ在宅起訴されるケースもあります。

路上痴漢で示談するときの注意点

路上痴漢では、被害者がいるため、被害者と示談をすることが最もよい情状として考慮されます。そのため、逮捕された場合の早期釈放はもちろん、不起訴を獲得して前科をつけないためにも、被害者との示談交渉を進めることが大切です。

そこで最後に、路上痴漢のケースで示談活動を進めるにあたり、特に注意しておきたいポイントについて解説します。

なお、痴漢の示談に関する一般的な解説については、下記解説もご参照ください。

参考解説

謝罪・反省の意思を伝える

まず、示談をするためには、あなたの謝罪・反省の意思をきちんと被害者に伝えることが大切です。路上痴漢の事例では、被害者と直接会うことはできませんので、謝罪文・反省文を作成して弁護士に託することによって気持ちを伝えるようにします。

特に、路上痴漢は突然行われ、怖い思いをしていることが多く、ケースによっては被害者がケガを負ってしまっていることもあります。そのため、電車内での痴漢にも増して被害者の処罰感情が強く、示談が成立しづらいことが多いです。

犯行の記憶がないときの対応

路上痴漢は、「酔っ払って抱きついてしまった」、「ついムラムラして触ってしまった」というように衝動的に行われることが多く、その中には、犯行についての記憶がないこともあります。相当昔の犯行が、防犯カメラなどから犯人特定に至ったケースなどでは、いつのことかすら記憶がないこともあります。

しかし、記憶がないのは犯人側だけであることが多く、やられた被害者側はしっかり覚えています。このようなとき、謝罪文・反省文が的外れなものになってしまうと、かえって被害者を怒らせてしまい、示談を成立させることができなくなってしまいます。

なお、病的に路上痴漢をしており余罪があるとき、複数の路上痴漢について公判請求され処罰されてしまうおそれがあるため、取調べへの対応に特に注意が必要となります。

特に被害者との接触を控える

路上痴漢では、電車内の痴漢と比べて、被害者・加害者の双方がとても近い生活圏で暮らしていることがよくあります。このことは、示談を申し入れられた被害者にとって、恐怖や不安を増大させることにつながります。

そのため、路上痴漢で示談を成立させるためには、特に被害者との接触を控えなければなりません。加えて、将来にも被害者と接触してしまわないよう、加害者側が生活圏を変更することを誓約する、もしくは、被害者側が生活圏を変更するための転居費用(引越し費用)を加害者が負担するといったことが、示談の条件として話し合われることが多いです。

被害者に接触をする可能性があるのではないかと危惧されると、それは罪証隠滅のおそれや再犯のおそれにつながり、身柄拘束からの解放の大きなハードルとなってしまうため注意が必要です。

刑事弁護は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回は、すれちがいざまに尻をさわる、胸をつかむ、急に後ろから抱きつくといった、路上痴漢のケースについて、成立する犯罪の種類、逮捕されるケースと逮捕後の流れ、示談するときの注意点といったことを解説しました。

路上痴漢もまた痴漢の一種であり、示談の重要性や弁護活動の方法などについては、痴漢と同じことがあてはまります(詳しくは「痴漢」の解説を参照)。しかし、路上痴漢は、電車内での痴漢とは犯行態様が異なるため、特別な注意が必要となります。

特に、急に被害者に対して接触し、その後に逃げ去ることの多い路上痴漢では、犯行態様自体が「暴行」と評価されやすく、強制わいせつ罪が成立しやすくなっています。現場から逃げ去っていることから、逃亡のおそれが高く、逮捕もされやすく、イメージも悪い傾向にあります。

路上痴漢をしてしまい逮捕・処罰されてしまうか心配な方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

解説の執筆者

弁護士 浅野英之
弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院終了。

豊富な知識・経験に基づいた戦略的リーガルサービスを提供します。
専門分野の異なる複数の弁護士がタッグを組むことで、お客様にとって最も有利なサービスを、総合的に提供できることが当事務所の強みです。

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